何気ないシーン
普通のシーンが心に残ることってある。
寒い日の朝、セーラー服の裾に両手をいれ、おなかのところでそれを暖めながら、
いつも通りの笑顔で「おはよう!」と挨拶してくれた人気者だった同級生
喫茶店のカウンターでコーヒーを飲みながら「もう分かれたほうがいいんじゃない」と言ってくれたあの子
「私にどうしろというの」と怒った年上の女性
「赤ちゃんはね、こうして抱くのよ」とモンチッチを優しく抱いた看護師の卵
デッキに佇みストレートヘアーを風になびかせていた見知らぬ彼女
真っ赤なルージュがとてもお似合いで車の横に立っていた色白のあの子
ホームで何もいわず見送ってくれた年下の女の子
「お願い、最後にキスをして」そういって誰も居ないビルの暗い通路で涙流しながら僕を離さなかった彼女
手が届きそうな距離に居て、存在を知られない別れた彼女
年を重ね、もっといいシーンがあればいいのにそんなシーンは全く無い。
思い出は若いときに出来るものなのだろうかと今になって思う。
何気ないシーン