お巡りルーティン

 僕はお巡りさん。今日も楽しく交番でお仕事をしていると大学生らしき男が入り口に立っていた。
「どうかなさいましたか?」
「はい」男は緩そうな顔で言った。
「道に迷いましたか?」
「いえそうではなくて、実は右手を無くしたんです」
 男はそう言うと僕になくなった右手首を見せた。
「それは大変ですね。どこで落としたか、心当たりはありますか?」
「昨日、飲み会だったのでその時かも」
「何時頃まで飲んでましたか?」
「夜の2時ですね」
「ほお」
「気づいたのは目を覚ました時です。もしかすると思って交番に僕の右手が届けいないかと思って来たんですが……」
「いやあ、届けはないですね」
「そうですか」
 男は残念そうに言う。
「とりあえず記録しておくので連絡先を教えてください」
「分かりました」
 男はそう言ってから僕に連絡先を伝えた。
 それから二時間後に僕がコーヒをすすっていると女がやって来た。
「すいません」
「はい」
「さっき、ひったくりにあったんです」
「ええ! それはひどい」
「私の顔を原付に乗った男にいきなりひったくられたんです」
 女の顔はザーザーと音を鳴らして白黒の砂嵐が吹いていた。
「最近、流行っているんですよ。ほんと勘弁して欲しいですね」
「これから仕事だって言うのに! 警察だったら、早く犯人を捕まえてください!」
「はい、はい、とりあえず、ここに連絡先を書いてください」
 僕はそう言って女に紙を渡した。女はずっと不機嫌だった。
 数時間後、僕がうたた寝をしていると「お巡りさん。起きて下さい」と声がして起きてみると老婆が立っていた。
「どうかしましたか?」
「私が愛犬を連れて散歩している時、悪ガキに愛犬の前足二本を取られたんです。それでほら見てください、私のぺろは後ろ足で歩いているんです」
 老婆が視線を向けた先を見ると大きな目をした犬が後ろ足で立って舌を垂らしていた。
「柴犬ですか?」
「チワワです!」
 老婆は叫んだ。僕はため息を吐いてからこの紙に細かく内容を書いて下さいと言った。

 夕方になり仕事が終わる時刻になると僕はふうと息をして背伸びをした。それから制服を脱いで私服に着替えた。それから顔を剥がし、最近ネットの通販で購入した女の顔を被せる。両手、両足を刃物で切り取って、これもまたネットで購入した手足に着替える。それから僕は夜の街にでる。この格好で遊ぶのもまた、流行りと言うものだ。
あっ、そうそう、拳銃は腰の辺りに携帯している。だってお巡りだもの。

お巡りルーティン

交番に人がいるところを見たことがない

お巡りルーティン

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • ミステリー
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-02-14

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