三月のやさしさ

 火曜日にみた、白昼夢のつづきがフィルム映画のように。あたまのなかで再生される、深夜の、ひとりぼっちの海で知った、星の内臓。ぼくたちの天上ではじける。白。てをのばしたさきには、月。煩雑な音色が、街を侵食していく。腐ったら、溶けるよ。循環機能、ちゃんと、はたらいている、の ? みんながみつめる、街頭テレビのなかで、春のおとずれを待っているひとたち。喫茶店のナポリタンを好んでいた、夏のしろくまのことは、冬のしろくまがあらわれても、かきけされることはなかった。体温も。からだの重さも。毛の手触りも。冬のしろくまが去って、春のしろくまからの手紙が届いて、すこしだけ遅れますと、しろくまにしてはきれいな字で綴られていて、おだやかなきもちで、いいよ、と思えた。
(星はまだ、正常値?)

三月のやさしさ

三月のやさしさ

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-03-05

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