ある夜のスケッチ

恥のなくなった時代だ!
俺が愛してやらなくちゃ
俺が可哀想じゃないか!

ジジイが喚き散らしている。
「想」にアクセントがついていた。
本当に醜いジジイだった。
薄暗い店内、オレンジの
ライトに照らされた顔は
痩せて落ちくぼんで
黄金バットのようだった。

——コウモリだけが知っている——

誰がこんなジジイを理解しよう?
素面ならまだしも
酒を飲んで妄言を吐くな!

刺身やサラダなんかが
腐っていくのもうんざりだし、
店員のブタに餌をやるような態度
と言っては養豚屋に失礼だ、
居酒屋の店員のような態度にも辟易だ。

本当にもううんざりだ。
年老いて、酒に酔って
わめき散らしている俺は醜い。
痩せこけた顔は
黄金バットみたいじゃないか。

——コウモリだけが知っている——

誰も俺を理解しない。
俺が、消えてなくなってしまうんだぞ。

ある夜のスケッチ

ある夜のスケッチ

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-02-20

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