SS51 穴
璃子は満面の笑みで返した。
「あんたさぁ、最近なんかいい事あったでしょ?」
仕事場の休憩室。バイトを取り纏めている彼女も、確か一つか二つ年上なだけのただのバイトで、ここでは皆タメ口だ。
「まあねぇ」と璃子はスマホを弄りながら曖昧な返事をした。
「やっぱりねぇ。それが急に休みを入れた理由なのね?」
「うふふ、分かっちゃった?」
「分かっちゃった、じゃないわよ。そんなデレデレの顔して。別にその日じゃなくてもいいんなら他の日にしてよ」
一段高くなった声に顔を上げると、存外憤ってる彼女と目が合った。
「イヤよ。相手、社会人なんだもん。日にち合わせるの大変なんだから」
「シフトが埋まんないのよ。あんたの穴は誰が埋めるの?」
「私の?」璃子は満面の笑みで返した。
「カ、レ、シ♪」
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