まちがいをみつける。街が、にんげんと共存しようとせず、自発的に進化している。一眼レフカメラの、ファインダーをのぞいているあいだにも、ビルは階層を増やし、高速道路は伸びて、古い建物は崩壊し、あたらしい基礎ができてゆく。ひとつの生命体となって、星と、つうじあって、やがて、街の循環にのれないにんげんは、街から放り出されるのだと、白いわには言う。なんてことはないように。どうしようもないから、あきらめなさいという調子で。じぶんにはかんけいない、という様子で。そして、白いわにの傍らで、東堂、という男が呟く。やがては星からも、追いやられるかもしれない、と。つまりは、宇宙に捨てられるということだろうか。ぼくらは。人類は。(では、わに、は?)
 そういえば、さいきん、海を撮っていないなぁと思いながら、ぼくは、白いわにと東堂に背を向ける。
 乱立する高層ビルのあいだに、ぽつんと置き忘れられたようにある公園の、ちいさな池。
 ふたりの視線は、いつも、ひどく殺伐としている。はんぶん、しんでいるみたいだと思うし、ぞっとするほどの、生への執着みたいなものも感じる。

(似てないはずなのに、似てる)
(わにと、にんげん)
(爬虫類と、哺乳類)

 カメラの輪郭を、指でなぞって。
 ぼくは、海に行くことにする。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-02-12

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