埋み火
勿来
通り雨で鎮火する
渦の淵で
渦の縁で
燃える暁
仄暗さは何もかもを隠す
反転の世界
揺蕩えど、糸は沈まず
腐海にも負けじと浮き始める
冒険は終わりだ
声はもう聞こえない
燻る視界の果てに 残像を見た
埋み火
私たちは絶やしても尚
解放する 音に 誰かを誘う
次の空
暗転した劇場で
昇天を突き刺して 蒼天を目指していた
あの温度 あの温度だけを
首から提げて
地界に燃す
愛想笑いの色を知った
舞踊は蹂躙を意味し
届かない電波網を 睨み続ける
蓮はこの世で
一番綺麗な名前だと
心を侍らせ
誰かを待つ
脚本通りの起承転結
見違えた泣き顔
誰そ彼 時雨之化 救いを待つ手探り
埋み火
私たちは時間の中で
膨大で 壮大な 物語を詠む
満の星
墜つ時は共に果てると
感性を穿って 喝采を浴びていた
あの衝動 あの衝動だけは
首を絞めないから
誓いを刺す
指を絡めること
その意味すら知らず
臆する心臓を 止めない為に縋った
温め合った体温は
繋がることを忘れずに
一人で生きていく 難しさを知る
万物は流転せよ
圧迫の果てに
全生命は怨んでいる
幾億の死を
万物は流転する
魂魄の容れ物
全拍動は凍えている
幾億の死に
地界で燃す
埋み火
私たちは
小さな鼓動の世界で
降り注ぐ 火炎を
浴びて生きる下僕
埋み火
完成された生物などないと
幾億の死を生み出した
創造は笑う
暗転の星で
見つけた誓約
希望を折る
どれだけの質量だとしても
貴方以外の体温は
身体に合わない
希望を折る
またひとつ、またひとつと
世界が滅びる時
隣に 誰かがいればいい
埋み火