隠蔽の輪廻

これは私がブログで書いていたもので「結果」(かくなわ)シリーズの予定です


はじめてのジャンルで初心者ですがどうか最後までお付き合いください

始まりは終礼で

いつもの終礼、だらけている俺の耳に先生の声が聞こえる。

「みんなも知ってると思うが今日校内で不審火が起きた、何か知っている者は先生にいいに来るように」

(不審火ねぇ・・・物騒だ・・)


「ありがとーしたー」
だらしない挨拶を済まし、教室を出た。

「そういや宕って掬さんと幼馴染なんだっけ?」

話を振ったのは友人の 有楽堅 穂蛆 (うらかた ほうじ)だ。



「ん?そうだけど?どうかしたのか?」
「いやね、掬さんに不審火の事について聞かれてさぁ」

その言葉を聞いた瞬間、俺は穂蛆に詰め寄って声を少し荒げて聞いていた。

「それ、本当か?」
穂蛆は顔を引きつらせながら答えた。
「え・・本当だよ・・」

「そうか・・・」
「どうしたんだい?いきなり怖かったよ」
「すまん、ちょっといろいろあってな」

「いろいろ?まあいいや、近くに美味しいたこ焼き屋ができたんだけど」
「すまん、ちょっと用事ができた」

俺は少し早足で歩き出した。

「また明日」
「ああ、すまんな」

穂蛆はカンがいいからこういう時はあまり追求してこない。


俺は早足で自室に戻ってすぐ、携帯を取り出したて電話をかけた、液晶には 掬 優羽(ゆう)と写っている。

「はーい、どうしたの?宕?」
「優羽、お前何を聞きまわってんだ?」

「情報が早いね、ほら聞かなかった?不審火事件」
「HRに聞いた」
「それを調べてんの」

「・・・・やめとけ、危ないぞ」

「やだよ、私こういうの好きなの知ってるでしょ?」

「ああ・・・」

そう、俺の幼馴染、掬 優羽 (むすび ゆう)は小説、特に推理小説が大好きだ。

「だったらわかるよね、やめないから、そだ、宕も一緒にどう?」

「絶対やらん」

「そう、じゃあいいわ、切るね」

ツーツー

一方的に切られた・・・・。

「・・・・しょうがない・・やってみるか・・」

_________________________________

翌日、俺は何人かの友人に自然に不審火事件の事を聞いていた。

「ああ、確か図書部が燃やされたらしいよ」
「そうなんだ」

そうやって何気ない話のなかから少しずつ情報を集めていった。

「起立、礼、ありがとうございました」

挨拶終了と同時に教室を出た、早足で向かった先は図書部の部室だ。

図書部の部室は図書室の一角だ、部員じゃない俺でも入ることはできる。


図書室には確かに燃えた跡があった、壁が焦げていた。

「何をしようとしてるんだい?阿山 宕君 (あやま すぎる)」

振り向くとそこには穂蛆がいた。

「何故フルネームで呼ぶ」
「なんかびっくりしなかった?」
「声でわかった」
「なんだ・・・で、何しようとしてるの?」

一瞬考えて答える。

「普通に本を借りに来ただけだ」
「嘘だね」
「なんでそう思う」

「本を借りに来てるのになんでそんなとこ見てるの?」
「たまたま目についただけだ」
「じゃあなんでいろんな人に不審火の事を聞いていたんだい?」

「・・・お前分かって言ってるだろ」
「バレた?あの不審火事件を解決しようとしてるんでしょ」

「その通りだ、絶対誰にも特に優羽・・・掬には言うな」
「んーなんでか気になるけど・・・いいよ、でも条件がある」


「推理なんて楽しそうだね、僕も混ぜてよ」

穂蛆は意味深な笑みを浮かべて言った。

原因と結果

朝、俺が登校していると穂蛆が追いかけて来た。

「やあ、宕、情報集めといたよ」

「仕事が早いな」

「楽しいんだ、こういうの」

穂蛆が渡してきた紙に目を通す。


・不審火が起きたのは 新聞部、運営委員、第二書庫室。
  
・いずれも学校終了から翌日までに起きている。

・すべて大きな被害は出ておらず、燃えたあとだけが残っている事が多い。


「よくこんだけ集めれたな」

「聞いていったら簡単だったよ、あ、ちゃんとバレないようにしてるよ」
「助かる」

その後いろいろと討論しながら登校していると誰かに後ろからおされた。

「おはよう」
「ああ、お前か」
「お前はひどいでしょ」

そう言って優羽は横を向いた、穂蛆と目があったようだ。

「どうも、有楽堅 穂蛆です」
「ああ、この前はありがとうございます、掬 優羽です、宕の友達?」

「そうだ、てかお前なんか元気だな、なんか生き生きしてる」

「そう?・・・じゃなくて今日日直だった、先行くね」

そう言って優羽は走っていった。


「掬さんは一緒に推理しないのかい」
「わかってんだろ」
「宕がいきなり始めた理由でしょ?掬さんが」
「・・・・そうだよ」
「なんでかは・・・聞かないほうがいいみたいだね」

「そうしてくれると助かる」


それから何日か俺達の推理は続いた。

俺達はいつも行っている喫茶店で推理をしていた。


「とりあえずわかったことをまとめてみたよ」
「さすがだな」

穂蛆が得意げな顔をしながら紙を渡してきたきた。


・不審火が起きたのは 新聞部、運営委員、第二書庫室。
  
・いずれも学校終了から翌日までに起きている。

・すべて大きな被害は出ておらず、燃えたあとだけが残っている事が多い。

・すべての教室の燃えている場所に一致は無い

「・・・あまり進んでないけどね、あとは部員達に聞いて回るかな」

「ああ、この一番目の項目に 図書部と生徒会室も加えといてくれ」

「そこも燃やされてたんだ・・わかったよ・・じゃあ明日の放課後、聞き込み開始だね」
「わかった・・・くれぐれも」
「掬さんにバレないように、でしょ」
「頼む」



__________________________________

「僕は新聞部に聞いてくるから、図書部と書庫は任せたよ」

「おう、よろしくな」

資料と匂い

「ああ、いいよ、ついておいで」

そう言ってくれたのは図書部の副部長、二年生の心礎 庄(しんそ しょう)だった。

「ありがとうございます」

心礎さんについて図書室の椅子に座る。


「えーと、何が知りたい?」

俺はメモを取り出して言った。

「まずは不審火が起きた時間と燃やされた物を教えてください」
心礎さんは少し考える素振りをして言った。

「時間は放課後、それしかわからないね、部員全員で資料の整理に行ってる時にやられた、いつの間にか図書室の壁と机の上に置かれている物が焦げていたね」

「机の上には何がありましたか?」

「うん・・・確か生徒会から渡された資料と・・・みんなのファイルぐらいだね」

「・・・・ありがとうございます、失礼ですが誰かに恨まれるような事があったりは・・・」

「無いと思うけど・・・・こういうのは本人はほとんど気づいていないからね、他の人に聞いたほうがいいと思うよ」

「そうですか・・最後に第二書庫も見てみたいのですが・・」

「いいよ、僕もついていくよ」



第二書庫は図書室のすぐ隣にあった。

「どうぞ、ここは僕たちが帰ったあとに燃やされたみたいだね、こっちも壁が燃えていて、飛び火したのかいくつかの物が燃えているね」

「そうですね・・」

「なにか気づかないかい?図書室とは犯人の心情が違うようだけど」

俺は部屋を見渡す、焦げた壁と本や資料、そのすべてに異様なシミがついていた。

「犯人は慌てて何かをかけた・・・?」

「そう、慌ててたんだろうね・・とそろそろ僕は部活に行くよ、鍵は渡しておくから戸締りをして職員室に返しといてね」

「はい、ありがとうございます」


俺は少しの間部屋に残って考えていた。

自由一筋

「やあ、宕、聞き込みしてきたよ」

「ああ、こっちもOKだ」


穂蛆が駆け寄ってきた。

「じゃあそこの喫茶店で発表といこうか」


俺はカフェオレ、穂蛆はコーヒーを頼んだ。

「じゃあ僕から発表するね」

穂蛆は紙を渡してきた。

「よくこんなの作れたな」

穂蛆はウインクしながら

「仕事が早いでしょ」
「自分でいうな、てかなんでウインクだ」

「いいじゃないか、気分だよ、まあ読んでみて」

俺は紙に目を通した


新聞部聞き込み結果

・時間は水曜日午後4時から翌日午前6時の間

・燃やされたのは部屋の一部と近くにあった資料

・犯人の行動や性格は不明


「・・・・どう?」

「ほんとよくまとめたな、すごい完結だ」

「そうでしょ、じゃあ次は宕ね」

「ああ、資料は無いがな・・」

俺はメモを取り出して一回咳払い

「えーと、図書室の方は3時あたり、書庫は部員が帰った後だ、いずれも燃やされた物は部屋とその近くにあったもの、
  しかし書庫の方は飛び火して予測外の燃え方をしたみたいで犯人は慌てて消火をした形跡があった」

「・・・・消火方法はわかるかい?」

「最終的には踏んで消したようだ、すべて床に押し付けられた跡があった、しかし濡れていたからな、液体で消そうとしたのだろう」

「液体?水じゃなくて?」

穂蛆は容赦なく質問をしてくる。

「ああ、なんの匂いかはわからないが匂いがした」

「・・・・特徴的な匂いかい?」

「なんとなく花系の匂いだと思う、なんか嗅いだことあんだよなぁ・・」

「液体の匂いじゃなくて服とかの匂いかもよ」

「そんな可能性を言われるときりがないぞ」

「そうだね、色々と気になってね、こういうのは楽しいや」

「お前も優羽と同じか・・」

「ちょっと違うと思うけどね、掬さんは猫まっしぐら、推理一筋だ、
  僕は楽しいことならなんでもいい、自由人さ」

「・・・・まあそうか」

「そうだよ、っと、じゃあ帰るね、今日は用事があるんだ」

「ああ・・・英語の宿題終わってないな?」

「そのとおり、じゃあね」
穂蛆は手を振って喫茶店を出て行った

しばらくして、何気なくもらった紙を裏返して気づいた。

「やられた・・・・・穂蛆の野郎・・」

紙の裏には一言
{口止め料}


俺の目の前には二人分の伝票があった。

せいか

翌日、推理開始から約一週間がたった。

 通学路で穂蛆を見かけた、俺は足音を消しながら小走りで追いついた。

「昨日はよくも、こんにゃろ!!」
俺は穂蛆にヘッドロックを決めた。

「ぎゃ・・宕やめろってやめろ!!口止め料だってんだろ」
 穂蛆はもがき始めた。

「それなら最初に言えってんだ、ほんとギリギリで焦ったんだからな!!」

俺はより力を入れた。

「いててててギブギブ無理無理すまん代わりに情報あるからっていたい!!」

俺は力を緩めた。

「情報?なんかあったか」
穂蛆は得意げな顔をして紙を渡してきた。

「生徒会と運営委員の聞き込み証言だよ」

「おお、どうやって取ったんだよ、すげぇな」

穂蛆はさらに得意げな顔で

「僕のコネだよ」

俺は顔をしかめて言った。
「お前にどんなコネがあるってんだ」

「僕の姉の存在をお忘れかい?」
「ああ、そうだったな」

有楽堅清花(うらかた せいか) 穂蛆の姉で現在大学生、そして元生徒会長だ。

「じゃあお前の成果じゃねえじゃねえか」

「まあね、成果は姉ちゃんの担当さ、僕はあくまで補助だ、宕は・・」

穂蛆が何かを言いかけたとき、横を同級生が走っていった。
「宕、穂蛆、遅れるぞ!!」
「時間ギリギリだぞー」

俺と穂蛆は同時に腕時計を見た、遅刻ギリギリだった。

「急ぐよ宕!」
「急ぐぞ穂蛆!」
二人同時に声を上げて走り出した。

昼休み俺は渡された紙を読んでみた。


生徒会と運営委員の聞き込みでわかったこと。

・共に燃やされたのは部屋とその周りのもの

・生徒会では生徒新聞と保健委員のプリント

 運営委員では壁掲示用の資料数枚が燃えていた。

・金曜日の放課後から月曜の朝までに行われた。
  (生徒会のほうは会議があったため土曜の昼まで)

・新聞やその他紙類にはカッターで切りつけたような跡があった。


「なるほどね・・」

「なにかわかったかい?」
穂蛆が弁当を持ってやってくる。

「なにか引っかかる・・・なにか共通点があるはずだ・・・」

考える俺の横で穂蛆が満足そうな顔をしている。

「・・・・なんだよ」

「いや、やっと事件の真相が分かるとなるとね、ここ最近ずっとモヤモヤしてたんだ」

「・・・まだわかったわけじゃない」

「うん、だから僕も考えてるよ・・・う、せ、と、し、だ・・としだうせ?」

「・・・・誰だよ」
「いるかもよ?」
「色々と飛ばすな、順序と経過を大切にしよう」
そう言うと穂蛆はいたずらな笑みを浮かべ

「それは宕の推理法、僕は僕の推理法も試させてもらうよ」

そういって穂蛆は紙をみながらブツブツなにかを呟いていた。

「・・・・・まずは共通点かな・・」


運営委員 生徒会 図書部 新聞部 第二書庫 

 壁掲示用資料 生徒新聞 部員のファイル 生徒会の資料・・・・・

俺は顔を上げていった。


「新聞・・・新聞だ」

生徒会での絞り込み

穂蛆が不思議そうな顔で聞いてくる。
「新聞?新聞部の生徒新聞かい?」

「ああ、そうだ、新聞部と生徒会と運営委員には共通するはずだ、あとは図書部と書庫室だが・・」

穂蛆が元気な声で
「それなら大丈夫だよ、図書部に貸出用として、書庫室に予備として新聞を置いておくはずだよ」

穂蛆は勢い置く立ち上がって

「じゃあ行こう!裏付けだ!」
俺は首を横に振った。

「どうして?もう少しでわかるんだよ?」
俺は時計を指差して言った。

「昼休み終了だ」
チャイムが鳴った。

五時間目、数学だ。

先生が問題を黒板に書いた。

「これが解けるものはいるか」

もちろん誰も手を上げない。

「そうか・・・じゃあ穂蛆、解いてみろ」

「・・・・・」
穂蛆はまるで聞いていないようだ、俺は必死に穂蛆にジェスチャーを送る。

(穂蛆、気づけ、当てられてるぞー)
俺のサインに気づいたのか、自分で気づいたのかはわからないが穂蛆はさっと立ち上がった。

穂蛆はひとつの事にすごい集中することができる。

「どうした穂蛆、こんなケアレスミスをするなんて」

集中しすぎるとそっちだけに行っちゃうこともあるが・・・

「僕だってたまには間違えますよ」
そう言って先生さえもごまかしてしまう、それが穂蛆だ。


放課後俺は穂蛆と共に廊下を歩いていた。

「お前数学の時間」
「ああ、ちょっと考え事をね」
「事件のことか?」
「ああ・・・まあ、そんな感じだね」
穂蛆は意味ありげにこっちをチラッと見ながらそう言った。

「なんだよ」

「なーんにも、さあ入ろうか」


そういって穂蛆は何気なしに生徒会室に入っていった。

「どもー清花の弟でーす」

「ああ、清花さんの」

そういって生徒会長はこっちに歩いてきた。

「で、なんだっけ?」

「はい、いくつか質問がありまして」
穂蛆が紙を取り出す。

「どうぞ、とりあえず座ろうか」

「どうも、他の生徒会の皆さんはいらっしゃらないんですね」

「ああ、今日は委員会別の会議があってね、委員長はすべての会議が終わってからになるからね」

俺は小声で
「生徒会ってのは全員なんかの委員会に入ってんのか?」
穂蛆も小声で
「今年だけだよ、姉ちゃんもびっくりしてたよ、今年はやる気に満ち溢れてるねぇ、ってね」

今年はやる気・・・・か、前年度まではそんなにやる気がなかったのだろうか。

そう思っている俺の心に気づいてか穂蛆が補足する。

「少なくとも姉ちゃんは楽しむ事を一番に考えていたようだよ」

そう言っているあいだに会長がティーカップを持ってきた、ここにはこんなものまであるのか


「紅茶だが大丈夫だったかな?」

「あ、ありがとうございますー」
穂蛆が笑顔で受け取る。

「君も大丈夫かい?」
生徒会長がこっちにティーカップを向ける
「あ、どうも」

穂蛆が小声で
「こりゃモテモテなわけだ」
とふざけた笑顔で言った。

「じゃあ、質問を聞こうか」

「はい・・・・・・」
穂蛆は黙っていた
「・・・・・ほら宕、なんで黙ってんの?」

「・・・・・・へ?」
びっくりして穂蛆の方を見る。

「何言ってんの、考えたのは宕じゃん」

そういえばそうだ、穂蛆は俺の考えの結果を知ってるだけだ、経過等は知らない。

俺は一回咳払いをした


「最近起きている放火事件のことなのですが、今回被害にあった教室は知っていますか?」

「ああ、五つだったかな」

「それなら話は早いです、その五つの場所に今月の生徒新聞は配布されていましたか」

会長は少し考えて
「ああ、すべて新聞が行き渡っているはずだよ、それが共通点なのかい?」

会長は穂蛆の方を見る、あらかじめなんとなく話はしていたみたいだ。

「はい、それでほかにも共通点があれば教えて欲しいのですが」

「・・・いや、新聞に関する資料しかないと思うよ」

穂蛆が俺に目配せをした、俺の番のようだ

「じゃあこの新聞を放火事件前に見れた人物をできるだけ上げてください」


その後会長にもらったリストからアリバイがある者を消していった。



結果残ったのは一人、加咲 豪介(かさき ごうすけ)だった

心配無し・任された

「やったね宕、ほとんど完璧だ、他の人はアリバイの証人もいる」

「ああ、ところでこいつは隣のクラスの奴だったな」

「そうだよ、音楽の時間に一緒の班じゃないか」

「そうだな、じゃあ音楽の時間に少しずつ暴いていく」

「それは任せたよ、宕」

「なにも心配無し、ノープロ・・・・・」

そこで俺の言葉は途切れた、穂蛆が顔を覗かせてくる

「どうしたの?宕」

「いや・・・・噛んだ」
穂蛆は大笑いをしながら

「じゃあ僕は、はは、買い物を頼まれてるから行くね、ははは」

穂蛆が行ったあと一人で呟いた

「なにも心配無し、ノープロブレム・・・・・か」


数日後

「今日だよ」
「わかってる、決戦の3時間目、なんてな」

音楽の時間、運良くビデオ鑑賞だった、椅子は用意されてなく、自由な場所に行けた。

俺が加咲の近くに座ると穂蛆も来た

「僕も参加できそうだ、あくまでサポートだけどね・・・・と」


穂蛆は小さな声、周りにだけ鮮明に聞き取れるような絶妙な声でしゃべりだした。

「宕」
俺もやってみるがなかなか難しい声量だった

「なんだ」
「あの放火事件の共通点が見つかったらしいよ」

そうか、その方法か

「そうなのか、おしえてくれよ」
そのとき近くにいた何人かがよってくる、同じクラスのやつもいれば違うやつもいた。

「お、あのときの共通点?俺も聞かせてくれ」

よし、乗ってきた、穂蛆も小さくガッツポーズをした。

 俺は横目で加咲の方を見た、こちらをチラチラと見ている、どうするか・・・・
  穂蛆が俺を見つめてくる、そして目を横に向けた、やめとけってことだろう、俺は話をすすめることにした。

「で、新聞だって?」

穂蛆は笑顔で

「そうなんだよ、僕も噂で聞いただけなんだけどね・・・全部の場所にまだ生徒に未公開の来月分の生徒新聞があってね」

「ほうほう」

「その新聞が全部の場所で燃やされていたんだ」

一人が驚きの声を上げる

「燃やしたかったのは部屋じゃ無かったって事か」

「そういうこと」

「じゃあもう犯人バレてんじゃねぇか?」

穂蛆は首を横に振る

「さあ、そこは聞いてないなぁ・・・そだ、ねえねえ」

穂蛆は近くの生徒の肩を叩く

「ん?どうしたの」

「あのさ、君って図書部だったよね、どうなの?犯人って見つかってるの?」
その生徒は首を横に振った

「わかんない、あまり興味がなかったから」
「そうなんだ、ありがとね・・・・じゃあ」

穂蛆はお得意のイタズラな笑みを浮かべて加咲の肩を叩く

「ねえ、君も図書部だったよね」
加咲はびっくりした様子で振り向いた

「あ・・・ああ、見つかってないらしいよ」
俺は声を少し強くして言った

「ほんとうか?もしかしたらもうバレてんじゃねぇか?」
加咲は俺より強い声で言った

「バレてないってば・・・・・」
そう言って画面に顔を向けた後、一人呟いた言葉を聞き逃さなかった

「バレてるはずが・・・無い」

それは自分に向けて言ったのだろう、単なる自己暗示だったのだろう

しかし俺はその言葉で確信した


犯人はこいつ、加咲 豪介なのだと



音楽の時間が終わってから俺と穂蛆は追求した

「単刀直入に言う、お前が犯人か」

「・・・・」
加咲はしばらく黙った後口を開いた

「そう・・・僕なんだ・・・燃やしたのは・・・僕」

「そうか・・・」

そう言って俺は立ち去った

「え・・・」
加咲がなにか言いたそうにしている


穂蛆が言った

「いいつけたりはしないよ、匿名で噂だけ流させてもらうけどね」

ただ一言、そういって俺達は教室に戻った


「じゃあ次は任せたぞ穂蛆」

「任されました」



次の日、噂は広まっていた、放火事件の犯人は見つかった、でも本人のことを考えて匿名なのだという噂だ

「どうだい僕の実力」
穂蛆が自慢げに言った

「さすがだな、完璧だ」

「これで終わったね」
俺は首を横に振った

「いや、終わってない」

「終わったじゃん」

「いや、加咲、あいつが愉快犯とは思えない、それに、あの事件の、加咲の真意を確かめなければならない」

俺は力強く言った

隠蔽の輪廻

しばらくして穂蛆が口を開く

「もう大体の予想はついてるんだね」

「ああ、なんでわかったんだ?」
「宕がそんなに力がこもった言い方をするんだ、自信があるようにしか聞こえない」

「そうか」
「そうだよ、最後まで付き合うよ、どこまでわかってるの?」

「ああ、とりあえず加咲は新聞が生徒にわたって欲しくなかったんだろう」

「なんでそう思うの?」

「まず燃やされていたのはすべて原本、手書きのものだった、あれさえ無くせば新聞はコピーできない」

「コピーしていた原稿があるかもしれないよ、それにデータだって」

「いや、図書部に聞いてきた、生徒に配ってから間違いの訂正をしてからデータに保存する、それにコピーがあったって書き直すだろう」

「書きなおす?それをさらにコピーじゃなくて?」

「ああ、この学校のコピー機はどれも古い、一回コピーしたものをさらにコピーすると見えない文字がでてくるはずだ」

「でもそれぐらいいいんじゃないか?」

「俺もそう思う、でも新聞部の部長の性格は知ってるだろう?」

「几帳面・・・・だねぇ」

新聞部の部長は超が付くほど神経質で几帳面らしい、あの部長になってから新聞にミスはほとんどないらしい。

「そんな部長がそれを許すと思うか?」

穂蛆は首を横に振る

「無理だね、完全に」

「まあ俺がそれ以外に新聞を燃やす理由が思いつかないだけだけどな」

穂蛆はメモ帳を取り出した

「そうだろうね、動機が無い」

メモ帳になにか書き写しながら穂蛆は言葉を続ける

「・・・あとはどの記事が嫌だったかだね」

「ああ、だから穂蛆、生徒会室に行くぞ」

「え?どうしてだい?新聞があるっていうのかい?」

「加咲は一つ見逃していたんだ、原本を」



俺と穂蛆は生徒会長から原本のコピーを受け取った

「ありがとうございます」

「いや、かまわないよ」


「で、なんで会長が持っていたんだい?」

「ああ、これは新聞部の顧問の先生の原本をコピーしたもの」

穂蛆は驚きながら

「ああ・・・・顧問ね・・そりゃもやせないね・・・いや、気づいてなかったのかな」

「そうだろうな、じゃあ読むか」

俺は新聞に目を通した


・必見!これが学校一の勉強法だ!!

・今月の読書速報 「ライトノベル特集」

・学校の不思議 「切り裂き事件」

・質問Q&A!!

・部長に聞きました 特別編 「運動系VS文化系」

・先生インタビュー 「こわもて顔のジェントルマン、和雄先生」

・学校行事ニュース 「学園祭」

・連続生徒小説  不思議少女ユリ 第8話 「学校七不思議-伝説の八つ目」

・募集のコーナー


大きめの紙に所狭しと様々な記事が書かれていた、今月は特別に多い

穂蛆も同じことを考えていたようだ

「多いね・・」

「そうだな・・・・でもなんとなくわかった」

「え?本当かい?探偵みたいだね」

「ああ、この記事だ」

俺が指したのは 学校の不思議 「切り裂き事件」 だった。





「では、よろしくお願いします」

俺達は新聞部の部屋を出た。

「あースッキリした!」

穂蛆が伸びをしながら言った

「同感だ、やっと終わった」



結果だけを言うと新聞から切り裂き事件の記事は無くなった。



切り裂き事件、昔ある生徒が何らかの理由で放課後、資料をバラバラに切り裂いた事件だ、
 そんな一つの事件、その犯人の名は伏せられていたが他の資料にのっていた。

犯人は加咲 桐 そう、加咲 豪介の母親だ、加咲は母が起こした事件がぶり返されるのが嫌だったのだろう、
 だから新聞を燃やして消そうとした。

「ところで宕、なんであの事件がキーワードってわかったの?」

「・・・・・加咲はちゃんとヒントをくれていたぞ?」

「ヒント?・・・・・あったかい?」

「お前がまとめてきたんだぞ、新聞やその他紙類には切り裂いた跡があった、てな」

「ああ」

「その後にわざわざ燃やしたんだ、ずっと気になっててな」

「さすがだね、でも宕、一ついいかい?」

「どうした?」

「結局あの匂いの正体はわかったのかい? 書庫室の匂い」

俺はドキっとした、わざと避けていたのに・・・

「言わなきゃダメか?」
「僕は気になるね・・・・面白そうだ」

俺はため息をついて言った

「・・・・・香水だ」

「香水?誰の?」

「・・・・・だ」



その名前を言った瞬間穂蛆はまたイタズラな笑みを浮かべ、そのまま帰っていった。



穂蛆と別れ一人歩いていると頭に衝撃が来た。こんなことをするのは一人だけだ
 
俺がこの事件に関わることとなった原因 掬 優羽だ

「なにすんだよ」

「私は今不機嫌です」

「・・・・そうかい」

「聞いてよー私が調べてたのにいつの間にか解決されててさー」

「はいはい」

「聞いてないでしょ」

「はいはい」

そんなやりとりをしながら家路についた


  隣から甘い香水の匂いがした。



                                                                               終

隠蔽の輪廻

このほかにも様々な物を書いていますのでよろしくお願いします


ブログ
http://blogs.yahoo.co.jp/ugomemono_ri_hubo_n

隠蔽の輪廻

学園推理物です。

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • サスペンス
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-12-14

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. 始まりは終礼で
  2. 原因と結果
  3. 資料と匂い
  4. 自由一筋
  5. せいか
  6. 生徒会での絞り込み
  7. 心配無し・任された
  8. 隠蔽の輪廻