旅情の起点
前作 「旅情の果て」 slib.net/111070
聞き手視点です。
旅情の起点
(口の動きが止まり、窓の外を見ている。)
(この時、あの人の世界に私はいないのだ。)
(また、旅に出ている。砂時計の砂が落ちるまで。)
(どこかの国で、何かを見つけ、はしゃいでいる。)
(「帰ってきた」この人は思慮深く、私を認識して、自身のことも「理解」した上で「語る」。)
(「理解」と「常識」の合間に佇むこの人は、穏やかだけれど寂しそうである。)
(私は知っている。「理解」「常識」に常に張り付くのは、この人の「計画」と「地図」であるということ。)
(さみしそうなこの人の手の中に使い古された「時刻表」が収まっている。私はこの人の話を聞いても、この人への「同情」は「飲まれること」と知っている。……………。だから私はいつも同じ笑顔でこの人に会っている。)
旅情の起点