ごめんなさいが言えない

 ネオン。元素。さいきん、街で見かけなくなった。人工の光。きずついた。そういう気配を、かくさない。わたしは、あなたのことばにきずついたのだと、うったえてくるひとの、視線は、まるで…。
 海を想い、宇宙(そら)を馳せる。海洋生物も、天体も、どこか、架空の存在に思える瞬間があって、ガレキの教室で、きみが、節足動物と交わるのを、無感動に眺めていたときのような、茫洋さを感じる。だれかのやさしさが、ときどき、わたしの首を絞める。もう、むかしのように、正常な機能をしなくなった、この星は、これから生まれてくる子どもたちのためにも、一度、滅んだ方がいいのだと言い切るのは、学校のプールに棲みついた、わにさまと、ノエルだ。(そもそも)ほんとうに正常だったのか、という疑念は、だれしもが抱えていて、そして、黙殺している事柄であり、永遠に解けない問いでもある。
 沸騰したお湯で、インスタントコーヒーの粉をとかしながら、今夜の、わたしのかなしみもいっしょに、とけていけと思う。
(ぐるぐる)

ごめんなさいが言えない

ごめんなさいが言えない

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-02-05

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