誰が為にさざなみは揺れるか
誰が為にさざなみは揺れるか
さざなみは、君の傷跡
つらいことは、白波に
言葉は消えず、漂流する
さざなみは、痛みだったか
流れる水の、冷たさだったか
自我不明に、怯えていたとか
愚かさを数えることこそ愚かだ
人は愚かと決めつけることは愚かだ
難しい顔をして下を見つめていても
華やかな声の談笑は身に覚えがない
白波に飲まれていく泡沫の言論たち
若しくは、噂話か、井戸端会議か
花の着物、桃色の、その涼やかさ
べったりとした、赤い紅が囁く夜
あの子の呼んだ災いを
飲み込む高波を起こせ
凪いだ海に咽び泣いて
あの子は涼しい顔をして
砂浜を歩く足は浮いていて
僕はひとりで白い腕を見つめて
そこに新しい傷が出来上がっていて
それをお前は波に喩えて嗤っている
さざなみは、僕の傷
まちがいなく、僕の鮮血
白波よ間違うな、僕の心臓を
もういない、僕のことを嗤うな
自我は飲まれた、高波に一つ残らず
さざなみは、君の傷跡
つらいことは、白波に
言葉は消えず、漂流する
さざなみは、痛みだったか
流れる水の、冷たさだったか
自我不明に、怯えていたとか
誰が為にさざなみは揺れるか