冬の日
揺られている 長く
路線バスの
緑色の座席が 眠くなるような温度が
植物園に似ている。
葉のひかりのすきまで ねむるきみの睫毛を
車窓のかげが撫で
曇り越しに白く凍える季節と くちびるは
終わる世界のにおいがして怖い。
どこかで枝が揺れている
じきに知る
あたためなくともあたたかな片手を握り
なだらかな肩を寄せれば
解けた輪郭をあいまいに結び直す ゆめののち
ぼくらいっぽんの木になるだろう、
人類滅亡の日に見逃してもらえるよう
しずかに息を潜め二酸化炭素を多く吸う
祈ったままの種たちは眠り続け
春ははるか向こうに
ぼくら幸いに花の色さえも知らない。
冬の日