紙袋の少年。
ぶぉんぶぉんぶぉぉぉぉぉん。
小汚い室外機のファンの回転音が、どぶ臭い路地裏に響く。
本日の天気も変わらず、曇り空。
湿気で身体中がじっとりと濡れて、気持ちが悪い。
室外機の隣に誰かがいるのに気が付いた。
茶色の紙袋を被った少年が体育座りをしている。
ただまっすぐ目の前の壁、或いは視界を覆う紙袋を見ているだけで、一切動かなかった。
思わず、尋ねた。
「どうして、紙袋なんて被ってるの?」
沈黙が訪れた。濃紺色の烏の鳴き声が嫌に響く。
数秒後、紙袋の少年はやっと口を開いた。
「……人の視線が、怖いんです」
紫色の蛙も騒がしく鳴き出した。
「紙袋を被ると、誰の目も見えません。見えなければ、ないのと一緒です」
室外機のファンの回転音と、烏と蛙の鳴き声が不快になるぐらい鼓膜を刺激する。
きっと僕は、ここにいては駄目なんだ。
紙袋の少年。