秘めた淡い想い

七瀬 幸

トントン

私は、夏帆中学2年の夏…
私は、帰宅部を卒業した。
小学校からの友達2人から、陸上楽しいから一緒にしようと誘われたのだ。
私は、運動が得意ではないけれど、出来たての同好会だから、先輩もいないし楽しい。
と言う誘い文句に乗ってしまった。

初日、陸上はアップと呼ばれる走り込みからはじまる。
運動をしてこなかった私には、結構キツイ。
休憩を挟んで、色々なメニューをこなすのだけど、
その1つに足上げと呼ばれるメニューがあった。
軽く走りながら、走る時に太ももを出来るだけ高い位置まで上げるという鬼のようにキツイメニュー。
私には、これだけでもついて行くのが精一杯だけど、入ったのだから簡単に辞める気にはなれない。
無駄に根性だけはあるのだ。

やっと身体が慣れてきた頃に、次は大会に向けてのメニューが追加された。
誰を陸上競技の中のどういった種目に出すか?
いや、種目に向いているのは誰か?と言うのを見極めるために、色々な種目のチャレンジをしていく。
私は、長距離で大幅に脱落してしまい、大会には出られないだろうと思っていたけれど、

短距離走200mにエントリーする事が決まり、それからはアップの走り込みが終わった後、1人延々とスターターを設置しての、スタートダッシュの練習ばかりする事になった。
時折、担当の先生が見回りに来て、サボっていないか確認する。

キツイメニューに耐えられたのは、私の根性や友人の励ましがあったからと言うだけの理由では無かった。
1年生の後輩に、2人の男子が居たがそのうちの1人が、トントンとニックネームで呼ばれていた。

大会

大会の日を迎えてしまった。
会場に到着後、お揃いのユニホームに着替えて集合した。
それぞれの種目別に、次々と出場する。
始まったばかりの弱小陸上同好会は、なかなか結果を残せないなかで、私の出番となった。

いかにも速そうな、負けず嫌いの顔つきが並び始める。私は雰囲気にのまれないように、自分に言い聞かせる。
「大丈夫!練習は頑張ったから、大丈夫!」
心の中で繰り返しながら、スターターに足をかける。
パンとスタートのピストルがなって、私は瞬時に反応して飛び出した。
それからは、太ももを高く上げて走った。
「頑張れ〜」
皆んなの声が聞こえて、鮮やかに友人達と先生の顔が見えた。
次の瞬時に、私の横に誰も居ない事に気付いてしまった。
我に帰った瞬間だったと思う。
(私は足が遅いはずなのに…)
と、思った瞬時足が重くなり周りに抜かれ始めた。
結果は残せなかった。
(あの時、諦めなければ…)
と言う強い後悔だけが残った。

ある日突然

大会が終わって、何時もの練習に戻った。
練習が遅くなった日の事、友人と後輩男子2人の4人での帰り道、トントンの家に到着して、1人抜けると思っていたが、男子2人は私達をそれぞれの家まで送って行く!と言い出した。

私は、友人がトントンを気に入っているのを知っていたので、
「トントン紗枝を送ってあげて!私は1人で大丈夫だから。」
と、言ったところでトントンはクイっと顎を降って、もう1人の男子に合図した。
彼は、「俺同じ方向だから、送るわ!」
友人を連れて去って行った。
残された私と、トントンと…
(どうしよう…私もトントンの事が好きだけど、友人に悪い。)
そんな気がして、素直になれなかった。
「私みたいな子、1人でも大丈夫だから」
結局、トントンの申し出を断って、1人で帰ることにした。

秘めた想い

トントンとは、部室では話すがそれ以外で関わることが無いまま…
私達は、卒業を迎えた。

あの時の秘めた想いは、秘めた淡い想いのまま
私の心に今も美しくのこされている……

秘めた淡い想い

秘めた淡い想い

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-03-15

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