白い世界
白い世界。ただ白い世界。
そこに少女がただ一人。
自分の足で立っていた。
気が付けばここにいた。
以前のことは何も覚えていない。
けれど、一つ確かなことがある。
自分がここにいることだ。
どこを見ても白い世界。どこまでも続いているように思う。
果ては分からない。…ならば、果てを目指していこうと。
ここでただ立っていても仕方がない。
◇
どれくらい歩いたのだろう。
未だに果ては見つからない。
歩きながら少女は考えていた。
「なぜ自分はこの世界にいるのか。」
「なぜ私は一人、ここにいるのか。」
問い続けても、少女には答えが出せなかった。
そもそも、答えが見つかるはずもない。
何も知らないから、何も知らされていないのだから。
少女はそれでも歩き続けている。
果てを目指し、何かを期待して。
◇
真実は残酷なものだ。
少女は歩いていない。
前にも進んでいない。
歩いていると思い込んでいる。
思い込まされている。
しかし、少女にその事実を知らせることはできない。
ここは、少女が創った世界だ。何人たりとも干渉できない。
自分が「歩いている」ことを少女は疑わない。
ただ、進んでいく。ただ、歩き続ける。
白い世界で、たった一人、前に進んでいると信じて。
白い世界