イケボカフェの面接がショタショタになった話 (0:1:1)

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『イケボカフェの面接がショタショタになった話』

◆キャスト

オーナー
ショータ


◆◆◆本文

オーナー:大変お待たせして申し訳ありません、私、本日面接を担当いたします、このカフェのオーナーの……って、ん?

ショータ:6分の遅刻ですね。時間を守らないのは社会人としてどうかと思いますよ。オーナーさんであればしっかりしてください。

オーナー:はあ……

ショータ:なんですか?

オーナー:……僕、迷子? あのね、ここは勝手に入っちゃいけないところなんだよ? お父さんかお母さんか一緒に来た大人はどこかな?

ショータ:子供扱いしないでください。俺は一人で来ました。

オーナー:いや、どうみても子供なんですけど……。

ショータ:そんなことより早く面接を始めてください。俺、このイケボカフェで働きたいんで。

オーナー:はぁ……

ショータ:なんですか?

オーナー:ってことは、あなたがこの履歴書を送ってくれた、ショータ君、でいいのかしら?

ショータ:そうですよ。

オーナー:写真めっちゃ盛ってるやん。若く加工する人はいるけど、老けて加工して送ってくる人始めて見たわ。実物、若すぎてびっくりするわ……。
そもそも、私応募条件に「18歳以上の男性」って書いたはずなんだけど。

ショータ:はい、18歳です。

オーナー:うそつけ! ……ああ、ごめんなさい、つい、子供に声を荒げてしまったわ。保護者に怒られちゃう。

ショータ:子供扱いしないでください、って言ってるでしょ。 いいから面接を始めてください。まったく社会人にとって時間はタダじゃないんですよ。

オーナー:ちょっとまってね、えっと警察警察……近くの交番の方がいいのかな?

ショータ:待ってください! 迷子じゃないですって! 働きたいんです! ここで!

オーナー:いや、でも……ごめんね、君をここで雇うわけにはいかないの。

ショータ:オーナー知らないんですか? ショタって需要あるんですよ?

オーナー:そういう問題じゃないのよ。君を雇ったら私が捕まるんだってば、児童保護法的なにかで。

ショータ:大丈夫ですよ、ろうどうきょく、とかになんか言われたら、親戚の子が遊びに来ているだけ、とか言えば。

オーナー:どこでそんな知恵つけてくるのかな……ダメです。

ショータ:交通費も安くすみますよ?

オーナー:だからどこでそんな知恵を……ダメです。

ショータ:どうしてもですか?

オーナー:どうしても。

ショータ:そうですか……

オーナー:わかってくれた? それじゃお家の方の電話番号わかるかな?

ショータ:(泣きだす)ひどい、僕が子供だからって……面接してくれないなんて、ひどい……(泣き声)……あんまりだ……

オーナー:うわ、ちょ、ちょっと! そ、それは卑怯じゃない!?

ショータ:(泣き声)僕、僕、ここで働きたいのに、面接くらいしてくれたっていいじゃないか……

オーナー:あああもう! 泣かないでよー!! わかったわよ、面接すればいいんでしょ!!

ショータ:(ころっと泣き止んで)本当ですね?

オーナー:うわーめんどくさいの来たな……はぁ、面接だけだからね?

ショータ:やった! そうだ、お礼にオーナーのことお姉さん、って呼んであげますね。

オーナー:なんでそれがお礼なのよ。

ショータ:え、喜ばないんですか?

オーナー:うん、私、絶望的にショタに萌え属性がないのよ……。

ショータ:なるほど、ふかんしょう、なんですね、お気の毒に。

オーナー:だからどこでそういう言葉覚えてくるのかな。多分意味はわかってないと思うけど、怖いわー今日びの子供怖いわー。
……まあいいか、じゃ行きますよ。まずは朝の挨拶から。

ショータ:はい。

オーナー:「長男風に」

ショータ:おはよう、お母さん。

オーナー:「末っ子風に」

ショータ:おはよう、母さん!

オーナー:「お寝坊さん風に」

ショータ:やだやだ、まだ眠いの!

オーナー:「反抗期風に」

ショータ:うるせぇな、一人で起きれるよ!

オーナー:「大河ドラマの子役風に」

ショータ:うむ、大義である。

オーナー:「サイコパス少年風に」

ショータ:へぇ、まだ動けるんだ、結構頑丈にできてるじゃん。でも、そろそろおねんねの時間だよ。

オーナー:「少年探偵風に」

ショータ:おじさん、いい時計してるね。今何時か教えてくれる? そうなんだ、ありがとう! ……左効きか。

オーナー:うーん……

ショータ:どうです、完璧でしょう?

オーナー:多分ね、けど、

ショータ:けど?

オーナー:わからない……私って本当に徹底的にショタに興味がないのよ。だからいいのか悪いのかさっぱりわからない!
最近自覚してきたところによれば、私、ドMだから? こう上から言われないと萌えないのよね、ほら「俺のモノになれよ」とかさ。
いや、実際に言われたら嫌よ? 壁ドンとかさ、絶対やばいやつじゃん?
でもだからこそ、架空の世界では、なんかこう、自信に満ち溢れてる大人な男性に、強引に、ほら、こう、ね……

ショータ:お姉さん、お姉さん!

オーナー:あ……

ショータ:なに一人でぶつぶつ言ってるんですか? 早く面接続けてください。

オーナー:おっといけない、さっさと終わらせ……じゃなくて、続きをやらないと。では次は台詞審査、だけど……ちょっと待ってね。
君用の台詞ないから、ちょちょいっと書いてしまうから。

ショータ:早くしてください。

オーナー:はいはい、じゃこれ読んでみて。

ショータ:これですね、なになに
「ぼくがなつやすみでいちばんおもいでにのこったことは、おじいちゃんとおばあちゃんのいえにあそびにいったことです。おじいちゃん、おばあちゃんとかわであそんでたのしかったです。ばんごはんをたべたあと、はなびをしました、たのしかったです」
……なんですかこれ!?

オーナー:え、いけなかった?

ショータ:子供扱いしないでくださいって何度言えばわかるんですか、バカなんですか? もういいです、次は俺が自分で書きます。まったく、お姉ちゃんは、なんにもわかってないんだから。

オーナー:別にいいけど。お姉ちゃんって呼ぶのやめてくれないかしら?

ショータ:よし、できた、じゃあいきますね。
「お姉ちゃん……あのさ……あの、今日は一緒に寝てもいい?かな? ち、ちがうよ、別に一人じゃ怖いわけじゃないやい! ……うん、本当は、怖い映画みちゃって、一人で寝るの怖いなって……お願い! ……いいの? やった! ありがとうお姉ちゃん! ねえ、ぎゅーってしていい? へへ、あったかい。おやすみ、お姉ちゃん」

オーナー:……うーん。

ショータ:なんですか、その反応。ここ萌えるところですよ。はーー! ショタきゅんかわいい、無理! しんどい! ってなるところですよ!

オーナー:まあ、ちょっと、かわいかったかも……

ショータ:え、なんですか? もう一度。

オーナー:なんでもないわ! じゃあ次の台詞だけど、これは……難しいからいいか。

ショータ:馬鹿にしないでください! 俺、漢字得意です! 貸してくださいこれですね!

オーナー:あ、ちょっと!

ショータ:「……をとじて、おおたけふ。…をかけるよ。…れさせてあげる。…かないで、わろう。の、は、めて、き、すんだ……。…はおりる。…もいない……で、きみはもうドロシーじゃない!」

オーナー:はい、お疲れ様です! では、結果は追ってご連絡します! ささ、終わったわよ。帰りなさい。お家わかる?

ショータ:え、もう終わりですか? 俺まだできますけど、なんなら今から働きましょうか?

オーナー:結構です。一人で帰すわけにいかないから、誰かに送らせないと。ちょっとスタッフー? 誰かいるー?

ショータ:……しかたないですね。今日は帰りますよ。でも、一つだけいいですか?

オーナー:なに?

ショータ:お姉ちゃんの好きなイケボさんだって、元は子供だったんですよ?

オーナー:それがなによ。

ショータ:(壁ドン)僕だって、ずっと子供ではないですよ?

オーナー:なによ、生意気ね……

【完】

イケボカフェの面接がショタショタになった話 (0:1:1)

イケボカフェの面接がショタショタになった話 (0:1:1)

イケボカフェシリーズ ショタ版 上演時間 約10分

  • 小説
  • 掌編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-02-03

CC BY-NC-ND
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CC BY-NC-ND