不調和
春のおとずれを待つ。かなしみを吸って、インディゴに沈む街から、生命の拍動を感じる。わたしを呼んでいたのは、オルカ。わたしのなかでは、もうひとり、ぼく、という人格がうみおとす、破壊衝動。ひみつを共有するのは、選ばれたにんげんと、森の神さまであるアルビノのくまと、星の一部分。安定した形を持たない、肉のふくらみ。真夜中に時折、呻く。痛いんだって。さまざまな生きものが、この星には存在しているけれど、とくに、にんげんの、にんげんに対する、憎しみが。腐ると、異臭を放つし。新鮮な憎しみも、すでに色褪せた憎しみも、憎悪、というものは、すべて、星にとって害悪でしかなく、また破裂したときが最悪なのだと。だって、ひとは、ひとをころすし、ほかの動物も、ころすし、自然もこわすし。「こまる」というのが、星の言い分で、アルビノのくまは、わからないでもない、と頷いて、選ばれたにんげんだけが、不満げにテーブルを指で叩くのだ。こつ、こつ、こつ、と。円卓。
いっそ、わたしの長い爪で、ひっかいてあげよう。
その、柔いところを。
そおっと、ね。
不調和