時を超えて…

七瀬 幸

何故

私は、佳奈。
母が編み物をするのを、見ている時間が大好きだった。母が料理をする時も、洗濯をする時も傍を離れずに、じっと見ているのが好きだった。
父が、ミシンを踏むのを傍で見ている時間も大好きだった。父が、自転車の修理をする時も、日曜大工をする時も、何時も傍でじっと見ていた。
小学校に入ってからは、本を読む時間が至福の時だった。

私は、不思議な体験をする事が多い。
例えば、お人形さんが欲しくても買って貰えない。
すると、あちこち探して両親の居ない間に大きな布を広げて、髪の毛用の編み糸の残りと共に、ちゃっかりと、お人形さんを作ってしまう。
誰かに教えてもらった訳ではなく、曲線も裏に返すと、突っ張って上手く形にならない。
そんな時も慌てずに、縫い代に切り込みを細かく入れて裏返し綺麗に仕上げてしまう。

そんな時、父は…
「あ〜!やられた!母さんのスカートにするつもりだったのに。」
とは言うが、決して怒らない。
「人形さん欲しかったんか?上手に作れたな。」
と、何時も許してくれる。
「どうやって作った?」
とかも聞かない。

イメージ

私が、お人形さんの服も仕上げて完成した頃、母が叔母を呼んだことがあった。
「母方の従妹が、私と同じ人形が欲しいと言ってるから、作ってあげて欲しい。」と頼まれたのだ。
私は、2人の目の前で布を広げて中表に折って、裏の方に直接お人形さんの頭、胴、手、足それぞれのパーツの形を書いて、ハサミで切り始める。
母と叔母は顔を見合わせる。
形を書いた部分から、少し間を開けてハサミを入れた事に驚いたらしい。
叔母は、縫い物の内職をしていて、小物を作る先生から、教えてもらっているようで、いくらか縫い物について詳しかったので、特に曲線部分に切込みを入れる所で、誰に教えてもらったの?と聞かれた記憶がある。
私は、イメージで作り方を知り、作り上げてしまった。

手伝い

私が、中学生になった頃、両親が母の実家に出かける事になり、人形を作る時に立ち会った叔母が、面倒を見てくれた事があった。
叔母は、内職を持って来ていたが、私に手伝いをさせると言うより、
「材料をあげるから好きに作ってみる?」
と言ってくれた。
材料をもらって、叔母の作るのをよく見て、私も作ってみた。
「上手に出来たから、あげるね」
と言って、合成皮革のペンケースをそのまま貰った。
それから、叔母は内職のデザインを手掛ける先生に私の話をしたようで、
「先生が会いたいと言っているんだけど…」
と、母に話をしたようだった。

パッチワークとの出会い

その後、叔母からの話は立ち消えたようだった。

漫画の本の物語りの中に、ワンシーン登場したパッチワークが頭の中にセンセーショナルに広がって、父の使った布の切れ端を、繋いでお弁当袋を縫った事もあった。
学校に持って行った初日。
「あっ!これ、パッチワークだよね」
知らない男子が教室で、話しかけてきた。
「俺のお母さんが、パッチワークしてるから、見にこない?」
「え〜〜!」
(全然知らない男子の家なんて、行くわけないよ!)
心の中で叫んで、次の日からは、持って行くのを辞めた。

クロスステッチ

母の妹が、独身の頃に私が自分でなんでも作る事を聞いたのだろう。
誕生日に、クロスステッチの刺繍キットを買って来てくれた。
中学生の私に撮って、かなりハードルの高い作品で、クロスステッチで薔薇の花束の図案を仕上げると言うキットだった。
(無理!可愛くない!)
叔母の好意なので、言えなかったが手芸をするからと言って、なんでもいいと言う訳には行かない。

私は、自分の欲しいものや憧れをイメージして、作ることは、好きだし得意なんだけど、これをやりなさい!と、与えられた課題はなかなか億劫になって出来ない。
自由にどうぞ…と言われると俄然やる気がでるのだ。だから、家庭科の点数も良くなかった…

前世

前世の話をする、スピリチュアルカウンセラーを見た事があるけれど、私にはよく分からない。

もしも前世があるとしたら、
私は、縫い物職人だったのかも知れない。
と思う事はある。
けれど、今の世で縫い物で生計をたてている訳では無いので、前世がなんであったとしても関係ないのかも知れないが、名残りとして…
ほんの少しだけ、趣味や興味をそそられる物などに、影響するのかも知れない。
ただそれだけの事では無いだろうか?

時を超えて…

時を超えて…

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-03-14

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  1. 何故
  2. イメージ
  3. 手伝い
  4. パッチワークとの出会い
  5. クロスステッチ
  6. 前世