忌み子

冬、私が訪れた山の中にぽつんと小さな村があった。

吹雪の中、足を怪我をしてしまった私をそこの住人はみな優しく、とても良くしてくれた。

その村は数えられるほどの人しか住んでおらず、食料も少なかった。がみな、幸せそうに生きていた。

ある時、私は少し歩けるようになったので村の散策をしてみた。

ふと、離れたところに小屋があった。物置小屋か何かだろうと思った。

「あそこには近づかんほうがええ、おめぇさん呪われっぞ」

そう、看病してくれた人が言っていた。だから、近づかないでおいた。

季節は春になり、この村を去ろうとした時、子供が貧相な格好であるいていた。体はやせ細り、靴もなく、見るに耐えなかった。村人たちは睨みつけ、村の子はその子に石を投げつけて、遊んでいた。

その子はなんの反応も示さず、抵抗なく、私が近づかなかった小屋へと帰っていった。

「人が…あの子が住んでいるのか…?」
私は驚いた。同時に、村人に怒りを覚えた。

なぜあの子はあんなところに住んでいるのか。なぜあの小屋に近づけば呪われるのか。…誰も教えてくれなかった。

「あんな小さな子供が、呪うわけないだろうっ…!」
「あのままでは死んでしまう…っ!」

急いであの小屋へと向かった。

「…………だれ?」
足音に気がついたのか、女の子の声が聞こえた。
「旅の者だ。」
「…何用…?…ここにいては…だめ。来ては…だめなのに.......」

彼女の声を余所に、私は疑問をぶつける。
「なぜ君はこんなところにいるんだ?」
「なぜ君に近づくと呪われる?」
「なぜ村人たちは君を嫌うんだ?」

「………………」「答えてくれ。」「…。」「頼む…。」

長い沈黙。私はドアの向こうで声が発せられるのをひたすら待つ。

「……てない。」「え?」「私は……呪われてない。」「…っどういうことだ…?」

彼女は一気に、これまで喋れなかった分を全て吐き出すように、詰まりながらも喋り出す。

「嫌われるために…こ、ここにいるの。 
だから、わたしは、呪われてなどいない、 
村が…平和になるように、……必要。」
「わたしは、そのために生まれてきた。 
人は誰かの上に立っていないと、不安…だから」
「それで、村は平和になるように… 
そのために、ここに……居るの。」
「私は、ここにいれて、幸せ」

あまりにも酷すぎる。そう思った。

「だから…大丈夫だよ、旅人さん」

私は何も言えなかった。
大勢の平和のために、彼女を犠牲にするか彼女を助けて、大勢の平和を壊すか流れ者の私には、決められないことだった。

その後、私は何も出来ないまま村を去った。ただ、、もし彼女のような境遇の子が助けを求めていたら救いたいと、思った。

最後、彼女は笑っているように思えた。だから、私は彼女に手を差し伸べられなかった。

今、あの子は幸せだろうか。

忌み子

忌み子

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-01-30

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