二月の分裂

 ナイフ。つめたくて。物体のそれでなくても、鋭利で。凶器。氷のしたで、ねむる街。あのこたちの街だった。二月の、春がもう、すぐそこにいると思うのだけれど、まとわりつくのは、まだ、真冬の空気。人工的な球体のなかで、ねむるあのこたち。街といっしょに、春のおとずれを待っている。孤独を喰らう。空っぽの皿をなめるのは、二足歩行になれなかった、獣たち。わたしの傍らで、純粋に、セカイヘイワを唱える少女と、犬。公園で、池の主である白いわにが、ささやかな日光浴に耽る午後の、一瞬、脳内で落下した自分の肉体の、妄想的浮遊感に足がすくんだ。
 ばらばらになる。
 たぶん、いろんなものが、うまれたときはばらばらで、しにむかいながら、くっついていく。
 そして、さいごにはまた、ばらばらになるのでしょう。
 少女と犬が憂う、星の末路に、白いわには、どこまでも厭世的で。
 わたしはボート乗り場の売店にある、ソフトクリームが、いま、とても食べたい気分。

二月の分裂

二時の宇宙の鼓動を知らせるのは惑星の振動と光あざわらう天使が白い羽を揺らして月は翳る寂しさに眠る砂漠の花と人間の営みと獣の本能的で儀式めいた こうび

二月の分裂

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-02-02

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted