白い世界


白い世界。ただ白い世界。
そこに少女がただ一人。
自分の足で立っていた。

気が付けばここにいた。
以前のことは何も覚えていない。
けれど、一つ確かなことがある。
自分がここにいることだ。

どこを見ても白い世界。どこまでも続いているように思う。
果ては分からない。…ならば、果てを目指していこうと。

ここでただ立っていても仕方がない。

どれくらい歩いたのだろう。
未だに果ては見つからない。
歩きながら少女は考えていた。
「なぜ自分はこの世界にいるのか。」
「なぜ私は一人、ここにいるのか。」

問い続けても、少女には答えが出せなかった。
そもそも、答えが見つかるはずもない。
何も知らないから、何も知らされていないのだから。

少女はそれでも歩き続けている。
果てを目指し、何かを期待して。

真実は残酷なものだ。
少女は歩いていない。
前にも進んでいない。
歩いていると思い込んでいる。
思い込まされている。

しかし、少女にその事実を知らせることはできない。
ここは、少女が創った世界だ。何人たりとも干渉できない。

自分が「歩いている」ことを少女は疑わない。
ただ、進んでいく。ただ、歩き続ける。
白い世界で、たった一人、前に進んでいると信じて。

白い世界

白い世界

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-02-16

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