プラスチック・シティ

 さがしていたのは、きみ。花と骨。ゆりかごと花束。うまれたばかりの、やわらかな肉体と精神は、ちょっとふれるだけで、膿む。過去を砕いて、海にばらまいた。埋葬に近い。ひとりぼっちのしろくまが、わたしたちにんげんに抱く憎しみの、はんぶんくらいは享受してあげたい。深夜に降る星は、そのまま湖に沈んでゆくだけ。シリアルナンバー、ファイブの反逆に燃えたのは、かれらの棲み処だった。
 この街は、うそでできている。
 うそを、うそでぬりかためている。
 やさしさも、愛も、みんなまぼろしだよって歌う、脱力系バンド。
 このまえまでおもしろかったテレビ番組が、とつぜんつまらなくなる現象。
 流行りの、飲むチーズケーキを写真に撮って、アップして、それだけで満ち足りているひと。呪い殺すみたいな執念深い恋愛をしているひと。だれかに愛されたいけれど、だれも愛せないひと。など。
 うそだらけの街を構成する、にんげんどもの、なんと可愛らしいことかとうっとりしている、ワニさまが、わたしのことは可愛げがないという。
 なんだかなぁ。

プラスチック・シティ

プラスチック・シティ

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-01-22

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