回想

 生きているのが、やさしいばかりではない、星のうえで、みる、夢の色は。こわれていく。海沿いの水族館で、静かにそっと、およいでいる。さかなたち。途方もない、愛情に飢えたものたちが狂う、夜の月は、白くて。ぼくはやおら、となりでテレビを観ているしろくまの、手に触れた。(ものたりないな)
 雨が降り、街は煙り、ユートピアというなまえのラブホテルがまるで、ゴーストハウスみたいで、なんだかこわいなぁと思ったことを、思い出している。テレビのむこうの、かなしいできごとに、しろくまは胸を痛めている。淹れたばかりのコーヒーが、あっというまに、つめたくなっていく。好きなひとたちがみんな、きょうもへいわで、それぞれのしあわせにひたっていてほしいと思う。冬めいた柄の、ブランケットにくるまりながら。

回想

回想

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-03-01

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