【浮浪と永住】Chapter 1 光と渦

光と渦

光は唐突に降り注いだ
まるで予想もしなかった光は
私を渦へと巻き込んだ

Chapter 1

毎日変わらない朝を送っていた
でも今日は違う
今日は友達と映画を観に行く
映画の完成披露試写会なのだ

わくわくが止まらない
当たったこと自体奇跡のようだ

楽しみすぎて、早く着きすぎてしまった
試写会の前に近くの街を歩く
美味しいお昼を食べ、いざ鎌倉

あっという間に試写会は終わった
それはなんとも至福の時間だった
古地図を買って予習した甲斐があった
そんなことを思っていた私に更なる光が起こるとは、全く予想もしていなかった

私はこの素晴らしい話を友達に話した
ただただ素直に嬉しかったのだ
その後のことも知らずに 

その人は同じ高校の先輩
実はその映画に出演していた
というのもあって、より特別な時間に感じたのだ
試写会中、壇上でその先輩は、
「この映画に出演できてとても嬉しいです!この映画に出演して自分の価値観すら変わりました」
と満面の笑みを浮かべて言っていた

自分もこの人のようになりたいと心から願った

私は匿名でこのことをネットの掲示板に書く
匿名と言ってもわかる人にはわかる名前だった

その匿名の名前でその人の動画にコメントしたことすらあった
それだけすっかりファンになっていた

数ヶ月経って、掲示板に返信が来ていた
その内容はこのようなもの

"この映画、本当にいい映画
僕はこの映画で自分の価値観が変わった
撮影現場もスタッフの皆さんもいい映画なんだろうな
そんなこと言ってる僕もある意味そのスタッフの皆さんと出演者と同じ立場だったことは、ここだけの秘密"

ん?と私は耳を疑った
「同じ立場だった」というのはどういう意味だろう
まさかその映画に携わった人なのだろうか
「この映画で自分の価値観が変わった」
どこかで聞いたことあるセリフ
もしかして、同じ高校の先輩のあの人?

そんなはずない
生きている世界が違うあの人とこんな場所で交わるなんてありえない
だれかがいたずらでその先輩のふりをしていたのかも知れない

Chapter 2へ続く

【浮浪と永住】Chapter 1 光と渦

この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

【浮浪と永住】Chapter 1 光と渦

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-02-20

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