短々落語「火花ちる」
400文字以内のショートショート落語臭
「火花ちる」
おう、ご隠居いるかい
何だい、八つぁん
ご隠居、百人一首って奴、知ってるかい?
あぁ、知ってるとも。鎌倉時代、藤原定家が百人の歌人の和歌を一人一首ずつ選んで作った秀歌撰だ、小倉百人一首ともいう、で正月には、かるた大会なんぞも行われる
そう、ご隠居、そのかるた大会。あっしがそれに出る事になっちまった
何だい八つぁんもかい? やめときな
何でい、ご隠居も出るのかい
いや私は出ないが、熊さんが出る、ついさっき練習しに来たからね
なにぃ奴は一体何を練習しに来たんだい
在原業平の「千早振る 神代もきかず 竜田川 からくれないに 水くくるとは」という歌の意味を聞きに来たんじゃ
でご隠居、熊公に教えたのかい
いや、知りたいなら落語の「千早振る」をお聴きと答えたよ
そんなこと言って、ご隠居知ってんだろ、意地悪しないで、あっしだけに教えてくんなまし
八つぁん、それはできない
なぜだい
「火花ちる 意見もきかず 立ったから ホラくれないに 腹くくりなされ」
短々落語「火花ちる」
お後がよろしいようで。