きみもアーティファクト

 ほんものは、いつも、どこかに埋もれていて。うその表層。わたしたちは踏みしめる。アスファルト。人工物の無臭になれて、自然のにおいに違和感をおぼえる。にんげんがつくったものを愛でているのに、ときどき、そのつめたさにうんざりして、漠然と、地球(ほし)をたいせつにしたいと思う。軽薄な思いつき。あのひとが、わたしの手を握るときの恭しさに、苛立った。(だいすきなんだから、もっと、ひどくしてくれていいのに)
 感情が死んでも、義務的に、肉体は生きていて、意識はなくても、惰性的に、心臓は動いていた。あのひと。
 デジタル化の進んだ街で、土から芽吹く花は朽ちて、ホログラムの装飾だけが、無駄にきらびやかに、そこにあった。

きみもアーティファクト

きみもアーティファクト

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-02-11

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