外/内
〈外〉
一
チョッキンとして
紙を切り
ひらり、と机の上。
あの感触を知っているから
あの感触を思い出して
そういう目で見る世界から
半分、にできるものを
見つけやすくなる。
そういう意識に、
なれればいいなって。
あの手に
この手。
猫の真似して
鳴いてみて
笑ってくれる
(笑ってくれた)
顔が見たくて
(顔が見えなくて)
歩いて、
疲れて
入って、座った。
見回す公園(パーク)
誰も居なくて、
安心して、
指差し確認。
一人で遊べない、
遊具のことを。
「あの、シーソーの上がったままの形。ブランコはじっとして、足元の水溜りを踏んで進む先、ジャングルジムに私は迷わないし、怖くない。そう決意して回転するブランコに捕まって駆け出す。景色はどんどんと早くなって、過ぎ去って」
私は怖くない。
人が埋まっているという「あの木」と、
一緒に隠した、
あの「お手紙」のこと。
でも
覚えていない、
あの穴を
私はちゃんと埋めたのか。
思い出して、
仕舞えなくて、
半分こ、と「さよなら」って
言えなかったから。
その事実を知って
一所懸命に走っても
届かなかったし、
悲しかったから。
だからきっと、
掘り返した思い出と
好きな言葉が
破ったまま、
口を開けて、
二度と、戻らない約束みたいな。
一度目を、
忘れたりしない奇跡を、まだ
信じてる。
その間を往復、
その半分。
だから私は、言葉をもっと覚えた。
塊みたいに持って帰れる、
「好き」
みたいな。
硬い表紙の
知らない人が記す、
この目に入ったその文字を
暇な指で
擦って。
裂いて、
そんなこと、
決して
してしまわないように。
重い鋏と、
くしゃくしゃにした半分に
この運命、
乗せてしまって。
〈内〉
一
受信ボックスと、
その端っこ。
表示される数に
折り曲げる、
指が一本。
もう一本。
一つ多い、私の恋。
タップをすれば開く。
「ただいま、届いた」
という要約と題名をまた一度タップして。
表示されている
文字を使って、
そこに込められた意味と繋がりで、
交わす返事。
好きか、そうでないかと言われたら
答えは、
ずっと昔から決まってる。
一途に
掛けた願いならとっくの昔に叶っている「んだ」。
外したイヤホンが
だから、
シャカシャカ。
罫線に乗せて、
サビを見落とす。
人参色って思うんだ「よね」。
机の上に転がして
書くのを止めた、愛用のペンシル。
歌詞を書く才能より、大切にしているものが多くて
例えば、ありがとうって口にして、いいや、こちらが好きにしていることだからって、言われて。私はまた、嬉しいものを貰ってしまう。
この「余分」を返したいなと思って、またありがとうって口にしても、きっとまた、自分のためにしていることだからって、気にしないでって言われて、返そうと思ったことが余分に帰って来てしまう。
君なら例えば、
心底嫌いな相手に対しても
そう思わせない振舞いを「してしまう」ってきっと言う。
それを素敵って言うことは
どこか、茶化したみたいに感じる「んだ」。
だから、
「こうして」指を差す。
くるくる回して、
ミライに送る。
気持ちを切り離した行動の意味といつかそれに追い付く、君の感情を。
だから、
私はこの返事を送ることを
躊躇わない。
「私は、私はね。」
図書室の冬。
その意図が機能しない、
検索機から離れて。
好きな写真家の本を探して、
好きな作家の短歌を唱えて、
いつかまた会えるよって諭される場面を何回も想像して、
飛んで、跳ねて。
受信ボックスと、
その端っこ。
待ってばかり、
瞬きしてばかりの、熱が篭る。
外/内