ザンゲリオン

これも足の小指が裂けた時に思いつきました。

最近、TwitterなどのSNSの界隈で、
「ザンゲリオンっているらしいぞ」
というのが話題になっている。らしいじゃない。私自身も見たから。うん。これに関しては。実際見た。見た。そういうつぶやき。

だからっていうか、まあ、だからその時、あ、これは本当なんだな。って思った。思えた。入ってきた。私の中に。すっ。と。

だってさ、私の全くと言っていいほど、デーハーな活動してないTwitterでもそれが、それの事を誰かが、誰かしらが、それの事を言ってて、言ってたから。もちろん誰かのつぶやきを誰かがいいねとかリツイートしたのかもしれないよ。でも、それでも、それを見たから私は。もちろんトレンドには入ってないし、まだ世間的には全く知名度は無いのかもしれないけど。でも、見たから。私は。それ、そのザンゲリオンについてのつぶやき。
「ザンゲリオンって言うのがいるんだって」

ザンゲリオン。正体不明。正体不明の。くねくね的な、あるいはスレンダーマン的な。もしくは、セーラ☆ムン太郎的な。マハラージャンのセーラ☆ムン太郎的な。

で、それが現れると、それを前にした人は、えっと、懺悔。懺悔するんだって。自分の心の中にあった、その隠してきた事を、今までずっと隠して来た事を。何だったら一生隠し通しておきたいことを。墓場にもっていきたかった事を。罪悪感の。

「罪悪感の無い人間なんていない」
それの、それをする理由はわからない。でも、罪悪感がない人間なんてそんなのいない。過去にこだわりがない。昔の事が覚えてない。今楽しいから。そんて人だって罪悪感は抱えている。絶対に。寧ろ、へらへらしてる人の方がもしかしたら大きい後悔、罪悪感を抱えてるかもしれない。あるいは今ない人でも、これからそれが生まれる。

お酒によって逃避する人、ゲームで逃避する人、パチンコで、ギャンブルで逃避する人。生活が、今が充実しているから過去を顧みてる暇ない人。過去に後悔が無い人。人生の選択肢を一つも間違うことなく生きてきた人。今すごく成功している人。

どんな人でも、生きていれば罪悪感と後悔を持つ。例え今持ってなくても、必ず将来それを抱える。忘れていた事が浮上してくる。一生忘れていたらよかったのに。と思う。思い出してから。でも誰も忘れられない。例え記憶障害になっても、呆けても、催眠アプリを使っても、尻の穴から人格排出しても。忘れられない。それが、最後まで残る感情だ。人間の体を人間の形に保つ最後の防波堤。

日本では、人が死んだら最後火葬場で焼かれるけど、あの時煙突から出てる煙は、それだという人もいる。

「あれは今まで抱えてきた罪悪感と、後悔なんだよ」
それがああやってようやく自然に、空気の中に帰るんだ。心残りが。わだかまりが。ようやく。

そんな懺悔、後悔を吐き出させるザンゲリオン。

それがこないだ私の所にも来た。

その、それに関してのTwitterでのつぶやきを見た一週間後だったかな。

来た。

夜ファミマに行く道すがらに。

それは出た。

最初、遠くに、遠くの電柱の所に何か、矢鱈何か、
「なんか、あそこ光ってるな。なんか矢鱈」
背の高い。

なんだあれ?

それが次の瞬間、もう私の目の前に居た。何言ったらいいんだろう。例えるなら。

例えるなら、

『光ってるエンダーマン』

その瞬間、私は声も、驚きもリアクションも何も、出なかった。出せなかった。あまりの突然の事で。車が突っ込んできた時みたいな感覚。死ぬのかどうかもわからない。でも、あ、みたいな。

それが私の頭を、両方の手で側頭部を掴んだ。掴んでいた。

「ああああああ」
次の瞬間、泣いていた。声を出していた。私。ぼろぼろと。体内の水分を全部出してるみたいな勢いで。

「じ、実家に帰省した時、い、いつもと違うグランマートに行ったんです。あ、安楽温泉の方にあるグランマート。そ、それで、か、関東圏でコジカカードを作ったんです。わ、私。わ、私が。だ、だから水班と買い物班って分業できるようになって、そ、それで、それでえ」

アメブロにも書いてない。誰にも言ってない。親にも言ってない。死ぬまで抱えていくつもりだったそれ。私は、ザンゲリオンに促されるままそれをしゃべっていました。

「あ、安楽温泉の近くのグランマートの、み、水の機械は、そ、そこの水の機械はあ、い、いつも行ってるグランマートとは違うんです。違うんです。違うんです違うんです。違うの。違う形。違う形だから。違う形だから」

違う形なんだ。違う形だから。違う形だったから。

「だからだからだからだからだからだから」

グランマート(元、タカヤナギ)には水のサービスがある。専用のボトルを買ってその機械の然るべき場所にそのボトルをセットして、そんで機械にコジカカードを差し込むと、水が出てくる。

それを実家ではもう長年使ってる。

いつも行ってるグランマートでは、水の出る口が二つあって、その間、真ん中にボトル洗い用の水の蛇口がある。その真ん中の水でちょっとまずボトルを洗って。そんで、それからメインの水、メインが汲めるようになってる。

「で、でも、そ、そこのグランマートは違うんです違うんです違うんです違うんです違うんです違ったんです違ったんです違ったんです違ったんです違ったんです」

蛇口が一つ。ボトルは機械の中に収納、電子レンジの中に物入れるみたいな感じ。そんでその戸を閉めないと水が出ない仕組みで。

「だからだからだからだからだからだから」
最初、コジカを入れた後の最初、一個目のボタンを押した時、洗い用の水が出たのがわからなかった。オレンジの光が付かないレンジの中なんかなってるみたいな感じで。それで一回ボトルをゆすいで。それから二つ目のボタンを押してメインの水の受け入れを開始いなくてはいけなかった。

「見えなかった見えなかった見えなかった見えなかった見えなかった見えなかった見えなかったわからなかったから」
わからなかったから。

だから、ボトルにゆすぎ水を入れたまま、そのまま二個目のボタンも押してしまって。メインの水の注ぎ入れられてしまった。ボトルの中にゆすぎ水を入れたまま。

その結果ゆすぎ水がハイブリットされた水が出来てしまった。不純水が。水は既定の規格サイズのボトルに入れられるため、毎回あふれる直前で自動で止まる。でも、その時はゆすぎ水分、ボトルから水があふれた。その時ようやく自分の失敗を知った。

「バカだったんですバカだったんです。私が。私がバカだったから。わからないからって聞かなかったから。説明をよく読まなかったから。だからだからだからだからだから」

その水を排水溝に流した。

もったないもったいないもったいないもったいないもったいないもったいないもったいない。

ばかやろうばかやろうばかやろうばかやろうばかやろうばかやろうばかやろうばかやろう。

でも、バレたくなかった。その失敗を誰にも。出来ない奴だと思われると思って。馬鹿だと思われると思って。非難されると思って。非難めいた顔をされると思って。

隠したんです。

隠しました。

ボトル一本分の水を全部排水溝に流しました。

「うああああああああ」
気が付くと、ザンゲリオンは消えていた。私は地面に、アスファルトに座り込んで一人で泣いていた。

夜中とは思えない程、大きな声を出して。目を腫らすほど。涙袋が壊れたと思えるほど。

いったいザンゲリオンは何が目的なのか。

何が目的でそんなことをしているのか。

それはわからない。

でも、あんなの誰も勝てないと思った。

あんなのに来られたら。

例えどんな人でも、心のうちを話してしまう。吐き出してしまう。言いたくなかった事を、墓までもっていこうと思っていたことを。吐かされたら。

今生きてる意味の一つを失うみたいな。

死ぬまで己が内に秘めておこうと思ったものを吐かされるなんて。

みんなそういうものを見せないように必死で虚勢を張って、知ったかぶりして、自分を作っているのに。

それを吐かされるなんて。

ちなみに、後日、私はその事を、
「ザンゲリオン来た」
って言うのはTwitterには書かなかった。

不用意に書いてまた来られても困るし。

ザンゲリオン

ザンゲリオン

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-02-28

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