冷月

春待ちの季節、底冷えの夜、寝床はあたたかくて、さかさまの夢で凍えてしまう。ざわつく刃の切先が、肋のなかにある、から
吐きたいのか呑みたいのかわからず息が違えていく。
冷たさで機能の停止するようなからだに、体温で融解するようないのちが、せめぎあって隙間がないから
空を睨んで掌さえかくしていた。
郵便受けから差し入れられた手紙に、
わずかな日の匂い、
居ないふりしてるだれかの手を握るかれの肉体の、消費期限ぎれを待っている、ような、馬鹿な、月の
川面を見てた。

冷月

冷月

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-03-05

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