衛星

 まだ、逢えない。ずっと、みているだけ。相手のほうで、こちらをみているかは、わからないけれど。おなじ側面だけを、みせることしかできない。この道を、ただ、繰り返し、歩いている。夜も朝も過ぎて、また夜がきて、わけがわからなくなると、いつねむればいいのか、もう。
 交わらない。そうなってはいけない。だって、ほら、壊れるから。そうなることだけが、圧倒的な、現実。霞んで、隠れたとき、ほう、息をついたけれど、肺に沈殿しすぎたものの重さを、知る。
 あれ、これ、ぼくの話だったよな。あれ、だれの、話、なんだっけ。深呼吸して、わからなくなりすぎるまえに、そっと教科書を閉じた。

衛星

衛星

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-01-26

CC BY-NC-ND
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