イケボカフェに行ってみたら、バレンタインフェア中だった話 (3:2)

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『イケボカフェに行ってみたら、バレンタインフェア中だった話』

◆◆◆登場人物

客:オーナーの妹。最後のオーナーと兼ね役。劇中劇の★は、客役を演じる演者さんの名前を入れてください。

オーナー:イケボカフェのオーナー。客と兼ね役。

ハル:性別は女だが、男装しており見た目はだたの美青年。口調は柔らかいが、女性に嫌われることが少ないせいか、割と強引でドSな性格。

音無(おとなし):イケオジボイス担当の店員。本職は、会社経営や経営コンサルなど色々。趣味でイケボカフェに週3でシフトに入っている。カレー屋も経営していて、カフェのカレーも彼のオリジナル。

兄:マイペースな兄弟の兄の方。クールな口調。

弟:マイペースな兄弟の弟の方。人懐っこい口調。普段の一人称は俺だが、劇中劇では「僕」になることが多い。



◆◆◆本文

客:ここかぁ……お姉ちゃんが経営しているカフェって。

「絶対ダメ絶対来ないで! あれを見られるくらいだったら姉妹の縁を切るわ!」

って言ってたけど、そう言われると逆に見たくなるよね? いったいどんな店なんだろ?って思うよね?
いいよね、ちょっとくらいなら!
私だってもう大人なんだから、どんな店でもおねえちゃんを嫌いになったりしない! 家族なんだもん、理解する! うん!
うーん、見た目は普通のカフェだなあ、むしろお洒落……?

(ふらふらと店内に入る客)

ハル:いらっしゃいませ。

客:しまった、つい入ってしまった。

ハル:どうかしましたか?

客:別に! (小声)……なんかえらいイケメンな店員さんだな。姉ちゃんの趣味だったりして。姉ちゃん昔から面食いだったからなあ。いい男見るとすーぐ奇声あげて……。

ハル:よければ窓際のお席にどうぞ。

客:あ、はい! ありがとうございます……ってしまったつい、座ってしまった。ちょっとのぞくだけのつもりだったのに!

ハル:このお店は初めてですか?

客:え? えっと、まあ、はい。

ハル:では簡単に、説明させていただきますね。このカフェは、「イケボカフェ」でして。

客:いけぼ……かふぇ?

ハル:あ、ご存じなかったんですね。といっても、基本は普通のカフェと代わりませんのでご心配なく。
普通のカフェとしてご利用されるお客様もいらっしゃいますし。

客:ああ、そうなんだ……

ハル:いわゆるコンセプトカフェの一つですね、いろんなタイプの「声」を持つ店員が接客させていただきます。

客:たた、確かに、お兄さん、いい声……

ハル:(笑う)ありがとうございます。俺はハルっていいます。気軽にハルくんって呼んでください。

客:は、ハルくん……そんな、やだ呼べません!

ハル:(笑う)うーん、デジャブを感じる反応ですね。

音無:おや、初めてのお客様かな? いらっしゃいませ、ようこそこのカフェへ。

ハル:ああ、音無さん。お疲れさまです。

客:な、なにこのダンディなイケメン……。

音無:初めまして、私もここで店員をしております、音無(おとなし)と申します。

客:あ、は、はい……

音無:おや、おっさんボイスはお嫌いでしたか?

客:ああ! 自分からおっさんと謙遜するタイプのイケオジ……なんというかその、大好物です! ……じゃ、なくてえっとその! なに言ってるんだろ私。

ハル:音無さん、初来店のお客さんをからかっちゃダメですよ。

音無:失敬、かわいらしいお嬢さんだったので、つい。……でも、誰かに似てますね?

ハル:音無さんもそう思います? 俺もちょっと、そう思ってました。

客:え、似てる? 特に芸能人に似てるとかは言われませんけど?

音無:おっと失礼こちらの話ですよ。注文はされましたか? ここのカレーは私の自信作ですよ。ぜひご賞味を。

客:そ、そうなんですか、……カレー大好きです!

ハル:デザートは俺の手作りですよ。今はバレンタインフェア中なので、ガトーショコラをご用意してます。

客:そ、それもおいしそうですね! え、どうしよう選べない……!!

ハル:じゃあランチセットになさいますか? カレーとサラダとデザートにドリンクが付きますよ。

客:なにその欲張りセット……そ、それでお願いします。

ハル:ドリンクは何になさいますか?

客:えっとホットコーヒーで!

ハル:かしこまりました。

音無:かしこまりました。お嬢さん少しお待ちくださいね。

ハル:ごゆっくり楽しんでいってくださいね。

(ハル、音無、去る)

客:はあ……なんなのこの店。心臓に悪い……ん?

音無:ご注文ありがとうございます。スペシャルの8番ですね、かしこまりました。

「なんですかそれは? ああ、バレンタインチョコなんですか? はいはい。誰に渡せばいいですか? は? 私に? 冗談はよしてください。私はとうに引退した身ですよ。やっかいな恋愛事からは、ね。あなたに色目を使っている若造の誰かにでもあげてください。飛び上がって喜びますよ。
……聞き分けの無い子ですね。受け取れないと言っているのに。
……泣かないでください。仕方ありませんね、やれやれ……あなたはあまりにも可愛すぎる。おじさんを本気にさせても、知りませんよ?」

……はい、ありがとうございました。バレンタイン特別台詞でした。喜んでいただけたならなによりです。

客:え、え、なに、何やってるのあの席?

ハル:はい、スペシャル台詞の11番をご注文ですね、ありがとうございます。それでは……
「は? チョコ? そこに置いておけ、ああ、ちゃんと名前を書いておけよ。
来月お返しを配る時、もらってないとか騒ぐ奴がいるからな。ん? なんだよ?
ああ、全員同じマシュマロ3個。毎年同じだけどそれが? あ、いらない? じゃあもらってから捨ててくれ、一人だけ要らないとか処理がめんどくさい。
……なんだよ、まさか、冷たいとか? 知らねえよ、女どもが勝手にくれるものを受け取ってやって、お返しまでしてるんだ。文句言われる筋合いはない。
それともなにか? 本気で俺の心が欲しいとか?(笑う)……鏡見て出直せよ」

はい、ありがとうございました。あ、性癖に刺さった? それは嬉しいな。俺はこんなこと言わないけどね? チョコ待ってるよ」

客:え、なにひどくない? かわいそうじゃない? ハルくんそんな人だったの? でも、お客さんめっちゃ喜んでる……えーどゆこと?

弟:お待たせいたしました、特製カレーとサラダです。

客:ああ! びっくりした!

弟:はい?

客:急に話しかけるのやめてもらっていいですか? 急にいい声来たからびっくりして。ああ、心臓に悪い……。

弟:(笑う)なんか、お客さん誰かに似てますね。

客:? 誰に似てるんだろ? アイドルとか? そんなことより、あれ、ってなにしてるんですか?

弟:ああ、さっきの台詞ですね。特別メニューです。

客:特別メニュー?

弟:はい、ここはイケボカフェですので、お客様のご要望に応じて、台詞を読ませていただいています。別料金になりますけど……はい、これが台詞の一覧です。

客:え、けっこういっぱいある……

弟:はい、オーナーが次々と増やすもので、もう100近くありますね。季節限定の台詞もありますよ、今ならバレンタイン台詞ですね。どうですか? お好きな声に、お好きな台詞を言わせることができますよ?

客:好きな声に好きな台詞を……あんな台詞やこんな台詞を……うわぁ……姉ちゃんたらどんだけ欲望に身を任せてるの。

弟:どうしたんですか?

客:いや、なんでもないの。

兄:おい、「弟」! オーダー入ったぞ、78番!

弟:ああ、すみません、掛け合いのオーダー入ったので行ってきますね。

客:え、かけあい?

弟:店員同士の掛け合いが聴きたいってお客様はわりと多いんですよ。あれは俺の兄貴なんですが、よく兄弟でBLをリクエストされるんです。苦手でなければ聴いていってください。

客:はあ……

兄:ご注文ありがとうございます。ご指名通り「攻め」は俺「兄」が務めさせていただきます。

弟:「受け」は「弟」がやりますーよろしくお願いします。じゃあ、3、2、1、アクト!

兄:「なあ……」

弟:「ばか、離れろよ。人が来たらどうするんだ」

兄:「いいだろ? ちょっとだけ」

弟:「ここバックヤードだぞ! 今は、仕事中! 手を動かせ! 注文来てるだろ!」

兄:「サラダならできてる、あとは、デザートだけ」

弟:「ばか、どこ触ってるんだよ……」

兄:「俺のデザートは……食べごろみたいだけど」

弟:「やめろって……ばか……」

兄:「やっぱり、かわいいなお前」

弟:「ばか、帰ってから……すればいいだろ?」

兄:「なにを?」

弟:「……ばか」

兄:「言わないとわからないなー、わからないから、この悪い手がこんなことを……」

弟:「ぐあ……あ……やめろ……」

兄:「やめて、ほしいの?」

弟:「やめて、ほしく、ないけど……でも……こんなの人に見られたら」

兄:「ちゃんとおねだりできたら、やめてやる」

弟:「お願い…します……やめて……」

兄:「(笑う)じゃあこっちむいて……」

弟:「あ……」(2人キスしようとする雰囲気)

音無:「あ、お疲れ様です。 ん? どうしたんですか?」

兄:(慌てて密着していることをごまかす)「何度言えばわかるんだ! その野菜の切り方はこうじゃなくてこう! 手をな、こう動かすんだ!」

弟:「ああ、そうか、すみません、先輩! 俺何度教わっても覚えられなくて! 実際に手を取って教えてもらったらやっと分かった気がします!」

兄:「まったく、しっかりしろ!」

弟:「すみません! あ、お疲れ様です! いたんですね、気が付きませんでした、先輩に教わるのに集中してて!」

音無:「はあ……」

兄:「もう大丈夫です、さ、着替えて、着替えて!」

音無:「なんか様子が……」

兄:「なんでもないんです! ささ、更衣室こっちです!」(無理やり音無をはけさせる)

弟:「ふー危なかった」

兄:「ふー危なかった。じゃあ続きやるか?」

弟:「やるわけないだろ、いい加減にしろ!」

兄:はい、カット。 ありがとうございました。ここのバックヤードでこんなことが本当に起こっているのか、いないのか、ご想像にお任せします。

音無:なんか、私、最後に一瞬出てきてただの邪魔者ですよね。まぜて欲しかったです。ぜひ、今度は私にBLのオーダーくださいね。

弟:すみませんねえ、毎回これからというところで終わってしまって。まあ、あのオーナーの書くものですから。ライトなBLしか書けませんからあの人。はい、……もっと濃厚なのを書けって言っておきます。

客:な……な……なにあれ……! なんかすごいことをしていたような……(スプーン落とす)あ、しまった、スプーンが……!

ハル:大丈夫ですか? いいんですよ、拾わなくて。すぐ代わりをお持ちしますね。

客:ああ、すみません……ちょっと……いろいろとショックで……このお店っていつもこんな感じなんですか?

ハル:ええ、そうですよ、気に入りませんか?

客:いえ! そ、そういうわけでは……うん、ない。きっと、ないんだけど……なんというか……

ハル:そういえば、新しい台本のモニターを募集しているんですが、いかがですか?

客:新しい台本?

ハル:はい、オーナー初の試みで、お客様参加型の台本です。

客:お客様参加型……え、つまり私も参加するってこと?

ハル:はい、どうですか? モニターで料金はいりませんよ?

客:いやいやいや……そんな……

ハル:恥ずかしいとか?

客:いや、恥ずかしい、とかじゃないけど! 全然平気だけど! 平気だけど! なんというか、

ハル:じゃあ決まりですね。ちょっとまってください準備します。

客:ちょっとまってハルくん? 私やるとか言ってないんですけど!

(間)

弟:じゃ、よろしくお願いしまーす。これが台本。この★(演者さんの名前)の部分が、お客様の台詞ですよ。読むだけで大丈夫だから。

客:え、え、いや、あの……なにがどうなってるの?

兄:はい、劇中はこれを持っていてください。(箱を渡す)

客:(思わず受け取る)あ、はい……なんですかこのかわいい箱。

兄:小道具のバレンタインチョコです。最後に必要になりますから、ずっと持っていてください。

客:はあ……。

兄:舞台は学校。★は普通の高校生、そして……ま、やってみた方が早いですね。

客:え、え……?

音無:では、私がキュー振りしますね。じゃ行きますよ、3、2、1、アクト!

客:ちょっと!

(以下「  」内は劇中劇」)

兄:「悪いな、急に呼び出して」

弟:「ごめんね、急に呼び出して」

客:「うん、びっくりしちゃった、バレンタインの日に、幼馴染の二人から、放課後に空き教室に来て、なんて言われるから、なにかあったのかな、って……」なにこの説明的な台詞、お姉ちゃんへたくそか!

兄:「★は、誰にチョコを渡すんだ?」

弟:「その大事に抱えている箱。バレンタインチョコだよね?」

客:「えー? あー、あれは、その……」

兄:「誰にやるんだ?」

弟:「誰にあげるの?」

客:「それはその、ないしょ(はーと)」語尾にはーと付けるってなによ、できないわよそんなの。

兄:「俺だろ?」

弟:「僕だよね?」

客:「え?」

兄:「照れるなよ」

弟:「照れなくていいよ」

客:なななななな、なにこれ、こんなの聞いてないんですけど。……えっと次の台詞は……
「照れてないよ。2人とも私にとっては、大事な友達で、幼馴染だよ」
っとこれでいいのかな?

兄:「幼馴染……そんな都合のいい隠れ蓑(かくれみの)は捨てろよ。俺たち兄弟二人とも、★が好きなのわかってんだろ?」

客:え、そういう設定なの?

弟:「★ちゃんも俺たちもいつまでも子供じゃないよ……ねえ、どっち、選ぶの?」

客:「え、そんな選べないよ」

兄:「まさか、俺たち二人以外の誰かを選ぶつもりなのか?」

弟:「そんなの許さない。★と付き合うのは僕たちの内のどっちか。さ、選んで? 選ぶまでここから出さない」

客:「そ、そんな……」

音無:「おい、そこで何をしている」

客:「あ、先生!」音無さん先生って設定なのか。

音無:「★さんは嫌がっているだろ、離してやれ」

兄:「いやです、俺たち3人の問題なんで、先生には関係ないです」

客:「先生、助けてください!」

音無:「ほら、★さんこっちに来なさい……」

兄:「先生?」

弟:「先生?」

音無:「こわかった? 大丈夫、先生がついてるから」

客:「はい、先生」な、なんだろう、なんか雰囲気が変……。

音無:「うん、ところで、先生へのチョコはどうしたのかな? ほら、受け取ってあげる。 出して?」

客:「え、先生?」

兄:「先生? 教師の立場で生徒に手をだすのはどうなんですか?」

弟:「そうですよ。僕たちの★ちゃんを離してください」

音無:「嫌です。若造どもはひっこんでなさい」

兄:「★、こっちに来い」

弟:「いや、こっちだよ、★ちゃん」

客:「え、そんな、私どうしたら?」

ハル:「★ちゃん!」

客:「あ、ハル先輩!」

ハル:「大丈夫、私が来たから大丈夫だよ、さ、こっちにおいで」

客:「は、はい!」ハル先輩って、女の先輩なのか……なんでハル君がキャスティングされてるんだろ。

ハル:「よしよし、怖かったね、★ちゃん。大丈夫、私が守ってあげるからね」

客:「うん、ありがとうございます、ハル先輩」

ハル:「ねぇ、★ちゃんのこと一番わかってて、一番好きなのは、私だと思わない?」

客:「え、まあ、そう、だね?」なんか、こっちも雰囲気が……

ハル:「言い忘れてたけど、私、女の子が好きなの」

客:「ええ!?」

兄:「おい、ハル、ずるいぞ」

弟:「それ以上、★ちゃんに触れるな。僕のだぞ」

音無:「何を言っているんですか、★さんは私のものですよ」

ハル:「えー何いってるのー? ★ちゃんは、私がいいよね?」

兄:「俺だよな?」

弟:「僕だよね?」

音無:「私ですよね?」

ハル:「私だよね?」

客:「え、え?」

兄:「早く言えよ。誰を選ぶんだ、★?」

弟:「そうだね、★ちゃんに選んでもらおう」

音無:「まあ、返事はわかってますけどね」

ハル:「さあ、★ちゃん、誰を選ぶの?」

客:「え? そんなこと言われたって」

兄:「俺にしておけよ」

弟:「俺にしておけよ」

音無:「俺にしておけよ」

ハル:「俺にしておけよ」

客:はぁ! ちょっとまって、なんで急に一人称が全員俺なの? さっきまでバラバラだったじゃない。

ハル:あーそれは、オーナーの性癖です。えっと……「さ、どうするの?」

兄:「俺が好きだろ?」

弟:「僕のこと好きでしょ?」

音無:「私のことが嫌いですか?」

ハル:「好きって言ってよ、私のこと」

客:ぐぐぐぐ……ここは一人称、違うんだぁ! あああ……まってもう無理!

兄:そんな台詞あったっけ?

音無:大丈夫ですか?

ハル:顔が赤いですよ?

客:ぐぐぐぐ……

音無:もしかして、★さんは、ドMなのではありませんか? 優しくされるより、上からねじ伏せられる方が興奮するタイプなのかも。

客:は? いや、ちがいます。てかそんな台詞ありませんけど?

兄:なるほど、それは一理ある。となると、女に貢がせるオラオラ系ホストとか?かな。最近オーナーがハマってるやつ。

ハル:いいですね、それで行きましょう。

弟:あ、俺結構そういうの得意、負けないぞ。

客:ちょっと!?

兄:(タバコを吸いながら)で、いくら持ってきた? は、冗談だろ? そんなに少ないわけないよな?

客:……は?

弟:わかった、桁一つ間違えてる? もーしっかりしてよー! 大丈夫、ATM、まだ空いてるよ?

客:いや、何の話?

音無:お金の分だけ、愛してあげますよ? 私に貢げて嬉しいでしょう?

客:嬉しくないー!

ハル:どうしたの? ほら、貢がせてくれて、ありがとうございますは?

客:ありがとうござ……って違う! いかんいかん、危うく釣られるところだった。

音無:おや、違いましたか、わがままな★さんですね。

弟:ってことは、やっぱり、定番の甘やかしボイスの方がいいんじゃないかなー?

ハル:そうだね、女の子はやっぱりそうかな?

客:ちょっとまって、もはや台本無視ですか?

兄:甘やかすのか。苦手なんだが、ま、やってみるか。

客:だからやらなくていいんだってば!

兄:遠慮するな。

客:してない!

兄:そんなこと言ってないで、ほら、こっちに来いよ。疲れてるんだろ? 俺の前では強がらなくていいから。

客:そ、そんなことないもん! むしろ、あなたたちが疲れさせてるんですけど!

弟:どうして? 僕が年下だから頼りない? 僕だってもう子供じゃないよ。★ちゃんに甘えて欲しいな。ね、いいでしょ?

客:ぐぐ……だ、誰がその手に乗るものか。

音無:強がらないで、ほら、ここに座って? そう、私の膝の上。後ろから抱きしめてあげますから。ね?

客:や、やめろ……そ、そんな台詞にほだされたり、し、しないんだから……

ハル:本当に、★ちゃんはかわいいね。それに、いつもがんばってて、えらいね。ほら、よしよししてあげる。

客:ほんとに……? じゃなくて! おかしいでしょ! やめて! お願い! 何かが何かが壊れるぅ……!

ハル:おっと脱線しすぎた……えっとどこまで行ったっけ? 「さ、★ちゃんの答えは? そのチョコは誰に渡すの?」

(兄、弟、ハル、音無で、★を取り合うアドリブ)

客:「わ、私は……! このチョコを……(以下の台詞は演者さんにお任せします。誰かを選ぶ、もしくは誰も選ばない。例)「〇〇さんに受け取って欲しい!」「誰にも渡せません!」など)

(間)

ハル:はい、お疲れ様でした。

兄:んーまだ改良の余地がありそうだな。

弟:アドリブよかったよ、オーナーに提案してみようか?

音無:なかなか楽しかったですね。

ハル:お客様? どうされました?

客:あの…あの……お水……ください。

(間)

オーナー:(客と兼ね役)お疲れさまー。

兄:お疲れ様です。

弟:お疲れ様です。

ハル:お疲れ様です。

オーナー:昨日は、打ち合わせ長引いて店に顔出せなくてごめんね、なんか、変わったことあった?

弟:いえ別に、あ、でも……

兄:オーナー、もしかして、お姉さんか妹さんいますか?

オーナー:えー? 妹がいるけど、どうして?

弟:そっくりですね。

オーナー:えー、よく言われるけど、そんなに似てないと思うけどなー。てか、なんで知ってるの?

兄:そのうちわかります。

オーナー:え? え?

ハル:さ、開店しますよ。今日もがんばっていきましょう!

オーナー:なんなのー?

【完】

イケボカフェに行ってみたら、バレンタインフェア中だった話 (3:2)

イケボカフェに行ってみたら、バレンタインフェア中だった話 (3:2)

イケボカフェシリーズ5人版 上演時間 約20分

  • 小説
  • 短編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-02-04

CC BY-NC-ND
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