10人と1匹(猫とか)いる!
ここは宇宙ステーション。
もうすぐ、数々の厳しい試練を乗り越えて、この最終試験に挑む宇宙飛行士幹部候補生たちがやってくる。
「おっと、この部屋は重力あるのか」
「何だか久しぶりだな」
「…あれ、ちょっと待てよ。人数、増えてないか?」
「そうか?1,2,3,…,11。ああっ、11人いる!」
「一体、いつの間に増えたんだ?」
「…なぁ、11『人』か?」
「何、言ってんだ?じゃあ、番号かけてみるぞ。番号っ!」
「1」「2」「3」「4」「5」「6」「7」「8」「9」「10」「にゃあ」
「ほら見ろ。11人いるだろ」
「…いや、お前は何も疑問に思わないのか?」
「何が、言いたいんだ?」
「…じゃあ、逆の順番で、番号かけてみないか?」
「いいだろう。番号っ!」
「にゃあ」「2」「3」「4」「5」「6」「7」「8」「9」「10」「11」
「…なんで、お前が2番なんだ?」
「つまらん事に、こだわる奴だなぁ。しかも、1番でなくて2番か?」
「いや、そうじゃなく…」
「じゃあ、お前に2番をやろうじゃないか。番号っ!」
「1」「2」「3」「4」「5」「6」「にゃあ」「8」「9」「10」「11」
「はっきり言おう。こいつは猫だ」
「バカなことを言うな。宇宙センターに猫が居る訳ないだろう」
「いや、そんな固定観念に縛られず、現実を直視しろ。こいつ『にゃあ』しか言ってないぞ」
「田舎から出てきたばかりで、なまりがきついんじゃないか?」
「そういう、レベルじゃないだろう?だいたい毛むくじゃら…」
「バカっ!本人が毛深いの気にしてたら、どうするんだ!」
「毛深いの遥かに通り越してんだろっ!だいたい小さすぎ…」
「貴様という奴は、次々と人のコンプレックスを土足で踏みにじりおって…。許さんぞ!」
「いや、だからさ」
「それに、あれだけ小さな身体で、この最終試験まで来たのだ。人並み外れた努力をして来たに違いない」
「じゃあ、あいつと会話してみろよ」
「まったく…。いいだろう。それで気が済むのなら…。…なぁ、この服、俺に似合うかな?」
「にゃう」
「『似合う』と言ったぞ」
「言ってねぇし、お前の質問、不自然だろ?」
「分かった。じゃあ、今度は、あいつの英語力を試してやる。…英語で『近い』は何と言う?」
「にゃー」
「ちゃんと、『near』と答えたぞ」
「お前、ワザとだろう。ワザとだと言え!いや、言って下さいと、お願いしちゃうよ、むしろ」
「強情な奴だなぁ」
「そら、お前の方だ。…そうだ!見てろ。このマタタビを近付けると…。ほらっ、酔っ払ったみたいになった」
「信じられん!」
「なっ、これで分かったろ」
「何で、お前、マタタビなんか持ってるんだ?」
「…そっちかよ」
(おしまい)
10人と1匹(猫とか)いる!