片想い…

クラス替え

新学期が始まったばかりの教室。
中学2年の春。
私橋本美沙は、出席番号順の席に座った。

両隣りは、男子で右側に男子としては小柄な、高橋学がいた。
彼は、小学校の頃何度か同じクラスになった事があった。
スポーツカーが大好きで、何時も授業中にスポーツカーの絵を描いていた。
「上手く描けたから見て。」
ノートを私の方に少しずらして、見せてくれる。
その絵は、とても活き活きと描かれてる。
今にも走り出しそうな躍動感があった。
「凄いね。上手!」
私が驚いていると、彼はスポーツカーの話をし始めるのだ。
私には、全然解らない内容で、
「この車のエンジン」の話しや外観のデザイン、ガルウィングと呼ばれる扉の話し。
「へ〜!」
と、頷くしかない。

デイキャンプ

夏休み…
登山部と文芸部の合同デイキャンプが、決まった。
私は、母に反対されて参加を見合わせる事になった。
打ち合わせの教室の外で、廊下の窓から外を見ていた時、
「なぁ、ほんまにデイキャンプ行かへんの?」
振り返ると、車好きのクラスメイトの彼が立っていた。
「行こうや、楽しいで!」
「そやね。また聞いてみるわ。」
「絶対行こうや!」
彼は、1人で廊下の私に話しかけてくれていた。

父に聞く事にした。
我が家では、父の意見で大まかに決まる。
「お父ちゃん、登山部と合同で、デイキャンプ行くんやけど良いかな。」
「先生も行くんやったら、行って来たら?」
なんともあっさりと、承諾を貰えた。
「ほんまに行っていい?お昼ご飯作るのに材料費とか、電車代もかかるで!」
「それぐらい何とかなる。行ってこい!」
父は、何時も私のしたい事を応援してくれる。

当日、女子チームはカレーを作り、男子チームはご飯を炊いた。
友達とワイワイしながらたべるのは、凄く楽しくて男子チームのパサパサご飯も、美味しいと感じる。
(来て良かった。友達とご飯作るのめちゃ楽しい。)
そんな事を思っているうちに、片付けて帰り道…
「荷物持ったるわ」
行こうと誘ってくれた、彼は私が疲れているのを知っていたのか?
私が、分担していた荷物を持ってくれた。

優しさ…

夏休みの楽しい行事が終わると、直ぐに2学期が始まった…
彼は、クラスにいなかった。
夏休みの間に引越しをしたらしい。

心の中に、隙間が出来た気がして、寂しい気持ちになっていた。
彼の新しい住所も電話番号も、知らないままだった。
男子の優しさを、少し感じていた。
黙って行ってしまった彼は、私に優しく接してくれたはじめての人となった。

片想い…

片想い…

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-03-19

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  1. クラス替え
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