石子

早く80になれ私の星空文庫

先週、マンションの上からその下を歩いている男の子に石を落とした子供のニュースがあった。

で、警察が殺人の容疑で調べた所、男の子二人が遊びでやったということで、補導されたらしい。

んで、

とりあえず下にいた男の子は無事でよかったし、本当に良かったし。その母親さんが警察に連絡したことで、事件となったのも当たり前だとは思う。

で、子供とはいえ、遊びとはいえ、それをわからせるために補導されたのも、何の問題もない。当たり前だと思うんだけど。

ただ、

こう、

なんというか、

「正直、石を落としたいという気持ちはわからないでも無い」

と、私は思った。思う。

髙いところに住んでるとか、高いところで暮らしてると、下にものを落として見たくなる。のではないかなと。その結果がどうなるとかはあんまり考えれない。実際どうなるのか見てないから。

幸いにして私なんかは子供の頃、高いところに住んでなかったからそういう事はしようも無かったし。大人になってからは多少なりとも、あぶねえだろうなと思える程度には知恵がついたので、やってないけども。

でも、子供の頃の私は愚かだったし、親とか周りに対しての感謝も無かったと思う。

何かに対しての憧れとか、何もしてないのに自分に対して何かの才能があるという確信とか。

そういう子供だった。

世の中の大半の子供と同じような。

所謂、

糞みたいな子供だったと思う。

例えば今の私が子供の頃の自分の時代にタイムスリップしてその愚かな自分を前にした時、その受け答えによっては、グーで殴れる。グーで殴るくらいはしてもいい子供だったと思う。鼻を折るなり、歯を折るなり、多少痛い目を見ないとわからない子供だった。子供の頃の自分。周りの人が優しかったから。周りの大人が比較的優しい人たちだったから、そういう体験もないままに愚かで、感謝もしない子供だったけど。無論それが無かったからと言って、誰かを恨むのは愚かに愚かを重ねる事この上ない。

今の自分がこうなのは、子供の頃の自分が愚かだったから。それは誰のせいでもない。自分のせいだ。

そして、大抵の子供は皆、そうだと私は思う。

子供の頃誰しも愚かだった。

世界を知らないから。

何一つ知らないから。

それなのに知ってるふりをする。

それが子供じゃないか。

愚かなのがマスト。パッシブスキル。子供っていうのはそういうもの。誰しもにこの石子のような過去があるはずだ。似たり寄ったりの。子供であるがゆえに、その結果が想像できないから。そんなこと誰もがやったんじゃないかと思う。

だからというか、それなのに、誰しもこの石子のような愚かな子供時代を過ごしたはずなのに、このニュースに対して、他人の、今はもう大人になってるであろう人達の批判が多いのは驚いた。

「こんな子供マジでない」
みたいな。
「こんな子供普通に殺人未遂だろ」
みたいな。
「牢屋だろ」
みたいな。

誰しも子供の頃同じようなものだったのに。同じように愚かだったのに。似たり寄ったりのはずなのに。大人になるとその事も忘れてしまうんだなあ。

勿論私にした所で、石子の事を肯定はしない。

私はマンションの上から下に石を落としてない。

でも、

幾分か気持ちはわかる。気がする。

だって、子供だもの。

子供は愚かなんだもの。

しょうがないじゃない。

私だって愚かだった。

まあ今も愚かだろうけど、でも、子供の時とは違う。子供の時はもう今とは比べようもないほど、愚かだったから。

修学旅行で仙台に行った際、

おみやげを買いにずんだもちやさんに行ってずんだもちを買わずに普通のあんこもちを買った。

それを大人になるまで、愚かなことだと気が付かなかった。

糞みたいな愚かだった私あの時。

その時の事を忘れない。

もうずっと忘れない。忘れれない。

忘れない限り、私には子供のしつけなんて出来ないんじゃないかと思う。

子供の愚かさを叱ることも出来ない気がする。

でも、忘れたらそう言うのが出来るようになるんだろうか。

恐ろしな

ものすごく恐ろしいなそれは。

石子

石子

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-02-22

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