宇宙戦艦ヤマト0章

火星沖会戦

西暦2197年1月、国連本部は宇宙軍総省長官を招き今後の対策について協議していた。地球に侵略攻撃を行っている未知の敵は無差別に遊星ミサイルの攻撃を続け、このままでは遠からず地球は汚染され人類は全滅するであろう。人類に残された選択は、徹底抗戦か移住の二者択一しかなかった。
 1月9日、標準時間9時、国連本部事務総長室に3人の最高幹部が討議を始めた。クリストファー・ジョーンズ事務総長、エルク・シュナイダー宇宙軍総省長官、東堂平九郎極東管区行政長官。次期戦略について移住計画を円滑に進めるために、火星沖の制宙権を確保することが絶対条件となる。そのためにも火星アルカディアシティーの再建が急務となっている。そのために地球の残存艦隊を再編成し、連合艦隊を発足させて艦隊を出撃させなければならなかった。現在地球に残っているのは北米は20、中国12、ロシア9、オーストラリア95隻合計128隻であった。シュナイダー長官は地球の存続をかけた一戦に連合艦隊を再編成すると同時に極東艦隊の出撃を発令した。極東艦隊の出撃は10年ぶりでこの間の扱いについて極東管区としては不本意であり、説明を求めた。シュナイダー長官の説明では先代の事務総長と宇宙軍総省長官は極東の科学軍事力を高く評価しており、地球が万が一の事態に陥った時の最後の手段として温存することを秘密裏に決定していた。
 1月10日、極東管区に戻った東堂長官は沖田・土方両少将と芹沢軍務部長を呼び出した。この時点で沖田・土方両少将は火星沖会戦の参戦を予測していた。本部に向かう輸送機の中で二人は激論を交わしたいた。
「沖田、この闘いの参戦は極東にとって大きな分岐点となる。宇宙空間用戦闘機が極秘に開発されて二年、科学技術局の話しでは戦艦を艦載機搭載に改造するには5年はかかる。旗艦ゆきかぜだけでも艦載機用に改造すべきだ。」
「土方、たしかに航空戦闘の必要性は十分理解している。しかし、空母1隻だけでは戦力差は縮まらない。それより、新型レーザー水爆ミサイルを主力にした方が優位ではないか?」
「それは俺も承知している。空母を2隻用意できればミサイル爆撃の補助になる。時間が欲しい。」
沖田は輸送船の窓の外に映る変わり果てた富士山を見ながら
「たしかに時間が足りない。わしは火星中域奪還よりも200隻の戦艦を移民船に開放した方が良いと思う時がある。」
 沖田の言葉は恐らく正しいのだろう。しかし地球連邦は火星中域奪還にこだわっていた。土方も腕組みをしながら、富士山を眺めていた。
 午後5時、本部に到着した両提督は行政長官室に入っていた。すでに田中軍務部長も到着していた。ソファーに座った二人は地球連邦政府及び国連宇宙軍総省の極秘文書を渡された。一読した沖田は
「長官!これは玉砕せよということですか?」
と激しく詰め寄った。土方は無言で腕組みをしたまま、上を見上げていた。
「両提督、よく聞いてほしい。政府と総省は火星中域奪還が至上命題としている。両提督のの思いは理解できるが、地球にとって最後のチャンスなのだ。情報局によれば敵は土星のタイタンから艦隊を引き返していることがわかった。」「長官、その情報は確かなのですか?陽動作戦の可能性はあります。」
土方が情報局の信頼性を疑ったが、沖田は
「命令とあらば戦います。しかし、極東艦隊の裁量権は保証をお願いしたい。」と藤堂長官に確約を迫ったが、田中軍務部長は
「沖田少将、藤堂長官の心労も察してくれないか?全て理解していながら、あえて両提督にお願いしているのだ。極東艦隊の裁量権については私が総省長官に掛け合ってみる。」
 沖田と土方は行政府を出た後、士官クラブでなく最下層にある居酒屋「まほろば」に立ち寄った。極東管区は遊星ミサイルの被害は少なく、地下都市は他の都市より設備は充実していた。有害物質の侵食も他の都市よりも遅く、食料事情も豊富で他都市への供給も行っていた。
「土方、この作戦は危険だ。総司令官はオーストラリア管区のロムスキー大将という実践経験豊富な司令官だが、中国と北米が嫌っている。統制が乱れれば勝目はない。」
「そのとおりだ。田中軍務部長には失望した。しかし、ロムスキー司令長官はどんな陣形をとるのか?それによって俺たちの運命も決まる。」
「中国と北米が猪突すれば負ける。それにどうも情報局の情報は信用できない。お前がその司令官ならこの時期に冥王星に艦隊を戻すか?」
「俺ならば囮だな。そして一気に潜在的な戦力を排除する。」
 二人は二時間ほど今次の戦略を酒菜にしながら酒を飲んでいた。
 1月11日、執務室に入った沖田は乗務員リストを見たいた。そこに土方が入ってきて。翌日の午前9時よりオーストラリア管区宇宙軍司令部で緊急幹部会議が開催されることを伝えにきた。
「ずいぶんと緊急だな!何かあったか?」
「さぁ~。ともかく俺たちの主張は強く求めることだ。出立の準備をしてくれ!」
1月12日9時よりオーストラリア管区宇宙軍司令部でc号作戦の戦術会議が始まった。C号作戦総司令長官ロムスキー大将(オーストラリア管区)参謀長グリーンヒル大将(北米管区)第一艦隊司令官兆光林大将(中国管区)第二艦隊司令官ロックウェル大将(北米管区)大将クラスのメンバーが座って議論を始めた。まず、グリーンヒル参謀長からc号作戦の概略が説明した。
「さる1月5日、月面ルナシティーの観測衛星が捉えたタイタン付近の艦影を情報局が分析したところ、冥王星基地への帰投であると判断した。この報を受けた国連宇宙軍総省は火星中域奪還のチャンスとしてc号作戦を発案したものです。まず陣形としては第一艦隊が先鋒となりアステロイドベルトまで紡錘陣形とします。後方は今次新たに参加する極東艦隊を配置します。」
 参謀長の説明が終わると各提督の論戦がはじまった。口火を切ったのは兆大将である。
「先陣は第一艦隊が務めることは当然として、戦歴の無い極東艦隊がなぜ最後尾なのか?そもそも極東艦隊の実践配備自体が疑問である。」
「兆大将、我々は極東艦隊の働きに期待している。実際に空間防衛は極東管区が行ってきており、遊星ミサイルの攻撃や敵の偵察機を全て破壊している。実戦配置は当然である。」ロムスキー総司令長官は極東艦隊の実績を披露したが、北米のロックウェル大将は「ふん!」と鼻を鳴らしロムスキーを馬鹿にしたあと口を開いた。
「我々北米はどんな陣形があろうと誇りある戦いをする。最新鋭のイオンプラズマ砲を装備した艦隊を用意している。それで敵を圧倒する!」
これを聞いた土方は舌打ちをし、
「相変わらず、北米や中国は大艦巨砲主義だな。航空機戦力が重要なのに!」
議論は陣形の課題から敵軍の情報に移りさらに各艦隊の自慢話にうつっていた。三時間に及ぶ会議は終了し、出発は2月1日地球標準時午前6時、ルナシティー集結時間は午前11時と決した。議場を出た二人をロムスキー総司令長官が呼び止め執務室に来るよう命じられた。オーストラリア管区宇宙軍司令部は、極東と比較し狭く、エネルギー供給も不安定であった。沖田と土方は執務室に入り敬礼をしたあとソファーに座った。
「沖田君、土方君、すまんなー!君たち二人の空間防衛攻撃の実績は非常に高く評価されるべきなのだ。私は火星沖に戦場を設定し、極東艦隊を左翼に配置しようとしたが、参謀長が強行に反対した。」
「200年前の国家主義を未だに引きずっている中国や北米が主導権を握っているかぎり、状況は好転しません。」土方は諦め半分力なく発言した。
「うん。大国主義は統制と規律を乱す。沖田君、土方君、いずれにせよこの戦いは極東艦隊がキーマンなのだ。したがって司令部に何かあった場合は頼む。」
この言葉に沖田は噛み付いた。「総司令長官、まさかとは思いますが玉砕覚悟ですか?」
「そう思うかね?統制が乱れる戦は負けるのが常識だよ。私は宇宙軍総省に総司令長官を断った。しかし総省は強硬だった。そこで私は、極東艦隊の戦列参加を条件に引き受けたのだよ。」
 二人はオーストラリア管区を出て極東管区に戻った。沖田、土方両提督は行政長官に会議の報告を行い、沖田は九州坊ケ崎の秘密基地、土方は呉にある宇宙軍士官大学にそれぞれ向かった。
 沖田の頭の中には、戦闘機による制宙権の確保と新型レーザー水爆ミサイルの波状攻撃によって数の不足を補える戦術があった。秘密基地に入った沖田を国連宇宙軍科学技術局から極東管区宇宙軍科学技術局長に転属になった真田少佐が出迎えた。
「君が真田君かね。」
「はい。」
「君の噂は宇宙軍総省から聞いている。」
「ありがとうございます。例のものですが70%は完成しています。あとはエンジンだけです。」
「そうか、さすがだな。ところで空母の建造にはどれくらいかかる?
「はっきり言って5年以上かかります。既存の戦艦に発着装置を改造するにも3年はかかります。どうしてもムタニウム301合金が絶対的に不足しています。」
「やはり火星のアルカディアシティー再建が不可欠か!」
「はい。しかし例のものはサトニウム404の超合金を使用しています。」
「サトニウム?聞いたことないぞ?」
「実はここで秘密裏に製造した超合金で現在宇宙船のボディーに使用されているコスモナイトの硬度の10万倍です。おそらく敵のエネルギー砲も弾け飛ばすでしょう。」
「そんなんもの誰が開発したのか?」
「私です。」
真田は虚勢を張らず淡々と喋っていた。
「ともかく空母建造を急いでくれ。」
「わかりました。沖田長官、古代少佐は極東艦隊に転属が決定したようですが?」
「ああ、中国艦隊での実績が認められてミサイル駆逐艦隊の司令に決定した。」
そうですか。」
真田はその後は古代の話は触れず、秘密基地を案内した。
 1月15日、c号作戦の極東艦隊における戦術会議が始まった。出席者は極東管区行政長官藤堂 平九郎、国連宇宙軍総省軍務部長田中 小鉄、極東第一艦隊司令長官沖田 十三、極東第二艦隊司令長官土方 龍以下参謀本部4名、各艦隊艦長5名が出席した。会議が始まって30分経った時に緊急連絡が宇宙軍総省から入った。
「こちら田中だが、どうした?」
「地球艦隊司令部から緊急入電、各管区の艦隊は早急に出航しルナシティーに集結せよとのことです。」
会議場は一気に緊張が高まった。沖田は異常を察知し、「緊急だ。直ちに出航準備にかかれ!」と怒号とも思える声で命令伝達を行った。土方はルナシティーまで第一艦隊の作戦室で沖田と情報を精査することにした。
 極東管区で会議が始まる一時間前、オーストラリア管区宇宙軍総司令部には情報局からもたれされた新情報の精査を終了し、地球艦隊の緊急出航の連絡を行っていた。新情報は「敵土星駐留艦隊は冥王星に帰還せず、火星に向けて方向転換せり」という内容であった。
 1月16日極東艦隊は九州桜島ドッグ、広島呉ドッグ、静岡ドッグからそれぞれルナシティーに向けて出航した。沖田と土方は戦術変更の精査を作戦室で行っていた。
「やはり囮か!」
「ああ。土方、お前は最初からわかっていたんだろ?」
「こんな簡単な戦術を見抜けないほどボケてない。」
「一縷の望みをかけていたが、ダメか!」
そこへロムスキー総司令長官から暗号メールが沖田と土方の通信ポットに入った。二人は同時にそれを読み納得した表情を浮かべた。
1月16日20時全艦隊は月軌道に集結を果たし、早速高級幹部会議を総旗艦エリザベス5世で開催した。基本的な戦術は前回の会議で確認した内容を遂行するとし、火星沖に出たところで前衛は中国、北米の艦隊、右翼はロシア、左翼はヨーロッパ連合が配置されることを確認した。当初木星沖を戦場に設定していたが敵の反転が早まったことで火星沖に設置せざるを得なくなった。
1月17日6時宇宙軍総省から敵艦隊の想定ルートのデーターが送られ、ルナシティーを出航した。極東第一艦隊旗艦キリシマの作戦室には、沖田、土方、古代、牧村、依田、佐藤の幹部が集まり、作戦の練り直しを行っていた。
「今次の作戦は、火星中域奪還は変更しない。しかし敵の主力部隊が予想よりも早く反転し、火星に向かっている状況である。従って我々は最後尾に配置されることとなり、敵艦隊の直接攻撃が予想される。ここでみんなの意見を聞きたい。」沖田が静かに趣旨を語った。ミサイル巡洋艦ゆきかぜの古代少佐は
「砲雷擊戦方の前にミサイル攻撃を行い高速巡洋艦で一撃離脱戦法がベストだと思います。」
「確かに一撃離脱戦法は有効だ。古代少佐は中国艦隊のミサイル艦隊司令官として活躍したからな。しかし、その場合艦隊陣形は半包囲となる。数が圧倒的に少ない我々にとって逆に不利となる。この場合左翼をどの艦隊が配置されるか重要だ。古代少佐は当然わかっっているのだろう。」
土方は国連宇宙軍のエースと呼ばれた古代の天狗調の鼻をへし折るように反論した。
「左翼はミサイル駆逐艦を配置、中央を戦艦で固めることとなります。」
古代は胸をそらし100点万点の回答を示してみせた。
「その陣形では簡単に中央突破される。戦力保持を優先とし中央をミサイル駆逐艦、左は戦艦、右はミサイル巡洋艦の配置が良い。古代少佐の考えかたは正しいが弱点を考慮せねばな!」
沖田は土方を見ながら古代に反論した。
「沖田司令長官の戦法は堅実です。しかし中央突破された場合を想定していては勝てる戦も勝てません。ここは。」
と激しく語気を強めて反論したが、土方がそれを制した。
「古代、司令長官の意見は私も賛成だ。いいか!中国艦隊の戦術ならそれでも通用する。しかし中国艦隊はこの数回の戦闘で何隻の戦艦を失った?そして何人の戦死者をだした?勝つ戦いをすることだけが戦争ではない!」
「納得できません!」
古代が立って進言したが、隣に座っていた牧村少佐が古代の袖を引っ張って制した。
「古代少佐の言い分は受け止めておこう。この戦術を決定する。総員6時をもって警戒を厳となせ!」
土方の強い一言で会議は終了した。ゆきかぜに戻った古代は参謀の牧村を相手に愚痴をこぼしていた。
「まったく!俺たちは敵を倒すために秘密艦隊である極東艦隊に参加したのだ。俺たちはこの日のために中国艦隊に乗って訓練してきた。沖田さんや土方さんに失望したよ。」
「落ち着け古代。戦場では勇気や挑戦も必要であると同時に沈着冷静な判断が求められる。両提督ははやるお前の気持ちを抑えたんだよ。」
「最初から負けない戦法なんか必要ない。」
「命令は絶対だぞ!」
「ふん!」
古代はこれ以上の議論はやめた。そこへ、緊急連絡がはいった。
「報告します。23時北米、中国艦隊が交戦状態にはいったとの連絡あり!」
古代と牧野は時計を見て
「くそ!北米と中国は勝手に戦端を開いたな!!」とつぶやき、艦橋に向かった。
 1月17日23時アステロイドベルトを抜けた中国、北米艦隊は長距離レーダーで敵歓待を捕捉、ロムスキー総司令長官に状況報告が伝わった。ロムスキーは参謀長を通じて全艦隊に
「アステロイドベルトを抜けるまで臨戦体制のまま待機」を命じた。
「ふん!ロムスキーの腰抜けが!!北米艦隊総員に告ぐ。第一級戦闘体制!ミサイル艦隊は射程圏内に入ると同時に攻撃開始!」
北米艦隊の無線を傍受した中国艦隊ん司令部は
「北米が戦闘状態に入る。我々も負けてられない!総員第一級戦闘体制。砲雷撃戦用意。」
 火星沖で始まった会戦は、北米艦隊の新兵器が効力を発揮し、中国艦隊のレーザーミサイルが効果的に打撃を与えて優位な展開となった。開始から一時間がたち、地球の全艦隊がアステロイドベルトを抜けて半包囲陣形をとった。
「ロムスキー総司令長官、敵艦隊は1000隻以上、現在北米と中国が優位に闘いを展開しています。」
「うむ。全艦隊砲雷撃戦用意!射程捕捉と同時に砲撃開始!」
ロムスキーは全員に指示を出した。敵前衛艦隊はミサイルと新兵器の波状攻撃を受け、後退しつつありロムスキーもこの展開は予想外であった。
「総司令長官。北米から緊急連絡が入っています。」
「うむ。こちら総司令部。どうしたか?」
「我々は優位に展開し敵は後退しつつあります。このまま紡錘陣形をとり、中央突破し反転攻撃をしかけましょう。」
「了解した。貴官の作戦を支持する。全艦隊紡錘陣形をとれ!」
この命令を受けた極東第一艦隊の艦橋では怒号が飛び交っていた。
「これはまずい。敵の罠だ。このまま紡錘陣形で突っ込めば逆に半包囲され各個撃破されてしまう。こんな単純な罠も総司令部は見抜けないのか!?」
「土方、{い号作戦}を発動するか?玉砕の道ずれはごめんだ!」
「うむ。こんなに早く{い号作戦}を発動しなければならないとは。」
沖田と土方は戦況状況が写っているスクリーンを見て地球艦隊の全滅を予想した。
「通信長、古代の艦につなげ!」
古代が通信スクリーンに出た。
「古代、これより極東艦隊は左舷に回りこみ敵の横を叩く。レーザー水爆ミサイルを連射できるよう準備をしておけ!」
「沖田指令長官。我々は後陣の守備のはずです。戦闘体制に入るのですか?」
「そうだ。今時をもって極東艦隊は総司令部から独立し、指揮命令は沖田長官が執る。ゆきかぜは先陣を取れ!」
土方はいよいよ{い号作戦}を発動した。
「了解しました。」
ゆきかぜの艦橋は沖田指令長官の命令を受け動きが慌しくなった。
「総員に告ぐ!ただいまより極東艦隊は地球艦隊総司令部から独立し、沖田指令長官が最高指揮官となる。沖田長官の命令だ。総員第一級戦闘体制に入れ」
極東艦隊は地球艦隊から離れ、敵の左舷に回りこむことに成功し、古代率いるミサイル艦隊は攻撃を開始した。ロムスキーは極東艦隊の動きを見て、満足そうな笑みを浮かべ敵陣営に突っ込んで行った。敵艦隊は紡錘陣形で突っ込んで来る地球艦隊に対して深い縦横陣をしく事に成功。一気に主力艦隊は攻撃を開始した。極東艦隊は敵の左側に攻撃を加え敵左陣営に隙を作っていた。
「牧野。左を叩いたら、突破し地球艦隊と合流するぞ!」
「いや、待て古代。地球艦隊は敵の罠にはまっている。これで中に入ったら我々もやばいぞ!」
「うむ。そのとおりだな。穴を開けたら再度左に回り込むか?」
「そうだな、地球艦隊の逃げ道を多く作っておくべきだろう。沖田司令長官に進言するか?」
沖田、土方は戦況を見て古代に次の指令を出そうとした時、ゆきかぜから連絡が入った。
「沖田司令長官、敵左の穴は後は駆逐艦に任せて再度左に回りこみ攻撃をしかけたいと思います。許可を=」
「だめだ。ここは地球艦隊の逃げ道を確保することが先決だ。古代はその宙域にとどまり地球艦隊を援護せよ。」
「沖田長官、あえて具申します。やはり玉砕になると思いますか?敵の戦力を少しでも削いでおく方が良いのでは?」
「中国、北米、ロシア、ユーロ、南米、オリエント艦隊はほぼ全滅した。残るは極東艦隊とオーストラリア艦隊の一部だ。これ以上の無益な戦闘は無用だ。」
古代は沖田の言葉に素直に従った。
「わかりました。長官!{い号作戦第2発令}を具申します。」
沖田、土方両提督はこのタイミングで古代が{い号作戦第2発令}を具申したのに驚きを見せた。両提督が発令のタイミングを見計らっていたのに対し、古代は両提督を納得させるタイミングであった。
「よかろう。{い号第2作戦}にはいる。誘導水爆機雷安全装置解除!古代はシンガリを勤めよ!」
「はい!ありがとうございます。」
極東艦隊は敵艦隊の包囲陣から抜けてきオーストラリア艦隊を援護しつつ、アステロイドベルトb地区にむかった。敵艦隊は掃討作戦に入り、紡錘陣形に再編成して攻撃を開始してきた。
「いいか!敵に悟られないように、きっちり追尾させろ。ミサイル艦は砲弾が無くなるまで打ちまくれ!」
古代の激がミサイル艦隊全艦につたわり、敵の攻撃をかわしつつ激しい攻撃をくりだしていた。
「牧野、あとどれくらいでb地区に入る?」
「あと1時間はかかる。それで砲弾が無くならなければいいが!」
「地球一天才技術者の真田が発明した誘導水爆機雷で敵艦隊わお全滅に追い込む。そのためにももってくれよ!」
 極東艦隊はアステロイドベルトを抜ける時に、新開発の誘導水爆機雷を設置していて最終局面に差し掛かったときに使用する作戦を考案していた。しかし敵艦隊は徐々に速度を落としてきた。
「まずいな。敵に察知されたか?」
「砲弾を考慮しながら攻撃していたからかな?」
牧野は時計を見ながら古代に言った。
「全艦攻撃をさらに強化せよ。敵との距離を詰めてもかまわん。」
古代艦隊は再度攻撃を強めた。これを受け敵艦隊は再び速度を上げた。この状況を戦術パネルで見ていた沖田は援軍を出す決意を固めた。
「土方、古代艦隊が総攻撃を受けている。b地区まで持ちそうもない。」
「わかった、援軍を出そう。しかし古代艦隊の統率は見事だ。」
「ああ。次の指揮官候補に合格だな。」
「うむ。沖田、俺が援軍の指揮をとる。b地区まで頼んだ。」
土方自ら第一ミサイル駆逐艦隊を指揮して向かった。
地球残存艦隊の先陣がようやっとアステロイドベルトに到達した。
「こちら極東艦隊ゆきかぜ、クイーンエリザベス5世はこのままアステロイドベルトを抜けて地球に帰還してください。」
「こちらロムスキーだ。沖田君、すまんなー。私も敵の攻撃を受け負傷した。もう地球のことは極東に任せる。あとを頼む!」
ロムスキーは病床から沖田に地球の事を頼んだ。
「よし、全艦一斉に反転、敵陣に向かう。」
古代艦隊は苦戦を強いられていた。砲弾も残り少なくなり、さすがに血気盛んな古代も全滅を覚悟をしていた。
「援軍ははこないか?アステロイドベルトまであと何分だ?」
「あと少しです。」
「4時の方向より艦隊出現!え、援軍です。」
古代艦隊全員が歓呼の嵐で援軍を迎えた。古代はようやく指揮官席に座り汗をぬぐった。
「やれやれ、なんとか生き延びそうだな。」
スクリーンに土方の顔が映った。
「古代少佐、よく頑張ったな。ミサイルは残っているか?」
「はい。なんとか残っています。」
「よし、古代少佐の戦術を使用する。あと少しだ!一撃離脱でアステロイドベルトに入れ。ターボレーザー砲を全弾使用せよ!」
古代のミサイル巡洋艦と土方のミサイル駆逐艦は一撃離脱方式で敵前衛艦隊を駆逐に成功した。これに激怒した敵主力艦隊は左右に艦隊を展開し一斉攻撃をしかけてきた。そこへ6時の方向から沖田艦隊が敵主力艦隊に奇襲攻撃をかけてきた。
「土方、古代、間に合って良かった。古代艦隊はそのまま後退せよ。よし、土方、行くぞ!」
「おお!」
土方と沖田の艦隊は三角錐陣形をとり、敵の薄い陣営に一点集中砲火を浴びせ、後退速度を速めた。この予想外の攻撃に敵艦隊の陣営は乱れ始め、敵の主力艦隊が前面に出てきた。
 古代艦隊は全砲弾を一斉射撃したあと反転離脱し、アステロイドベルトの中に入り戦況を見ていた。
「ここで三角錐陣形かあ!さすが沖田、土方提督は凄い!」
「当たり前だ古代、お前の倍以上の戦歴を持っているんだからな。」
「うむ。俺たちはアジア艦隊で経験を積んできたが、どの艦隊の提督よりも用兵術は優れている。国連宇宙軍は何で極東艦隊を出撃させなかったのか?」
「古代、俺は宇宙軍総省の参謀本部の同期から聞いた事があるが、極東艦隊は地球の最後の切り札として温存することを歴代の国連事務総長、宇宙軍総省長官が極秘に決定していたそうだ。」
「それは理解できるが、極東艦隊がもっと早く出動していれば状況はもう少し楽になっていたはずだ。」
「ああ、今の沖田、土方両提督の用兵術を見ていると、そう思うよ。」
古代と牧村は戦況を見て改めて沖田・土方の偉大さを感じていた。
「沖田、敵の旗艦が出てきたぞ、やつら本気で怒ったな。」
「ああ、思うつぼだ。よし、全艦隊後退速度を速めろ!」
1月18日午前7時、敵艦隊は極東艦隊を血眼になって追尾攻撃し、アステロイドベルトに入ってきた。
「敵旗艦が侵入と同時に誘導水爆機雷を作動する。」
敵艦隊旗艦が進入したと同時に誘導水爆機雷が作動し、敵艦隊は核爆発を連鎖的に起こした。アステロイドベルトの反対側に抜けた沖田、土方両艦隊は一斉に攻撃、核爆発の熱とエネルギー放射熱で宇宙嵐がおき、敵艦隊は90%を損失してしまった。
「沖田司令長官、敵艦隊はほぼ全滅です。しかし旗艦は辛うじて逃げた模様です。」
「うむ。掃討は無用!{い号作戦}終了。全艦隊地球に帰還する。」
地球にとって艦隊戦による勝利は初めてと言ってよい。地球はこの報告に歓喜の嵐で沸き返っていた。この闘いで地球艦隊は極東艦隊を除いて96%の艦隊を損失、敵艦隊は95%を損失する壮絶なものであった。地球に残された艦隊は新造艦を含め極東艦隊の80隻のみであった。しかし、地球は火星までの制宙権を確保し、探査権においては土星まで拡大した事は意味が大きい。

いにしえの戦艦

西暦2197年2月1日、国連宇宙軍総省では人事異動が行われ、各部署は少々混乱していた。新人事は総省長官は極東管区行政長官と兼任する藤堂平九郎、地球艦隊総司令長官に沖田十三大将、火星宙域までの空間防御総司令長官に土方竜大将、参謀本部長に田中虎鉄がそれぞれ就任した。
 大佐に就任した古代は沖田総指令長官に呼ばれ事務室に入った。
「古代大佐、入ります。」
古代は部屋にはいり敬礼をして、沖田にうながされソファーに座った。
「古代、前回の闘いは見事だった!国連宇宙軍総省が手放さないはずだ。」
「総司令長官、ありがとうございます。私も沖田・土方提督の用兵術を身を持て勉強させていただきました。先日の戦術会議のご無礼をどうかお許しください。」
「かまわん。実は今日呼んだのは他でもない。貴官に極秘命令を受けてもらうためだ。」
「極秘ですか?」
「うむ。貴官はこのまま九州鹿児島指令区に飛んで、真田大佐と同行すること。
これが命令である。」
古代は沖田の真意を理解できない様子だが上官の命令は絶対なので、そのまま受けた。
「それとこれを貴官にわたす。出張中見ておくように。以上だ。」
沖田は古代に記録媒体をわたした。そこには何が入っているのか検討もつかいない。しかし重要なものであることは確かだった。
 古代は沖田の執務室を出たあと参謀本部にいる牧野大佐の執務室によった。
「忙しいか?牧野。」
「おう!古代!昨日付けで参謀本部戦略・戦術部の作戦専任参謀に任命されて大忙しだよ。」
「そうか!お前は作戦立案が得意だらな。いま沖田総司令長官に呼ばれて、九州鹿児島指令区に飛ばされたよ。」
「ええ!マジかよ?俺はてっきりお前が極東艦隊の司令官に着任すると思っていたぜ?」
「軍人であるいじょう、命令は絶対だからな。」
「そうか!しかしお前の評価はかなり高いはずだが?」
「反抗心旺盛な部下はいつの時代でも嫌われるものだよ。出る杭は打たれるってな。」
「いや、古代、それは違うぞ。昨日、総省に辞令を受け取りに行った時、土方大将と偶然に会ってな。その時、土方・沖田両大将はお前を次期地球艦隊の司令官に任命することを決定していると言ってたぞ?」
「それはお前の聞き違いだろうよ。ただ極秘命令をうけた。」
「なに?それを早く言えよ!」
「すまん。宇宙軍総省は何か極秘のプロジェクトを進行させているはずだ。お前、参謀本部付きになったんだから探ってくれよ。」
「いくらお前の頼みでも、これは難しいぞ。」
「たしかにな!じゃ俺はもう行くよ!」
「ああ。いつ帰ってくるんだ?」
「さあ?行ってみないとわからん。ともかく連絡はいれるよ」
「わかった。気をつけてな!」
「ありがとう。お前も仕事に殺されるなよ。軍人だからシャレにならないからな。」
 古代は牧野に別れをつげて宇宙軍の定期便が発着する空港に向かう途中、自宅に立ち寄った。そこには国連宇宙軍高等学部を卒業した弟の進が待っていた。
「兄さん、お帰り!」
「進も帰ってたのか?」
「うん!ところで出張?」
「ああ!九州だ!」
「そっか。兄さんも忙しいね。」
「まあな、宇宙軍は今や人手不足だからな。」
「ところで兄さん話があるんだ。」
「仕官大学の進学か?おれは反対だぞ!」
「うん、だけど人手不足なんでしょ?俺も兄さんみたいに宇宙に出てみたいんだ!」
「進、戦争なんかろくなもんじゃない。お前は軍人にならず別の道を歩むべきだと思うが?」
「兄さんだって軍人じゃないか?俺たちの両親を殺したやつらと戦いたいんだ!」
弟の進は高等学部を主席で卒業し、人手不足の民間企業からヘッドハンティングを受けていた。しかし兄と同じように軍人の志を強く持っていた。この古代進が近未来において地球の英雄になることは、この時点で誰も予想はできなかった。
「進がそこまで言うなら仕方無いな。わかったよ、仕官大学に行け。そのかわり卒業するまで頑張れよ。仕官大学は高等学部と比べようもなく厳しいぞ!」
「ありがとう。兄さん!」
 古代は自宅をあとにして、空港に到着した。定期便の発進まで一時間近くあったので沖田から渡された記録媒体を宇宙軍仕官専用のパソコンで見ようと電源を入れた時、緊急警報が鳴り響いた。
「緊急警報、緊急警報!現在、冥王星から発射された遊星ミサイル10基がコリジョンコースの軌道にのって地球に進行中!総員防御システム体制に入れ!」
古代はパソコンと記録媒体をカバンの中に押し込み、シェルターに入っていった。
「くそ!10基とは大量に送り込んできたな。艦隊戦で負けたからロングレンジ爆撃に変更したか?」古代は防衛軍総省に連絡をとろうとしたが、逆に土方から古代に連絡が入った。
「こちら土方だ。今どこにいる?」
「はい!横田空港です。」
「そっか。貴官はそのまま戦闘機に乗り、空間防衛隊と合流せよ。」
「了解しました。沖田総司令長官の命令はどうしますか?」
「私の方から伝えておく!甲格納庫に戦闘機が配備されているから急げ!」
「はい!」
古代はすぐさま横田空港の甲格納庫に出向き、戦闘服に着替えスクランブル発進をした。
そのようすを沖田と土方はパネルを通してみていた。
「古代の指揮官耐久テストか?」
「ああ、若い世代に引き継がなければならないからな。どれだけ冷静に判断できるか?だ。」
「さすが土方、厳しいな。」
「そんなことは無いさ。俺たちの世代の方が厳しかったじゃないか?それにどうやら国連宇宙軍仕官大学の学長の兼務発令をうけそうだ!」
「ほんとうか?人手不足も深刻だな。さきの大戦で高級仕官が相当数戦死したからな。」
「そうだ。だから古代クラスの幹部候補生を早急に育てなければならない。」
「そうか、空間防御総司令長官と兼務は大変だな。敵は艦隊戦で負けていらいロングレンジ攻撃いシフトしたからな。」
「学長と言っても一日2時間の講義だけで、それに仕官大学と空間防御司令部は歩いていける距離だからな。」
パネルには横田空港から三十機の戦闘機が飛び立っていくのが映っていた。古代大佐の戦闘機は宇宙軍の最新鋭戦闘機で宇宙空間にも対応できるエンジンを備えていた。
 三十機の戦闘機は中国管区から発進した十機の戦闘機と合流し、コリジョンコースの軌道で待機した。古代機率いる最新鋭戦闘機隊は地球圏内を離脱し、一気に月軌道まで達した。
「こちら古代、空間防御総司令長官から全軍の指揮権を命令されている。全機戦闘体制に入ると同時に三日月隊形をとれ!」
「こちらアルファー隊、右に展開します。」
「こちら中国隊、左に展開します。」
「こちらブラボー隊、左い展開します。」
この様子を空間防御司令部で沖田と土方は見ていた。
「三日月かあ。なかなかやるな。」
沖田はあらためて古代の戦術センスの良さを認識した。
「このあと、遊星ミサイルを何発撃墜できるかな?」
土方は三日月では十発のミサイルは打ち落とせないと読んででいた。
 遊星ミサイルは火星軌道を越えていよいよ月軌道に接近してきた。
「近接レーダーに捕捉!全機戦闘開始!」
最新鋭戦闘機軍は接近してきた遊星ミサイルを接近攻撃を行い、見事な連携プレーで一時間で全て破壊した。
「ようし、作戦終了!全機帰還せよ。」
古代機を中心に全機無傷で帰還し、歓呼の嵐で出迎えられた。その足で空間防御司令部に報告しに行った。
「古代大佐入ります。」
「うむ、任務ご苦労であった。」
土方は初めて古代に労をねぎらった。
「ありがとうございます。今後の指示をお願いします。」
沖田は沈着冷静に任務を遂行したことを高く評価した。古代は極東管区の超極秘計画の幹部第一号として認定された。
「古代大佐、・・・」
沖田が次の命令を伝えようとした時、全管区に緊急警報が鳴り響いた。
「緊急警報、緊急警報、火星観測基地より入電、冥王星基地より大量の破壊兵器が打ち出された模様。現在確認作業を急いでいる。」
「こちら空間防衛司令部の土方だ。火星観測基地に告ぐ。速やかにデーターの分析を行え」
「了解しました。」
この警報を聞きつけた、藤堂長官と田中参謀総長が司令部に入ってきた。
「土方君、沖田君、どれくらいの規模なのかね?」
「藤堂長官、敵はどうやらロングレンジ攻撃を本格的に切り替えてきたと推測されます。」
「うむ。私はこれより国連本部で会議がある。沖田君、土方君後を頼む。」
藤堂長官が部屋を出ていこうとした時、火星観測基地から第2報が入った。
「こちら火星観測基地、分析結果を申しあげます。超大型ミサイル20基、恒星間弾道ミサイル35基、遊星ミサイル60基が発射されました。地球到達予定時間はあと297時間後です。」
「了解した。引き続き観測を続けてくれ。」
土方が火星基地に対して引き続きの観測強化を命令した。その後沖田は国連本部に出向く藤堂長官に意見具申をした。
「藤堂長官、例の問題を速やかに解決できるよう心からお願いします。」
「ああ。了解した。ともかく防衛システムを頼む。」
その話を聞いていた古代は秘密プロジェクトの存在を確信したが、内容までは聞けなかった。
「土方長官。極東艦隊の出動許可をお願いします。」
すかさず沖田がそれを拒否した。
「だめだ。極東艦隊は先の大戦で修理が始まったばかりだ。古代大佐。緊急命令である。貴官はただちに九州鹿児島司令部に赴け。」
「はい!緊急命令を謹んでお受けいたします。」
古代は納得のいかない表情を浮かべながら司令室を出た。
「沖田さんや土方さんはなぜ九州鹿児島司令部を重要視しているのだろう?」
そうつぶやきながら再び横田空港から軍輸送機で九州に向かった。
そのころ九州鹿児島司令部では緊急警報を受け、警戒レベルを上げた。
「真田司令官。対空防御システムはいつでも稼働できます。」
「うむ。ところであと30分後い輸送機が到着する。そこに宇宙軍総省から派遣された古代大佐が乗っている。迎えに行ってくれ。」
「了解しました。」
副官が出たあと真田は超極秘資料を出して、目を通していた。軍輸送機が鹿児島に到着し、そのまま司令部に向かった。古代は軍輸送機の中で沖田から渡された記録媒体を見ていた。内容は西暦200年代中国の三国志や1900年代の第一次・第二次世界大戦の記録であり、特に戦術・戦略論が特化していて用兵論に基づく詳細な解説が並べられていた。特に三国志の赤壁の戦いや、日本海大海戦、ミッドウエイー海戦等学ぶべき事が多く、士官学校や大学では教えてもらえてないものばかりである。古代は半分しかみておらず九州滞在中に全て見るつもりである。古代は司令部に到着し、そのまま真田の部屋を訪れた。
「真田、久しぶりだな。お前のおかげで第2次火星沖会戦は負けずに生きて帰ってこれたよ。」
「おお古代、あれが役に立ったか!お前が生きて帰って来てくれただけで嬉しいよ。」
「ありがとう!ところで沖田長官から極秘命令で来たんだが・・・」
「そうか!それは後でゆっくり説明するから、対空戦闘を手伝ってくれないか?」
「わかった。じゃ司令室に行こう!」
古代と真田は司令室に入り状況を確認した。
「敵攻撃目標の計算は出たか?」
「はい、極東管区は10基の遊星ミサイルが着弾します。」
「よし、総員迎撃準備、αミサイルを装填せよ。」
真田が総員に命令を下した。そして古代は真田に戦闘機の準備が整っているかを尋ねた。
「真田、俺が戦闘機に乗り迎撃をする。」
「だめだ。敵の長距離ミサイルは最新鋭で、戦闘機の火力では歯が立たない。」
「対空防御システムだけでは守れんぞ!」
少し間をおいて真田が出撃の許可を出した。
「よし、お前に最新鋭戦闘機の試験飛行を兼ねて貸してやる。ただし、搭載するミサイルは超小型レーザー水爆ミサイルだ。取り扱いを間違えると大変な犠牲を起こす!」
「わかった。借りるぜ!」
古代が測定班に正確な位置を出すよう指示した。
「古代大佐、あと200時間後に月軌道を通過します。データーを送信しておきます。」
「よし!緊急発進だ!」
「古代、この5人を連れて行け。」
真田は士官学校を卒業したばかりと思える5人を連れていくよう指示した。
「おいおい、こいつらまだ訓練生だろ?飛行訓練をまともに受けてないだろう?」
真田はすかさず反論した。
「この5人は先月、宇宙軍高等部飛行科を優秀な成績で一年早く卒業して、ここで毎日訓練を受けている。お前の弟お進君と同期だ。連れて行って損はない。」
「なるほど、飛行科は特殊で飛び級が認められているからな。それだけ優秀だってことか?」
古代は整列している5人の前に進んだ。
「俺は古代大佐だ。これからお前らの訓練の成果をみてやる。いいか!実戦は訓練と比べものならんぞ!俺はお前らが窮地に立たされても助けん。自分の命は自分の腕と操縦で守れ!一時間後に甲格納庫に集合!怖気づいたやつはたった今辞表を提出しろ。わかったか?」
「はい!了解しました。」
全員敬礼して解散した。
「少し厳しすぎやしないか?」
真田が若い戦闘員を思いやり抗議をした。
「ふん、それくらいの覚悟がなければ、あの巨大な敵に立ち向かえない。ところで各管区の防御システムも正常に作動しているのか?」
「おそらく大丈夫だろう!ただ中国、ロシアはわからない。」
「そうか!ともかく極東管区に直撃する10基は破壊してくる!」
そう言って古代は司令室を出て甲格納庫にむかった。

 そのころ国連本部では緊急の首脳会議が開かれていた。この会議では、計画変更の懸案を延々に話しあっていた。
「極東管区の提案はあまりにもリスクが多すぎる。計画変更を認めない。」
中国管区行政長官江 民萬は不快感たっぷりに発言した。
「江長官の発言に私も賛成だ。種の保存は未来の地球にとって当然なすべきこと。ノアの方舟作戦を遂行すべし。」
北米管区行政長官マイロンタワーは中国を支持した。しかし、EU・東南アジア、オーストラリア、南アフリカの管区行政長官は極東の計画変更を支持した。
「北米と中国の発言は正論である。ノアの箱舟神話は洪水が終了したあと地球に住めた。しかし今回は地球を脱出したあと、あての無い旅が続く。移住先の惑星が見つかっていない段階では無謀すぎる。」
「ほぉ、オーストラリアは先の火星沖会戦で極東艦隊に救われたからな。その恩返しというわけか?」
江行政長官は皮肉たっぷりに批判した。
「まあ、皆さん。各行政区代表の意見は理解できました。この超極秘計画は国連預かりということでどうでしょうか?」
北米と中国は反論せず黙っていたが、他の行政区は賛成した。
その時藤堂と事務総長のところにメモが渡された。
「各行政区長官の皆さん。ただ今、宇宙軍総省から緊急連絡が入りました。敵のミサイルが土星を通過、その数120基以上で過去に例のない規模のロングレンジ攻撃を行ってきました。」
事務総長の緊迫した報告に会場はどよめきと悲鳴があがった。
「藤堂長官!指示をお願いしたい。」
「皆さん、宇宙軍総省は各管区に非常攻撃態勢を発動します。対空防御システムの即時稼働>各管区行政長官は現場に帰っていただき各管区司令部の司令に基づき行政処理をしていただきたい。」
国連事務総長と宇宙軍総省長官の指示で各管区の行政長官は全員急いで帰っていった。その後、藤堂と事務総長は事務総長執務室で今後の対応を協議した。
「事務総長。この新計画は70%も進んでいます。あと戻りはできません。北米と中国は極東からの提案という一点だけで反対しているのです。事務総長権限でこの新計画を進めていただきたい。」
「わかった。権限を使い新計画を進める。」
「お願いします。国連宇宙軍の解体再編の件も同時並行でお願いします。」
「その件は大丈夫だ。しかし藤堂君今さらだが、本当に信頼できるのかね?」
「沖田、土方両長官は全面的に信じています。私も信じています。」
「わかった。新計画の責任者は君だ。全力で取り組んでくれ。」
「ありがとうございます。」
そう言って藤堂は極東管区に向かった。そのあと、事務次長はのパウエル(北米)が入ってきた。
「事務総長、中国・北米以外の行政長官の意見は正しいと思います。どうか非常時大権を発動し新計画へのスムーズな変更をしてください。」
「なるほど、それで軍部独裁政権を作ろうというのかね?」
「なぜ非常時大権が軍部独裁政権になるのか?私には理解できません。」
「うむ。非常時大権はシビリアンコントロールを無効とし、最高権力者即ち国連事務総長が軍を統括する。その時に何が起きるか?全ては歴史が証明している。私は非常時大権の条項をむしろ削除し、軍部を完全に独立させて軍お最高責任者は事務総長の代理人としたほうが、職務を遂行するうえで効率的であると考える。今のシステムは軍の行動に対して議会の承認を得ないと動けないこととなっている。このような状態の時に非常時大権を使うのは得策だが、歴代の事務総長が非常時大権を封印してきたのはその矛盾を感じていいたからだ。」
「軍部の独立ですか?その方がもっと危険ではありませんか?軍部が暴走しかねません。」
「次長、13日戦争から150年以上も経っているのに、また大国主義が勃興している。次長の出身国である北米や中国、ロシアは新国際連合の建国の初心を忘れているようだ。私の任期はあと2年。次の世代も地球ですごせるようにすることが私の仕事だ。」
事務象徴は落ち着いていたが、その言葉は力強く、パウエルに反論する余地を与えなかった。

宇宙戦艦ヤマト0章

宇宙戦艦ヤマト0章

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-12-13

Copyrighted
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  1. 火星沖会戦
  2. いにしえの戦艦