エネミー
都会のすきまにて。憂鬱をさがしている。色彩感覚を失った。くるしかったのは、一瞬だったはずなのに、いつまでもきえないで、しみついている。血、みたいに。うばわないで、真夜中の心臓は、きみだけのものだった。想像の世界に沈みこんでいるあいだに、高速道路を突っ走っているまに、宇宙の、しらない惑星にすこしだけ、意識をとばしている刹那に、きのうまでやさしかった生命体はみんな、狂って。自我をなくして。個体とみせかけた、集合体となって、ただ、もう、欲求を貪るだけの、かなしい獣となりました。きみは微笑みを浮かべたまま、夜と同化して、きみにしかみえない輪郭と、肉体をもつ生きものに、救いの手をさしのべる。救済。識別番号を持たないものどもが、いまも、この世界には蔓延っていることを、きみは憂いているから、ぼくは、すべてをいちど、ゼロにしたいと思った。
エネミー