私の結婚感

私は私

今年で30を迎える。
私は美桜、会社ではそこそこの仕事を任されるようになってきた。
後輩の指導なども、仕事の1つ。

実家住まいなので、そろそろ一人暮らしがしたい。
父母が、毎日のように「彼氏の1人もいないの?」
(あ〜、またそれね!)
サラリと、話を流して仕事にむかう。
そんな日常に、少し疲れを感じている。

私くらいの男性は、既婚者が多いのだ。
少なくても、彼女くらいはいる人達である。
私のように冴えない女が、この歳で彼を作るなんて、無理!
父母は、若い頃バブル景気の中で、出会い結婚したのだ。今の不況や社会の移り変わり、価値観にギャップがありすぎる。

自立

私は、やはり一人暮らしの道を選んだ。
一人暮らしの為に、2LDKのマンションを購入し、
親には住所などは、教えず…
必要最小限の荷物を詰めて、実家を出る事にした。
家庭用品と言う物は、こんなに色々揃えなければ、生活出来ないことを初めて知った。
家電用品を揃え、キッチン用品を揃え、シャンプーから、トイレ用品まで…
ため息の着くほど、お金は宙に舞った。

けれど、楽しかった。
これからは自由だと、実感したのかもしれない。
おひとり様が、マンションまで買ってしまった…
(これは、一生独身かな?)そんな気持ちもしたけれど、とりあえず仕事に集中出来る環境は、ととのった

家呑み

仕事で、大手企業との提携が決まり、ホッとしたがスタッフが打ち上げをしたいと、声が上がった。
私のマンションは、会社の近くなので提供して、家呑みにする事にして、2班にわけて1回に4.5人程度になるようにしたのだけど、後輩君の桂木君がはしゃぎ始めた。
(そんなに打ち上げ呑み会嬉しいのかな?)
そう思いながら、その日を迎えたのだが、案外皆んなからの差し入れを持ってきてくれたので、手料理も最低限にする事にして、呑み会は始まった。

桂木君のピッチが早い!
「おーい!桂木君早すぎるよ…。ゆっくり飲みな。おツマミもお腹に入れながらじゃ無きゃ悪酔いするからね。」
忠告の言葉は、耳に届いていない様子。
「酔いつぶれても、知らないよ。」
相変わらずピッチは落ちない!
(どうしたもんかな?)
なんて思ったところで、桂木君が立ち上がり
「発表しま〜す。俺は先輩に惚れてま〜す。」
え〜!そんなにべろべろに、なって発表する事?
集まったスタッフ達も、唖然として桂木をみている。(どうする!私!ここは上司として…)と、思ったところに、ヤジが入る。
「仕事仲間は、恋愛対象外だな」
(池野お前は、空気読め!ややこしくなるじゃん!)
初めての告白が、べろべろに酔った後輩!
(私の夢の想定をどうしてくれる!)
そんな考えも浮かぶなか、桂木は池野に掴みかかっている。
(え〜!ここマンションだから騒がないで!)
とりあえず、2人の間に割って入ったけれど、男性の力は強い!
見かねて、男性スタッフが引き剥がしてくれたのだが、引き剥がされた桂木は、私にもたれ掛かり抱きしめてきた。
(おいおい!酒癖悪すぎだぞ!)
と思ったとき、唇に柔らかいものが触れた!
(え〜〜!初めてのキスは、酔った勢いの君か!)
それも、男性スタッフが引き剥がしてくれたのだが、スタッフの目前でなんて事してくれたんだ!

君ってやつは…

翌日、部所では昨夜の桂木の振る舞いが広がっていた。
(当たり前だよ〜!あんな事女子社員にすれば、ハプニングで終わらせたくないはなしである。)

昼になって、桂木が謝りに来た。
「申し訳ありませんでした。」
「何も覚えてないよね!」
「はぁ」
「別に気にしてないから、仕事に戻るように。」
至って、事務的に言った。
「あの…今日の昼一緒にいいですか?」
「仕事の事?」
「あっ!はい!」
「解った。30分くらいなら時間とるけど、それでも良ければ。」
「ありがとうございます。」

と言う訳で、桂木と昼食を共にする事になった。
「昨夜の事なんですけど…」
「もう、終わった事だわ。」
「僕の中では、全然終わってないんです。
本当に先輩の事が、とても気になっていて…」
「僕は、あまり告白とかしたこと無くて、あんなかたちになってしまったんですが…お付き合いしてく頂けませんか?」
(え〜〜!なんて言った?)
思わず、すすっていたラーメンのスープを吹き出しそうになったけれど、飲み込んだものだから噎せて咳き込んでしまった。
私の背中を、トントンと叩きながら桂木は続ける。
「先輩が仕事してる顔好きなんです。キリッとしてて…仕事に対する姿勢も尊敬してます。」
「僕じゃだめですか?」
(頭の痛い案件だわ!どうする私!)
「きみの気持ちは、ありがたいけど…君なら同じくらいの年齢で可愛い系の女子がほっとかないでしょ!」
「それなら、学生時代に色々嫌な思い出沢山ありますよ」
「……」
「お試しでいいです。昨夜のような事はしません!だから、僕にチャンスを下さい。」
「昨夜の事覚えているじゃない!」
あんまりにも一生懸命の姿がおかしくて、笑ってしまった。
「本当に、お試しだからね。それから会社には知られたくないわ。それでいいなら。」

LINE

お酒の力を借りずに告白されてから、連絡手段として、LINEIDの交換をしてから、桂木は会社では、私用の話をしなくなり、噂もいつの間にか消え去った。
会う時は、ドライブで出来るだけ遠くに出かける。
私がお弁当を作る時もあれば、コンビニでおにぎりを買って、車の中で食べる時もあった。
誰の目にもつかないように気をつけながら、楽しい時間になるように、桂木は出来るだけ気を使ってくれた。

そんな時間を、重ねるうちに桂木の気配りに惹かれて行く自分がいたのだ。
(お試し!お試し!)心の中で繰り返すけれど、(桂木の声が聞きたい!傍に居たい!)そんな気持ちが芽生えて行く。
(私は、彼のカウンセラーに過ぎないのだから!)自分に言い聞かせるが、おさまらない気持ちをどうしていいかわからなくなって行った。

女子会

久しぶりに、学生時代の親友3人であう事になった。
そう……
私から連絡して、友達の意見も聞いてみたいと思ったのだ。
「こんな気持ちって何?」
友達は、2人して笑い転げる。
「あのさ〜、今どき美桜見たいな三十路のオバチャンも珍しいよ!」
流石長年の親友!もうちょっと、言葉を選ぶかオブラートに包んでもらいたい。
「なんで笑うのさ!」
「だって、もう美桜も桂木君に惹かれてるじゃん!」
「両思いって事だよ〜!」
(え〜!なんて事!距離は保って来たはずなのに。)
「そんなもんなの?」
「皆んな、こんな気持ちになるもん?」
「なるなる。恋愛あるあるだよ〜!」
「美桜、彼の事大事にしなよ!」
(えっ!大事に?私が?どうしよう!)
友達に、相談したものの余計混乱して来る!
私は、結婚願望を持たずに来てしまった。
彼女達のように、女子力の欠片もなく、美系でも可愛い系でも無い。なので、お付き合いや結婚なんて無縁だと思って来たのだ。

自分の中で、大きくなっていく桂木への想いを、LINEでは伝え辛いと思って、電話にした。
「もしもし、先輩何かありました?」
「あの〜、え〜と、桂木君はさ、バツゲームとかで、私と居るの?」
(あっ!違う!)
「あんなに、べろべろだったんですよ。最初の告白!バツゲームなんかで出来ませんよ!」
「そう……」
「それで何かありましたか?」
「うん!最近なんか変なんだよ。」
「何がですか?」
「私が変なんだよ…」
「今日は、土曜日で仕事が無いからですかね。」
「そうじゃなくて、え〜と、君の声が聞きたくなったり、次は何時になるかな?ってスケジュール見たりさ〜。」
「えっ!本当ですか?」
「うん!変だからさ〜どうしたらいいかわからないんだよ。」
「今から、行ってもいいですか?」
「今って、夜中じゃん!」
「僕も逢いたいからですよ…ダメですか?」
「いや〜なんて言ったら良いか分からないよ。」
「じゃあ、今から行きますね」
桂木の電話がプツリと切れた。
(どうすんだよ!この状況!)

告白

電話が切れてどれくらいの時間が過ぎただろう。
桂木から、LINEがきた。
「マンションの下に来ました。降りて来れそうですか?」
「うん」返信して、マンションの下に降りた。
「佐々木先輩、正式にお付き合いして下さい。」
「あっ!はい。」
「あの〜、ごめんね…私恋愛とか、お付き合いとか、よく分からなくて君の事傷つけてきた事もあるんじゃないかな?」
「終わった事でしょ!先輩が最初に言ってくれたんですよ。」
「なんかね、こんな気持ちだったんだと思うと、申し訳なくてね。」
「じゃあ、お互い様です。今までは、試用期間でしたけど、これからは本採用でお願いします。」
私は、夜中に車を飛ばして駆けつけてくれた桂木にこくりと頷く事しか出来なかった。

[完]

私の結婚感

私の結婚感

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-03-11

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  1. 私は私
  2. 自立
  3. 家呑み
  4. 君ってやつは…
  5. LINE
  6. 女子会
  7. 告白