かたち

 変革。肉体とたましい。チョコレートの温度。おわりのない冬。超自然的な愛を歌う、金糸雀。コーヒーを飲んで、息を吐く。きょうあったいやなことを、つらつらとならべたてるだけの作業。陰鬱を飼い慣らしていた、あのひとが、真夜中の交差点でひとり、ぽつんと、夜空を見上げているあいだに、ぼくのすこしだけ腐っていた部分が、むなしいだけの砂になっていく。風に吹かれて。きえる。
 雪をみていて、あしたも、きみを愛せたらいいのにと、あのひとは祈るように言って、ぼくは、どうかあなたが、すこやかなからだで、肺呼吸をして、血液が滞りなく流れていれば、それでよかった。世界じゅうの、ちいさな愛も、おおきな愛も、みんな平等に、集約したように歌う、金糸雀。たいせつなものほど、こわれてほしい。なんて。
 ミルクと砂糖をいれたコーヒーを飲んで、ビターチョコレートをかじって、しらないだれかの幸せを想像して。
 生まれるなにかも、ある。

かたち

かたち

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-02-10

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