性転換【ⅩⅠ】

性転換【ⅩⅠ】

【性転換XI】


【一話】




「くそおぉ! 何てこったあ! こんな身体で生きて行けと言うのかあ! くそお!」

 五十才を目前にした下山喜一は入院先の個室ベッドの上で両手に拳を握って一人、掛け布団を叩いていた。

 
「あらアナタ、今日はねー とってもいい天気よ。 窓から空でも眺めてみない♪」

 花瓶の水を取り替えて来た妻のミドリは笑顔で喜一に声を掛けると窓を開いて外から風を入れた。

 前側に投げ出した両手に拳を握り黙ったままの喜一。

 それを見て見ぬフリして花瓶に花を生けるミドリ。

 
「お前には俺の気持ちなんぞ解からん…… 目を覚ましたら突然……」

 喜一は妻のミドリに俯いたまま低い声を発するとミドリとは逆の方を向いてベッドの中に潜り込んだ。


 花を花瓶に生けるミドリの口元は震えていた。


「男、五十にしてオカマ野郎になるなんて… くそっ……」

 喜一はミドリに聞こえぬように小声を吐き捨てた。

 そんな喜一にミドリは背越しに明るく声を放った。


「身体がどうなっても、アナタはアナタなんだから私は平気よ♪ それにもう必要ないでしょ♪ うふふふふ~♪ 十年以上もしてないんだし♪」

 喜一にジョークを飛ばすミドリは元気つけようと声に笑みを混ぜた。

 ミドリのジョークに喜一はムッとした表情をしグルリと身体をミドリに向けた。


「おい! 見てみろ! パンテーだぞ! 俺が今履いてるのはトランクスじゃない! こんなパンテーなんぞ一生履いていろと言うのか!」

 喜一はミドリに少し声を荒げベッドから起き上がった。

 そんな喜一の方にクルリと身体を向けたミドリは、うふふふと、笑顔して口を開いた。


「それはパンティーよ♪ パンテーじゃないわ~ あっはははは~♪」

 ミドリは大笑いして不機嫌そうに布団を肌蹴て白いパンティーを見せた喜一を見て笑った。

 元々、話し好きな夫でもある喜一にミドリのジョークは他人事のように笑わせた。

 
 交通事故に遭遇してから1ヶ月が経過した頃、自室のベッドの上で医師の前で両足を大きく開いて診察を受けた喜一は経過の良好と退院予定日を告げられた。

 そして医師は診察が終へ部屋を出たところへ加害者側の加害者と勤務先の上司が姿を現し一通りの挨拶を交し本題に入った。


「慰謝料としましてニ千万円用意しました。」

 喜一の前で俯いたままの加害者の横で喜一の目を真っ直ぐに見て話す営業部長の長瀬守は真剣な表情を浮かべた。

 それをベッドの横の小さな椅子に座って見入る喜一の妻、ミドリもまた喜一同様に黙ったまま長瀬を見入った。


「こちらとして精一杯なのですが…… 誠に何とも詫びのしようも……」

 ハンカチを取り出して額の汗を拭う長瀬守は顔を強張らせ声を震わせた。

 そんな長瀬守の横に居る加害者の風見久司は俯いたまま椅子に座る量膝に置いた両手を震わせていた。

 
「貴様! 俺から竿も玉も奪っておいて二千万程度のハシタ金で済ますつもりかあ!」

 喜一の苛立つ声に、ハッとした表情を浮かべる長瀬はダラダラと流れる額の汗拭きに追われた。


 腹の虫の治まらない喜一は消失した息子(さお)の敵討ちとばかりに相手方に詰め寄ったが、ラチが開かないと思って妻のミドリは割って入った。

 それでも結局は延々と続く話しあいの中で、短気な喜一を抑えつつ頭の斬れるミドリが交渉を進行させ慰謝料を1億まで吊り上げた。

 相手方は事故を表沙汰にしたくないのか弁護士の介入も拒絶傾向にあって難色を示しながらもミドリの落ち着いた対応に飲まれていった。

 すると相手方から奇妙な提案がなされた。


「現在、我が社では性転換者向けの新薬を開発中でして…… 如何でしょうか、我が社の臨床試験に御協力頂けませんか? 慰謝料1億は高額ですが、上を説得するためにも協力者という形が欲しいのですが……」

 喜一は横に居たミドリの顔を不安げに見据えた。

「具体的には?」

 両手を前側においたミドリが冷静に口を開いた。


「我が社が開発した新薬の臨床試験に協力頂き、100項目程度のアンケートに回答して頂く形式になります…… 命に関るような薬ではありませんが副作用のチェックや身体の異変などあらゆる視点からのチェックを繰り返します。 1試験、100万円の謝礼とは別に毎月、数十万円の労働対価を御支払い致しますが如何でしょうか。」

 銀縁メガネを掛けた長瀬守はミドリの目を冷静に見据えると、喜一は少しオロオロして妻のミドリと長瀬を見往復した。


「貴様!! 俺に実験台に成れというのかあぁ!!」

 喜一は冷静な長瀬を睨み付けると右手に拳を握り振り上げた。


「アナタ、駄目よ!」

 ミドリは長瀬を見据えながら喜一の腕に自分の手を重ね冷静に下に降ろさせたると無言で長瀬に頷いて見せた。


「考えさせて頂きます……」

 ミドリはグチグチと独り言のように小声でイライラを募らせる喜一の横で長瀬にこう言って話しを一旦打ち切った。

 そして長瀬と風見は立ち上がって二人に一礼すると部屋を出て行った。

 
 喜一は二人が帰った後も一人グチグチとミドリに聞こえるように愚痴を零していたが、ミドリの視線は窓の外の空に流れる雲を見ていた。


「怪我の功名かあ~」

 ミドリはポツリと呟き、その言葉に喜一は愚痴をピタリと止めた。

 
 喜一とミドリは一週間後、加害者側の提案を承諾すると三日後、長瀬は常務の多田を連れ病室を訪れ、1億円の小切手を持参した。

 下山喜一は巨大な〇〇製薬の常務が来たことで驚きの表情を浮かべたが、妻のミドリは驚く様子もなく持参した小切手を受け取り受領書名を喜一にさせた。





【二話】




 それから暫くして喜一とミドリは病院を退院し自宅療養に入ったが、竿と玉を失って気落ちした喜一は自宅の中庭でボォーっとしていることも多くなっていた。

 最初の頃は座っていても痛みを覚えた局部も日に日に痛みが薄れ体育座りしてジーッと空を眺めている喜一を見て、陰ながら涙するミドリも居た。

 事故に遭って数日後に勤務先に提出した〇〇製薬系列の病院の偽の病気診断書も根っからの正直者の喜一には負担でしかなかった。

 時折携帯に来る部下達からのメールにも当初は返信していたものの、最近はメッキリ数を減らしたようだ。


 そんな下山喜一に〇〇製薬からお呼びが掛かったのは退院して半年ほど経過してからのことだった。

 一人で来社せよとの内容に喜一は契約は遂行せねばと行きたくない気持ちを抑えて〇〇製薬の新薬開発部へと足を運んだ。

 そこで喜一の表情を変えさせた50代医師の一言。


「下山さんは現在まで女性ホルモンの服用を拒絶されているとのこと、正直それでは臨床調査が出来ないのです。 何分にも対象者が性転換を望む方ですからね、同じようにされないと話しにならないのです。」

 医師の言葉に喜一は目を吊り上げ医師を物凄い形相で睨み付け、その気迫に医師は逃げるように天井も壁も真っ白い小部屋から出て行き、別の医師が再び喜一の前に姿を現した。


「貴方と会社(うえ)にどんな話しがあったのかは我々研究者には解かりませんが、協力者として名を連ねた以上は物事の道理として、指示に従って貰えませんとね……」

 魔人のような形相をした喜一に三十代の研究者は淡々と話した。


「今日から一週間の入院で女性ホルモンの投与を開始します。少し強めに投与しますが勿論、別の医師と看護師もつきますから安心して下さい。」

 突然の研究者である医師から伝えられたことにも納得しないまま喜一は頷くしかなかった。

 喜一は突然の入院をミドリに伝えたがホルモン剤投与のことは言えなかった。

 この後、喜一は当然的な副作用に襲われ続けたのは言うまでもない。

 
 もう、元の職場には戻れないかも知れないな……


 窓の無い白い部屋の中で意識を朦朧とさせる喜一は一瞬だけ正常さを取り戻し、心の中でそう呟いた。

 
「話しが違う!! 一週間で家に戻れると言ったじゃないか!」

 女性ホルモン投与から8日目の朝、医師に伝えられた言葉に喜一は我は失って怒声を上げた。

 だが医師の説明によれば急激な投与で内臓に負担が掛かりすぎていて治療しながら経過を見る必要があるとのことだった。

 喜一は渋々、妻のミドリに電話して替えれないことを伝えた。

 
 それから更に一週間が経過すると喜一は急激に体力と気力を消耗させ一人で立つことも出来ぬほどに衰えて行った。

 
「ええ、通常の100倍の速度で投与していますからね、ああなって当然でしょう。 まあ、早く一定基準に達して貰いませんとモルモットとしての価値はありませんからね。」

 別室で喜一の状態を会社側の人間に報告する医師は冷酷な目付きをしていた。

 
 天井も壁も真白の10畳ほどの部屋の真ん中、床屋の椅子のようなベッドからズリ落ちないようにと身体をベルトで固定され陰部の尿道に入れた管から尿を排出する喜一は意識朦朧としていた。

 そんな喜一を見る数台の監視カメラと様々な測定をする機械は電子音を定期的に鳴らしていた。

 そして定期的に入る看護士や医師には表情はなく会話はゼロ状態で喜一への女化は進められていった。

 意識朦朧とした喜一の胸は膨らみ乳首も増大し乳房だけなら略、女性と言えるところまでに達していた。

 そして入院してから一ヶ月が経過する頃には喜一の身体は全体に丸みを帯び、本人も気付かぬまま乳房は大きくなってプルプルと揺れていた。

 本来なら何年もかかるところを100倍の速さで女化を進めたことで、喜一は貧弱な女へと変貌を遂げたが鏡の存在しない部屋の中では確認の術も喜一にはなかった。

 薄かった頭からは髪の毛が生え男の太い毛髪は何処かに消えてしまうほどに喜一の女化は急激に侵攻し、案ずるミドリからのメールには医師が喜一を装ってメールを打ち続けた。


「ええ、実は既に新薬の投与も少しずつですが同時に進めているんですよ。 そうしなければ時間がありませんからね。」

 別室で報告する担当医師はメガネの縁を治しながら冷酷な視線で上司に報告していた。


 そんな中で、喜一は別の部屋へと身柄を移された。

 そこは天井が全面ガラス張りのドーム型をした部屋で太陽の光が燦燦と降り注ぐ丸い作りの部屋だった。

 そして女性看護師数人と医師の立会いの下で目を覚ました喜一は入院してから初めて鏡に映った自分の姿を見せられ絶句、仰天した。

 鏡に映ったのは本来の喜一ではなく全くの別人、しかも完全な女性化の進んだ自分の姿であった。

 リクライニングシートを起こされ着ているモノを脱がされパンティー1枚になった喜一はプリプリとプリンのように揺れる自分の裸に絶叫しかけた。

 その時、傍にいた医師は落ち着いた口調で物静かに声を発した。


「これでようやく臨床試験の準備が整いました。 よく頑張りましたね。」

 医師、そして喜一を囲む女性看護師たちの表情は皆、冷たく微笑すら浮かべない中で、自らの余りにも急激な変化に喜一はフラフラしながら大粒の涙を頬に伝えた。

 そして数人の看護たちでベッドから降ろされた喜一は等身大の鏡の前にパンティー1枚で立たされると、Cカップ程の乳房がプリーンと揺れた。

 喜一は何が何だか解からぬまま数人の女性看護師たちに付き添われ歩行訓練にはいった。

 数日間の歩行訓練は喜一の肉体を少しずつ回復させて行きリクライニングシートから普通のベッドに寝床も替えられた。


「ブラジャーは合わせてありますから、これを使って下さい。」

 看護師に言われるまま初めてブラジャーに腕を通した喜一は人形のように言われるがままに両腕を前に差し出した。


「今迄はノーブラでしたが、今日からはブラを付けての歩行訓練に入ります。 ノーブラと違ってバランスの取り方は簡単になると思います。」

 女性看護師は差し出した喜一の両腕にCカップのブラジャーを身につけた。


 そして喜一は窓の無い外の見えない長い廊下を只管、女性看護師達に付き添われ一日に何度もの歩行訓練を受け続けた。

 ブラジャーは喜一の乳房をスッポリと覆い両肩にその荷重をかけバランスを保たせた。


 そして翌日の朝のこと。


「これからは女性としての訓練を開始しますが、これを終えれば一旦は帰宅許可を出せると思います。」

 ベッドの上に起き上がっている喜一に斜め前から説明する医師は機械のように語り終えると部屋を出て行きバックを持った看護師が喜一に近付いた。



「ここにパンティーストッキングとスリップとスカート、そしてブラウスを置きますが、まずはパンストの履き方を教えます。」

 数人の看護師達は恥らう様子もなくただ事務的に淡々と喜一に説明し、喜一もまたフラフラしながら細くなった指でパンティーストッキングに足先を通し下半身を覆った。

 一時間後、OLのような姿を等身大の鏡の前に晒した下山喜一は五十才にして初めての女装に直面した。


「さあ、歩いてみて下さい。 スカートの幅に合わせるように歩調して見て下さい。」

 数人の女性看護師たちはタイトスカートを履きブラウスを身につけた喜一を囲んだ。


 薬が効いているのかフラフラし起つのもやっとの喜一だったが歩行訓練の所為で直ぐにバランスを取り戻した。

 そして目の前の女性看護師に両手を引かれ一歩ずつゆっくりと歩き出した。


「そう、その調子です。」

 喜一は一歩ずつ歩く度にスカートにも慣れギコチなさは少しずつ解消されていった。

 
 角刈りだった太い頭の髪の毛は、女性のように細くシナヤカな肩まで伸びたロングヘアになり、歩く度にサラサラと柔軟性を周囲に見せ付けた。

 そんな喜一の部屋は突然、広めの部屋に替えられた。


「部屋を広めにして大勢の女性達の中で共同生活をさせながら、脳から男を消し去り女性を学ばせる訓練に入ります。」

 別室で両手を後に組んだ白衣の医師は上司に視線を合わせると経過の説明した。


 この日から喜一の周囲に数人の女性看護師が衣食住を共にし始めた。

 喜一の前で裸になり、喜一と一緒に風呂に入り、喜一と一緒にと、トイレ以外は何するでも喜一の周囲には女性看護師達が数人居て今までとは違う表現力豊な会話が始められた。

 そんな中で、喜一は看護師達にポツリと呟いた。


「いつになったら家に帰れるのかな……」

 喜一の力ない言葉は寝食を共にする女性看護師たちの楽しげな会話を静まらせた。

「こんな身体じゃ… 帰るところも無いか……」

 寂しげな喜一の声は部屋の中を暗闇に包んだ。


「キーちゃん♪ 大丈夫だよー♪ 先生も言ってたでしょ! もうすぐ帰れるからね! 頑張ろう♪」

 暗闇のように沈む喜一を励まそうと女性看護師達も居た堪れずに喜一を囲んで元気づけた。

 
 
「取り敢えず本人には帰宅を許可する旨は説明して安心させましたが、筋力が付き次第、苦痛も伴いますからね、眠っていてもらいその間に骨格の萎縮試験に入ろうと思っています。 これが成功すれば残すは性器の性能に入れます。 まあ、それまでは時間もありますからね、乳房と乳首の快感(せいのう)テストを実施します。」

 別室で上司に報告する医師はニヤリと口元に笑みを浮かべた。



 喜一を励ます看護師達の言葉とは裏腹に医師は喜一改造を進めようとしていた。




【三話】





「これはどうですか? 何か感じますか?」

 医師と女性看護師を前にパンティー1枚で椅子に座る喜一はサルグツワをされ白衣の検査員に乳房を揉まれウットリしていた。

 女性看護師たちが見せる初めての表情は女性ならではの恥じらう顔だった。

 そんな看護師たちの横にいて表情一つ変えない男性医師は冷静沈着だった。


「次、これは… どうかな……」

 乳首を弄られる喜一は大きく全身をビク付かせ喉の奥にヨガリ声を溜め乳首を勃起させ身悶えし続けた。

 女性看護師たちの頬が紅く染まった。

 検査員の右手が喜一の左乳房を揉み、左手で掴んだ乳房から乳首が突出し、それを弄られた喜一はビク付きでリクライニングシートを揺らした。

 
「はぁはぁはぁはぁはぁ…… チュッパレロレロレロ……」

 白衣の検査員は喜一の背凭れをリクライさせ、晒した乳房に貪り付いて舌を動かし続けると、女性看護師たちはいっせいに立位のまま両足を内側に窄めた。

 喜一は我を忘れて検査員の舌に身悶えと仰け反りを繰り返し苦しそうに喉の奥に声を溜め続けた。

 この時、女性看護師達は全員、パンティーの内側をヌルヌルした液体で濡らしていた。

 両手で掴まれた喜一の乳房から絞り出される乳首を交互に検査員は吸い回した。

 
「凄い効果だな…… 成功だ……」

 乳房に貪り付かれ激しい官能姿を見せる喜一に担当医師の股間も勃起していた。

 これを期に医師に命じられるまま、検査員たちは複数で喜一の身体を愛撫すべく調教を開始した。

 そして早朝から夜まで続けられる官能調教に喜一は身も心も女化し切ない声をサルグツワの下で奏で続けた。


 
「やりてぇ…… いい身体してやがる……」

 ある日のこと検査員が大きく開かされた喜一の柔らかい内モモを舐めながらポツリと呟いた一言が、医師の耳に届いた瞬間、医師は目を大きく見開いて一人呟いた。

 検査員は日に日に女として開花していく喜一の身体に我を忘れて貪り続けた。



「骨格の萎縮の前に生殖器の性能を上げるか……」

 手術台に麻酔で眠らされた喜一は、両足を大きく開かされた上、両足首を固定されていた。

 その喜一を囲むように数人の看護師と数人の医師が喜一の陰部を覗きこんでいた。

 血圧と脈拍をみながら慎重に医師の手に持たれた注射器が陰部にむけて操作され、喜一の女性器を本物同様にする新薬の試験が開始された。

 新薬は注射で二十箇所以上を注射されるだけの簡素なものだったが、その効果に手術室の全員が期待していた。

 
「これで濡れる身体になるはずだ……」

 医師たちは施術後の喜一の割目の中を再び覗き見ると手術室から出て行った。


 〇〇製薬の新薬は男性から女性へ性転換した患者の身体の中に女性同様の細胞変化を引き起こさせる活動細胞を注入し、性転換で整えられた性器を本物同様に進化させ男と女の構造の基本を覆させるという物だった。

 これにより不可能とされた性器の完全な女化が進み、本物同様に濡れてエクスタシーに達することの出来る身体になるというものだった。

 ただ、この実験には未知の副作用が存在し、患者がどのような副作用を受けるのか誰も解からないのであった。

 つまりこの手術は性器を女化するという前に、患者がどんな副作用を受けるのかとかいう実験的な試みでもあった。

 即ち命を保証は何処にもないというものだった。

 
 この手術のあと、喜一の容体は不安定なものへと変化していった。

 身体の中に進入して来た女化細胞を敵と見なして正常細胞が攻撃に出たものだった。

 四十度近い高熱は治まる気配無く医師や看護師は寝ずの治療に専念せざるえなかった。

 だが、この変化も術後一週間ほどで次第に落ち着きを取り戻し喜一を苦しめた高熱は次第に平熱へと戻って行った。

 
「見ろ! 見てみろ!」

 平熱を取り戻した喜一の陰部、クリトリスに器具の先を擦る医師から突然の歓喜な声が周囲に伝わった。

 喜一のクリトリスは器具の先からの刺激に身体を大きくビクつかせ膣の入口に出来たバルトリン線から微量ながらも粘液が確認された。


「急いでこれを分析してくれ!」

 医師の声が周囲のスタッフたちを動揺させた。

 
 そして二週間が経過し、術後も良好となった喜一は久し振りに屋上のガラス張りの天体ドームに居た。

 
「妻に連絡を取りたいのだけど……」

 喜一の声は副作用の所為か以前の喜一ではなく別人の女性の声に替わってしまっていた。

 二十代後半の女性の声に替わってしまった声は喜一の口数を極端に減らした。

 
「下山さん、実はね……」

 看護師の女性は気落ちしている下山喜一を死の縁から蘇らせた。


 女性化への新薬と同時に元に戻れる新薬も同時に開発進行していて、喜一の臨床が終った後、喜一が望めば性器は別としても全てが元に戻れるという話しを耳打ちされた。

 喜一は妻、ミドリへの電話をもう少し後にしようと携帯からメールを送信し、ガラス張りのドームから青い空を眺め続けた。

 元気な顔を見せて欲しいという妻、ミドリに対して喜一は思い詰めた表情でメールを繰り返していたのを女性看護師は涙を滲ませて見詰めていた。

 


【四話】




「どけどけどけどけどけええー!! 親父を! 親父を出しやがれええぇ! 出さねえならしょっ引くぞおぉーー!!」

 〇〇製薬本社の一階フロアーは騒然となっていた。

 警備員が一同に集結し玄関から入って怒鳴り散らしている二十代後半の若者二人を取り囲んだ。

 その瞬間、二人の若者はスーツの内ポケットから警察手帳を出し集結した警備員たちを後退りさせた。

 そして駆けつけた本社の社員達相手に、下山喜一を拉致監禁している容疑で捜査すると大声を張り上げたのは、言うまでもない下山喜一の長男と次男の刑事(むすこ)たちであった。

 二人とも喜一に似た曲がったことが大嫌いという性格であった。


「ここに拉致監禁されている! 下山喜一を直ちに解き放てえ!! さもなくば警察庁を相手に戦うことになるぞおぉー!!」

 二人の刑事である息子達は駆け寄る社員達に警察手帳を見せつけ、ドンドン奥へ移動して手錠をクルクルと回して来た。

 
 その頃、ある個室では医師と女性看護師数人が喜一に等身大の鏡を見せていた。


「キレイでしょう。 細胞が活性化され若返っている、どうみても二十代です。しかも美しい… もしも貴方が女性としてこの世に生まれていたら99%以上の確率でこの状況だったでしょうね。」

 等身大の前にパンティー1枚で立たされている喜一は一晩で変わった自分を見て呆然とし、説明する医師もまた喜一の全身のラインに目を見張っていた。

 女性看護師達は喜一の美しさを羨んでいた。

 
「これが当初の頃の貴方の等身大写真…… そしてこの鏡に映っているのが現在の貴方です。 貴方は美しい女性へと進化したのです。 貴方の協力のお陰で世界中の人々が救われます。 あと少し… あと少しの辛抱で全てが終ります。」

 担当医師は目を輝かせ喜一の後ろへ回るとソッと両肩に手を添えると、周りにいた女性看護師たちも寄り添うように喜一に近付いて鏡に見入った。

 
「今まで色々ありましたが、あと少しです。 辛抱して下さい。」

 担当医師の物静かな物言いは喜一にはとても心地よかった。

 
 喜一が個室で着衣している頃、別室ではいつものように上司に報告する医師がいた。


「最後は骨格の萎縮… これを成功させれば世界中の性同一障害者(かんじゃ)は救われるでしょう。 そして我が〇〇製薬は……」

 白衣姿の二人は互いに視線を合わせ口元に大きな笑みを浮かべた。

 
 その時だった。

 警報機が作動しブザーの音と共に緊急場内アナウンスが流れた。


「外部から侵入者あり! 外部から侵入者あり! 直ちにドアロックを実施する! 直ちにドアロックを実施する!!」

 この騒ぎに動揺した女性看護師と医師たちは喜一を連れて奥の部屋へと移動し始めた。


 その時、突然天井のスピーカーからマイクを奪い合う男達の荒声が聞こえた。

 
「親父いいぃー!! 親父いいぃーー!! 親父いいぃー助けに来たぞおぉー!!」

 二人の刑事(むすこ)たちはマイクを奪い声を張り上げた。

 奥の部屋へと連れられる喜一がその声を聞いた瞬間、自らの顔を両手の平で覆い隠し逃げる足を急がせた。

 喜一は顔を強張らせ激しく動揺しながらも時折、立ち止まっては天井のスピーカーを見上げた。

 
「会わせてあげたい… 会わせてあげたいけど今は……」

 喜一と寝食を共にする女性看護師たちは唇を噛み締めて喜一の手を引いて奥へと足を急がせた。

 
 その頃、二人の刑事(むすこ)達は〇〇製薬社長室にその身を止めていた。


「捜査令状をお持ちですか? 無ければお帰り願いたい……」

 細身のスーツ姿の社長は巨大な木目の机の向うに立つ二人の刑事(むすこ)達に物腰静かに口を開いた。


 すると二人の刑事(むすこ)達は、合わせるように落ち着いて口を開いた。

 ここに来た下山喜一と二ヶ月、連絡が途絶え家族ですら面会出来ないのは不当監禁の疑いが強い、必要であれば礼状を取ってくるがと切り替えした。

 この言葉に社長は顔色を曇らせた。

 
 その頃、試験病棟の奥の小部屋にいた喜一は女性看護師にメモを渡し届けるように頼んだ。


「俺は元気で大丈夫だ。 不当監禁でも何でもないから安心しろ。 あと少しで戻れると医師も言っているから、今日のところは一旦は引き揚げてくれ。 筆跡で俺が元気だということが解かるはずだ。 母さんを頼む。」

 喜一の達筆は健康をアピールし、直ぐにこのメモは最上階の社長室にいる二人に届けられた。


「あと一週間待つ。 その間に親父を解放しない時はここに大勢の捜査員が駆け込むことになる。」

 二人の刑事(むすこ)達は脅える社長に低い声を発するとそのまま帰った。

 
 そして試験病棟の奥では、担当医師たちが上司から一週間しかないことを伝えられ顔色を変えていた。

 
「一週間なんて無茶だ! 折角、容体も安定しているのに! このまま最終試験に入ればどんな深刻な副作用が出るかも解からん!」

 二人の医師の互いに顔を見合わせて上からの指示に難色を示しあっていた。

 
「せめて、あと二週間! 二週間の猶予を取れないか交渉して欲しい。 でなければ全てを失う!」

 二人の医師は上司への連絡で豪気を強め喜一の命を優先させた。


 医師たちの話しを聞いた会社側は直ぐに猶予期限延長の交渉に入るべく協議に入った。


 その頃、試験病棟の奥から出て来た喜一は唯一、心の休まる天体ルームへと看護師たちと移動した。


「こんな姿、見せられない…… しかも息子達より若返って……」

 ベンチに腰掛ける喜一を見るに見かねた看護師達は医師へ早期の試験の終了と元に戻るための新薬の投与を願い出た。

 だが、医師は二度も危険な臨床試験を行うことのリスクの大きさを看護師達に青ざめた表情で伝えるに留めた。

 
 そしてその夜、喜一は再び医師、女性看護師たちの立会いの下、検査員たちからの感度検査に陰部を濡らしていた。


「あひっ! あひっ! あひっ! あああああぅ!」


 男達は白いズボンの内側を勃起させカウパー支線液を溢れさせながら、絶世の美女の身体を貪り触手し続け、サルグツワをしていない喜一から愛らしい喜びの声が部屋の隅々にまで奏でられていた。


「あん… あひぃ! あああああぅ!」


 そんな喜一から採取された愛液は何度も成分検査され同時に最大量も測定され続け、喜一の身体は100%の女化を実現したと医師達は確信した。

 ただ傍に居た女性看護師たちの全員が喜一の鳴き声と男性検査員の動きに官能し床に座り込んでしまった。

 


「脳はどうなんだ? 脳自体に女化の変化は生じているのか? 協力者に女の恥じらいはあるのか? チェックしなくていいのか?」

 窓のない会議室、数人の専門医たちの席上、チェック項目を担当している医師から早口で質問が出された。

 医師達はその質問に顔を見合わせると女性医師から思わぬ発言が飛び出した。

 
「駄目です! 彼女はもうレッキとした女性なんです! 彼女の羞恥心を確認する必要は無いと思います!」

 女性医師の甲高い声は周囲の医師達の耳に突き刺さった。


「患者に催眠術をかけて自分は女子高生だと信じさせた上で誰かにレイプさせてはどうかね~♪ 勿論、挿入直後で終らせるとして……」

 五十才過ぎの男性医師は目を笑わせジョーク交じりに語ると女性医師の胸元をチラリと見詰めた。


「先生、ジョークが過ぎますよ……」

 主任検査医師は五十過ぎの医師を睨み付けた。


 


【五話】



 
「ねぇ、キーちゃん、これ着けて見て……」

 喜一は喜一と今夜、部屋を共にする当番の女性看護師から紙袋を手渡された。

 ベッドに腰掛けながら紙袋を開た喜一は手にとった黒いガーターベルトを見た瞬間、頬を紅く染め恥じらいを見せた。

 
「キーちゃんなら絶対に似合うと思うの♪」

 紙袋に手を入れ取り出した黒いガーターストッキングのレースを見た喜一は目をパチパチさせ手を旨に当て俯いた。

 喜一は彼女に言われるがままに裸になると、黒いレースのスキャンティーをそしてガーターベルトを腰に装着しストッキングに足を通した。

 
「キレイ…… 次はこれを着けて見て♪」

 喜一は彼女に言われるがまま黒いスケスケのベビードールに身を包むと顔を真っ赤にして恥らった。

 小さな灯りの下、美しすぎるほどに美しい喜一のラインが女性看護師の目に入った瞬間、喜一は彼女にベッドへと押しつけられた。

 喜一は突然のことに何が何だか解からずに息を飲むと、彼女は喜一の身体に自らの身体を押し当てるように重なった。

 
「キーちゃん…… 可愛い……」

 身体を重ねてきた彼女の言葉に喜一は胸の奥をドキドキさせ彼女が自分に何をしようとしているのか解かってはいなかった。

 その瞬間、彼女の手と指が着けたばかりのスキャンティーを喜一からズリ降ろし恥かしい部分の外肉が開かれた。

 喜一は咄嗟のことに声を出す間もなく、開かれた外肉の内側へと彼女の指の侵入を許してしまった。

 彼女は喜一の内側へ入れた指を縦に動かし喜一のクリトリスの真上で丁寧に優しく回し始めた。

 喜一は思ってもいなかった彼女の行動に驚いたものの、感度の高い喜一の身体は直ぐに彼女の指を受け入れ備えられたバルトリン支線液を俄かに分泌させた。

 彼女は無言のまま喜一に濃厚な口付けをし唾液と唾液を絡ませると自らの口元を喜一から脱がせたスキャンティーの真上へと移動させた。

 
「スウゥ~ レロレロレロ……」

 喜一の割目に舌を押し付け縦に彼女の舌が動いた瞬間、喜一はグイッと全身を仰け反らせパチパチパチと瞬きを繰り返しながら喉の奥に切ない吐息を溜めた。

 彼女は喜一から溢れる愛液を舌に絡めながら割目の中を何度も縦に往復させ喜一を官能の世界へと引きずりこんでいった。

 柔らかい女の肉肌が二つ絡みあいながら、やがて一つになって行き二人の時間は一つになった。

 そして生まれて初めて膣の中に指を入れられた喜一はエクスシーという言葉も知らぬまま只管激しい官能に身を委ねていた。

 指を入れられても自分の身体に何が起きているのか解からない喜一はただ内側に擦れる気持ちよさにグッタリし、その指が奥へと入った時は太ももの柔らかい肉をガクガクと震わせそして中で指がウゴメクと両手でシーツを鷲掴みし首を左右に振って仰け反りを繰り返した。

 それでも喜一は何がどうして激しい快感が脳天をつんざいているのか皆目解からぬまま泥沼に足を引き摺られるように全身をその中へと沈めていった。

 女性看護師はそんな喜一の身体を独り占めしている優越感と、今まで耐えていた喜一への愛欲を爆発させていた。

 喜一の身体は彼女によって熱で溶けたキャンディーのようにトロトロに溶けていった。

 彼女の指先が黒いストッキング越しに滑る度に、ストッキングを吊るガーター紐は伸縮を繰り返し爪先はギュッと閉じ続け、パッと開いた瞬間、再び喜一の爪先はギュゥっと力一杯閉じられた。

 

 その頃、一室の薄暗い部屋の中、葉巻に火をつけながらヒソヒソ話しをするように一人の中年男性が目の前の一人の男に冷めた視線を向けていた。


「ところで患者は気付いてないんだろうな! 車に接触して気絶しただけで掠り傷程度だったのを重症に仕立てての性転換手術…… バレたらとんでもないことになる…… ただの性転換したいだけの人間ならデータにバラつきがあるが、その気の無い者ならデータも精度が高い。 この計画も大詰めを差し掛かっているが、この秘密は永遠に我々の胸の内に仕舞っておかなければ……」

 

 交通事故で瀕死の重傷負ったとされた男は生殖器の激しい損傷で性転換を余儀なくされた。

 被害者の男性は加害者によって車でとある病院に運ばれた。

 そして被害者の生殖器は復元不可能状態を前提に、医師たちの必死の努力により日常生活に支障のない女性性器への変更を果たしたと、事実とは異なった説明を被害者と妻に行った。

 だがこれは全てが仕組まれた人体実験用のモルモットを手に入れるための陰謀だったことを誰も知らない。

 
「誰でもいい…」


 上司の命令でモルモットを探しまわっていた風見は手当たり次第に車で被験者を探しまわっていた。

 とは言っても生身の人間を意図的に撥ねることは風見にとっては恐ろしい行動だった。

 何時間も探しまわり最悪、交通事故を装える事態に備えながらも時速四十キロほどで車を走行させ被験者を探した。

 
「駄目だ… 僕には出来ない! 人を撥ねるなんて……」

 風見は悪事を考え直し、このことを上司に報告しようと運転中に携帯電話を操作し始めた瞬間、悲劇は発生した。

 車道を渡っていた人影を見落としそのまま下山喜一に接触、慌てて車を止め車道に倒れている下山を見た瞬間、風見の頭の中は真白になり、気づいた時には下山を〇〇製薬系病院へと運んでいた。

 診断の結果、下山は軽度の全身打撲だけだったが、その下山は重体という位置づけで手術室へと運ばれて行った。

 風見は己の罪の大きさに廊下に崩れ落ちた。

 そして手術室では軽度の全身打撲の下山から男性性器の切除と、全身の破損箇所を処置縫合する偽装工作かせ施され、持っていた運転免許証から下山の自宅を探しだし、妻のミドリのもとへ下山重体の知らせを別チームが画策した。

 更に妻のミドリが病院に駆けつけた時、医師も看護師も加害者も下山重体を演技し、医師はミドリに嘘の状況を伝え性転換に同意させた後、奇跡的に下山の命が助かったと知らせた。

 死ぬと伝えられていたミドリにとって奇跡的に命を取りとめた下山にミドリは号泣して喜んだが、それを見ていた風見は良心の呵責に苛まれていた。

 そして集中治療室へ運ばれた下山は全身を包帯で包まれミドリからは重体人のように見え病院関係者に騙され続けた。

 求人などを用いてモルモットを探せば新薬の事が外部に漏れることが懸念され、かといって性同一障害者では何かあった時に世論に攻撃されることも予想され、単に女性へ憧れる女装子では普段から女の真似をしてマスターベーションするような状況では新薬の齎す精神的な正しいデーターが取れなかった。

 身勝手な企業の陰謀は最終的には偶然の事故ではあってものの予定通りに進む形となった。

 〇〇製薬の開発した新薬は性転換した男性の顔も身体も声をも身体の機能までも女性化する新薬だった。

 男性から女性へ性転換を果たした者にとって、濡れる感じるエクスタシーへ入れる身体は喉から手が出るほど欲しくて欲しくて堪らない永遠の肉欲であり、もしそれが手に入るとなれば対価は惜しまないだろうと〇〇製薬は考えていた。

 しかも顔の整形も豊胸も必要なく、どんな長身でも骨格を萎縮させることが可能になれば世界中に薬を求める長蛇の列は間違いないだろうとも考えていた。

 そしてこれが成功すれば今度は女性から男性への新薬の着手も世論から支持される。

 

 


【六話】
 

 

 

「若返りの効果か…… まるで棚からボタ餅ですよ…… 新薬本来の効能を持ちつつも五十代から二十代ですからね、場合に依ってこれは性転換の新薬というより人間の寿命を延ばす画期的な新発明かも知れません。 見て下さいモルモットを。 どう見ても完全に女性、しかも美しい、そして二十代ですよ♪ あのプロポーション… 男なら被りつきたくなるほどです。 検査員の報告に依れば体臭は完全に女性、濡れ具合も味も感度も申し分ないそうです。 そろそろ骨格萎縮の実験に入らねばなりません。」

 白衣の主任医師はマジックミラーから検査室にいる喜一を物欲しそうに見ては横に居る上司に口元を緩めた。

 すると、横に居た上役の男は医師をチラッと見て冷めた口調で呟いた。


「全てが完了したら味見して見たいものだな……」

 上役は医師とマジックミラーのある部屋からデニムのマイクロショートパンツ姿の喜一の太ももをニヤニヤして見た。

 

「これがモルモットの使用済みの下着と報告書です… 検査の結果も完全な女性器の分泌物、まあ、強いて言えば生理が無い身体ですからね、これで生理でもあれば完璧でしょう。」

 透明なポリ袋に入った喜一の使用済みパンティーと報告書に目を通す上役は口元に笑みを浮かべて主任医師をチラッと見た。

 嫌らしい目付きでパンティーの内側を凝視する上役。

 
「こんなところを女医にでも見せれたら大変ですね~♪ ですが何故、女医(かのじょ)を加えたんですか?」

 ポリ袋を黒い袋の中に仕舞いながら上役に質問した主任医師。

 
「上からの要望だ。 モルモットの人権に配慮したんだろう。 我々が妙な男心を出さんないように… ふっ♪」

 上役はドアを開きながら苦笑いして部屋を出た。


「しかし、もし骨格萎縮が失敗してモルモットが死んだらどうするんですかね、上は……」

 黒い袋を持って上役の後ろを付いていく主任医師は不安げな表情を見せた。


「失敗したとしても一定のデータは取れた… それに我々には無関係の部署が上手くやってくれるさ… 我々は我々に与えられた任務を遂行すればそれでいい…」

 上役は顔色一つ変えずにそう語った。



 そして何も知らない喜一は女性看護師たちに囲まれて健康チェックのための反復横飛に柔肌を揺らせ、とても五十代とは思えない動きにチェックしている看護師達は驚きの中にいた。
 

 
「馬鹿なヤツラだぜ… 日本の警察を舐めるんじゃねぇ…… 親父、今、助けてやっからな! そっちはどうだ、入れそうか?」

 二人の刑事(むすこ)達は密かに数人の応援を呼び、〇〇製薬臨床試験病棟に潜入していて喜一の居場所を探していた。

 
 〇〇製薬に潜入している7人の刑事達は白衣に身を包み秘密裏に無線機への声を潜めた。


 
「よし♪ 今日の体力測定は終りよ♪ キーちゃん戻りましょう♪」

 女性看護師からタオルを受け取った喜一は別人のごとく可愛い表情を浮かべると三十代の看護師たちと歩調を合わせシャワールームへと移動した。


「兄貴、ここには患者名簿も何もねえ、捜査は難航してる。」

 試験病棟の看護師詰め所に潜入した弟の下山春樹は警備室の中で監視カメラに細工するべく兄の信二に連絡をした、一緒に潜入した仲間たちからも次々に喜一不明の連絡が入った。


 そして数分後、仲間から信二に連絡が入った。


「こちら電子機器捜査班の山川! ここに極秘扱いの五十代の患者が居るらしい! 現在、情報を検索中!」

 下山信二のもとに仲間から連絡が入ると一斉にその情報は仲間に伝えられた。


 銭湯のような大きな風呂場、数人の女性看護師たちと裸で汗を流す下山喜一は長い黒髪を強めのシャワーに晒し、後からその光景を見る看護師たちはその美しいプロポーションに自らのプロポーションを隠すように湯船に肩を隠した。

 
「あと少しでキーちゃんともお別れかぁ……」

 寂しげに年長の看護師が呟くと一斉に周囲の看護たちが集まり出した。

「えっ!? だって、あれは上の方で危険が高いから中止って!?」

 別の看護師が驚きの声を潜めた。


 すると、喜一と愛し合った看護師が思い詰めた表情で口を開いた。

 
「キーちゃんね… ここへは騙されてつれて来られたらしいの…… 私達は当然、キーちゃんの了承の元に臨床試験していると思ってけど、上がキーちゃんにした説明は全然、別なの…… でもキーちゃん、あの性格だから、約束は約束だって……」

 看護師の言葉に周囲は唖然とした。


「何とかしなきゃ……」

 看護師たちは喜一を部屋に連れて行くと、主任医師のところへ詰め掛けた。


 突然やってきた看護師たちに動揺を隠せない医師は目の色を変えて看護師たちを叱責したが、看護師たちからの、殺人という一言に我に返ったように急に黙り込み、逃げるように看護師たちから視線を外し部屋を出て行こうとしたが、ドアの前を看護師たちが塞いだことで医師は逃げ場を失った。

 そして沈黙する医師に喜一と愛し合った看護師が口を開いた。


「私… このこと警察に話します!」

 黙り込んでいた医師はその言葉に目を大きく見開いて看護師たちの顔を一人ずつ見回した。

 
 その時、突然臨床病棟の防犯システムが作動し警告音が響き渡った。


 主任医師は室内に響く警告音に驚き立ち上がると部屋のドアを開けて廊下の様子を覗うように顔だけ出して左右をキョロキョロと見回した。

 警備員達が手に警棒を持ち血相を変えて走り回り不審者を探し回っていた。

 そこへ左側から白衣を着た七人の男達が物凄い勢いで走って来た。


「誰だ? あいつらは!?」

 真っ直ぐにドアから顔を出した主任医師のところへ突進してくる男達に首を傾げる主任医師は、臨床病棟用ではない一般外来用の白衣を来た男達をを凝視した。

 そして男達が顔を出している医師を囲むように立ち止まると、看護師たちは一斉に医師の後ろにせり出した。


「親父! いや、下山喜一を出せ! 何処に監禁している!」

 七人の男達は白衣を一斉に脱ぎ捨てると背広の内ポケットから警察手帳を出して医師に見せた。


「なっ! 何で警察がこんなところに!! 何の権利で臨床病棟(ここ)を捜索している! 早く出ていきたまえ!!」

 主任医師は携帯電話を取り出し警備員を呼ぼうとした。


 その瞬間、看護師たちは一同に、こっちですと口を開き喜一の居る方向を指差そうとした瞬間、看護師たちの脳裏を変わり果てた喜一の顔が過ぎった。

 女性看護師たちはその場で言葉を失いガックリと肩を落とし俯き、喜一の息子の信二は堰かすに一人の看護師の両肩を揺すった。

 その瞬間、主任医師はスキを見計らって七人の男達の足元を掻い潜って走って逃げ出し、七人の刑事たちは追うことをせずに医師を見送った。

 
「何処に居るんだ!! 早くしろ!!」

 信二の横に居た春樹が怒鳴ると看護師たちはハッとした顔して右側の廊下を指差した。


「ありがとう♪ 案内してくれるかい?」

 信二の礼に答えるように看護師たちは七人の刑事たちを廊下の奥へと案内し歩き始めた。

 
 そして………



【七話】

 
 

 
 
「違う、俺たちが探しているのは五十代の男なんだ、女の子じゃない!」
 
 看護師たちに案内された七人の刑事達は白いドアの丸い小窓から見えた色白の十代の女の子を一瞬見て直ぐに看護師に伝えると、看護師たちは慌てて丸い小窓に群がり中を覗いた。


「えっ!? そ、そんな馬鹿な!!」

 看護師たちは代わる代わる小窓から中を覗いて唖然とし、それを見た七人の刑事達は看護師達の驚きの顔を見て困惑した。


「ここが… ここが下山喜一さんの部屋で… す…… でも!」

 看護師は刑事たちに動揺して告げると突然、壁掛け電話を取りかけてそり手を引っ込めた。


「ええぇ!! なっ何だってえぇー!! そんな馬鹿な!!」

 喜一の息子だと名乗った信二と春樹は看護師に連れられ廊下の隅で衝撃的な事実を告げられた。

 真剣そのものという表情をした看護師達を前に信二と春樹は呆然と立ちつくした。

 
「じゃあ! あそこにいるのが、親父だっていうのか!?」

 部屋の中にいるショートパンツとキャミソール姿のピチピチした女の子を思い浮かべた兄弟は互いの顔を見合わせて瞬きを忘れた。

 しかも、数十分前まで一緒に居た看護師たちも驚くほど若返った喜一だった。

 そんな中、兄弟は看護師たちから喜一がここへ来てからの一切を手短に聞かされた。

 
「と、とにかく連れて帰ろう! こんなところに置いとく訳には行かないぞ兄貴!」

 弟の春樹は愕然とした表情の信二の肩を揺らした。

 
「このまま帰ったとして、親父は元に戻れるのか!? あんな親父見たら母さん……」

 信二の言葉に春樹は衝撃ほ受け後によろけた。


 その時、少し後に居た仲間の刑事たちから声が飛んだ。


「おい! 何してる! 被害者を探して保護するぞ!!」

 仲間たちは今にも喜一を探しまわろうと決起し顔を見回した。


 その瞬間、丸い小窓のついた白いドアが突然開いた!


「どしたの~? 何かあったの~?」

 中から顔を出した十七歳前後の喜一があどけない表情で廊下を見回した瞬間、突然悲鳴を上げて倒れてしまった。

 看護師達の中に信二と春樹を見た喜一にとってこれ以上の恐怖はなかったらしい。

 
 自分の父親を御姫様だっこしている信二の胸中は察するに余りあるものだったが、それを横で見ている弟の春樹は喜一の胸の揺れに血の気を失った。

 下山兄弟に続くように五人の刑事達は臨床病棟から逃げ出し、止めてあった覆面パトカー二台に分乗するとその場を離れ看護師たちはその場に残った。

 取敢えずホテルにでも行こうという信二の言葉に喜一に寄り添う春樹は頷き、十七歳代の喜一を横目に何が何だか解からない同僚刑事たちは到着と同時に詳細を聞こうとその時を待った。

 そこへ信二の携帯にメールが届いた。


「現在、病棟では居なくなった医師たちが血相を変えて対策を話し合っている。 キーちゃんの突然の若返りに医師達も動揺を隠せないで居る。 また連絡する。」

 携帯番号を教えた看護師からのメールは信二を困惑させたが、それ以上に喜一の身に起こった詳細を聞かされた同僚刑事たちは震撼した。

 
「これが… お前らの親父? そんな馬鹿なこと……」

 信二と春樹の仲間は二人にそう言うと、覗き込むように喜一を見て信じられないと言いながら一旦、ホテルの部屋を後にした。

 毛布に包まれてソファーに横たわる喜一の寝顔はまるで天使のように映っていた。

 
「で、どうするんだよこれから… 治せるとしたらアソコしか無いし…… 母さんには何て言えばいいんだ……」

 弟の春樹はソファーで眠る喜一を横目でチラリと見るとテーブルを前に両手で頭を抱える兄の信二に問いかけた。


「とにかく、今はここにいて明日にでも〇〇製薬と接触するしか無いだろうな…… 交通事故の方は示談が成立しているから俺たちの出番は無いにしても、拉致監禁と人体実験に関しては俺たちの出番だ。」

 信二は低い声で語るとそのままゴロンと椅子に横になって天井を見詰め、今度は春樹が両手で頭を抱えた。


「全ては明日、ヤツラと接触して親父を元に戻せるなら戻させるが、ヤツラがグズルようならこのことを公にすると押し迫るしかないだろな…」

 天井を見詰める信二は小声で春樹に呟くと目を閉じて黙り込んだ。

 その瞬間、小さな声が二人の耳に飛び込んできた。


「もう無理だ… こんな身体になってしまっては元には戻れんだろう…… 仮に元に戻れたとしてもワシは以前のワシではなくなっとる…」

 突然の女の子の声に信二はソファーの上に飛び起き、春樹は両手を頭から引き離して背筋を伸ばした。

 そしてその視線は毛布に包まっている喜一に向けられた。

 
「……………」

 毛布に包まって顔だけ出している喜一の方を見た信二と春樹は顔色を変えた。

 静まり返る兄弟と無言の喜一。

 
「まるで映画だな、こりゃ…… ふっ…… お前らの父親がお前らより若返った上に顔も声も何処かの娘さんになってしまった。 浦島太郎だ…… こんな姿は誰にも見られたくなかったよ……」

 愛らしい声で囁く喜一は悲しげな口調で閉じた瞼から真珠のような涙を頬に伝えると、突然、ソファーの上に起き上がって毛布を膝まで払いのけた。

 信二と春樹はその光景にドキッとして身を数センチ後退させた。

 
 年の頃は十七歳代、豊満な胸と愛らしい顔に艶のある黒髪、そしてピンク色の唇をした喜一は視線を意図的に外す息子達を交互に見回した。

 そして毛布をよけて立ち上がった喜一は、ショートパンツから伸びたプリプリした脚を揺らせトイレへと無言で歩いて行った。

 その喜一を見た二人の兄弟はお化けでも見たような顔して互いの顔を見合わせ、トイレから出てきた喜一は泣いた後のように目を充血させていた。

 その喜一が自分達を前にしてソファーにピョコンと座るとスラリとした足を組んで二人を交互に見て口を開いた。


「おいタバコくれないか。 アソコに入ってからずっと禁煙してたんでな。 我慢ならん。」

 右手でV字を作って命令口調で催促した仕草を見た兄弟は突然、喜一を指差して大口開けて大笑いした。

 
「親父だああぁー♪ あぁーっはははは♪ 若い娘が親父になってるー♪ あっひゃひゃひゃひゃ♪」

 それを見た喜一は苦い顔して頬を一瞬引き攣らせ、再び右手でV字を作ってタバコを再び催促した。

 十七歳にしか見えない喜一のタバコを吸うオッサン態度に二人はホッとした表情を見せた。

 
「信二! 酒だ、ルームサービスでビールとウイスーと枝豆でも持ってこさせろ。」

 タバコを美味そうに吸う喜一は煙を吐きながら自分をジロジロ見る息子達に照れ臭そうに頬を紅く染めた。

 そんな息子達に喜一は鼻の下を伸ばして照れ笑いさながら一言発した。


「女の身体も中々、いいもんだぞ~ あっはははは♪ ホレホレホレ♪ ポヨ~ン ポヨ~ン ポヨ~ンてかぁ~♪」

 喜一は自分を見る息子たちに両手でキャミソールの上から豊満な乳房を持って揺すって見せると両足をソファーの上に乗せ内股で体育座りして見せると一人で顔を真っ赤にした。

 それを見た息子達は咄嗟に顔を背け照れ臭そうに噴出して爆笑した。

 妻、ミドリの前でもダンディーな喜一は息子達の前でもダンディーだったが、喜一のプリンプリンした太ももと胸を見た二人の息子達は複雑な気分だった。

 
「取敢えず酒の前にこんな格好じゃ、チト恥かしいな。 外へ連れて行け。 何か着る物を買うから。」

 喜一は立ち上がるとタバコの火を消してドアの方へと歩き出した。


 二人の息子達は喜一を護衛するように真ん中に挟み周囲を気にしながら刑事の感をフル稼働させていたが、喜一はそんな二人のことは気にせず二人の両側の息子達と腕組して実に楽しそうに足を進めていた。

 喜一は二人の息子達を衣料品店の下着コーナーで見張りをさせ買物に夢中になっていたが、二人は周囲の視線に照れながらパンティーを手にする父親をチラチラ見ていた。

 そして買物を一通り済ませた喜一は再び試着室の中に入った。

 数分後、出て来た喜一はショコラブラウンのパンティーストッキングを履きデニムのミニスカートで下半身を覆い、豊満な胸を隠すように白い大き目のトレーナーを着ていた。

 実の父親のパンティーストッキング姿を見た二人の兄弟は元の喜一の姿を想像し吐き出しそうになりながらも、目の前にいる愛らしい喜一の姿に尋常ではない複雑な心境を顔に出していた。

 
「どした? 二人とも!?」

 自分の足を見入る二人の息子に喜一は首を傾げた。


「親父、アソコではいつもそんな格好してんのか…? パンティーストッキングとか履いてんのか!?」

 二人の息子は喜一の足を凝視してブツブツと呟いた。


 すると喜一は突然、顔を紅くして両膝を隠すように屈みこんだ。


「やだぁー♪ 二人とも何見てんのおぅ~ もおぅ~♪ 女だもん当たり前でしょー♪」

 咄嗟に出た喜一の女の子言葉に二人の息子達は目を大きく開き顔を真っ赤にして固まり、自分の言葉に喜一は血圧を急上昇させ恥かしさにその場から逃げ出した。

 
 衣料品店を出た三人はお互いを見ることなく無言のままホテルへと足を急がせた。




【八話】



 ホテルの五階、一番奥の部屋に喜一とリビングに春樹、ドアの入口付近に信二という具合で酒と食事を済ませた三人はその疲れから就寝した。

 その中で監視されていない開放感と自由を手にした喜一といえば、咽返るようなベッドの中での若い女の匂いにモンモンとしていた。

 酒の酔いも回って以前の喜一ならとっくに熟睡しているはずなのに、この時の喜一は自分でも止められぬほどの女の匂いに逆らえなかった。

 それはまるでウナギを大量に食べた時のような状態だった。

 咽返るような女の匂いが自分の身体から発していると知っているものの、我慢出来ずに喜一は息を殺し布団の中でパンティーを脱ぐと、そのまま顔に近づけパンティーの内側の匂いを嗅ぎ始めた。

 息も出来ぬ程の激しい女の匂いは喜一を咳き込ませたが、それでも男の脳を持っている喜一は夢中になって自分が一日中履いていたパンティーの匂いを嗅ぎ続けた。

 片手に持ったパンティーに顔を埋め、布団の中で開いた両足の真ん中に右手の中指を滑らせると、強い快感(しげき)が脳天をブチ抜いた。

 中に入れた右手の中指の腹を割目に沿って動かすと狂おしいほどの刺激がパンティーに顔を埋める喜一を襲い、割目を擦れば擦るほど布団の中は若い女の匂いで充満していった。

 監視されていないという安堵感が喜一からモラルを奪い去ったようだ。

 自らの割目の内肉を指の腹で擦りながら、自らが履いたパンティーの汚れに舌を滑らせシャブリつき滲み込んだ味と匂いを堪能する。

 塩気と酸味と甘味と女の発酵臭が喜一の口の中に溶け鼻から入った臭気が喜一の肺を女で充満させると、喜一の脳は一気に獣へと変化を遂げた。

 自分の履いたものを自分で嗅ぎ舐めるという禁断の官能に喜一は足を踏み入れてしまった。

 擦れば擦るほどに喜一の割目の奥からヌルヌルした液体が溢れ、それが潤滑油のように割目の内肉全体に広がる。

 そんなヌルヌルした液体を時折絡めとっては口に入れ指をシャブル喜一は正に男だった。

 身体を横位置にパンティーに顔を埋めながら喜一は自らの割目からの強い感度と匂いと味に身悶えし荒い吐息を繰り返した。

 そして匂いも味もしなくなったパンティーを銜えて口の中に入れると、耐えられないとばかりに自らを覆う布団を剥ぎ取り、仰向けになって両足を大きめに開いた。

 左手で右乳房を揉も回し右手で割目に指を滑らせる喜一の身体は仰け反りながら、左右に身悶えを繰り返した。

 喉の奥に溜めた嫌らしい喘ぎ声を口の中に丸めて入れたパンティーで外に漏れぬよう喜一は必死に止めながらも両手を動かし続けた。

 乳房を揉む手を大きく開き絞るように掴むと勃起した乳首が突出し感度を十倍に増加させ、割目の内側に滑らせた指がそのヌメリで中指の第一関節まで膣の中に無意識に飲み込む。

 狂おしいほどの快感に柔らかい内モモをプルプルと揺らし蕩けそうな身体はゼリーのように弾ける。

 そして左の指で乳首をキュッと抓んだ瞬間、首を後に仰け反らせ両足の爪先は一瞬にして力強く閉じられた。

 溢れる愛液は指に絡みつく愛液と化す。

 ニュッチュニッチュヌッチャクッチャヌッチャクッチャと喜一の耳に届く嫌らしい音が指の動きを早くする。

 
「気持ちいい… 気持ちいい……」

 身体から分離したように喜一の心は暗闇の中で只管、念仏のように繰り返し唱えられ、知らぬ間に中へ入った指は奥へ奥へと続く。

 そして乳首を弄る指が一瞬はなれた瞬間、自らの肌を下へと滑り降り割目の中に入ると、ヌルヌルした液体を絡み取り再び乳房へと戻る。

 透明な液体の付着した親指と中指はそのヌメリを勃起した乳首に伝えた。

 ヌメリが勃起した乳首を横から包み込みながらスリスリと擦れる快感(しげき)に喜一の首は右に左にユラユラと揺れる。

 右手の指は限界まで入り中をウゴメキ乳首を弄る指はそのスピードを増す。

 
「入れたい… 入れたい… 何か挿れたい……」

 身体から分離し暗闇を漂う喜一の心は女の中へ硬い物を入れたいと願いながら両手の指を休めることなく硬い物を探し求めた。

 そして、その思いは果たせぬまま喜一はエクスタシーへと達し気を失った。

 生まれて初めて女の身体でエクスタシーに達した喜一の満足げな表情は暗闇が隠してくれた。


 その頃、臨床試験病棟に居た喜一の担当の女性看護師達に異変が起きていた。

 白衣の看護師たちは一斉に男性医師たちの目の前で床に崩れ落ちモガキ苦しんでいた。

 ある者はワンピースの裾を大きく広げ下半身を覆ったパンティーストッキングを晒し、またある者は自らワンピースの胸ボタンを掻き毟るようにスリップのレースを晒した。

 五人の医師の目の前で女性看護師たちは何かを求め手を伸ばして医師達を見据え苦しんでいた。

 そして男性医師達はその様子を冷酷な視線をもって静観していた。


「裸にしたまえ……」

 喜一を担当していた主任医師が口を開くと、別の男性医師は口元をニヤニヤさせ女性看護師のワンピースを腰まで巻くりあげた。

 床の上でウゴメク看護師達は恥じらいながらその身をニヤニヤする医師から遠ざけようと悲痛な顔して後退りしたが、男性医師は女性看護師の下半身から白いパンティーストッキングを両手でビリビリと破き始めた。


「いやぁ! やめてぇー!!」

 女性看護師はパンティーストッキングを引き裂く医師に叫び声を上げたが、男性医師は満面の笑みを浮かべて苦しそうに逃げ惑う看護師を見た。

 そして看護師の下半身からパンティーストッキングを引き裂いた男性医師は両手を差し伸べて女性看護師の下半身から白いパンティーを剥ぎ取ると、彼女の見ている前でパンティーの内側の匂いを嗅ぐように顔を埋めた。

 女性看護師は唇を噛み締めて自分のパンティーに顔を埋める男性医師を睨みつけると、後退りしたものの別の男性医師二人が彼女の両足を大きく開いた。

 彼女は恥かしい部分をニヤニヤする男性医師達の前に晒させられた。

 涙を流しながら首を横にする女性看護師は顔を両手で押さえ咽び泣いた。

 
「臭せぇ臭せぇ♪ 一日中履いてたんだな♪ ステキな匂いが滲み込んでやがる♪」

 彼女からパンティーを剥ぎ取り顔を埋めた男性医師は咽び泣く彼女を辱めると、主任医師は自らの顔を覆う女性看護師からその両手を力ずくで避けた。


「何て酷い顔だ… 薬が切れて既に男化が始まっている…… 諸君、見たまえ! コイツはもう女じゃない! ヒゲが生えて来ている…… 初期の頃の新薬も薬が切れればこのザマだ。」

 主任医師は彼女の顎を凝視するとソコにいた男性医師全員が彼女の顔を凝視し、彼女は泣き叫んで首を左右に振って逃れようとした。


「コイツらは初期の頃の性転換薬を使ったモルモットなんだよ。 まぁ、諸君も承知していると思うが、このモルモットたちは三日に一度、薬剤を注射しなければ元に戻ってしまうからね。 あのモルモットを逃がすのに手を貸した罰としてお前達は全員、元のこ汚い男に戻ってもらうしかないな…… 喜一で上手くいけばお前らにも使うつもりだったが残念だ。 但し、喜一(あれ)が何処に居るのか正直に話せば今すぐ女に戻してやろう… さあ! どうするこの化け物共!!」

 顔にヒゲが生えスネ毛の伸びてきた女性看護師は唇を噛み締めて周囲の看護師たちを見回した。

 
「私達は自ら志願して一度でも女性になれた…… でもキーちゃんは違う! キーちゃんは騙されて女にされた! どうせ、交通事故ってのも貴方たちが仕組んだことなんでしょ!! 元々なんでもない健康な人を実験台に仕向けるための工作でしょ!! 違うの!!」

 ヒゲが顎と口元を覆い始めた色白の彼女は主任医師を睨み付けた。

 
「申し訳ないが、ここでのこと以外は私の所管ではない。 他の部署がやったことだろうし、我々には無関係だ。 恐らくは君の言う通りだろうが、全てを我々が行っている訳ではないのは君も承知の通りだ。 我々はあくまでモルモットへの医学的臨床試験が職務。 さあ! 言いたまえ! 喜一(あれ)は何処にいる!! 薬の効果が消えればもう、君達は女性にはなれない、答えるなら今のうちだ。」

 主任医師は彼女の頬をグイッと掴むと睨みつけながら時計をチラッと見た。


 その時、もう一度周囲を見回した彼女に周囲の女性看護師たちに全員が一同に頷いて意思を伝えると彼女は医師から視線を外した。


「この馬鹿共が! 一度戻れば二度と薬の効果は得られない…… 後悔しても遅いぞ!!」

 主任医師は身体を震わせ低い声で床に倒れる女性看護師たちを見回した。


 その時、突然部屋のドアが開いた。


「その通りよ! 貴方も二度と男には戻れない! そろそろ薬が切れてきたんでしょう… 額から凄い汗だわ。 脈も速くなっているようだし身体が震えているわね。 女医だった貴方が新薬に自ら進んでモルモットになったのが二年前、喜一(かれ)の新薬投与が成功すれば、女性の貴方がペニスを持てる日も遠くないはずだった…… 女がペニスを持ち男がペニスを捨てる、神の領域を人間が犯した時、世の中は壊れていく…… 確かにこの新薬は画期的だわ! でも、交通事故をも偽造して問題の無い人を騙してペニスを除去してモルモットにする外道行為は神をも冒涜する行為、罰を受けるのは彼女達じゃない、安藤医師! 貴方よ!」

 厳しい口調で入ってきた女医の古川洋子は看護師の頬を掴んで睨みつける安藤を後から恫喝した。

 古川の言葉に看護師たちは一斉に驚愕して安藤を凝視すると周囲に居た男性医師たちは喉をゴクリと鳴らし部屋から逃げ出すと、安藤は後ろにいる古川に声を荒げた。

 
「そうよ!! 今回の臨床が成功すれば会社は女性にペニスの生える新薬に取り掛かることになっている! いや! 既に新薬開発に取り掛かっているわ。 何が何でも今回の臨床に一定の評価をとって会社を認めさせる必要があるのよ! それには喜一(あれ)が必要なのよ! 貴女になんかアタシの気持ちなんか解かりはしないでしょうけど、喜一(あれ)の犠牲は世界中を救い変えて行くわ! ここにいる化け物とは違う新しい革命だわ!」

 安藤は声を震わせ看護師の頬から手を離すと後を振り返りながら立ち上がるとヨロヨロしながら壁に凭れた。

 
「さぁ、これを打って。 楽になるわ。」

 古川はグッタリしている看護師たちに一本ずつ注射器を渡した。

 
 看護師達が受け取った注射器を次々に腕に打つと、ヒゲの生えていた顔から全ての毛が抜け落ちていった。

 
「さあ、貴女も早く打たないと乳房が出て来るわ!」

 古川は安堵に注射器を渡すと床に倒れる看護師たちを一人ずつ起こした。


「バレちゃったわね~ アタシが女からの性転換者だってこと……」

 安藤医師は大粒の涙をポタポタと床に落とすと自らの腕に注射しながら看護師たちを見回して無言で部屋を出て行った。

 
「さてと、あとは喜一(かれ)を元に戻す作業が残ってるわ… 貴女たちも手を貸して頂戴! 薬は人を救うものであって人を犠牲にするものじゃないわ…」

 古川は携帯を取り出すと、元々居た研究チームに支援を要請した。

 女性看護師達は古川医師を囲んで笑みを浮かべた。


「神の領域を侵してもいいのは、人を救うことを前提としている… 人を犠牲にしてすることを神は許さない……」

 古川は首にかけている十字架を襟の影で握っていた。

 
 その頃、ホテルの寝室ではそんな映画のワンシーンがあったなどと夢にも思わない喜一は目を覚ますと同時にベッドの上でジュースの瓶を自らの割目の奥に入れ出し入れしていた。

 小説や映画の世界とは程遠い喜一の現実は只管に膣の中に入れた瓶を出し入れすることだった。

 狂おしいほどの激しい快感に身悶えと仰け反りを繰り返し布団に顔を押し付けヨガリ声を掻き消した。

 飲み口が比較的細いものの徐々に太くなるドリンクの瓶は喜一に若干の苦痛を与えたが、脳天を打ち抜く快感はその苦痛を官能へと変えた。

 開いた両足の膝を時折交互に伸ばしては爪先を閉じたり開いたりを繰り返し、瓶を持つ右手が疲れれば左手に変えて延々と瓶を出し入れした。

 根元まで入れたいと思いながら徐々に大きくなるドリンク瓶を最後まで入れることなく痛みの手前で出し入れした喜一はモノを使ったオナニーを学習した。

 その喜一は中毒患者のように何度もオナニーを繰り返した。

 



【九話】




「いいかい母さん。 さっき話した通り親父はもう前の親父じゃない。 母さんよりも俺や春樹よりもずっと若い娘さんだからね。 叫んだり取り乱したりしないように、頼んだよ。」

 借りているホテルの部屋の前で長男の信二は隣りに居る母であり喜一の妻であるミドリに落ち着いた口調でいい聞かせた。

 スーツスカートにブラウンのストッキングを履いたミドリはドアの前で大きな深呼吸をして息を整えた。

 
「いいかい、開けるからね。」

 ミドリに視線をあわせた信二は神妙な顔するミドリの横でドアを開くと、中から弟の春樹と聞き覚えの無い娘の笑い声がミドリの耳に入ってきた。

 信二はミドリの手を引いて中へ入ろうとしたもののミドリは足が竦んで歩けなかった。

 ミドリは信二に手を引かれ足を一歩、また一歩と中に踏み入れると、リビングでテレビゲームしている春樹と知らない娘の後ろ姿がミドリの目に飛び込んだ。

 二人は夢中になってゲームをしていて入ってきた信二とミドリには気が付かなかった。

 すると、視線を感じたのか突然、春樹が笑いながら後を振り向いた。


「か! 母ーさん!!」

 春樹の驚く声が隣りに居る喜一のゲームをする手をピタリと止めさせた。

 テレビの前で床に斜め座りする喜一の背中にミドリの視線が突き刺さったが、喜一は振り向けずに暗く俯いてしまった。

 
「お父さん……」

 ミドリの声に喜一は反応することなく黙り込んでいると、信二が春樹を手招きして部屋から出て行った。

 一歩、また一歩、深呼吸をしては喜一に近付くミドリは顔を強張らせ緊張を隠せなかった。

 
 すると喜一は無言で立ち上がると、クルリとミドリの方を振り向いて顔をニンマリさせた。


「ミドリ…  こんなになっちゃったよ♪」

 顔上げた喜一は笑顔のまま両手を広げるとミドリが飛び込んで来るのを待った。

 喜一の顔を見たミドリは息を飲んで以前の喜一とは似ても似付かない女の子の顔に噴出しそうになった。


「ブッ! ブッハハハハハハ♪ 何その顔ー♪」

 ミドリは大笑いして喜一に近付くとギュッと喜一を抱き締めた。


「くっ苦しい♪ ミドリー苦しいってー♪」

 ミドリは咄嗟に喜一から離れると自分より大きい喜一の豊満な胸に顔を赤らめて照れ笑いした。

 
「どう、少しは女の身体に慣れたぁ♪ 生理は流石にないんでしょぅ♪」

 喜一を足元から頭の天辺まで見まわしたミドリは照れながら一歩後に下がると喜一がストッキングを履いていることに一瞬驚いた。

 
「…………」

 ミドリは喜一の両肩に手を置いて角度を変えて喜一を何度も何度も見回しては頷いた。


「身体はお前と全て同じだ♪ 違うのは生理の有無だけだ。性感もお前同様だし濡れる身体だ……」

 喜一は笑みを止めて真剣な表情でミドリを見詰めた。

 

「見てくれミドリ……」

 一瞬、俯いた喜一は、ミドリの前で服とスカートを脱ぐとパンティーストッキングを脱いでポンと床に放り投げた。

 そしてブラジャーを外し白いフリルの着いたパンティーを脱ぐと、顔を上げてミドリの目を見詰めた。


「こんなになっちまったが、いいか? 問題ないか?」

 ミドリは喜一の前で崩れるように床の上にアヒル座りしてガックリと肩を落とした。

 
 そして……


「良かったあぁ~ 何処も切り刻まれてないわぁ~ 良かったぁ~~♪」

 ミドリは安心したと言わんばかりに顔を喜一に向けると満面の笑みを浮かべた。

 喜一はそんなミドリの傍まで裸のまま移動すると、両手を伸ばしたミドリは無言のまま喜一の乳房を下から持ち上げでプルプルと揺らせたると再び安心の表情を浮かべ、ヘソと陰毛の中間辺りに軽いキスをした。

 
「俺はこのままでもいいと思っているんだ。 もう妙な注射や薬を飲むのは御免だ。」

 喜一の下半身を抱いて頬を寄せるミドリに喜一は精神疲労をうかがわせるように言葉を吐くと、ミドリは無言で、うんうんと頷いて見せた。


「勤め先には退職願いを送って少し身体を休めようと思うんだ。 いいだろ……」

 ミドリは裸の喜一を抱き締めて再び、うんうんと頷いた。


 
 その日、喜一はミドリと二人の息子達に連れられ久々の我が家へと帰ると、自宅の庭木を見て辛かった病棟生活を振り返りながら、世話になった看護師たち宛てでメールを一通携帯から送信した。



「皆さんには大変、お世話になりました。 心から感謝しております。 私は女性として生きて参ります。」

 メールを打つ喜一は全てが終ったと安堵したのかとても穏やかだった。

 そして下山家では喜一の帰宅を祝して家族四人でのささやかな宴を開かれ、喜一は疲れが出たのか夜の十時過ぎにはソファーの上で眠、喜一は静かに信二に寝室へと運ばれた。

 
 深夜0時、片付け物を終え風呂から出たミドリが夫婦の寝室へ静かに入る。

 ベッドの上で死んだように熟睡する喜一を見ながら、昼間の衣料品店で喜一が買って来た女物の下着を箪笥の引き出しに仕舞った。

 自分が普段使っている引き出しの中を半分空けてそこに喜一のを入れ直した時、ミドリは不思議な感覚を覚えざるえなかった。

 目の前に居るのは自分の亭主でありながら見た目は息子達よりも若い少女。 

 何故、夫婦の寝室に少女が居るのか不思議だった。

 事情は当然知っているが、釈然としない気持ちのまま喜一からデニムのスカートをそしてトレーナーを脱がせた。

 愛らしいフリルのパンティーとブラジャーをした喜一からブラだけを外し毛布をかけてやったミドリは、喜一のキレイ過ぎる程にキレイな乳房を見て何故かゴクリと喉を鳴らしたその目は良き妻、ミドリの目ではなくまるで男が獲物(おんな)を見るような目だった。

 誰も知らないミドリの過去。 喜一と出合った頃から心の中に封印していたモノが解き放なたれたように妖しい目をするミドリの視線は喜一の乳房にあった。

 そして灯りを小さくしたミドリは着ていた寝巻きを脱ぎ捨てると、ベッドの上の喜一の乳房に自らの乳房を重ね恐々と瞼を閉じて首を後に仰け反らせた。

 乳首と乳首が擦れた瞬間、ミドリは深くて重い吐息を漂わせた。

 




【十話】

 

 
 

「あん…」

 ミドリの乳首が喜一の乳首に擦れた瞬間、喜一は無意識に細く小さいヨガリ声を発し身体をビク付かせ、それを聞いたミドリは重ねた乳首を回すように上半身をクネらせた。

 こんなことをしてはいけない。 そう思いながらもミドリは喜一の身体に胸の奥を高鳴らせ熱い思いを止めることが出来なかった。

 そんなミドリは喜一に一度かけた毛布を片手で引き下げると両手で自らの身体を支えながら喜一の乳首に吸いついた。

 熟睡し夢の中に居るであろう喜一は刺激される乳首に愛らしい声を奏で身体をビク付かせ柔らかい肉肌を震わせ続けた。

 
「アナタ… ごめんなさい… 私は悪い妻です。 アナタが事故にあって性転換した時、私は内心喜んでいました…… いつかこうなることを描いていたの…… 許して下さい…」

 ミドリは喜一の乳首に舌を滑らせながら心の中で何度も喜一に詫び、何十年かぶりの女の乳房の舌触りに酔いしれていた。

 だがそんなこととはまるで解かっていない喜一は夢の中で女性看護師の彼女との愛欲の中に居て味見される女の喜びに浸っていた。

 そして乳首を味わうだけでは物足りなくなったミドリは自らを支えていた両手を外すと喜一に我が身の重さをかけ喜一からパンティーを剥ぎ取った。

 ミドリは両手で喜一の乳房を揉みまわしながら乳首を指で弾くように弄り、同時に陰毛の中に差し込んだ舌先でクリトリスを舐めた。

 十七歳のクリトリスは直ぐに勃起してコリコリ感とピリッとした塩気をミドリの舌先に伝えた。

 ミドリは何十年ぶりかの女の塩気に鼻息を荒くしてムシャブルように唇を押し付けると、喜一は身体を鈍く仰け反らせ小刻みに全身を痙攣させた。

 そしてミドリの両手が喜一の両足を膝立てながら開くと濃厚な少女の香りがミドリの顔面を直撃した。


「クチュッ…」


 膝立てさせた喜一の下半身を両腕で抱かかえる様に開いた喜一の割目から女の恥かしい音が聞こえると、ミドリは我慢出来ないとばかりに割目の匂いを胸いっぱいに嗅ぎそして尖った舌先を内側に押し付けた。

 ヌルヌルした少女の汚れない愛液がミドリの舌に絡み付くと、ミドリは舐め取るように自らの喉に流し込んだ。


「ぅあっん! あひっ!」


 男の喜一と結婚していらいの女の味はミドリを燃えさせ、喜一の縦の割目に舌を勢い良く滑らせた。

 喜一は眠ったままで脳天を貫く激しい快感(しげき)に全身を身悶えさせヨガリ声を連発させた。

 ミドリは夢中になって少女の割目を味わいながら自らのグッショリと濡れたパンティーを脱ぎ捨てると、それは喜一のパンティーの上に重なった。

 五分、十分と喜一は割目を味見され続けミドリの口の周りは喜一の愛液が乾く間もないほどにだった。

 そしてミドリは喜一の両足を開くと自らの開いた両足の付け根を喜一の割目に押し付けた。

 クチュクチュ、ニッチャニッチャと男女のセックスには無い奇妙な音を薄暗い部屋の中に漂わせ、喜一は伸ばした両手でベッドのシーツを鷲掴みしていた。

 ミドリは何十年かぶりに本当の自分を取り戻し、喜一は夢の中で彼女との一時に満足を果たした。

 
 翌朝、グッスリ眠ったのか喜一は横で眠っているミドリをそのままに履いた覚えの無いピンクのパンティーに首を傾げていた。


 そうか… ミドリが履き替えさせてくれたのか……


 そう思った喜一は寝返りをしたミドリを一瞬、見た瞬間、喉をゴクリと鳴らした。

 それは普段は寝巻きで寝ているミドリが珍しく喜一の好きな黒いスリップ一枚で寝ていたからだった。

 黒いレースの隙間から見えるミドリの溢れそうな熟した女の乳房に喜一は再び喉をゴクリと鳴らしながらも、女の身体になってしまった自分ほ見回し悔しげに口元を固く閉じた。

 その瞬間、ミドリは布団を肌蹴全身を露にすると喜一の視線は真っ直ぐに熟したミドリの太ももに移動した。

 黒いスリップの下に履いている黒いレースのパンティーが一瞬見えた時、喜一の目はその熟したミドリの太ももからパンティーへと敏感に移動した。

 そして我慢も限界に達した瞬間、喜一は自分が女であることも忘れてミドリの太ももにムシャブリ付いた。

 ミドリはその瞬間、ハッとして目を覚まし喜一が自分の太ももを味わっていることに気付いた。

 そんなミドリにとって自分の太ももを美味しそうに味わう喜一が女であることに抵抗はないものの、自分の太ももを味わう喜一に男の目を感じていた。

 荒々しくミドリの身体に貪り付く喜一は身体こそ女だが肉欲は獣のようだった。

 鷲掴みにされたミドリの豊満な熟女の乳房はプルプルしながらも太く勃起した乳首を支え喜一の吸引力にひけをとらなかった。

 そして熟女であるミドリの身体は自らを襲う小柄な喜一の身体にピタリとフィットしながら、喜一の唇に女の甘味を味見され続けた。

 胸、尻、内モモ、そして陰部と喜一の執拗なまでの味見はミドリを歓喜の世界へと引きずり込み、ミドリは我を忘れて舐められる喜びに浸った。

 喜一は男では有り得ない柔軟な女の身体を利用して様々な体位を駆使してミドリの身体を味わい続け、ミドリを四つん這いにして後から尻に顔を埋め尻の穴を舐める頃には既にミドリは数回目のエクスタシーに落ちていた。

 男には解からない口を噤む女のエクスタシーも自らが女になった喜一には手に取るようにミドリが何度イッたのか解かっていた。

 ミドリは以前の男だった頃の喜一とは全く別の喜一に全てを晒し受身を取っていたが、二人の愛欲が山場を迎えようとした時、喜一は裸のままミドリの両足を持ち上げ固まっていた。


 挿れるモノが無い……


 喜一は絶望の渕に身を置いていたが、そんな喜一を見かねたミドリは瞬時に喜一の身体を仰向けにさせると、自らの熟した太ももの間に喜一の若い太ももを差し込んだリード体性をとった。

 ミドリは喜一に恥をかかせてはならない一心で自らが恥をかこうと決心した。

 喜一はミドリの動きに一瞬戸惑いながらもリードして腰を振るミドリに自らも合わせるように腰を振って、割目と割目を擦り始め二人の愛液を交わらせた。

 クッチョクッチョニッチャニッチャとミドリと喜一の陰部から恥かしい音が部屋の中に溶け込み、ミドリは赤面して喜一をリードし続けた。

 互いが互いの片足を持ちながら交互にそして時には同時に割目をこすり付けるセックスは延々と続けられ、後に終焉を果たした。

 終焉後、ミドリは自分のことが喜一にバレるのではないかとベッドの上で瞼を閉じて動揺していたが、喜一にとって愛妻であるミドリとの異色のセックスはミドリに疑いの目を向ける余地もないほど満足していた。

 



【十一話】




「とにかく! 一度きちんと話しをしないと! 今のまま放置して万一の時、社名も何もかもが一気に公になるんです! それでも良いんですか!?」

 白衣姿の古川女医は大きな会議室の席上で立ち上がって出席者たちを見回した。

 〇〇製薬の重役会議での緊急会議で下山喜一の命と引き替えに新薬の試験を断行しようとした安藤医師は片隅で小さくなって下を向いていた。

 
「今は被験者と話し合いをして元の身体に戻す方法を考えないと… 被験者の身内や知人とはいえ既に複数の警察官が関与しているんです。 これが公になれば政府も黙ってはいないでしょう…… とにかく被験者が危険な状態であることは間違いありません。 彼… 彼女は五十歳代から十代にまで若返っているんです。」

 古川は静まりかえった会議室で声を張り上げるとそのまま座った。

 
「すると、古川くん。 性転換の新薬を作り臨床する過程において、若返りの現象が起きている… そういうことか? もしそうなら、これは性転換の新薬というより、場合によっては若返りという人類にとっての特効薬へのチャンスかもしれないな。」

 〇〇製薬の副社長であるスラリとしたクール感のある田所は古川医師に冷静に視線を合わせた。


「おお! こりゃこりゃ棚からボタ餅になりそうですなあ~♪ 副社長! 一石二鳥ですなあ~♪」

 太って腹の出ている常務の片平の声が会議室に響き渡ると会議室にいる役員たちはこぞって互いの顔を見合わせザワついた。

 
「今回の臨床の主任医師である安藤くんの意見はどうかね? 君の意見も聞いて置きたいのだが。」

 副社長の声が会議室のザワつきを消し飛ばせた。


「私の意見も古川先生と同様です… まずは被験者と誠意のある話し合いが先決かと認識しております。 妙にゴタついて世間から叩かれることは会社とっては不利だと考えます。」

 席を立って副社長の方のみを見て語る安藤医師は力なげにボソボソと口を開くとチラりと強硬推進派の吉村専務を見て座った。

 
「いや! 私は反対ですな! たかが一人の被験者にソコまで気を使う必要はないでしょう。 元々、話し合いの上、合意して臨床試験に来たのでしょうし…」

 突然、冷静な口調で立ち上がりながら口を開いた強硬派の吉村専務は会議室をグルリと見回して強気の口調を放った。

 すると、突然営業部の部長が吉村専務に慌てて近付いて耳打ちをした途端、専務の顔色は見る見る間に真っ青になった。

 
「話しにならん!! どういうことか説明したまえ!! 誰がそんな理不尽なことを命令したんだ!!」

 突然、専務は声を荒げて席に戻ろうとした営業部長に後から吠えた。

 すると、営業部長はピタリと立ち止まりクルリと専務へ正面を向けるとその場で床に崩れる落ちた。


「せ… 責任は、私にあります。 営業部の長瀬課長の…… ですが! これしか隠密に新薬の検査をする適任者の確保は無かったのだと思います…… 一人の犠牲で世界中の何万、何十万人が救われそして我が〇〇製薬の未来のために…… これしか! これしか……」

 営業部長の平瀬は両手を付いて専務に声を上げた。

 
「では、たまたま交通事故を起こしたのが我が社の社員だったという話も! 指定の病院で手当をしたというのも! 全て作り事だったというのかああ!! 答えろ!!」

 専務は平瀬を仁王のような形相で睨みつけた。


「……… その通りです…… 偶然も跳ねたのは事実ですが、被験者は殆ど無傷でした…… それを被験者確保のために重体という偽装をした上で性転換させ、回復した被害者を簡単な臨床試験と騙して臨床病棟に監禁して試験を続けていましたぁ……… 申し訳ありません!! 全ては会社のために!!」

 平瀬は自分を仁王のような形相で睨み付ける専務を見て全身を震わせて床に頭を着けて叫んだ。


「たい… 大変なことをしてくれたもんだ…… 何ともない人から生殖器を取り除いた上に騙して監禁してモルモットにしたのというのか…… 何てことをしたんだああああー!!」

 専務は席に座ると会議テーブルの上で頭を抱えてしまい、そのことを聞いた役員たちは全員、真っ青になって議場は静まりかえった。

 
「とにかく! 今出来ることは被験者を少なくとも今より前、切除した性器は元には戻りませんが、出来うる限り元に戻すことに全力を挙げましょう!! それしか救われる道はありません!!」

 古川女医の声が議場に響き渡った。



 その頃、下山家では……


「いい! 近所には親戚の娘さんてことにするから、ちゃんと子供っぽくして下さいよ~♪ ワシとか俺なんて言葉は禁物ですからね♪」

 ミドリのスウェット上下に身を包んだ喜一はソファーで胡坐して鼻糞をほじりながら新聞を片手に濃いめの煎茶を飲みタバコを吸っていた。

 面倒くさそうに相槌を打つ喜一を横目に大丈夫かと鉢植えに水遣りするミドリは前夜の夫婦の営みのことを考えていた。

 前代未聞、女同士の夫婦の営みを大切にして行きたいと思うミドリは喜一と出会ってから封印していた、あるモノを手に入れなければと鉢植えに水遣りしながら喜一を後に見ていた。

 
 アレがあればこの人にも女の喜びを教えてあげられる……


 ソファーの上にゴロンと横になって寛ぐ喜一をそのままにミドリは二階の部屋へ移動するとパソコンを開いて何やら検索を始めた。

 ミシン台と並ぶ一人掛けの小さな机の上のノートパソコンを前に慣れぬ手つきで検索を始めたミドリは、開いたページを前に頬を紅く染め見入った。

 その頃、下でゴロゴロしていた喜一の携帯にメールが着信した。

 そして真横になってテレビを見ていた喜一は携帯を手にすると再びゴロンと天井を見上げ携帯を操作した。

 
「キーちゃん、今ね会社ではキーちゃんを救うプロジェクトが立ち上がるようだよ……」


 喜一は看護師(かのじょ)からのメールを見て一瞬驚いた表情をしたが直ぐに無表情になって携帯を目の前のテーブルに置いた。

 ソファーからグルッと起き上がって辺りを見回した喜一はそのまま立ち上がると中庭に出て空を見上げた。


 このままでいいのに……


 喜一は大きな溜息を一つすると、植えてある大根の葉についている天道虫に見入った。

 せっせと葉の上を登ってきた天道虫の居る葉っぱを指でツンツンすると天道虫はコロコロコロっと転がって土の上に転がり落ちた。

 それをヒョイッと抓んで葉っぱに再び乗せると喜一は口元を固くしてこんどは大きなアクビをした。

 ノソリノソリと歩いて持って来た携帯を見て再び大きなた溜息をした喜一は携帯に打ち込んだ。


「私はこのままでいい。 もう身体を弄られるのは嫌。 家族も今の状況を解かってくれたしこれで終わりにしたい。」

 喜一は看護師(かのじょ)とのことを思い出しながら携帯に打ち込むと、直ぐに返事が帰って来た。

 
「キーちゃん。 違うの……」

 看護師から喜一の携帯に思いも依らぬ長文の返事が帰って来て息を飲んでメールの内容に見入った。

 喜一は全身を震わせせながら携帯を握る手をも震わせた直ぐに大きな溜息をして股間からなくなった男のシンボルのことを考え両目を閉じた。

 看護師(かのじょ)から聞かされた衝撃的な事実に一瞬動揺した喜一だったが、フッと笑みを浮かべると再び大根の葉っぱの天道虫を屈んで見詰めた。

 
「私は今の身体(じぶん)に満足しているの。 前の自分に戻りたいとは考えていない。 男手ありながら女の喜びをも知ることが出来た私は世界一の幸福な人間かも知れない。 警察沙汰にしたりはしないし相応の慰謝料も貰ったし何より若返ることが出来た。 感謝しなければバチが当たる。 私たちの年代は結果オーライてなとこあるからね♪ 会社の人に伝えて欲しい。 そっとしといて欲しいと。」

 喜一は携帯を打ち込み終えると葉っぱの上の天道虫を探したが何処かに消えてしまっていた。

 満足げに笑む喜一の頭の上、二階の部屋ではミドリがインターネットで、アレを注文していた。

 
 

 
【十二話】



「いい! 変な人に声を掛けられたら走って逃げて大声で叫ぶのよ! 絶対に着いていっちゃだめだからね!! いい!! 何かあっだとにかく大声で叫びのよ!!」

 散歩に行くと言った喜一に母親のごとく心配するミドリに顔を顰めて何度も頷いた喜一は玄関を後にした。

 まるで母親を煙たがる娘のように。

 いつも仕事で通勤していた白昼の道は喜一にはとても新鮮で別な世界の似ている街にいるかのような錯覚を覚えた。

 あれほどキツかった上り坂も難なくクリアし、いつもなら息切れして休むベンチをも通り越して気づけばバス停に着いていたにも関らず喜一は息切れ一つ覚えることはなかった。


 そして事件は起きた。


「えぇ! あ、はい!! す、直ぐに覗います!!」

 喜一が散歩に出かけてから二十分ほどして掛かってきた電話にミドリは震撼した。

 

「下山でございます!!」

 交番に飛び込んで来たミドリはふてぶてしく椅子に座る喜一をチラッと見ながら、警察官の机の前に置いてあったタバコとライターを見てギョッとした。

 公園で一服していた喜一を交番の警察官が保護して連れて来たという。

 住所も名前も言わない喜一は警察官に電話番号だけ伝えといい、何を聞いても答えなかったという。

 五十過ぎたオッサンがタバコで補導された事実に喜一は不機嫌だった。

 すると警察官を横に突然、ミドリは喜一を怒鳴った。


「何て娘(こ)なの!! こんなイタズラしてえぇ!! タバコなんかイタズラしたら駄目でしょうおぉー!!」

 警察官の手前、ミドリは喜一を母親のごとく大声で叱り飛ばした。

 それは警察官が止めに入るほど凄まじい物だった。

 
 1時間後、ミドリは娘を引き取る母親のごとく何度も交番の警察官に頭を下げ喜一の手を引いてその場を離れた。

 二人は手を繋いだまま無言のまま自宅へと足を進めた。

 気まずい二人。

 
「すまんかったな…… まさかこんな年になって補導されるとは……」

 歩きながら呟くようにボソボソと喋る喜一。

 
「仕方ないよ。 精神年齢五十才のどう見ても十七歳の娘だもん……」

 顔を前に向け喜一に話しかけるミドリ。


「でも、ショックだったわ。 普段とは違うタバコ吸ってたんだもの……」

 チラッと喜一を見て直ぐに前を向いたミドリは寂しげな顔してみせた。


「あぁ、若葉のことか… 一人でいる時は若葉を吸ってるんだよ。 260円だしな。 人前ではセブンスターなんだが、結構美味いんだよ、バレちまったな、若葉……」

 俯いて手を引かれる喜一はボソボソと口を開いた。


「ぷっ♪ うふ♪ うふふふふふふ♪ 若葉なんて♪ まったくうぅ♪ 若葉吸ってる十七歳なんて聞いたこと無い♪ あっははははー♪」

 突然、ミドリは噴出して大笑いした。


「ああ、オマワリも笑ってたよ… 馬鹿笑いしやがって… 若葉は貧乏人の味方なんだ! 全くあの馬鹿オマワリは!」

 一瞬顔を上げた喜一は吐き捨てるように声を低くした。


 ミドリは喜一をつれたままスーパーに行くと買物を済ませカウンターで若葉を十個とセブンスター2個を買った。

 喜一は苦笑いしてミドリの横顔を見詰めた。


 そしてスーパーからの帰り道、喜一はミドリの傍で歩道の上で腹を抱えて七転八倒し倒れて意識を失った。


 喜一は救急車で〇〇製薬指定病院に直ぐに運ばれたが命に別状は無かったが、とんでもない事実を突きつけられた。

 
「生理です…… 信じられません。 有り得ない…… 奇跡としかいいようがない、しかも喜一さんの陰部は我々が手術した物ではなくなっているんです。 つまり性転換による性器ではなく、本物になってしまっているということです。」

 心配するミドリの前でベッドに身を沈める喜一を囲むようにして大勢の医師と看護師が青ざめていた。

 ミドリに携帯で呼ばれた信二と春樹が駆けつけた頃には喜一は元気な顔をしていたが、信二と春樹は周囲にいる医師たちを仁王のような恐ろしい顔で睨みつけていた。

 そんな中、信二と春樹の前に立ち塞がったのは古川女医だった。

 
「担当になった古川です。 御主人の容体は極めて良好で安定しています。 ただ、お話ししたいことがあります。」

 落ち着いた口調で信二と春樹の真ん中の奥に居るミドリに視線を合わせる古川の目は澄んでいた。

 すると喜一は突然、ベッドから起き上がった。


「もういい。 もういいから帰ろう… 早くこの病院から出たいんだ。 先生とも話すことはないし、何かあったらこの病院に来ることは約束するし、決して他言もしないし他の病院へ行くことはしないから。」

 喜一はベッドから降りると一瞬、フラッとしながらもしっかりと足を揃えて立ち上がった。

 
 女医の古川はそんな喜一に視線を合わせ小さく頷いて病室から出る下山一家を黙って見送った。


 喜一は生まれて初めてパンティーの中に着けた生理用ナプキンにゴワゴワ感を感じた。

 医師団の話しでは喜一の身体は100%の女性化が進み、体内に卵巣、子宮を備え妊娠できる身体へと進化しているということだった。

 そして内科的にも外科的にも神経的にも健康そのものであるといい、一人の女性という視点でみれば特別妙な部分は見当たらないと言う。



「もしかしたら喜一(かれ)は………」

 古川女医は下山喜一の検査報告を受け会議室の片隅の席に一人、一つの仮説を立てていた。

 
「大至急、研究室に喜一(かれ)の細胞、何でもいいから持ってきて! それと新薬も!」

 古川は慌てるように連絡を取ると研究室へと急いだ。

 そして慌てて入った研究室の中で顕微鏡を覗く臨床主任医師の安藤の姿に古川は胸の奥をドキッとさせた。

 
「古川先生もですか? いや、私も前々から気になってたものですからね……」

 安藤は古川の研究室への入室に驚く様子も見せずに冷静な口調で入って来た古川をチラッと見た。

 
「この新薬… 別の視点から見ていくと神の領域を侵して進む軍艦のような存在ですよ……」

 顕微鏡から目を離した安藤は古川を再び見据えると、隣りにいた古川に顕微鏡を覗かせ、顕微鏡を覗いた古川は息を飲んだ。


 


【十三話】




「どうだったー? 初めての生理を終えた感想は? 辛かったでしょうぉ~♪ 女はねぇ、こうして一人前になっていくものなのよぉ~♪ もうナプキンは外してもいい頃合だわ。」

 生理が始まって終るまで殆ど動かずに事なきを終えた喜一はトイレでナプキンを外した開放感に浸っていた。

 二人の息子もまた、父親である喜一に起きた異変(せいり)に気を使ってか、各自が自分の住処へと戻っていき、今は妻はのミドリと二人きりの生活になっていた。

 病院からも何も言ってこず、陰部の痒みも治まって喜一の開放感は二倍に跳ね上がっていた。

 もともと血を見ることに抵抗感のあった喜一にとって生理中のナプキン交換は地獄そのものだったようだ。

 
「とうとう妊娠できる身体になっちまったな……」

 何れこうなるとかもと何となく思っていた喜一はミドリの買ってくれた白いワンピース姿で体育座りして開いた大窓から庭を見ていた。

 ワンピースの裾の内側に風が通じて陰部へパンティー越しに感じた風が、ナプキンの無い開放感を喜一に教えた。

 
「俺、どうなっちゃうんだろう…… ハゲてたのにこんなにツヤツヤした髪まで伸びて……」

 右手で頭部のフサフサした髪の毛を撫でながら肩に掛かった髪の毛を無意識に指を巻きつけた。

 その仕草を見ていたミドリは、ソファーの上で煽ぐウチワを止め自分の十代を一瞬蘇らせた。

 
「生理なんぞ要らんのに……」

 両腕で膝を抱え身体を前後に小さく揺らす喜一は病院で子宮切除を考えていた。

 
「シャワー浴びて来るよ……」

 ボソっと呟いた喜一はミドリを見ることなく居間から風呂場へと向かった。

 裸になるにつれプルプルと揺れるゼラチン質のような身体を見て、ガックリうな垂れ風呂場に入り陰毛に隠れた立て筋を見て大きな溜息をした喜一はシャワーを強めに身体を浸した。

 全てに対して何事も肯定派として生きて来た喜一にとって生理だけは否定したかったようだ。

 触れるだけで感じる喜一(おんな)の身体はボディーソープが絡んだ指先を更に敏感に感じさせ、肌に手の平を滑らせただけでも喜一の喉の奥に恥かしい声が篭った。

 
「それにしてもミドリと来たら……」

 妻のミドリが買ってくる下着の数々を思い出して鏡の前でゲンナリする喜一は、箪笥の引出しの中のファンシーな下着類を思い出していた。


「履きたきゃ自分で履けばいいのに…… あんなビラビラが一杯ついたのなんぞ履けるかって……」

 フリルがフンダンに使われたパンティーやスキャンティーを思い出しながら両乳房を両手で洗う喜一は意識的に乳首を避けて洗っていた。

 
 その頃、居間にいたはずのミドリは前日届いた小包の箱をドキドキしながら二階の和室で開梱していた。

 
「これさえあれば喜一(かのじょ)に女の喜びを教えてあげられる……」

 手にしたペニスバンドを両手に持って顔の前で角度を変えて見るミドリの表情は真剣そのものだった。

 そして箱の中にあるバイブや擬似ペニスをチラリと見ると、ミドリはスカートの中に手を入れアーモンドブラウン色のパンティーストッキングの上からクリトリスを軽く弄った。

 喜一と結婚していらい誰にも悟られることなく封印してきたレズビアンのミドリにとって目の前のペニスバンドはセピア色の記憶を1コマを蘇らせた。

 クリトリスを弄るミドリの指が縦に割れた溝に沿うように、パンティーストッキングのシームの上を下へ滑り降りた。

 時折身体をビクつかせるミドリは部屋のドアの向こう側に聞き耳を立てながら陰部を中指で擦り続けた。

 そしてその頃、風呂場にいる喜一もまたボディーソープの絡んだ中指で割目の内肉を上下に擦って狂おしい声を喉の奥に篭らせていた。


 男でも女でも熟女も幼女もエッチなことを考えれば、することは一つのようだ。

 
「で、彼女たちの容体はどうなんですか? 四人が四人とも原因不明の病魔に襲われ次々に倒れ高熱を発症している…… しかもその四人は全員が新薬の被験者である下山喜一の世話係りとは……」

 〇〇製薬臨床病棟の屋上にいる二人の男性医師。

「現在調査中ですが皆目解からんのです…… 何が原因で彼女達を高熱が襲っているのか。」

 手すりに掴まって遠くの山々を見詰める医師に対して、両手を後に組む別の医師は困惑した表情で口を開いた。

「まさか、伝染性の奇病なんてことはないだろうね。 もしそうだとしたら我々はとんでもない病気を作り出したことになる。早急に対策を講ぜねばなるまい。」

 手すりから手を離して後を振り返った医師は後ろの医師に顔を強張らせた。

 
 
「君、下山さんちに来てる娘(こ)だろ♪ 僕は柿崎幸一、ここに住んでる大学二年生♪ 宜しくね♪」

 庭の中で涼んでいるとブロック塀の向うから声をかけられ振り向いた喜一に爽やかな笑顔を送る隣家の長男の幸一。

 
「君の名前は?」

 隣家の幸一に聞かれ一瞬ドキッとした喜一は名乗る名前がない事に気づいた。

 
「あ… うん… わ、私の名前は… みんなキーちゃんって呼んでる♪ 初めましてぇ~♪」

 喜一は突然かけられた声に動揺を隠せぬまま、病棟で呼ばれていた呼び名をそのまま伝えた。

 
 柿崎幸一は下山家の隣りに住む両親と本人の三人家族。 下山家とは家を建てた頃からの親しい間柄で、信二や春樹の二人を兄のように慕う幸一は妻、ミドリからも慕われ喜一本人もまた可愛がっていた。


「キーちゃんか、可愛い名前だね♪ ところで下山(オジ)さんは? 最近見ないんだけど出張かな?」

 ブロック塀に両手を乗せた柿崎幸一をチラリと見る喜一は幸一を見た瞬間、胸の奥をドキッとさせた。

 
 両手を後に組んで俯く喜一は不思議なことに胸の奥がドキドキしていたが、清潔感のある爽やかな好青年の柿崎幸一を恥かしくてマトモにみれない喜一は、頷くのが精一杯だった。
 
 そんな喜一は誘われるままに柿崎幸一の家に行き、柿崎の母親と挨拶を交した後、幸一の二階の部屋へと移動した。

 初めて見る柿崎幸一の部屋は清潔感ある爽やかな本人らしい部屋で、学習机の前の椅子に喜一が腰掛けると同時に、下から柿崎の奥さんが飲み物を持ってきてくれたが誰も喜一だとは気付かなかった。

 近所でも有名な秀才である幸一の部屋の壁の棚には喜一を驚かせるほどの書籍がズラリと並び、幸一が勉強家であることをうかがわせ、同時にチラリと見た幸一の部屋の屑入れの中の大きく丸められたティシュを見た喜一は、幸一が立派な男に育っていることにも気づいた。


「うん♪ そうそう、ここはねこうしてーっと♪ いいよ♪ うんうん♪」

 学習机の上にあるノートパソコンを前に慣れぬ手つきでパソコンを幸一から習う喜一は、背中に幸一の体温を感じ右側に幸一の左頬の熱を感じていた。

 嫌らしさを感じない喜一のマウスを持つ右手の上に幸一の手が覆い被さると喜一は胸の奥をドキッとさせた。

 そして嫌らしさを感じさせないと言いながらも幸一は喜一に多いかぶさりながら豊満な胸を襟元からチラチラと覗き見ていた。

 その覗き見られた胸元にはミドリの買ってくれたフリル一杯のブラジャーが幸一に清純な乙女を目一杯に演出し、喜一から香る乙女の香りは幸一に狼の血を滾らせ始めていた。

 だが、その幸一に冷ややかな視線を送る人影に幸一は驚いたように喜一から慌てて離れた。


「あっ! やっほー♪」

 嬉しそうに窓から手を振ってみせた喜一の視線の向うには隣家である下山家の二階の廊下の窓に起つ下山ミドリが居た。

 まさかミドリーと、声出して手を振るわけにも行かない喜一だったがそれはそれで幸一の目を気にしていた。

 そして幸一はミドリの視線から外れるように敢て窓の陰に隠れベッドの上に腰掛けて深呼吸をした。


「キーちゃん、そろそろ帰ったほうがいいよ。 オバサンも心配してるからね。」

 幸一はミドリに不味いところを見られたと思いながらも席から立ち上がった喜一の柔らかい尻の揺れを凝視し、携帯メールのアドレスを書いて渡した。

 喜一が柿崎家を離れると直ぐに幸一の部屋の窓はカーテンが閉められ、ベッドに横になった幸一から忙く熱い吐息が漏れだした。

 

「アナタ! 少しは気をつけて下さいよ! いくら隣りの幸一君だからって言っても相手は健康な男子、力ずくになったら今のアナタでは勝てませんからねえ! 幸一君はアナタのことを本当の女の子だと思いこんでるんですからね!」

 帰宅して椅子に座ってタバコを吸う喜一の横でミドリはスカートの裾を慌しく揺らしイラついて口を尖らせた。

 ミドリは女になって日の浅い喜一の貞操が不安で不安で仕方なかったようだが、母親のごとくガミガミ説教を垂れるミドリに嫌気がさした喜一は書斎に篭り将棋の本を片手に詰め将棋を始めた。

 白いワンピースは喜一の胡坐の所為でだらしない様相を見せ、裾は捲くれ上がって太ももを露にし左膝の上についた左腕の頬杖は愛らしい様相の喜一には相応しくなかった。

 そして三十分、一時間と時間が経過したが喜一の頭の中にあったのは隣家の幸一のことだった。

 
「くそ! 熱中できん! 俺はホモにでもなっちまったのか!! 男の体温でドキッとしてみたり緊張したり……」

 喜一は目の前の将棋を右手でジャラジャラとかき混ぜるとドサッとその場に横になって天井を見上げた。


「何なんだ、この感覚は! まるで恋…… おいおい俺は五十過ぎてるんだぞ!」

 後に回した右手でワンピースの裾を捲り上げるとパンティーの上から尻を掻いた喜一は伸ばした左腕に左頬をピタリと貼り付けた。


「ブッ!」

 尻を掻きながら屁を垂れる喜一はワンピースの裾をパタパタと仰いで匂いを消し飛ばした。


「肉棒(サオ)を入れられたら気持ちいいのかいな…… 看護師(かのじょ)の指は気持ちいかったなぁ~」

 喜一は赤面して一人ニヤニヤして照れ床の上でゴロゴロ転がっていた。

 女である喜一は誰かに身体を愛欲されたくてウズウズしていた。




【十四話】



 
「あれ? 今夜はずいぶんと早いじゃないか。 それに暑くないのか布団なんかかぶって?」

 夜の十時、ミドリの姿が居間にないことを知った喜一だったが昼間の暑さ疲れもあって早く寝ようと寝室に来ると既に妻のミドリはベッドに入り布団をかぶって寝ていた。

 ティシャツを脱いだ喜一はデニムのショーパンを脱ぎ捨てブラジャーを外すと、ドッコイショとベッドに座り部屋の灯りを小さくした。

 喜一は一瞬チラッとミドリを見てからベッドに横になったがミドリは熟睡しているのかピクリとも動かなかった。

 そして喜一が腹まで毛布をかけて目を閉じた瞬間、突然熟睡しているはずのミドリが布団を跳ね除けガハッと起きた。

 喜一はミドリの行動に驚いて首をミドリの方へ向けるとそこには黒いレザーのボディスーツに黒い網タイツを履いたミドリがベッドの上に立ち上がって喜一を見詰めていた。


「な! 何だぁー! その格好!?」

 喜一はミドリに驚いて声を発した瞬間、突然ミドリは喜一の身体を仰向けからうつ伏せにし喜一の両手を後ろ手に縛り上げた。

 ミドリの行動に仰天した喜一は当然のこと暴れ抵抗したが十七歳の少女の身体は長年主婦をしている熟女のミドリには敵うはずはなくアッサリ縛り上げられてしまった。

 そして再び喜一はミドリに縛られたまま仰向けにされると毛布を奪われパンティー1枚だけの喜一が仰天してソコに居た。

 
「どういうことだ! 何してるんだ!! 悪ふざけも過ぎるぞ!! 早く解け!!」

 自分の腹に馬乗りになったミドリに大声を発した喜一は普段と違うミドリの表情に顔を強張らせ全身を緊張させた。

 普段から寝化粧などしたことのないミドリの顔はキツめの妖しさが漂う知らない熟女のようだった。

 そしてそんなミドリを睨み付けた喜一に視線を返すように重ねたミドリは突然、喜一の身体を自らで覆うと両乳房に両手を這わせ揉み始めた。

 
「よ、よせ! 変態プレイなんぞ御免だ!! やめろ!! あんっ! よ! ああんっ!! やめ! やめ…… あんっ!」

 突然自分の両乳房を揉み始めたミドリに声を荒げた喜一は乳首をミドリに吸われた瞬間、男言葉の中に愛らしい少女の鳴き声を奏でた。

 ミドリは喜一の鳴き声に鼻息を荒くして無言のまま喜一の乳首に吸い付いて舌を絡めながら時折コリコリと勃起した乳首を甘噛みした。

 喜一は乳首を吸われる度、舌を絡められる度、勃起した乳首を甘噛みされる度に首を後に仰け反らせ切なげな鳴き声を薄暗い部屋の中に発し続けた。

 
「私の処女はアナタに捧げた…… だからアナタの処女は私が貰うわ……」

 ミドリの愛撫に首を仰け反らせ身悶えする喜一にはミドリの心の中の言葉は聞こえるはずもなかった。

 喜一の乳房を絞り上げるように両手で掴んだミドリの唇は忙しく交互に喜一の乳首を吸い回し、喜一の片足をミドリの網タイツがスリスリと両側から抱き締めるように絡みついていた。

 もはや喜一には抵抗力はなくミドリからの味見に声を奏で強い刺激に身体をビク付かせるしかなかった。

 
「可愛い娘……」

 喜一の切なげな顔を見た瞬間、乳房から離れたミドリの左手はスリスリと滑るように喜一の腹部をゆっくりと通過すると弾けそうな喜一の太ももに這わせられ手の平を滑らせた。

 そしてミドリの手は少しずつ喜一の足を開かせながらその内モモの肉の弾力を何度も確かめてはパンティーの湿り具合を中指の先で確認しやがてミドリの右手も唇も喜一の乳房から離れ舐め回しながらその舌先はゆっくりと下半身へと向かった。

 喜一は腹部をレロレロと滑るミドリの舌からの官能に身体をクネらせ両足の筋肉を硬直させ恥かしい声をあげ続けると、やがてミドリの舌先はヘソの中へと滑り落ちた。

 その瞬間の喜一の身悶えは息も止まるほどの悶絶に達し、ミドリの両手は内側はグッショリと愛液で濡れた喜一からパンティーを剥ぎ取り始め喜一は無意識に尻を持ち上げた。

 そして膝立てさせられ大きく開かされた喜一の両足の真ん中にミドリの顔を近付いた瞬間、喜一の心拍数は一気に上昇し縛られた両手は密かに拳を握った。

 ピンク色した内肉に貼り付いた少女の匂いと味にミドリの舌が忙しく動き回りその度に喜一の全身は電気ショックを受けたように痙攣して弾力のある肉肌をプリプリと揺らした。

 ミドリの舌は執拗に内肉の尿道とクリトリスを刺激し続け時折思い出したかのように小陰唇の間から溢れ出る鮮液(しる)を舐め取っては喉に流し込んだ。

 喜一の両足の爪先は開くことなく震えながら閉じられ首は左に右にと何度も振り続けられる中で、ミドリの身につけているレオタードの陰部の内側からモーター音が鳴り響いた。

 ミドリは事前に自分の中に入れておいたローターのスイッチを入れ強弱のツマミを操作しながら舌先を喜一の小陰唇の間に滑り入れると、喜一は突然ブリッジして喉の奥に無数の呼吸を溜めグルグルと猫のように鳴らした。

 そしてミドリの下腹部からカチャカチャと何かを留める音がしそれが聞こえなくなった瞬間、ミドリの顔が一瞬、喜一から離れ膝立てさせられた両足がグイッと持ち上げられた。

 
「本物の女にしてあげるわ……」

 ミドリはニヤリと妖しい笑みを浮かべ口元に付着した喜一の愛液を舐め取ると、全てが終ったかのような満足げな表情を見せる喜一の顔を見た。

 そして大きく開かれた喜一の両足の真ん中とミドリの下腹部の間に黒光りする硬い物が一瞬見えた瞬間、喜一は一瞬背伸びし両目を大きく見開いたかと思うと直ぐに身体を丸くして両目を閉じた。

 開かれた喜一の両足の真ん中、縦に割れた肉溝の小陰唇の間を通過する黒く硬い物体は喜一に不安と期待を同時に与え、穴の入り口から感じた何かが滑る感覚に喜一は看護師(かのじょ)の指と似たような快感を感じ取った。

 ゆっくりと自分の中にニュルっと滑り入る物体に穴の中が押し広げられる違和感を感じながらも喜一はエモいえぬ快感に全身を仰け反らせた。

 そして穴の中で止まった硬い物がその場で前後した瞬間、キュゥーっと身体の中が俄かに熱くなり再び心拍数が上昇し必死に喉の奥に溜めようとした吐息が一気に口の外に漏れた。

 それを上で見ているミドリはニヤリと口元を緩め腰をゆっくりと腰を前後させ、全身を小さく震わせながら身動き出来ずに官能している喜一に声を小さく囁いた。


「キーちゃん…… 可愛い…… 今から本物(おんな)にしてあげるからね……」

 喜一の両膝を持ち上げるミドリが腰を優しく前後させながら喜一に聞こえないほど小さく囁くとミドリの顔は突然、険しい表情に一変した。

 そして数センチ入っていた喜一の穴の中から黒く硬い物を入口までゆっくりと引き抜いた瞬間、ミドリは満面の笑顔をして腰を一気に喜一の肉割へと押し込んだ。


 ズブリユウウゥゥーーーーーー!!!!


 その瞬間、喜一は両目を大きく見開いて穴の中が裂けるような鋭く激しい痛みに襲われた。

 
「痛えええぇぇぇぇーーーーえ!! 痛えーー! 痛えーー! 痛ええぇぇぇーー!!!」

 喜一の顔からは快感の喜びは一気に消えその顔は見る見る間に真っ赤に変色し苦痛に歪む女の顔へと変化していった。

 だがミドリは苦痛に歪む喜一の顔を見て不適な笑みを浮かべて、ベッドの上へと逃げようとする喜一の身体をガッチリと押えて離さなかった。

 
「やめろおおぉー! ミドリ!! ミドリいいぃー!! 抜けえー! 抜いてくれええぇぇー!!」

 腰を前後させるミドリに甲高い声をあげ絶叫し両足に力を入れ離れようとする喜一を引き止めるスリルでも味わうようにミドリはニヤニヤしてその目を妖しく光らせた。

 ジリジリと穴の中の生肉が焼け付く痛みと痛みからくるジビレに喜一の開いた口を閉じることはなかった。

 目は血走り後に縛られた両手の拳は快感に対するものではなく壮絶な痛みに対するものだった。

 そして喜一の穴からは透明な液体に代わって真っ赤な鮮血が小陰唇を掠め真っ白なシーツを赤く染めた。

 両足の硬直した筋肉はミドリを振り払おうと力が入ったまま緩むことはなく、叫び大きく広がった口も閉じて歯を食いしばる表情に変化した。

 ヌッチャクッチャヌッチャクッチャと血生臭い音と匂いが喜一とミドリの間に漂い反射しあい、一人の少女が大人の女になるための儀式は喜一の同意を得ぬまま延々と続けられた。


 パアァーン! パアァーン! パアァーン!

 
 額に汗して振り続けられるミドリの腰は休むことなく喜一の身体に打ちつけられその度に肉と肉に間に弾かれた鮮血は周囲に飛び散った。

 喜一の目からは涙が滲みその頬は涙の形跡が乾くことはなかった。

 そして喜一の涙が伝わり落ちた形跡を消すようにミドリの額から落ちた汗が重なった。

 ミドリを見詰める喜一の目には憎しみにも似た光が放たれ喜一はいつしか気を失って沈黙を果たした。

 だがそんな喜一を見るミドリの目は微笑みを続けていた。

 
「これで私達の愛を妨げるものはなくなったわ………」

 気を失った喜一を見詰めるミドリからは安堵の表情と達成感が漂い、そして動かなくなった喜一から黒い擬似ペニスを引き抜いたミドリはベッドの上に膝立ちして両手を斜め下に向けて深呼吸して呼吸を整えた。

 
 
 早朝四時、目覚めた喜一は陰部の奥に何か入っている違和感に嫌悪しながら首を回して隣りに眠るミドリを睨み付けたが、陰部を覆うようにナプキンが付けられパンティーを履いているこに気づいた。

 隣りに寝ているミドリの足には網タイツはなく白い肌がベッドに沈んでいて、数時間前に自分を苦しめた棒のような物は何処にもなかった。

 喜一は自分を無理矢理抱いたミドリに悔しさと怒りを感じながらも、男でなくなった自分が悪いのだと自分に言い聞かせ、不自然な姿勢で静かに寝室を出るとトイレで血の付いたナプキンを取り替えた。

 そしてこの一日、ミドリは普段の様相だったものの喜一は殆どミドリとは口を利かずに過ごしたが、再び深夜の寝室で喜一はミドリにレイプされてしまった。

 喜一は後手に縛られながらのバックスタイルで挿入されたことに酷いショックを受け後戻りの出来ない世界にいる事を悟った。

 


【十五話】




 喜一はイライラしていた。 それは嫌がる喜一を毎夜のごとく抱く妻のミドリへの不満が原因だった。

 そんな喜一は寝室で寝起きを共にすることへ不信感を募らせ寝室を別にしたいと考えるようになっていった。

 だがそんなことをミドリが許すはずもなく喜一は日に日に苛立ちを増加させたが、毎夜のセックスで喜一の身体は徐々にセックスの痛みから解放されていった。

 そして最も喜一の苛立ちを大きくしていたのは、ミドリからの女として生きるためのレッスンだった。

 ああしろこうしろ、あれは駄目、これも駄目と口うるさく自分の好みの女に仕立てようとするミドリは歯止めを失い仕舞には喜一の着ける下着や服、スカートまで自分の好みを押し付け、時間があれば喜一の身体を求めしつこくセックスへと導き続けた。

 それでも喜一が耐えられたのはミドリが買物に出かけている間の少ない時間に羽を伸ばせる隣家の柿崎幸一の部屋があったからだった。

 柿崎幸一は叔母(ミドリ)への愚痴を聞く唯一の喜一の味方で喜一は時間を見つけては幸一の部屋へ出入していた。

 だが、柿崎幸一も健康な男子として愛らしい喜一を放っておくはずもなく喜一との男女間の間合いを少しずつ詰めていった。

 そんななか女性としての緊張感の欠ける喜一は毎夜のミドリとのセックスで疲れていたのか、幸一の部屋のベッドで眠ってしまったことが最悪の結果を招いてしまった。

 この日の昼過ぎ役所へ所用で出かけたミドリの目を盗んで幸一の部屋を訪れていた喜一だったが、幸一の母も所用で外出していて家には幸一と喜一の二人きりの時間が発生した。

 自分のベッドで眠る喜一の愛らしい顔とデニムのシュートパンツから突き出たスラリとした足、更には半袖ティシャッを内側から押し出す喜一の胸に見入った幸一は静かに窓を閉じるとカーテンをかけ、手には粘着テープと白いロープを持っていた。

 幸一は無防備な喜一の全体を見渡すとゴクリと喉を鳴らすと突然、ベッドで横位で眠る喜一の口元に粘着テープを貼り付け慌しく喜一の両手を後手に縛りあげた。

 これに驚いた喜一は突然のことに衝撃を受け叫びそうになったが口元に貼り付いた粘着テープと後手に縛るロープにミドリに処女を奪われた夜が蘇った。

 バタバタとベッドの上で暴れる喜一を意図も簡単に押さえつける幸一の力はミドリの比ではなくアッと言う間に喜一はティシャッを下から首まで捲り上げられ、ブラジャーを幸一の前に晒し両足をバタつかせるもショートパンツはアッサリ脱がされてしまった。

 幸一はそんな喜一に突如自らの身体を押し当てると狂ったように喜一のブラジャーを首へと押し上げプル~ンと晒された喜一の乳房に夢中で貪りつき、両手で喜一の乳房を揉み回した。

 乳首に感じる痛いほどの幸一の吸引力と荒々しい獣のような両手の動きは喜一に逃げられないことを悟らせた。

 喜一は目を閉じて首を横倒しにすると乳房にムシャブリつく幸一のザラついた舌の感触に薄っすらと涙を流した。

 それは幸一を幼少期から知り信じていたことへの裏切りにも似た感傷的なものだった。

 幸一は自分が味わっている身体の持ち主が幼少期から慕っていた隣りの喜一だとも知らずに夢中になって喜一の肌を味わい続け、プルプルと揺れ弾力を見せる喜一の身体を所狭しと触手し続けた。

 喜一の身体は幸一の唾液に塗れそれが室温の高さで乾くのを感じながら欲情した男の獣さを実感し、内モモにムシャブリつく幸一の唇と舌に女を知らぬ若い男の無知さと痛みを同時に感じた。

 そしてその喜一からパンティーが剥ぎ取られた瞬間、喜一は寂しい気持ちで胸の奥が張り裂けそうになった。

 両手で開かれた喜一の割目の激臭に何度も咽て咳き込む幸一は女の臭気に怯むことなくザラついた舌を割れ目の内側に押し付け立て筋に沿って激しく動かした。

 喜一はそんな幸一の舌の動きに憤りを覚えながらも、激しい快感(しげき)に身体をビクつかせる自分が情けなくて仕方なかった。

 そして幸一はズボンのベルトをカチャカチャと外しズボンを片手で脱ぎ飛ばすと喜一の両足を跨いでピンク色した肉棒を聳えさせた。

 喜一は幸一の聳える痛々しいピンク色の亀頭を見ると顔を顰めて瞼を閉じ、幸一は再び喜一の両足を開かせ両足を持ち上げ、肉棒を喜一に挿入しようとしたその瞬間、突然何かが喜一の顔に飛んで来た。


 ビュウッ! ピチャピチャピチャ!!

 
 ツンと喜一の鼻を突いた刺激臭を放つドロドロした液体は喜一にとって懐かしい男の匂いだった。

 若かりき頃、ミドリの顔に射精した喜一は今まさに自分の顔で幸一の若い精液を受け止めたのだった。

 ただ、喜一と違っていたのは幸一は興奮のあまり喜一に挿入しようとした瞬間、我慢出来ずに精液を発射した点だった。

 幸一は悔しそうに喜一の顔の上で肉棒の根元を指で搾り出し内側からドロドロした臭い精液を搾り垂らした。

 喜一の顔は見る見る間に幸一の精液で塗れていき閉じた唇の上は気持ち悪い温度がフワリと広まった。

 そして顔に一滴残らず精液を搾り出した幸一は再び喜一の両足を広げグイッと持ち上げた瞬間、再び肉棒化した硬い物を喜一の中に挿入してきた。


 ズブリユウウウゥゥゥーーーー!!! ヌプヌプヌプ……


 喜一の膣の中に若い男の生棒が擦れるように入ると喜一は首を左右に振って顔に付いた幸一の精液を飛び散らせ、奥深くへと幸一の生棒が入ると喜一は無意識に股間に力を入れ両足の筋肉を硬直させた。

 そして幸一が挿入した硬い生棒を引き抜こうと腰を引いた瞬間、幸一は我慢出来ないとばかりに顔を赤面させ喜一の中に二度目の射精を放った。

 喜一は幸一の射精を大きな幸一の呻き声で感じとったようだが、幸一は畜生と声を張り上げ射精しながら生棒を喜一の中で再び擦り始めた。

 幸一の若い身体は二度目の射精を果たしても尚も喜一の中で硬く大きくなり腰を前後させ女の中の肉の心地よさを知り喜一は感じていた。

 喜一の身体に入れたまま喜一の身体を横位に変化させそしてバックへと移行させた幸一は女の身体の柔軟さを知り、喜一に覆い被さって喜一の両手を片手で引っ張り腰を振った。

 そして引力の法則でプルプルと大きく揺れる喜一の乳房に感動しながら背後から右手で鷲掴みする幸一。

 背後から触る喜一のスベスベしてプリプリした尻肉に片手の平を這わせ何度も滑らせる。

 腰を振る度にヨガリ声を奏で髪の毛を振り乱す喜一は耐え切れずに自らを支える幸一の手を振り解き身体を折り曲げベッドにうずくまった。

 パンパンと喜一の柔尻を打ちつける幸一の肉音が部屋に響きそれを覆うように幸一の荒い吐息が漂った。

 そして喜一の中でギンギンに硬くなった幸一の生棒はピンク色の亀頭を紫色に変色させて三度目の射精を喜一の穴奥に果たすと、そのまま喜一の背後にグッタリと自らを重ねた。

 喜一は精液に塗れた顔をベッドシーツに擦りつけ落とした。

 
「キーちゃん…… ゴメン…… 我慢出来なかったんだ。」

 幸一は後ろ手に縛られベッドにうずくまる喜一に背後から耳元で小さな声で囁いたが、喜一はピクリとも動かなかった。

 ピクリとも動かない喜一に幸一は喜一を縛るロープを解き、背後から剥げ落ちかけた粘着テープを取ると喜一から離れベッドを降りると、タオルを数枚持ってきて喜一の顔の横に置いた。

 
「今、濡れタオル持ってくるから……」

 幸一は反応のない喜一に囁くと慌しく自室を出て行き、喜一は犯された我が身を哀れに感じ大粒の涙を流しながらゆっくりベッドに跪くとタオルで顔を、そして肉穴から流れ落ちる幸一の精液を無言のまま拭き取り服を着ると逃げるように柿崎家から自宅へと走った。

 
 喜一は自宅風呂場の中、シャワーの湯の中ですすり泣いた。

 


【十六話】




 喜一の心は荒んでしまった。

 あれほど信頼していた柿崎幸一が我が身を無理矢理味わう狼のように豹変したことに。

 鏡に映る自分は魅力的な十七歳の少女でありながら心は五十才というアンバランスさを保つ。

 いっそ記憶すらも変わってしまえばいい。

 そんな風に思って居た喜一は窓辺を背に風に揺れるカーテンに我が身を打ち続けていた。

 
「キーちゃん! ゴメン・ゴメン・ゴメン……」

 ゴメンという文字が何百にも連なる幸一からのメールを見れば見るほど五十才の乙女心は悲しく沈んだ。

 
 その頃、〇〇製薬臨床病棟では喜一と関係を持った看護師たちに異変が起きていた。

 元々、男だった女性看護師達は初期の頃の新薬を実験臨床した後、女性への憧れをモノにした経緯があったが、それは定期的に身体に薬を投与しなければならない欠陥薬であった。

 そんな彼女たちは不明の高熱を出し次々に倒れたものの次々に回復していった。

 しかも精密検査の結果、全員に子宮、卵巣が備わり生理のある妊娠できる身体になっていた。

 ただ、彼女達は一貫して喜一と性交渉を持ったことを胸の中に止めていたことで、何も知らない医師達は喜一から伝染したのではないかと囁かれた。

 もしも喜一から伝染したということになれば、新薬として爆発的なヒットは望めないばかりか、無関係の人間達をも感染させるガンを作ってしまったことになる。

 
 そんな中、用足しに出かけていた喜一の妻のミドリに異変が起きていた。

 用足しを終え帰宅の途中で立ち寄ったショッピングセンターのトイレの中でミドリは突然の高熱にうなされ便座に座ったまま動けずにいた。

 ドアの金具に引っ掛けたタイトスカートが何重にも揺れて見え起つことも出来ずに額に脂汗を浮き立たせていた。

 膝まで降ろしたパンティーとパンティーストッキングはそのままに引き揚げることも出来ず、捲り上げていた白いスリップはダラリと揺れ、用足しした後、陰部を拭き取ることも出来なかった。

 助けを呼ぼうにも声も出ず携帯の入ったバックにも手が届かない上体のまま三十分、四十分と時間が過ぎて行った。

 胸元は汗でビッショリ濡れ白いスリップのレースは上半身にピタリと張り付き、ブラジャーに覆われた豊満な乳房の谷間は汗が溜まっていた。

 そしてミドリはそのまま失神し、三十分ほどして閉じられたままのトイレの外から誰かの声で目をさました。

 大丈夫ですか、入っていますかという声に慌てて、大丈夫ですと声を出したミドリは嘘のようにスッキリした気分に慌ててパンティーをそしてパンティーストッキングを履き上げると、金具に引っ掛けたタイトスカートを手に下半身を覆った。

 そしてトイレのドアを開いて外に出たミドリを係員が見た瞬間、顔色が突然代わった。

 まるで何かお化けでも見たような表情をする係員にミドリは一礼してトイレを出ると、何故か行き交う人達は異様な目でミドリを見つめた。

 何が何だか解からないままミドリは通りに出てタクシーを拾って乗り込むと自宅の住所を告げルームミラーで運転手の顔を見た。

 その瞬間、ミドリはミラーに映った自分の顔を見て絶句した。

 そのミドリをルームミラーからチラチラ見る運転手の視線にミドリは恐怖を感じた。

 ミドリはそのまま下を俯いて終止無言を貫いて自宅前でタクシーを降りると、つり銭を貰うことも忘れて玄関に逃げ込んだ。

 膝がガクガクと震え下駄箱に掴まっていないと崩れそうだったミドリが足元を見ると、パンティーストッキングに包まれた両足からボウボウのスネ毛が毛先を出し、パンティーの下に不自然に当たる何かに気づいた。

 ミドリは悲鳴を上げそうになったのを堪えに堪えて、そのまま急いで風呂場へ行くと内側から脱衣場に鍵をかけブラウスとスカートを脱ぎ捨てた。

 
 あわわわわわわわわわ………


 全身をガクガクブルブルと大きな震動が走り立っているのにバランスが崩れ後へとひっくリ返りそうになった。

 両目を充血させスリップを脱ぎ捨てたミドリは両手で自らの豊満な乳房をブラージャーの上から押し付けた瞬間、力がガクンと抜けその場にへたり込んでしまった。

 そしてその瞬間、脳天が爆発しそうなほどの激しい痛みがミドリを遅い飛び跳ねるように立ち上がって腹を抱ええて屈みこんだ。

 
 痛ああぁぁぁーーーい!!


 痛みに対する激しい叫び声は余りの痛みに声にならずに喉の奥に唸り声として溜められた。

 ミドリは痛みの中で鈍い動きでブラジャーを身体から引き離した瞬間、恐怖のあまり気絶しそうになり後へよろけた。

 そして自分の股間に視線を移した瞬間、ミドリは唖然とした。

 パンティーストッキングに覆われたパンティーの中に見慣れない膨らみがあって慌ててパンティーをパンティーストッキングのまま下に引き下げた瞬間、ミドリは大きな悲鳴を上げてその場で気絶して倒れた。

 その時、二階の部屋にいた喜一は泣き疲れて眠っていてミドリの悲鳴に気付くことはなかった。

 そして一時間が過ぎた頃、風呂場の脱衣場で目を覚ましたミドリは、ゆっくりと身体を起こして自分に何が起きたのかを思いだしながら立ち上がった瞬間、股間にぶら下がった遺物に仰天し震撼した。

 豊満な乳房は跡形も無く筋肉質な胸板に消え、股間にブラブラと揺れた肉竿と玉袋に息を飲んで見入り、そして緊張しながらガニ股で歩いて鏡の前に移動すると、ソコには見たことも無い中年のオッサンが立っていた。

 毛むくじゃらの身体と引き締まった筋肉質な全身と、どう見ても男にしか見えない目鼻立ちはミドリの頭の中を真白にさせた。

 
 なに?! これ……… あわわわわわわわわ………


 両手で自分の顔を触りながら自らの身体を見渡すと肉竿の先のピンク色の痛々しい亀頭に目を奪われた。

 そしてミドリは自分が自分に似ても似付かない見知らぬ男に変身していることに気づいた。

 身体を揺すると股間で肉竿がブラブラ揺れ恐怖のあまり無意識にしたガニ股姿に震撼した。

 
 そして変化はミドリに留まらず隣家の柿崎家でも起きていた。

 喜一を力ずくで犯した柿崎幸一は自らの身体の異変に違和感を感じていた。

 

 


【十七話】




「おおーい、ミドリー! 帰ってるんだろー 何処に居るんだあー?」

 目を覚ました喜一が一階へ降りると既に夕日が赤々と燃える時間帯、辺りにミドリの姿のない喜一は探して回った。

 髪の毛を後に縛った喜一の髪が左に右に上に下に大きく揺れた。

 そして探し回った喜一が後は寝室だけとドアの前に立つと、中から突然叫ぶように声が放たれた。


「来ないで!!」

 喜一は何事かと寝室のドアに手をかけると突然、ドアを向こう側から開かせまいとするミドリを感じた。

 
「どうした~♪ 何で開けてくれないんだミドリ~♪」

 喜一は何事かと声に丸みをつけてドアの向こう側にいるミドリに問いかけたがミドリは静まりかえったままドアを開けようとはしなかった。

 そして喜一が諦めて居間の方へ戻ろうとした時、突然ドアが開いてミドリが泣き叫ぶように喜一に抱き付いてきた。


 ドッカッーン! 痛てぇー!


 喜一は大きな声を出し体当たり同然のミドリに跳ね飛ばされ廊下に尻餅を付いて仰向けにひっくリ返った。

 そこへミドリが重なるように吹っ飛んできて喜一に覆い被さった。

 そして次の瞬間、ミドリは大声を出して喜一の目を両手の平で塞いだ。


「見ないでえぇ!!」


 ミドリのケタタマシイ声が廊下に響き渡った。

 喜一はミドリの異変に閉じられた瞼の下で不安を覚えうろたえ、開いた両足を膝立てさせミドリの身体を両側から支えた。

 ミドリは喜一の目を押えたままシクシクと泣いていた。

 
「どうしたんだ~ ミドリイ~♪」

 喜一はミドリを落ち着かせようと敢て声に丸みを持たせ微笑んだ。

 すると、ミドリは声をヒクヒクさせながら声を震わせて口を開いた。


「アタシ… アタシね… アタシ… 女じゃなくなってるのよおぉー!! うわああぁーーーん!!」

 ミドリは突然、喜一の顔から両手を放し大声で泣き喚いた。

 
 瞼を開いた喜一の上に見知らぬ男性が馬乗りになっていて、喜一はその顔に呆然とした。

 声はミドリなのに顔も姿も全てが見知らぬ男性に変わってしまったミドリは大粒の涙を流して大泣きしていた。

 
「アタシが… アタシがアナタに無理矢理あんなことしたからバチが当たったんだわあぁー!!」

 大粒の涙をポタポタと落とすミドリは口髭をヒクヒク震わせ大声で下にいる喜一を泣き見した直後、喜一に抱き付いた。


「く! 苦しい! ミドリ!! 離れろ! 苦しい!!」

 突然抱きついてきたミドリに喜一は呼吸を止められ苦しさを訴えたたがミドリは混乱していてその声は届かず、喜一は両手足をバタつかせて暴れた。

 そして次の瞬間、ミドリはハッとした表情で喜一から離れると、黙り込んで喜一の胸を見下ろした。


 ゴクリッ……


 無言で喜一のプルプル揺れる胸を凝視したミドリは赤面して喉を鳴らすと突然、喜一のティャツを両手で首へと捲り上げた。

 咄嗟に喜一はミドリの異変に気付いて声を大にやめるように叫んだがそれもミドリの耳に届かなかった。

 
「ミドリ!! こんなところで何をする! やめろ! やめるんだ!! やめ! うわっ!」

 喜一はミドリの強い力に敵わずシャツとブラジャーを首元へと捲り上げられデニムのスカートを巻くりあげられ白いパンティーを露にされた。

 男の身体になったミドリは自らの性欲を抑止出来ぬまま男の本能剥き出しで喜一に男として初めての牙を向けた。

 帰宅したミドリと会う前に女として最大の屈辱を幸一から受けた喜一は敵わぬまでも全力でミドリからの牙に抵抗を試みたが、男になっさたミドリは以前にも増して力がつよく喜一は泣くの涙で顔を歪めて乳房に感じる強い吸引力に首を左右に振った。

 
「ミドリ!! やめろお! やめ! イヤァーー! ヤメテェー!! イヤァァァー!!」

 乳首にザラついた舌の感触が伝わった瞬間、喜一は頭の上で床に押え付けられた両腕を必死に払おうとして泣き叫んで抵抗した。

 だが、獣へと変貌したミドリの頭の中は目の前の女への肉欲が一杯になり喜一(おんな)の泣き叫ぶ声など届くはずはなかった。

 女のミドリにそして今度は男のミドリに犯される喜一は非力な女の身体を後悔した。

 抱かれたい訳でも愛撫されたい訳でもないのに相手の性欲に振り回される自分(おんな)の悲しい部分に怒りが治まらない中、喜一は男のミドリに乳房を自由にされた。

 しかも強引な肉欲に対する抵抗であるのにも関らず揉み回される乳房と弄られ吸われる乳首から来る激しい快感(しげき)にヨガリ声を奏でる自分に苛立ちを覚えた。

 
「あん… あひぃ! あああああぅ!」 


 両乳房を掴まれ絞られ突出した乳首に吸いつくミドリに悲しい女の鳴き声を奏でた喜一は唇を噛んで自らの声を止めようと唇を噛んだ。

 既に自由になっている両腕を動かすことも出来ず激しい快感(しげき)に声を出し首を仰け反らせ続けた。

 そんな喜一を他所にミドリは無我夢中で込み上げる男の欲求を喜一の身体にブツけ、プリーツスカートの内側のパンティーの中を男の愛液で激しく濡らした。

 
「ぃや!! ぅあっ! あひっ! あひっ!」
 
 
 首を左右に振り仰け反る喜一は廊下の床板の上、微かに指だけをゆっくりと動かし続けた。
 
 そんな中でミドリは舐めても吸っても治まらない女の肌への欲求に目を血走らせ夢中で喜一をプリプリと揺らし、快感に動けなくなった喜一からパンティーを剥ぎ取るとその内側の当布を口に入れチュパチュパとムシャブリ啜りゴクリと喉を鳴らし喜一の愛液を飲み込んだ。

 そして自ら履いているプリーツスカートとパンティーをバサッと脱ぎ捨てると太く逞しく聳え起った肉棒を喜一の前に露呈させた。

 グングンと肉棒を司る筋肉を動かし男の逞しさに自信をみなぎらせた。

 その肉棒の先からは有り得ないほどの愛液が溢れ竿を伝い玉袋から床に滴り落ちた。

 
「ぐるるるるるる♪」

 ミドリは自らの逞しい肉棒を見た瞬間、満面の笑みを浮かべ喜一の両足の付け根を見下ろすと、右手で肉棒を握り締めた。

 その瞬間、ミドリの両目は大きく見開かれとてつもない衝撃に顔を引き攣らせ、喉の奥から大きく吐息を放った。

 
 ジュッ! ピチャピチャピチャ!!


 肉棒の敏感さに免疫のなかったミドリは喜一に入れようと握ったことでエクスタシーに達し粘る精液を喜一の頭の遙か向こう側に飛ばしてしまった。

 クッションフロアーに丸みを帯びた黄色がかった男の液体が飛び散り窓から入る夕日に赤く染まった。

 だが、ミドリは再びニヤリと不適な笑みを浮かべると握った右手を軽く上下に扱いて見た。

 すると射精ばかりの肉棒は見る見る間に逞しさを蘇らせ、ミドリは自信に満ちた顔つきに豹変し突然、喜一の割目に顔を付けると両手で喜一の両足を下から支えザラついた舌先を押し付け内肉に滲み込んだ女の匂いと味を夢中で味わった。

 喜一から溢れた女の愛液にピチャピチャと嫌らしい音を立てレロレロと大陰唇と小陰唇の間を舐め、勢い良く往復を繰り返した。


「あひっ! あひっ! あひっ! あひっ! あひっ!」


 激しい陰部からの快感(しげき)に喜一はガクガクと全身を大きく揺らし持ち上げ押えられた両足の筋肉を硬直させ爪先をギュッと閉じさせた。

 ミドリの舌は喜一の割目の中の汚れを自由に舌先で絡め取るとそれを喉に流し込んだ。

 女の塩気を帯びた生臭い鼻を突く異臭も男のミドリにとってこの上ない御馳走のようだったのか、ミドリは笑みを浮かべて舐め取った。

 喜一はミドリの舌の動きに全身が麻痺したように固まり微動だに出来ずに恥かしい女の鳴き声だけを放ち続けた。

 そして膣の入口から大量の愛液を溢れさせた喜一はそれをもミドリの舌先は絡めとられ飲干された瞬間、ミドリはニンマリと満面の笑みを浮かべると、カウパー支線液に塗れた自らの肉棒を右手に持ち、小陰唇の間に挿入された。

 
「うんっ… ぅぅん! ぅあっ! あぅぅぅぅぅぅ!」


 喜一の小陰唇の生肉を掠めたミドリの逞しい肉棒は擦りながら喜一の生肉を広げヌプヌプヌプと喜一の愛液を肉棒に塗らせながらその太さを喜一の生肉に伝えた。

 ミドリは目を細めて肉棒から伝わる生まれてはじめての感覚に脳裏を真白にさせ喜一は幸一の比ではない大きな肉棒に大きく吐息を吐いた。

 そしてミドリの肉棒が喜一の奥へ入りきった時、廊下に放たれた喜一の両手には拳が握られ首は限界にまで伸びきっていた。

 髪の毛は解け廊下に振り乱され全身を硬直させた喜一は挿入された下半身を小さく震わせた。

 これから来るであろう劇的な快感(しげき)に備えねように。

 一方のミドリは喜一の穴中の肉圧の中で肉棒を引き抜く機会を無言で覗っていた。

 そして、ミドリは一呼吸大きくした瞬間、喜一の中の肉棒を一気に引き抜こうと腰を引いた直後、脳天をバスーカ砲で撃ち抜かれたようにドッピュゥゥーーーンと喜一の中で爆発させた。

 ミドリは両目を閉じて射精の瞬間の激しい快感を噛み締めた。


 ニヤニヤニヤニヤ……


 ミドリは鼻の下を伸ばして射精を楽しむとダラシナイ表情を下にいる喜一に見せながらも、出し切ると再び柔らかくなった肉棒を擦るべく喜一の中で腰を前後させた。

 するとミドリの肉棒は徐々に硬くなりはじめ喜一は内肉を擦られながら少しずつその大きさの摩擦力に身悶えと仰け反りを繰り返して行った。

 初めはギコチなかったミドリの腰つきはギンギンに撓るころにはテンポよくリズミカルに喜一の穴肉を擦り続けた。

 嫌で嫌で仕方なかったミドリとのセックスは男になったミドリを相手に喜一は女になって初めて離れたくないと心底思った。

 その証拠に喜一の両足は中に入るミドリをギュッと抱えた。

 ミドリは三度目の射精をするべく喜一の中で腰を振り続け額から大量の汗を落とし喜一と廊下をその汗で浸した後、喜一の中で男としての役割を果たした。

 喜一は自らを満足させたミドリに自ら抱き付いて放そうとはしなかった。

 同時にミドリもまた喜一を放そうとはしなかった。

 夕日が沈んで廊下を暗闇が飲み込んだ。

 



【十八話】




「あっははははは♪ 全く驚いたったらありゃしない♪ だってぇー突然よ! 突然周囲の私を見る目がねぇ♪ どう見てもオカマよオカマ~♪」

 男になったミドリの話を聞き入り大笑いする喜一は涙を流してその時の情景を思い浮かべミドリは噴出しそうになるのを堪えて語り続けた。

 二人で囲むテーブルが普段より小さく見えた下山家の二人は時間の経つのも忘れて談笑した。

 ミドリは男の肉棒の使い方を喜一から教わり、うんうんと素直に喜一の言葉を頭に入れた。


 だが、そのころ隣りの柿崎家では大変なことになっていた。

 
 食事時を過ぎて夜の十時を過ぎても二階の自室から降りてこない柿崎幸一を変に思った両親と幸一が二階のドアの入口で押し問答をしていた。

 両親は肩を並べて幸一の部屋のドアにすがり、幸一は開けられたくないと頑なに入室を拒んでいた。

 幸一は両親に見られたくほどに姿を変えていた。

 体毛が全て抜け落ち乳房の膨らんだ幸一は有り得ない現実にこの場を乗り切る一心で両親に下へ降りるように説得を試みた。

 何故、こんなことになったのか心当たりの無い幸一にとって望まない女性化は衝撃のあまり死をも考えるほどだった。

 高熱にうなされ声も出せずに苦しんだ数時間の後、治まった自らを見ればシャツの下にプルプルとコンニャクのように揺れる乳房が出現していたら誰でも恐ろしくなるだろうか。

 しかもベッドの上は自分から抜け落ちたオビタダシイ量の体毛。

 幸一は明日、顔を見せるよと両親を説得した後、部屋の灯りを小さくすると裸になって手鏡で自らの胸を覗き込んだ。

 Bカップほどに膨らんだ乳房の真ん中にピンク色した大きな乳首と乳輪があって、身体を揺するたびに乳房はプルプルと上下左右斜めにと無造作に揺れた。

 しかも両足の毛は全てが抜け落ち肌はスベスベ状態だったことで、幸一は何かとんでもない病気に掛かったと思いこんだ。

 
 ビクンーーーッ! 


 ベッドに腰掛け両腕をクロスさせ両方の乳首を抓んだ瞬間、幸一は経験したことの無い強い衝撃に脳天を撃たれ震撼した。

 それはまるで二つの乳首が敏感すぎるペニスの先っぽのような存在感ある感覚だった。

 そんな意味不明な衝撃は二つの乳房をプルンプルンと大きく揺らし瞬時にして二つの乳首は大きく勃起した。


 何だコレ………


 戦々恐々としながら再び両手の指でコリコリ感のある両方の乳首を抓んだ瞬間、再び途方も無い快感(しげき)が幸一を襲い幸一は余りの強さにその場に気絶してしまった。

 幸一はこの夜、トランクス一枚のままベッドの上で自分が女になった夢を見ていた。

 自分の身体からシンボルである肉塊が消えそこに縦に割れた溝が形成されウエストはキュッと引き締まり尻はプリプリと弾力をスカートに伝えた。

 だが、それは夢ではなく確実に眠っている幸一の身体を変化させていた事実だった。

 女性化願望など一つもない幸一は夢の中で両手を広げ花畑の真ん中でクルクルと回り踊っていた。

 フリルの付いたワンピースを着て長い髪を風に靡かせて。

 笑う声は聞き覚えのない愛らしい声。

 そんな幸一は自室のベッドの上で再び高熱を出していた。

 だがその様子を心配になって二階へ見に来た両親は見覚えのあるトランクスを履いた見覚えの無い乳房丸出しの女性を見て仰天していた。

 ベッドに幸一のトランクスを履いた見知らぬ女性が上半身裸で眠っている。

 その情景を見た両親の驚きは並大抵ではないだろう。

 窓は内側から全て施錠され深夜に玄関から誰か入った形跡は全くない。

 母親は見知らぬ女性に取敢えず毛布をかけた。

 そして額から流れる異常な量の汗に驚き手で女性の体温を診た瞬間、顔色を変え一階から冷温枕を慌てて持ってくると女性の頭部を冷やした。

 父親は何が何だか解からず1階の居間でウイスキーを片手に息子の身を案じていた。

 
 幸一の彼女なのか? じゃ、幸一は何処に……


 父親は時計を何度も見ながら落ち着かない気持ちを抑えるように外の音に耳を澄ました。

 母親は二階にいる見知らぬ女性の素性よりも高熱を心配していた。

 
 その頃、下山家の寝室で二人は互いの声を感じながら燃えるような愛に汗を流していた。

 ミドリは少しだけ慣れた男の身体を堪能し喜一は男に抱かれる女の喜びに浸っていた。

 そしてパンパンパンと腰を打ち付ける度に喜一から愛液が飛び散りミドリの肌にトロリとした液体を付着させた。

 ミドリは腰を打ちつけながら女のようにヨガリ声をあげ、その声に重なるように喜一の愛らしい喘ぎ声が絡みついた。

 二人の愛欲は延々と続けられたが、隣家の柿崎家では戻って来ない息子を待ち続ける両親が不安な表情を浮かべていた。

 そして翌朝のこと柿崎家。

 
「アナタ、誰? 息子の幸一は何処へ行ったの?」

 二階に居る女性の額のタオルを替えようと上がって行った母親は、目を覚まして窓辺に佇む女性に声をかけた。

 女性は呆然とするように毛布を肩から被り無言で窓に映る自分を見詰めていた。

 
「僕だよ母さん… 信じられないだろうけど僕も信じられないんだ…… クッ!」

 幸一は窓の方を向いたまま声を詰まらせた。


「取敢えず何か着る物を持ってくるわ…… 待ってて。」
 
 幸一の母、幸子は小声で伝えると一階の夫婦の寝室へ移動し箪笥の中から新品の下着と若い頃に着ていた半袖のワンピースを取り出すと二階へ足を急がせた。


「事情は解からないけど、取敢えずコレに着替えてね… 話しはその後に聞くから。」

 幸子は自分を抑えながら冷静を装って部屋を出て行った。

 
 母さん、こんなモノ履くのか……


 幸子の置いていった新品のパンティーは水色のフリル付きで幸一にショックを与えが、既に自分の身体の全てを見てしまった幸一にとって母親の持って来たパンティーの種類などその比ではなかった。

 そして立ち上がって毛布を脱ぎ捨て裸になった自分を見た時、股間に有るべきモノが付いておらず陰毛の下辺りから真っ直ぐに下へと伸びる割目に視線を奪われた。

 キュンと引き締まったウエストとゼリーのように揺れる尻肉と太もも、そしてBカップほどの乳房は幸一の目に涙を滲ませながら、ベッドに腰を降ろして母親から渡されたフリル付きのパンティーに足を通した。

 幸一は惨めな気持ちに襲われながら下半身にフィットし割目を覆う水色のパンティーに違和感を覚えた。

 そして水色のスリップに身を包んだ瞬間、耐え切れずに大粒の涙をポタポタと床に落とした。

 実の息子が母親から渡されたパンティーを履きそしてスリップで胸を隠すということがどれほど幸一の自尊心を傷つけたのだろうか。

 幸一は半袖のワンピースに身を包むと大きな深呼吸をして学習机の前の椅子に腰をかけた。

 手鏡に映る自分とは似付かない別人。

 しかも女性。

 幸一は何もかもが信じられない気持ちでいっぱいだった。

 そして立ち上げたノートパソコンでありとあらゆる検索を試みて時分の病気を探し回ったが、何処にも一晩で女性化したという症状はなかった。

 
 その後、柿崎家では一階の居間で二親を前に幸一は自分であるという証を立てるために質疑応答を繰り返した。


 

 
【十九話】



 朝食を終えて中庭を前に床に座りタバコを吸っている喜一の視線に休日だというのに夫婦揃って何処かへ出かける柿崎家の二人が入った。

 二人は妙に思い詰めたような真剣な顔して車庫から出した車に乗り込むと少し遅れて見た事もない二十代前半の半袖ワンピースに白いストッキング姿の女性が車に乗るのが見えた。

 喜一にははワンピース姿の女性の車への乗り込みに妙な違和感を感じた。

 男のような乗り方で後部座席に乗り込んだ女性はワンピースの裾が風に捲くれて下半身を露出しても気にする素振りを見せなかった。

 
 アレ??


 白いショーパンに紺系のタンクトップを来た喜一は見たことを話そうとミドリの方を振り返った。

 すると台所仕事を終えたミドリがタオルで手を拭きながら喜一の傍にお茶を運んできた。

 五十代前半の口髭の似合う目鼻立ちのキリッとしたミドリは床に湯飲み茶碗を二つ置くと喜一の横にスラックス姿で斜め座りした。

 
「ミドリ、そんな座りかたしたら玉が挟まって酷い目に遭うぞー♪ それよりな、今、柿崎んとこの二人が見た事も無いお嬢さんと車で何処かへ出かけたが、お前何か聞いてるか? 親戚の娘さんが来てるとかなんか?」

 中庭に向いて体育座りする喜一はスラックス姿で斜め座りするミドリに笑みを浮かべた。


「あら、変ねぇ~ そんな話し聞いてないけど……」

 スラックス姿で斜め座りする不気味なミドリはテレビに出てくる初期の頃のロバちゃんの雰囲気だった。

 そんなミドリを見る喜一はミドリの入れてくれた茶を飲んで視線を庭木の方へ向けた瞬間、ホンの少しだけ幸一のことが脳裏を過ぎった。

 喜一は幸一にレイプされた時のことを思い出し異性に割目の中を見られ味見される恥かしさに肩をすぼめた。

 
「ところでお前のことなんだが、俺の弟ってことで柿崎のとこにも近所にも話しておくか。」

 斜め座りしてお茶を飲むミドリを見た喜一がサラリと話すとミドリは、うんうんと相槌して庭先を見詰めた。

 
 その頃、両親に連れられ外出した幸一は真っ青な顔して俯いて両親の話しに聞き入っていた。


「いいかい幸一。 お前は車の中にいて、母さんと父さんが医師(せんせい)に、それとなく話を聞いてそれから呼びに来るから。 それまでは車から一歩も出ちゃ駄目よ!」

 助手席から後部座席を振り向いて厳しい表情を浮かべる母、幸子と目を合わせずに頷く幸一。

 父親は無言で運転に集中している。

 
 幸一を乗せた車は父親である柿崎の学生時代の友人が勤める私立病院へと向かっていた。

 慣れぬパンティーストッキングに違和感を覚え両手で抱いた両膝に手の平を震えるように擦らせる幸一は生きた心地などしなかったようだ。

 車に一人残された幸一は座席に両足を上げ体育座りして両ひざを両手で抱いて動揺を押えた。

 病院の地下駐車場、薄暗さもあって心の動揺は直ぐに静まった。

 丸見えの下半身、割目を覆うパンティーの縦筋にパンティーストッキングの縫目がピタリとフィットしてイズさを覚える幸一だったが、薄暗さもあって右手の中指で痒くなった縦筋にストッキングの上から指を擦らせた。

 その瞬間、幸一は自分の発した声に驚き激しく動揺した。


「あんっ!」

 
 目を丸くして自分の発した声に慌てて右手を引っ込めた幸一は自分が完全に女になってしまったことを知った。

 幸一は女のデリケートな部分を恐る恐る右手の中指で再び擦って見た。

 男には到底理解出来ない程の快感が全身に内側から広がった。

 
 気持ちいい……


 幸一はパンティーストッキングが伝線しないように気を使いながら右手の中指でパンティーストッキングの縫目の上を擦り続け、内モモと胸をプルプルと揺らした。

 そこへ怒り心頭の父親が声を荒げ母親を連れて戻って来た。


「幸一! 帰るぞ! あんなヤブだとは思わなかった! 一旦帰って他の病院を探す!」

 幸一の父、柿崎は学生時代からの友人の医師に幸一のことを相談したが、マトモに取り合ってもらえず激怒して戻ってきた。

 幸一の母、幸子もまた鼻で笑う医師に苛立ちを覚えながらも、誰も信じてくれるはずなどないと内心諦めていた。

 
「幸一、帰りにアナタの服や下着とか買うから母さんと一緒に来て頂戴。」

 母、幸子はハンドルを握る柿崎を落ち着かせると立ち寄り先のデパート名を伝え、体育座りしたままの幸一の方を振り向いた。

 その瞬間、幸子は体育座りする幸一の割目を覆うパンティーが白いパンストの上からでもハッキリ解かるほどにグッショリ濡れていることに気付き、咄嗟に幸一の膝を叩いて座りなおさせた。

 幸一は突然、膝を叩かれ驚いて両足を下におろすとパンティーの内側で、クチュッと何かが音を立てたことを知った。

 母、幸子は幸一の割目がグッショリと濡れていたことに大きなショックを覚えたが、当の本人は全く気付いてはいなかった。

 デパートに到着した母、幸子は幸一の手を引いて婦人コーナーへと足を急がせた。

 幸子の脳裏に幸一の官能の形跡が焼きついて離れず苛立っていたようだ。

 だが、幸一の手を引く幸子は売り場を歩くにつれ次第に自然な笑みを零していた。

 別人のように変わった幸一の顔をチラチラ見てはパンティーを籠に入れる幸子ら幸一は恥かしくて逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。

 パンティーとスリップを籠に入れた幸子は傍にあった試着室に幸一を入れそして自分も入ると、突然、幸一の胸を後ろから両手で覆った。

 
 ドキッ!!


 突然のことに幸一は心臓が口から飛び出すほどの衝撃に見舞われた。

 そして幸一の胸を数回揉むように手の平で覆った母、幸子は後ろで微笑んで外に出ると試着室から出た幸一の正面に立った。


「どうやら既製品で何とかなりそうね♪ ブラは高いからね、うふふふふ~♪」

 母、幸子は胸のサイズを手で測定していたことを幸一は知り、幸一は母の凄さを知らされた気がした。

 
 幸子は時間と共に上機嫌で幸一を連れ買物を楽しんだ。

 そしてトイレに行こうと幸一をトイレに連れて行くと、手洗い時で幸一に耳打ちをした。


「女はね、とても敏感なの…… だから無闇にアソコを弄っちゃ駄目…… 興味があるのは構わないけど時と場所を考えてね。 中でパンティーとストッキングを替えてらっしゃい。 あと、し終えたらちゃんと拭いてね♪ いいわね!」

 突然、幸一ら耳打ちした幸子はそのままトイレに入り、幸一は幸子の言葉の意味が解からないままトイレに入った。

 トイレの中でパンティーストッキングを、そしてパンティーを膝まで降ろした瞬間、幸一はパンティーの当て布がグッショリ濡れていることを知った。

 幸一は母に全てを見抜かれていたことを知り顔から火が出るほど真っ赤に赤面し、用足しを終えそのまま立ち上がろうとした瞬間、隣りに入っていた幸子から声がして慌てて便座に座った。


「幸ちゃん! ちゃんと拭いて!」


 母の声に幸一は再び赤面してトイレットペーパーで割目を拭きペーパーに擦れる内肉の刺激に首を一瞬仰け反らせ大きく息を漏らした。

 そして幸一の乳首はスリップの下で勃起していて、立ち上がった幸一はレースに擦れる乳首に全身から力が抜け、再び便座へヘタリ込んでしまった。

 幸一は咄嗟に漏れそうなヨガリ声を喉に押し殺した。

 
 この日、柿崎家の車は買物袋で満載の状態で帰宅し、幸一は自分が朝から履いていた使用済みパンティーの匂いを嗅ぎ喜一を想像して当て布に舌を滑らせ激しい悪臭に咳き込んだ。




【二十話】




 穏やかな夫婦生活を送る下山家に再び〇〇製薬の臨床試験病棟の古川女医が訪れていた。

 下山夫妻にとって二度と会いたくない人間達だったが、常に前向きな下山夫妻は新しい人生をもらった喜びを前提に家の中に古川女医を招きいれた。

 古川女医はミドリの変わり果てた姿に動揺を隠せず居間のソファに座ると同時に固まってしまった。

 グレーのスーツスカートに身を纏った古川女医は品のあるキャリアウーマンと下山夫妻の目には好印象を与えた。

 そしてミドリの変わり果てた姿を見た古川は動揺を隠せぬまま震える唇で紅茶を喉に流し込んだ。

 そんな古川に口髭を蓄えているミドリが夜の夫婦生活を重ねた結果、女から男へ性転換したことを笑顔で明かし今の二人はとても幸せだと付け加えた。

 ミドリは隣りに座る喜一の肩を抱き少しだけ引き寄せるとニッコリ笑って古川に視線を重ね、喜一もまた肩を抱かれることに笑みを浮かべて古川に視線を重ねた。

 そんな二人に古川は驚きも覚めぬまま声を震わせ、喜一から血液と愛液の採取を申し入れた。

 本当は喜一に再び来院してもらい検査したいらしかったが、それでは申し訳ないと喜一の血液と愛液の採取だけに絞って頼みに来たと言う。

 ところがミドリの変わり果てた姿を見た古川女医はミドリにも精液と血液の採取を重ねて申し入れた。

 その申し入れにミドリは一つの条件を提示した。

 すると古川は途端に顔を赤面させ唖然としてうろたえた。

 ミドリが提示した条件は、古川が一人で採取することだった。

 信頼出来る古川にしか触られたくないという二人の思いだった。

 血液はいいとしても愛液や精液を採取するということに古川は女性として決心を迫られた格好になった。

 喜一から愛液を採取するということ。

 そしてミドリから精液を採取するということ。

 古川は思い詰めた表情を見せたあと、赤面して無言で二人を見て頷いた。

 そんな古川女医の手を引いて寝室に入ったミドリは古川女医の全身を見て喉をゴクリと鳴らすと、突然古川女医を着衣のままベッドへ押し倒した。

 個室でミドリにマスターベーションで射精をさせようと考えていた古川にとって大きな誤算だった。

 そんな中、寝室に入った喜一は悲鳴を上げて逃げようと暴れる古川女医の足にしがみ付いた。

 古川女医は着衣のまま喜一に抑えられミドリに肌を許すはめになった。

 グレーのスカートを脱がすと黒いスリップの裾が捲くれ上がり、ジャケットとブラウスはアッと言う間に二人に依って外された。

 ベッドの上に仰向けになった古川女医をニヤニヤして見詰めるミドリは早々とトランクス一枚になって古川女医の腹に馬乗りになってペニスを肉棒化させていた。

 
「うぐうぅっ!」

 喜一は仰向けの古川女医の口に粘着テープを張るとミドリを見て薄っすらと笑みを浮かべた。

 ミドリはそんな喜一を見て古川女医の両手を後ろ手に縛りあげベッドに押し付けた。

 長い髪を振り乱して抵抗する古川女医にミドリは男の血を滾らせ古川の肩からスリップとブラジャーの肩紐をグイッと引き降ろした。

 美人の古川に相応しい見事な乳房に喉を鳴らしたミドリは突然吸い付いた。

 
「うがあぁぁー!! うぐううぅぅー!!」

 古川は突然乳首に吸い付かれ首を左右に振り粘着テープの下で呻き声を上げた。

 ミドリは獣のように古川女医の乳首を吸う一方で乳房を両手で揉み回した。

 甘い女医(おんな)の匂いが部屋の中に充満すると、喜一は同性の匂いに咽るように寝室から逃げ出した。

 ミドリの両手は嫌らしく女医の身体(はだ)を触手し回り、呻き声を上げながら瞼を閉じたり開いたりする女医(ふるかわ)は次第にミドリの舌と手に呻き声を止め悶えはじめた。

 女医(ふるかわ)の黒いスリップの裾を腹まで捲り上げたミドリは古川の腹に貪り付くように舌を滑らせた。

 そしてミドリの舌が古川のヘソの中に押し付けられ動き回ると古川は全身を痙攣させ限界まで仰け反りガクンガクンと腰をビク付かせた。

 
 医者のくせに嫌らしい下着付けて………


 ミドリはベッドの上に胡坐をするとその上に古川を腹ばいに乗せ黒いスリップとブラジャーをムンズと掴み破り捨てた。

 そして古川を跪かせると白いタンガを覆うアーモンドブラウンのパンティーストッキングに包まれた古川の尻を思い切り平手打ちした。


 バシィーン! バシィーン! バシィーン!


 その痛みに古川は両目を見開き驚きながら縛られたままの格好で粘着テープの下に呻き声を溜めた。

 ミドリに尻を平手打ちされる度にパンティーストッキングに包まれた古川の尻と太ももはプルプルと弾力で揺れた。

 古川の下半身を包むパンティーストッキングの切り替え部分にホンノリ紅みが帯びてくると古川は痛みに耐え切れずに涙を頬に伝えた。

 
 医者のくせにタンガなんて着けて……


 ミドリは苛立ちながら呟きそして平手打ちを繰り返し揺れる古川の下半身にゾクゾクしていた。

 後ろ手に縛られた古川の両手は平手打ちされる度に強い力で握り締められ、それを見てニヤリと笑みを浮かべるミドリは右手で平手打ちし左手で古川の左乳房を下から揉み回した。

 古川は痛みと快感(しげき)の板挟み状態が継続させられた。

 そして尻が赤味を増した辺りでミドリの打つ手は古川の尻から左の内モモへと変えられ、胡坐するミドリの右足の膝は両足が閉じられないように古川の足の間にグイッと押し上げられた。

 ミドリの右手が容赦なく古川の左の内モモを内側から平手打ちされると、古川は大粒の涙を頬に伝えて髪を振り乱し呻き声を上げたが、古川の打たれた内モモがストッキングに包まれながらプルプルと弾力的に揺れるとミドリは目を血走らせてゾクゾクした。

 そしてキュッと引き締まった古川のウエストをミドリの左手がくすぐると呻き声を上げていた古川は突然苦しそうに全身をプルプルと揺らせて身悶えし始め、ミドリはここぞとばかりに右手も出して古川のウエストをくすぐり始めた。

 愛撫され溶けそうになった古川を平手打ちして泣かせ、そして今度は両手でくすぐる。

 目まぐるしく変化するミドリの攻めに古川は涙を零して粘着テープを振るい落とした。


 
 あぁーっひゃひゃひゃひゃ♪ ぎゃっはっはっはっはっは♪ やめて♪ やめてえぇー♪ あっひゃひゃひゃひゃ♪


 縛られながらミドリの胡坐の上で身悶えしてくすぐりに大笑いする古川は品のある女医ではなくなっていたことにミドリは笑みを浮かべた。

 そしてそんな古川に胡坐をしているミドリのペニスは肉棒化し硬く太い鋼鉄のようになって古川の身体をグイッと持ち上げた。

 突然、自分の腹を押し上げた硬い物に古川は大笑いしながら動揺し、そんな古川をうつ伏せで膝立てさせながらミドリはサッと古川から離れると無言でトランクスを脱ぎ捨て、パンティーストッキングに包まれた古川の尻に頬擦りを繰り返した。

 そしてミドリは古川の尻の間に顔を押し付けると勢い良く古川の尻の割目の匂いを嗅いだ。

 甘い女の匂いにミドリはカウパー支線液を肉棒から溢れさせ、その頬は尻から裏モモへと移ると古川の裏モモの匂いを嗅ぎまくった。

 散々古川の裏モモの匂いを堪能したミドリは突然、今度は古川を仰向けにし両足を開かせると古川の右内モモに歯を立てて噛み付いた。


 ギァァァー!


 パンティーストッキングの上から内モモに噛み付かれた古川は両足をバタ付かせミドリを払おうと暴れたが、暴れれば暴れるほどミトセリの歯は古川の内モモに食い込んだ。

 そしてミドリは内モモに噛み付いては舌をベロベロとストッキングの上に滑らせチュパチュパと古川のストッキングに滲み込んだ古川の匂いと味に目を血走らせてムシャブリついた。

 
 痛あああぁぁーーーい!! やめて! やめて! やめてええぇー!!


 古川は噛み吸われる内モモからの鋭い痛みに首を左右に振って髪を振り乱して泣き叫んだが、ミドリは一向にやめる気配なく古川の味見は続けられた。

 ミドリは痛みに泣き叫び全身を揺らす古川の揺れる乳房を見てニヤニヤと笑みを浮かべて内モモに噛み付いてシャブり続けた。

 そして古川の内モモを逆の足に換えても尚、ミドリはムシャブリついて味わい続け、ようやく女の肉への念が消えた頃には古川は顔をグシャグシャにして咽び泣いていた。

 だがミドリの性欲は衰えず今度は古川の履いているパンティーストッキングを両手で激しくビリビリ音をたて引き裂き始めた。

 古川は泣きながら唇を噛んで下半身からパンティーストッキングを破り取られ、グッタリと両足を開いたまま瞼を閉じた。

 そんな古川の両足の付け根を覆う白いタンガは有り得ないほどにグショグショに濡れていたのを古川本人は全く気付いてはいなかったが、ミドリはそれを見た瞬間、満面の笑みを浮かべて古川から白いタンガを力任せに剥ぎ取った。

 手入れの行き届いた陰部の毛はキレイに整っていてミドリがムシャブリつくのを邪魔することはなく、パックリと開いた割目はすんなりとミドリの舌を内側へと招きいれた。

 鼻を突く女の独特の臭気に重なるように甘い匂いがあって、それを隠すように強い塩気がミドリの顔を覆った。

 余り使われていないと解かるピンク色の内肉はキラキラ光る愛液に覆われ、ミドリの舌をすんなりと滑らせると、グッタリして動かなかった古川は突然の快感(しげき)に全身に電気が走ったように全身を身構えさせた。

 そしてミドリの舌に絡みつく古川の白い恥垢はミドリの脳にピリピリ感を伝え濃厚な塩分であることを教え、ピラピラした小陰唇をネチョッと開いたミドリの舌先は中から滑り落ちた愛液に恥垢を舌先で絡め口の中で回して飲み込んだ。

 古川はガクンッガクンッと首を左右に振って両足の爪先をギュッと閉じて筋肉を硬直させると、すかさずミドリは青筋だらけの肉棒を古川に挿しこんだ。


 ズブリウゥゥゥーーー!!  


 古川の腰が大きく仰け反って白い歯を噛み締めると次々に穴肉に擦れる肉棒に今度は首をも後に仰け反らせた。

 ミドリの太い肉棒は窮屈な古川の穴を押し広げズンズンと中へ中へと進入すると、やがて古川は両足を痙攣させ小刻みに震えさせ続けた。

 
「あひっ! あひっ! あひっ! あひっ! あひっ!」
 

 ミドリに太い肉棒を挿しこまれる古川は両乳首をビンッと勃起させたまま肛門に力を無意識に入れると、更に古川の穴はキュッとミドリの肉棒を締め付け、擦れる生肉に古川は甲高い裏声で鳴き始めた。

 そして古川の両足を抱くミドリはグイッと体性を立て直すと一気に古川の奥へと肉棒を挿し込んだ。

 やがて激しく古川の生肉(こかん)を打ち付けるミドリからも女のヨガリ声が部屋の中に発っせられ、部屋の中は古川とミドリの鳴き声が一時間以上も充満し続けた。

 古川女医の顔にはミドリの精液が塗れそして割目からも精液が溢れ古川女医の希望通り彼女はミドリの精液を手に入れた。

 




【二十一話】



「先生、可愛い……」

 シャワーでミドリの匂いを消し去った裸の古川女医はベッドの上で放心状態のまま首輪をかけられ鎖に繋がれていた。

 その鎖はベッドに括り付けられたロープに止められ古川女医は逃げることを禁じられたペットのように仰向けで動かなかった。

 そして全裸の古川女医を見詰める喜一は古川女医の上に身体を重ね尖った舌先で二つの乳首を掴んで交互に刺激し古川は男の舌とは違う女の舌に身体をクネらせた。

 
 その頃、隣家の柿崎家の二階、幸一の部屋では疲れを理由にベッドに入り横になる幸一を残し、両親は幸一のことを調べるために心当たりの病院へと車で移動していた。

 幸一は買物先で母に耳打ちされたことを思い出し赤面しながらも、弄ると濡れるという女の不思議な構造を身を持って確かめたいと布団の中でパンティーに手を入れていた。

 そんな幸一の頭に常にあるのは無理矢理処女を奪った喜一のことだった。

 幸一(じぶん)に恥辱され涙を流し恥じる愛らしい喜一の顔に放った精液の形跡や、初めて喜一の中に入った瞬間の彼女の痛がる顔を思い出しながらパンティーの中に入れた指を動かす幸一は、自分の身を喜一に重ねていた。

 そして割目からフルフルしたモノが溢れた頃、布団をガバッと剥いだ幸一は台所から事前に持って来た自分のペニスと同じ大きさのスリコギ棒にコンドームを被せ、自分から溢れたヌルヌルした液体を塗りつけその先を自分の穴の中にゆっくり入れた。

 自分に入れたスリコギ棒が狭い穴を押し広げる違和感を感じながらも、幸一の頭の中には自分の肉棒を愛するキーちゃんに挿れるシーンが思い出されていた。

 そして自分がキーちゃんにしたように数センチ挿れた辺りで突然、手に力を入れて穴に入れたスリコギ棒を挿しこんだ。


 ズブリウウゥゥーー!!


 奥まで挿れた瞬間、幸一は両目を大きく見開き放心状態に陥った。

 激痛が腹の内側から脳天を貫いた次の瞬間、焼いた鉄の棒を入れられたように下腹の奥に超激痛が広がった。


 痛てえええぇぇぇーーー!!!


 思わず絶叫した幸一はゴムを被せたスリコギ棒を引き抜くことも出来ないほど全身に強い電撃を感じた。

 ジリジリジリと腹の中が焼けるような壮絶な痛みは幸一の思考を停止させ穴の中に入ったスリコギ棒をそのまま握りしめ動けなくなりそのまま気を失った。

 
 その頃、喜一に抱かれる古川女医は喜一とのシックスナインで下側から狂ったように喜一の割目を舐め続けていて、それに応じるように喜一もまた上側から古川の割目に舌を入れ動かしていた。

 喜一から溢れた愛液は古川の顔を透明な液体で照からせ喜一の口元もまた古川の愛液で照かっていた。

 互いに互いの下半身を両腕で抱きかかえパックリと開いた柔らかい大陰唇の生肉に頬を押し付け忙しく舌を動かし続けた。

 
 好きなだけ俺の愛液を飲めばいい……


 喜一は小声で囁くと古川の小陰唇の間に尖った舌先を押し付け古川の肉ヒダを内側から刺激し続ける喜一は久々の女の生肉の感触に心躍っていた。

 身体は女でも心は五十代の喜一にとって古川女医の肉体(なまにく)は魅力的な匂いと味に感じられた。

 そんな古川女医もまた自分を味わう喜一に女と男の二つが合体した奇妙な何かを感じていたようだ。

 そして数十分間続けられた女同士の愛欲も中盤を向かえ、喜一は自らの下半身を古川女医に合体させようとした。

 その瞬間、突然古川女医は叫んだ。


「嫌あぁ! 嫌! 嫌! 嫌ああぁぁー!! 男になんかなりたくない!! 私は女でいたいのおぉー!!」

 突然首を大きく左右に振って喜一から離れようとした古川女医は両足をバタつかせて喜一を拒絶し始めた。

 そんな古川女医に仰天した喜一は逃げようとする古川女医を追い詰め無理矢理下半身を合体させると凄まじい勢いで腰を振り互いの生肉を擦り合わせた。

 
「あん… あひぃ! あああああぅ! 気持ちいい! 気持ちいいぃー!!」

 凄まじい勢いで下半身の生肉を擦る喜一に声を裏返して古川女医は身悶えしてヨガリ狂った。

 喜一に合わせて自らも腰を振り始めた古川女医に心と身体に相違が生まれた瞬間だった。

 
 その頃、患者(ほんにん)不在のまま幸一の病気を知ろうと手当たり次第に病院を駆け回る幸一の両親は一軒目でも二軒目でもそして三軒目の病院でも相手にされず、そんな馬鹿な話しがあるかと医師から追い出されていた。

 突然息子が一晩で女になってしまったなどという話をマトモに相手にする医師は一人も存在しなかった。

 それでも幸一の両親は次の病院へと車を急がせた。

 息子の一大事と両親は焦りながら病気を知る医師に巡り会うために走り回っている時、その息子は自宅自室のベッドの中でオナニーの最中に自分(あな)に挿れてしまったスリコギ棒を抜くべく額に汗を滲ませていた。

 顔色を真っ青にし額に脂汗を浮かせ右手を震わせ恐々と割目の穴からスリコギ棒を少しずつ引き抜く幸一は哀れな男だった。

 
 こんな痛い物なのに僕はキーちゃんに……


 幸一は涙ながらに喜一に心の中で詫び少しずつ押し込んだスリコギ棒を引き抜き続け、そしてようやく割目から抜き取った時、ベッドシーツはオビタダシイ量の鮮血に染まっていた。

 ヨロケながら立ち上がった幸一は腹の奥の異物感にガニ股で、その自身の姿を見た瞬間、幸一は泣き笑いして喜一にしたことを悔しがった。

 そして幸一はガニ股で一歩、また一歩と鮮血に染まったシーツを捨てるために階段をゆっくりと手すりに掴まって下り、同時刻に隣家では喜一と古川女医はエクスタシーに突入して疲れた身体を重ねあいながら休息していた。

 そんな中、自宅の庭石に腰掛けていたミドリは古川の身体に満足してニヤニヤしながらアイスに舌堤を打っていた。

 
 このまま男の身体で人生を終えたい……


 雲一つない青い空を見詰めるミドリは男としての人生がいつまでも続けばいいと思っていた。

 その直ぐ傍の隣家で女の苦痛を身を持って知った幸一はトイレの便座に座り割目の内側の鮮血をマユをシカメて拭いていた。

 そしてその同時刻に〇〇製薬臨床病棟から四人の女性看護師が同時に姿をくらました。

 
 何故、あの性同一障害(かんごし)達が完全な女に成れたのだろう……


 臨床試験病棟の研究室で目を凝らして顕微鏡を覗く安藤医師は自らの悲願達成のための手掛かりを求めていた。

 壁に掛かった時計をチラチラ見て、下山家を訪ねて行った古川の帰りを待ち侘びる安藤は古川が持ち帰るであろう愛液(さんぷる)を心待ちにした。

 両乳房を切除し卵巣を摘出し膣を密閉した安藤の悲願である男への性転換は成功するのだろうか。

 



【二十二話】




「駄目だ… 何処の病院も信じてくれん! そんな所へお前を連れて行ったところで見世物にされるだけだ……」

 幸一の父、柿崎良一はダイニングターブルの席上、幸一を前に苦渋の表情を見せ隣りに入る母の幸子も塞ぎこんだままだった。

 そんな両親を目の前に幸一は両手を前に俯いて呟いた。


 僕、取敢えずは様子を見て見たい… ネットとかでも調べられるし…… もしかしたら突然、元に戻るってことも……


 そんな幸一を前に両親は無言で頷くと再び重苦しい空気が漂った。

 そんな空気を払拭するかのように幸一は顔を上げ微笑ながら呟いた。

 
 ほら、お母さんが買ってくれたスカートも履いてないのがあるからね♪ これなんか結構いいと思うんだ♪


 紺色のミニのプリーツスカートを立ち上がって見せる幸一は落ち着いた面持ちでダイニングを出ていき、それを見送る両親は無言で見送った。

 黒いニーソックスに包まれた自分の息子の両足と揺れるスカートの裾を後ろから見る良一は大きな溜息をして隣りに入る幸子を見詰めた。

 
 両親の前で強がって見せたものの二階の自室に入った幸一は椅子に腰掛、揃えた両足を包むニーソックスの膝辺りを見て涙を頬に伝えた。

 幸一には自分の病気が不治の病であると認識していたようだった。

 学習机の上で立ち上がっているパソコンには検索されたサイトのショートカットが山のように並べられていた。

 突然、一晩のうちに男性から女性になったなどいう奇病はインターネットの力を持ってしても見つからなかった。

 しかも以前の自分とは似ても似付かない別人の顔は鏡を見るのも怖くなるほど幸一を怖がらせた。

 ただ唯一の救いは若干の変化はあるものの声が以前と似ていたことだった。

 身体は全体的に丸みを帯びて70キロあった体重は55キロにまで減少しウエストは引き締まり、乳房はBカップ、歩くだけで全身がゼラチンのようにプルプルと振るえ陰部はネット図鑑で見た通りの形と構造をしている。

 そんな幸一の唯一の望みは骨だった。

 見た目に骨は殆ど変化しておらず変わったのは骨を包む肉と脂肪だけと言う些細なことを安心の根拠にしていたが、病院で骨盤のレントゲンを撮って見たいという思いが強かった。

 骨盤の形状に変化がなければ元に戻れるかも知れない。

 そして何よりも女になって数日では解からないが幸一の脳裏にあったのは生理の有無だった。

 形だけが変わったのなら打つ手はあると自分に言い聞かせ、それを元気の根拠にしていた。

 だがこの時、幸一は女の象徴である生理が自分の身に近付いていることを知らなかった。

 女になりたいなどという願望を一度も持ったことのない幸一にとって、自らが女になったことは屈辱でしかなかったが、隣家にいるキーちゃんに思いを寄せ卑劣な緊博と力ずくで処女を奪ったことを詫び許しを乞いたいと心の底から思っていた幸一は、元の姿に早く戻らなければという思いが強かった。

 自分の身体を確認するように始めた自慰の最中、無理矢理、硬い物を挿入された女の悲痛さを知った幸一のキーちゃんへの詫びの思いは募る一方だった。

 そうは言いながらも脳は男のままの幸一はニーソックスに包まれた両足を椅子の上に体育座りすると、否応なくプリンプリンした自分の太ももを手鏡でいろんな角度で映しては赤面していた。

 そんな幸一は今夜もまた自分で履いたパンティーの匂いを嗅ぎながら自慰をしようと決めていた。

 両手で乳房を揉み回し癖ににりそうなウットリ感を三十分以上も楽しんでから徐々に指を乳首に絡め誰かに触手されている感を想像して全身に指を滑らせる。

 そして自分がキーちゃんにしたようにパンティーを力ずくで剥ぎ取り両足を開きパンティーの匂いを嗅ぎながら割目に指を滑らせる。

 今夜も幸一はそうしようと閉じた瞼の下で想像し体育座りで露になっているスカートの中、パンティーの縦筋を指で擦り始めた。

 蛍光灯の下、時計の音だけがカチコチカチコチと耳に伝わり就寝時間が早くくればいいと幸一は願いながら指を擦り続けた。

 
 その頃、街の何処かでは臨床病棟から姿を眩ました女性看護師達がバラバラになって本物の女性の身体になった喜びを個々に噛み締めていた。

 ある者は彼の腕枕で時間を過ごし、またある者は本物の身体に涙しながら確認(じい)して喜び、またある者は見違えるように美しくなった自分の顔に酔いしれ、ある者は夜の街で恋を探して歩き回った。

 〇〇製薬の実験用に開発された初期の頃の性転換剤は一定期間を担保するものの薬を継続使用しなければならず、プリプリした身体は作れても性転換者の永遠の夢である、濡れて感じるという女の喜びは手に入れられなかった。

 だが彼女達はそれを手に入れてしまった。

 やがて彼女達にも来るであろう女の道は彼女達が本当に性同一性障害なのかどうかを問う、最終兵器のような気がする。

 女性への憧れが自分でも気付かない単に同性愛者の延長線だったのか、或いは真に性同一性障害者だったのかは本物(おんな)として生きて見てからでないと解からない答えだろうか。

 だが、この時の彼女達は四人全ては美しい顔と美貌を供えていたがやがて恐怖が彼女達を襲うことになる。

 女性は美しいモノ……

 美しさには千差万別があるが美しさとは逆もあるのが現実。

 彼女達が求めたのは女性ではなく女性の美しい部分だけだったと気付く日が刻々と近付いていることを彼女達は知らなかった。

 彼女達は醜い顔と体形を持つ女もいるということを忘れているようだった。

 直接薬剤を投与された者と、感染した者の違いなのだろうか。

 それとも喜一も例外ではないのか。

 それは神だけが知る真実かも知れない。



【二十三話】



 下山家に喜一の愛液(サンプル)摂取の交渉に出向いた古川が臨床病棟へ戻ったのは数日後のことだった。

 訪問し突然ミドリの性転換に驚き喜一からの摂取のみならずミドリからも摂取を希望した古川女医は二人と愛欲を重ねることに。

 男に性転換したミドリに抱かれ、さらに喜一からの愛欲に溶け落ちた古川女医は二日間もの間、下山家で二人を相手に自らも肉欲に溺れた。

 そんな古川女医が臨床病棟に戻った時、古川女医は既に女医ではなくなっていたことに安藤は震撼した。

 男への性転換を望む安藤にとって目の前の古川女医の変わり果てた姿は歓喜に値するものだった。

 さっそく安藤は古川が持ち帰ったサンプルの調査に取り掛かろうとすると、古川は安藤に自分の変わり果てた姿の真相を伝えると、安藤は目の色を変えた。


 俺のことも! 俺のことも頼んでくれ! 自分の身体で試してみたい!


 安藤は悲願である性転換達成を前に涙して古川の前に土下座した。

 古川はそんな安藤のために携帯で下山ミドリに連絡して頼んでみたがアッサリと断られてしまった。

 旦那である喜一を被験者として人体実験を繰り返した安藤と肌を合わせることにミドリは嫌悪し拒絶した。

 安藤は性器接触による感染だけが頭に残りたいせつなことを忘れていた。

 
「サンプルの解明は後でいい! まずは俺が本物(おとこ)になることが先決だ!」


 安藤は古川に言い残すと下山ミドリに頼んで見ると言い残しその場から慌てて立ち去った。

 だが、望まぬ男への性転換をしてしまった古川は女に戻りたい一心で持ち帰ったサンプルの解明を急いだ。

 
「頼む!! この通りだ! 俺を! 俺にも感染させてくれ!」

 強引に下山家を訪れた安藤は玄関の床に土下座してミドリと喜一の二人を前に頭を床に擦りつけた。

 
 喜一はミドリの顔をチラっと見ると頷いて安藤を家の中へ入れ、居間のカーテンを閉め安藤に全裸になるよう指示した。

 安藤は大喜びして二人の前に全裸を見せたがミドリと喜一は安藤の裸体を見て絶句した。

 男性ホルモンを大量摂取し新薬を投与した安藤の身体は男と女が入り複雑に乱れる奇妙な身体をしていることに二人は唖然とした。

 パッと見には男に見える安藤の身体を凝視する喜一とミドリには化け物を想像させた。

 
 大量のホルモン剤と度重なる新薬の投与が俺の身体を壊してしまったんだ……


 寂しげに二人に呟いた安藤は目を潤ませた。

 ゴツゴツした身体に付いている割目の内側には穴もそして穴を覆う小陰唇もなく尿道と整形したのか大きなクリトリスが備わっていた。

 安藤の陰部を覗きこむ二人は初めて見る割目に緊張してゴクリと喉を鳴らし、安藤は恥部を凝視されることに頬を紅くして恥じらった。


「でも何処に入れるの? 穴が無いけど……」

 ミドリは両足を広げて恥らう安藤を前にキョトンしてポツリと呟いた。

 その言葉に安藤はギョッとして不審者のように辺りをキョロキョロ見回して激しく動揺し顔色を真っ青にした。

 
 安藤は無言で慌てて服を着ると放心状態のまま下山家から出ていった。

 そして安藤の帰った下山家では延々と爆笑が渦巻いていた。


「頼む!! 古川! いや古川さん! 俺の膣を! 俺の膣を元に戻してくれ! 緊急オペを頼む!!」

 安藤は研究室に篭る古川を前に膣形成の手術を土下座して頼んだ。

 だが古川は首を縦には振らなかった。

 女に戻りたい一心でサンプルの解明を勧める古川にとって、膣形成してミドリの肉棒を受け止めたい安藤などどうでもいい存在だった。

 
「お断りだわ!! 私は忙しいのよ!! 他を当たって頂戴!!」

 アゴ髭を蓄え眉毛の濃い剥げ上がった古川は土下座する安藤を見ることなく大声でいいはなった。

 
「貴方は性転換した暁には私をレイプして泣き叫ぶ私の顔に射精したいって回りに言ったそうね! そんな人の手伝いなんか出来る訳ないじゃない!」

 古川は顕微鏡を覗きながら豪気を強めた。


 すると突然安藤はオロオロして床の上に膝立ちした。


「そ! それはたかが酒の席でのことで! そんなこと本気で思ってる訳じゃ!」
 
 安藤はゴツイ身体つきの古川に両手を広げて必死で取り繕った。

 古川の拒絶に安藤はガックリ肩を落として研究室のドアへと足を進め、ドアを開くと同時に古川に怒鳴った。


「ああ!! そうだよ! お前見たいな魅力的な女を抱いて見たいと思ってるよ!! 俺の腕の中で泣き叫ぶお前の頬を舐めるのが俺の夢だ! 悪いか! 古川! お前が女に戻ったら必ずお前をレイプしてやるからな!!」

 安藤は涙をチョチョぎらせて古川を罵倒すると研究室を出ていった。

 古川は安藤の罵倒に唇を噛んで顕微鏡のデーターをパソコンに取り込んでいた。

 
 その頃、街中で女としての青春を謳歌していた四人の女性看護師たちの周囲で奇妙な出来事が頻発していた。

 それは看護師たちと性交渉を持った男や女達が次々に性転換しパニックに陥っていたことだった。

 男は女にそして女は男にと性別を入れ替えそし看護師たちもまた例外ではなかった。

 絶世の美女と変貌した四人の看護師達のうち三人の看護師たちだけが美女とは縁遠い醜い様相に転落し二目と見れないほどの醜い女へと更に変化した。

 病院から姿をくらました四人の看護師たちは連絡を取り合っていたが、その事件の直後から三人は連絡を途絶えさせた。

 そして最初に喜一を、キーちゃんと呼んで喜一と愛欲を重ねた看護師の目の前でも異変は起きていた。


「キヤァー!! 貴方誰!!」

 前夜、自分を抱いた恋人の横で寝ていた彼女は見たこともない女に戸惑った。

 その女は彼女の大声に飛び起きるとキョトンとした顔で毛布で乳房を隠す彼女に見入っていた。

 
「どした? 寝ぼけてるのか~? 自分の彼氏に誰って♪」

 二つの乳房をプルプルと揺れさせて朝日を浴びる女は男口調で隣りにいる彼女に笑みを浮かべた。

 そんな女に彼女は口を開けて小さな声を震わせ息遣いを荒くし、女はそれを見て伸ばした左腕で彼女を抱き寄せた瞬間、自分の胸に違和感を覚え凝視した。


「あわわわわわわわ!! 何だこれえぇ!!」

 女は彼女を引き寄せた腕を離すと自分の胸を見て仰天してベッドの上に立ち上がった。


 プルルルルルーン~


 女は全身をプリンのようにプルプルと揺らし慌てて自分の全身を見回して隣りの彼女を見詰めた。

 彼女はこの時、隣りで立ち上がって仰天しているのが自分の恋人であると悟った。

 
「夢だ! こんなことある訳がねえ! 夢に違いねぇ!」

 女は自分の揺れる全身を見ると再びベッドの中に潜り込んでブルブルと震えたが咽るような女の匂いに顔を出してキョロキョロと辺りを見回した。

 彼女はそんな彼を見て絶句し乳房を毛布で覆い隠し、ベッドから降りて床に立つとフラフラと額を片手に裸のまま椅子に腰掛けた。

 毛布から頭だけを出した彼は彼女を見て顔を強張らせた。


「おい、見たか! 今の!」

 毛布から顔だけ出す彼は額に手を当てて困惑する彼女に問いかけたが彼女は放心していた。

 そして恐る恐る彼は再び毛布をゆっくりと自分から剥ぎ取るとやがて見えて来た二つの乳房に再び仰天し全身をガチガチと震わせ、毛布をガバッと全身から剥いだ瞬間、股間にあるはずの肉塊がないことに悲鳴を上げて毛布に潜り込んだ。

 
 そして一時間後。


「とにかくさ、私の貸してあげるから履いてちょうだい。 そんな身体でトランクスなんか履いてたら食い込んで痛いでしょ。」

 毛布を羽織って窓の外側を向く大野洋平は彼女の差し出すパンティーを受け取ろうとはしなかった。

 
「そんなもん履けるか! 女じゃあるまいし!」

 大野洋平は涙目で彼女のよこしたパンティーを払いのけると、彼女は口元を動かして涙をポタポタと床に零した。


「お、おい! 泣くなよ! 泣きたいのはこっちの方なんだから…」

 大野洋平は泣き始めた彼女からパンティーを受け取ると照れ臭そうに赤面してピンク色のパンティーに足を通した。

 生まれて初めて履いたピンクのパンティーは女の下半身にピッタリとフィットし見たくない自分の割目をしっかりと隠してくれた。

 ただ、彼女の救いは全身が女になったものの大野洋平の顔は別人に変化していなかったことだった。

 
「くそ! バランスが悪いな、この身体!」

 飲み物を取ろうと台所へ移動した大野洋平はプルプル揺れる柔らかい肉肌の所為でヨロヨロしていた。

 そんな中、下着を身につけワンピースを着た彼女をジーッと見詰める大野洋平は、ポツリと呟いた。


 俺もそんなの着てみたいな……


 彼女は洋平の一言にギョッとして洋平を振り向いて見詰めた。

 そして洋平は彼女が手渡した白いスリップを身に纏うと自分を見入る彼女の前で赤面して、水色の半袖ワンピースに身体を包んだ。

 膝上のミニタイプの裾がヒラヒラと動く洋平に合わせて舞うと、洋平は彼女を笑わせるためにワザと身体を捻って裾を大きく舞わせた。

 ワンピースの裾が舞う度にピンク色のパンティーが部屋の大きな鏡に映し出され彼女を悲しくさせた。

 普通なら発狂しても可笑しくない状況下なのに彼は彼女を笑わせようと必死だった。

 
「俺は別にいいぜ! お前さえいいなら女でも男でも。 そのうち元に戻るだろうし♪ 戻らなきゃ戻らないでレズでいいじゃん♪」

 大野洋平は笑顔を見せると女の格好のまま彼女をその場で抱き締め口付けを交した。

 とは言いながらも、大野はコンビニへ出かけた彼女を窓から見送ると慌てて、パソコンを立ち上げ自分に起きた突然のことを検索し始めた。

 
 こんな格好で職場になんか戻れない… 何とかしなきゃ……


 Bカップほどの乳房をワンピースの上から押さえて検索に没頭する大野は邪魔な乳房を何とかしたい一心だった。

 だが、そんな大野にチラッと嫌らしい煩悩が俄かに沸いた。


 これって気持ちいいのかな……


 ワンピースの胸のボタンを外した大野はスリップの中の左乳房の上にソッと右手を入れるとゆっくりと息を潜めて揉み始めた。

 ゆっくり、ゆっくりと揉み始めると大野は込み上げて全身に広がる心地よさに堪らず声を出した。


「あん……」


 自分の奏でた声に驚きながらも大野は手を休めることなく揉みまわすと、喉をゴクリと鳴らし左乳首を親指と中指の腹で軽く抓んだ瞬間、大野はビクンッと全身を大きくビク付かせた。

 
「あひぃ!」

 
 驚いたように声を裏返した大野は脳天に直撃した女の快感(しげき)にうろたえながらもドキドキしながら乳首を数回続けて弄った。

 大野は生まれて初めての快感(しげき)に胸の奥を高鳴らせ自分が本当に女になってしまった事実を認めた。

 
 気持ちいい……


 大野は陰部が濡れていることにも気付かぬまま乳首を弄り、いつの間にかワンピースを肌蹴て両乳房を晒して揉み回しながら弄り続けていた。

 そんなこととは知らずに彼女は大野が自慰している自宅へと買物からの帰宅の途についていた。

 大野はワンピースとスリップの上半身を肌蹴させ両足を広げて体育座りしパンティーを露にした状態で自慰に耽り、無意識に触れたパンティーの縦筋はヌメリが滲み出ていた。


「あひっ! あひぃっ!」
 

 無意識に触れた縦筋に大野は体育座りする尻を一瞬、飛び上がらせて強い快感(しげき)に脳天を撃ち抜かれた。

 そこへ彼女が帰って来たが、大野は彼女が帰宅したことにも気付かぬまま恥かしい様を彼女の前に晒した。

 彼女は大野の様を見た瞬間、ガチガチと歯を軋ませ余りの衝撃にその場に石のように固まった。

 目の前で自分の存在に気付かずに大股開いて乳房と割目を弄り、ヨガリ声を出して薬物患者のようにフラフラする大野を見た瞬間の彼女の衝撃は半端なものではなかった。


 両手の買物袋がバサッと彼女の両手から離れて床に落ちた瞬間、大野は彼女の存在に気付いて両足を閉じ顔色変え胸元を整えようとした。

 すると突然彼女は走って大野に近付くと、大野を床に押し倒し隠そうとした乳房を両手で掴み驚いて目をキョロキョロさせる大野の乳首に貪りついた。

 大野は突然彼女に乳首を吸いつかれ腰をガクガク、両足の筋肉を限界まで硬直させ伸びきり両腕は床を擦ってバタバタと上下に激しく揺れた。

 
 
「あひっ! あひっ! あひっ! あひっ! あひっいぃーー!」

 大野の脳天は余りの激しい快感(しげき)に爆発して我を忘れ息も絶え絶えになり狂乱したように悶えた。

 そんな大野に怒りをブツけるかのように彼女は無我夢中で大野の乳房を揉み回し舌を使って乳首に吸い付いて離れなかった。

 そして大野からパンティーを剥ぎ取った彼女は大野の両足の真ん中に顔を埋めると、両手でパックリと割目を開いて桜貝色したキレイなピンク色の生肉に舌を押し付け舌を動かした。

 大野はその瞬間、白目を向いて声と呼吸を失いビクビクビクと全身を小刻みに震わせ失禁して気絶した。

 彼女の口の周りは大野から溢れた愛液がテカテカと塗りつけられていた。


 



【二十四話】



 
「私にはもう必要のないモノばかりだわ…」

 ミドリは寝室にある箪笥の整理をし始めていた。

 男の身体になったミドリにとってパンティーは勿論のことスリップやブラジャーは引出しの中の場所をとるだけの異物でしかなかった。

 そんなミドリは喜一が使えそうな下着やストッキング類は残しつつ殆どの下着を鋏で切って段ボール箱に捨てた。

 そして喜一の引出しからも使えなくなった衣類を処分し使っている引き出しをそのまま自分用に交換した。

 そこへ喜一が何気なくやってきて目の色を変えた。


「おい! 何してんだ!!」

 ミドリが捨てようとダンボール箱に入れた喜一の背広やワイシャツ、ネクタイを見て喜一は仰天して声を上げた。

 
「何って、捨てるわよ! もう着ないでしょうし、私にはサイズが合わないものー」

 ミドリは自分の切り刻んだ下着や服を見せて喜一にも納得を促した。

 喜一は箱に入れられた背広類を見て悔しそうな顔して寝室を出ていくと女の格好をしている自分がとても惨めに思えてきて、ミドリに愚痴の一つでもと再び寝室に戻ると、ミドリは自分の喪服を手に取って眺めていた。


「これ、もう要らないでしょ~?」

 ミドリは照れ臭そうに黒いスカートとブラウスとジャケットを持って喜一をチラッと見た。

 それは喜一が男だった頃、夫婦生活でミドリに着せ着衣プレイした喜一のお気に入りの一着だった。

 ミドリは喜一の前でそれも箱の中にポンといれると、再び後にいる喜一をチラッと見た。


「アナタの好きな黒いストッキングやガーターベルトはアナタが使えるでしょうけど私にはもう……」

 ミドリはガータベルトの入った引き出しを視線で喜一に教えると恥かしそうに頬を紅く染めた。

 喜一は二度のショックを受け再起不能のような顔して寝室を後にしようとするとミドリは喜一に後から声をかけた。


「もしアナタが着たいっていうなら取っておくけど……」

 ミドリは箱に放り投げた喪服を再び手に取って、無言の喜一をチラっとみる箱から取り出した喪服を再び膝の上に置いた。

 結局、ミドリは喜一に家用の喪服を捨てない事と喜一用に仕立て直すことを伝えた。

 喜一は無念な表情のまま寝室を出ると消沈しながらも久々に見た喪服に腹の内側をモヤモヤさせた。

 
 そう言えばミドリの喪服姿、相当前だったな~


 数時間後、今までミドリが使っていたモノで使えそうなモノの殆どは喜一が、そして喜一のモノも同じくミドリがいう具合に引き継いだ。

 そして夕食時間、ダイニングに行くとミドリは支度を終えてステテコを履いて腹巻姿でテーブルについていたのは喜一にとってショックな出来事だった。

 思いついたら何でも速攻でするミドリは寝室の箪笥の入れ替えに満足したのか食事中も笑顔を絶やすことはなかったが、食事後のビールに少し酔ったのか、喜一にあることを提案した。


「ねぇ、寝室にある喪服…… まだ仕立て直してないけど着てみたら~♪」

 ミドリは妖しい目線で、食事を終えた喜一を見ると妖しい笑みを浮かべてクイッとビールを喉に流しいれた。

 喜一はミドリの口髭が緩むのを見ると逃げるようにミドリに視線を会わせない様に席を起とうした。

 ソコへ空かさずミドリが呟いた。


「黒いストッキンクとガーターベルトはアソコの引き出しにあるわ~ あとアナタの好きな黒いベビードールと黒いスキャンティーも……」

 喜一はミドリの態度に困惑しながら、返事をすることなく席を立つと寝室へは行かずに居間の窓際に胡坐をしてビールを飲んだ。

 だがそんな喜一はミドリの言葉に再び腹の内側をモヤモヤさせ自分が着たところを想像していた。


「アナタなら似合うと思うんだけどね~♪ 着て見たら~? 使ってないオニューのもあるし~♪」

 喜一を唆すミドリの目は笑っていて、その手に乗るものかと喜一は内心自分にブレーキをかけていたが、後片付けを始めたミドリに喜一は後ろから声をかけた。


「あぁ、気が向いたら着てみるよ……」

 喜一の言葉に後ろ向きのままミドリはニヤッと笑みを浮かべるとそのまま台所仕事を続け、喜一はそのまま二階の書斎へと逃げ込んだ。

 
 着て見たいけど……


 腹の内側をモヤモヤさせる喜一は、喪服を着たら必ずミドリに抱かれてしまうとその後のことを考えて自分を押しとどめた。

 最近、毎晩のように身体を求められる喜一も今夜はゆっくりと休みたい気持ちもあった。

 だが一階にいるミドリから声が掛かった瞬間、そのブレーキは簡単に外れた。


「アナター! 先にお風呂頂きますねえー!」

 喜一はその言葉に一目散に一階へ降りると、寝室で裸になって引出しからオニューの黒いスキャンティーを出して見た。

 ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべた喜一は腰にガーターベルトを巻いて、黒いガーターストッキングで両足を包んで吊り具で固定させると、その上から黒いスキャンティーを履いた。

 込み上げる喜びにも似た何かは喜一にベビードールを着衣させ、続けざまに黒いブラウスとタイトスカート、ジャケットと着衣させた。

 大きいサイズかと思っていた喪服は以外にも小さく喜一の身体にピタリとフィットした。

 喜一は寝室にある等身大の鏡に自分を映してウットリした瞬間、バタンッと、突然ドアが開いた。


 な、何だぁー!!


 仰天してドアの方を見た喜一をニヤニヤしたミドリがステテコ姿で立っていた。

 喜一はミドリの存在に顔を赤面させ恥かしいとばかりに俯いてその場で固まってしまった。

 するとミドリはニヤニヤして喜一の傍へくると嬉しそうに声を放った。


 引っ掛かった~♪ 絶対に着ると思ったもおーーん♪


 喜一の顔を覗き込むミドリは嬉しそうに恥かしがる喜一の顔を下から覗き込んだ。

 そして喜一は突然ベッドに腕を掴まれ連れていかれるとミドリは一緒に倒れこむように喜一をベッドの上に抱き倒した。

 
 キャァー!


 喜一は倒れこんだ瞬間、可愛く小さな叫び声を無意識に発し瞼を閉じ、ミドリはそんな喜一の両腕をベッドに押さえ込んで恥かしかる喜一の顔を舐めるように見回した。

 両手をベッドに押し付けられた喜一は全身を震わせた。

 
 美味しそう~♪


 ミドリはそう言うと突然、喜一の腹の上に馬乗りになって喜一のブラウスに両手をかけ左右に力任せに引き裂いた!

 ボツボツボツッと、大きな音を立てて喜一の黒いブラウスのボタンは何処かへ飛び、黒いベビードールがミドリの前に晒された。


「やめろおぉ! ミドリ! 俺はこんなことするのに着たんじゃない! やめろおぉー!」

 胸を晒された喜一は顔を真っ赤にして両手に馬乗りになったミドリを払い退けようと全力で抵抗した。

 するとミドリは抵抗する喜一を見てゴクリと喉を鳴らすと、突然喜一の両肩からベビードールの肩紐を力づくで押し下げ、露になった乳房に吸い付いた。


「よせ! ミドリ! やめろおぉ! 嫌! 嫌ああぁー!! 嫌あああぁぁぁー!!」

 喜一は本気で抵抗し全身と手足を大きくバダつかせ、ミドリはそんな喜一に目を血走らせて乳首を吸いながら乳房を鷲掴みして揉み回した。

 本気で嫌がって抵抗する喜一にミドリはステテコの下でペニスをギンギンに肉棒化させ容赦なく味見をした。

 乳房に貪りつくミドリの頭を本気でバコバコ叩く喜一からミドリは一瞬離れると、喜一の頬を強い力で平手打ちした。


 バシイイィィーーン!!


 喜一は目から火が出そうなミドリの平手うちに唇を切って血を流し、勝てないと悟ると無言で瞼を閉じて首をグッタリと右に回した。

 ミドリは大人しくなった喜一の乳房を自由に貪りスカートの中に手を入れストッキングの上から容赦なく喜一の太ももを触手し続けた。


「そうよ! 女はね! 黙って大人しく味見されてればいいのよ!」

 喜一はミドリの言葉と力では勝てない事に悔しくて悔しくて悔し涙を頬に伝え、それをミドリは乳首を吸いながらチラチラと妖しい目付きで見て笑みを浮かべた。

 そして喜一の左足がミドリに依って膝立てられ外側にスカート一杯に広げられると、ミドリの右手は喜一の左横尻をガーター紐に重ねて触手した。

 だがこの行為に唇を切って涙する喜一は不思議なエロチシズムの中に居た。

 女が力ずくで男に味見されることに嫌悪しながらも何故か自分が壊されて行く様がとてもエロチックに思えた。

 そしていつしか喜一はミドリからの力ずくでの行為にウットリしていった。

 ところが数分後、そのウットリ感から喜一は現実へと引き戻された。


「さあ! シャブリなさい!! アナタが男のことを何も知らなかった私にさせたように!! この生臭い肉棒を銜えてシャブリなさい!! 女なんだから当然でしょ! 私は今は男、アナタは女!! そうでしょ!!」

 ミドリは人が変わったように怖い顔すると、ベッドにアヒル座りさせた喜一の前に立ち上がって愛液の溢れた肉棒を差し出し喜一の頭を手で揺さぶった。

 喜一は目の前の肉棒を見るや否や、オエッと込み上げる嘔吐を辛抱し目を肉棒から伏せた。

 それを見たミドリは目を吊り上げ上から喜一の頬を掴むと無理矢理口を開かせ愛液の滴る肉棒を喜一の口の前に近づけた。


「やめろおぉ! ミドリ! やめてくれぇ! あの時のワシは若かったし! 第一ワシは身体は女でも中身は男なんだぞ! 本物(おんな)のお前と違う!!」

 頬を掴まれた喜一は両手でミドリを突き放すと上にいるミドリを見上げて声を絞った。

 ミドリはそんな喜一を上から見下ろすと、無言のまま肉汁の滴った肉棒をむりやり喜一の口の中に押し込んだ。


「おえぇ! おえぇっ! ゲッホゲッホゲッホ! やめ! やめてくれえぇ! ウェップ! オエップ! オゲエェー!」

 口の中に生臭い肉棒を入れられた喜一は涙を流し咽咳を繰り返し嘔吐をしてミドリから履かれようと両手でモガイタ。

 その様をニヤニヤしながら妖しい目で見るミドリは苦しむ喜一を無視して頭を両手で押えると腰を前後に振った。

 肉棒が喜一の喉の奥を突く度に喜一は苦し涙を流して咳き込み嘔吐を繰り返し乳房をプルプルと大きく揺らした。

 
「苦しかったらシャブリなさい!! シャブレば腰を動きを止めて上げるわ♪ アナタが私に言った言葉よ!!」

 喜一はミドリの言葉に両目を大きく開きチラリと上を見てミドリに視線を合わせると、悔しそうに顔をシカメた喜一は両手でミドリの肉棒を掴むと自らの首を使って肉棒をシャブった。

 するとミドリは重々しい吐息を吐いて腰の動きをとめ喜一の頭を押える力を緩めた。

 そんなミドリは目を閉じて喜一の舌の動きに両膝をガクガクさせた。

 ミドリは自分に過去の仕返しをしているのだと喜一は思った。

 若かりし頃の喜一は男に免疫のない清純なミドリに男を教える調教紛いのプレイをしていたことを思い起こしていた。

 しかしそれもこれも、女を知らない若かりし頃の喜一の乏しい性知識がさせたことであった。

 女はこうするモノ。 女はああするモノとミドリの恥かしがる顔が見たくて無理強いした過去の記憶だった。

 だがアレほど生臭かったミドリの肉棒は喜一の唾液でその臭さと味もなくなって、喜一のフェラチオは遂にはミドリをベッドに尻座りさせるほどになっていた。

 ベッドに尻座りしたミドリは仰向けになって両足を大きく開くと、肉棒に絡む喜一の舌に投げ捨てた両手でベッドシーツを鷲掴みして悶えた。

 喜一はそのミドリの様が面白くてチラチラと反応を見ては、舌を絡めて首を前後に振り続けた。

 
 マズイ! このまま行けばワシは精液(アレ)を飲むことに……


 喜一は咄嗟に肉棒から離れると、ミドリの下半身を跨いで右手で自分の割目を開きつつ肉棒を穴に入れる試みに転じた。

 女になって初めての試みだったが喜一は精液(アレ)を飲みたくない一心でヌルリと腰を落としていった。

 そしてそれは見事に成功したかのように思えた。



 ズブリウウゥゥーー!!


 
 ミドリの太く逞しい肉棒が喜一の中に入った瞬間、喜一は口を大きく開き両目を大きく見開きのどの奥に声にならない呻き声を溜め始めた。

 喜一は脳天を大砲で撃ち抜かれたような壮絶な痛みに全身をプルプルと小刻みに震わせた瞬間、無意識に大声で叫んだ。



 痛ええええぇぇぇぇーーー!!!!



 喜一はこの瞬間、別の穴に肉棒が入ったことを確信した。

 だが、何も知らないミドリは目を閉じたまま腰を下から上へと動かし始め、その動きに喜一は、大きく開いた口の奥から喉に溜めた呻き声を少しずつ漏らし始めた。

 

 カッ! カッ! ウグウッ! ゥグウッ!



 喜一は肛門に入った肉棒をゆっくり引き抜こうとしたが、ミドリが腰を振って突き上げたことで抜けかけた肉棒は再び喜一の肛門の奥へ挿し込まれた。

 それでも喜一は何とか抜こうと試みたが下からバシバシ腰振るミドリに立ち上げかけた腰をが再びガクンッと落ちた。

 
 
 ギエエエエエェェェェェー!!



 本来、そう叫びたかった喜一は声一つ出せないまま全身を硬直させ震えさせ、それが肛門を力強く閉じさせるとミドリは締りのいい感度に首を仰け反らせてシーツを鷲掴みした。

 何も知らないミドリは余りの感度に下から目一杯の力で腰を上下に振り続け、その激しさに動くことの出来ないキイチはミドリが射精するまで堪えるしかなかった。

 そしてミドリが射精した時、喜一はミドリの上で肉棒を穴の中に入れたまま気絶していた。

 
 


【二十五話】



「な… なにこれ…… はぁはぁはぁ…… これ… 誰…… これは誰なのおおぉぉ!! はぁはぁはぁはぁ……」

 一人の女が寝起きで鏡の前に立っていた。

 額から脂汗を滲ませ血圧を上昇させ吐息は荒く猫のように背中を丸めていた。

 髪はボサボサで肌に艶はなく乾燥しきった皮膚はガサガサと音を立てた。

 美しい女性の部屋を思わせるに相応しくないこの女は猫のように背中を丸め、着ている派手なワンピースを弛ませ、まるで老婆のような姿をしていた。

 
「これがアタシなの? そんなはずない! アタシはあんなにキレイな女なのに! この鏡が変なのよ!! ガシャンッ!」

 醜い女は手鏡を見ながら棚に飾った男と映った過去の自分の写真を見て思わず手鏡を床に叩きつけた。

 女は臨床試験病棟から姿を眩ました女性看護師の一人だった。

 性転換手術を受け、初期の頃の新薬を服用して性転換を果たした彼女は、喜一との愛欲の後、薬品投与の不必要な身体に変化し見事に悲願を達成した一人だった。

 絶世の美女と言っても過言ではない美貌を手にいれた彼女は、感じて濡れる身体を持った日から次々に男を替え女としての人生を華々しく取り戻していた。

 そんな彼女は数週間のうちに豪華なマンションとお金を男に貢がせ幸福に浸っていた矢先、この事態に見舞われた。

 醜女とは正に彼女のためにある言葉と言っても過言ではない程に醜くなっていた。

 スラリと伸びた足と身体を持っていた彼女の身体は八十代の老女のように腰が曲がり立っているのもやっとの状態になっていた。

 そんな姿を何とか誤魔化しながら尋ねてくる男達と性関係を続けていたが、一人また一人と男達は醜い彼女の前から姿を消して行った。

 そして最後の男はヨボヨボの醜い彼女を見て絶句し悲鳴を上げてマンションから逃げ出していった。

 
「やっと…… やっと理想の女になれたと言うのに…… 畜生ーーーー!!!!」

 彼女は曲がった腰でボサボサ頭を振り乱して一人、部屋の中で絶叫した。

 だが、変化したのは彼女だけではなかった。

 姿を眩ました四人のうち三人だけが醜い女への過程に直面していたが、もう一人、大野洋平と同棲していた彼女だけは何故か例外のようだった。

 
「こんな姿を知り合いに見られるくらいなら死んだ方がマシ……」

 醜い女に変化した三人は互いに連絡を取り合うことを自ら止め誰とも連絡を取らなかったことで、この事実を知る者はいなかった。

 だが老人のようになった醜い女にも生理という女の象徴は強い痛みと不快感を彼女達に味あわせていた。

 
 その頃、行方を眩ました四人のうち、以前からの恋人と同棲し、そして恋人である大野洋平を性転換させてしまった本名、権田新造、通称アヤは美しい女のまま性転換して女になった大野洋平とベッドの中で交わりの最中だった。

 二人は互いの足を両手で持って陰部と陰部を擦り合わせ体液の交換に無心になっていた。

 当初は全く女への変身願望を持っていなかった大野だったが、女性としてアヤと暮らすうちに徐々に女化が進み自分の身体に興味を持ち始めたことで増幅していった。

 男女間の愛はそのままに女同士の愛欲は毎日のように続けられ、二人の愛が壊れることはなかった。



 その頃、元に戻ることを半ば諦めていた下山家の隣家、柿崎幸一は一人、自分を喜一に見立てての自慰は続いていた。

 もっと楽で長時間続けられる自慰(ほうほう)はないかと、研究熱心な大学生の幸一はある器具の開発に成功していた。

 それは腰に回して結んだロープに強烈なゴム紐を結び、その先端に太目のロープを更に結んだ。

 その太目のロープを尻の間を這わせ割目に挟んで通過させ陰毛を横断させ前側に持って来た。

 前側のロープを引けば尻側のロープが伸びて、そのロープを放せば強烈なゴムが割目に挟んだロープを引くと考えた。

 これは妙案だと幸一は胸をワクワクさせて家中から材料を調達するや否や実行に移した。

 さっそく新型マシーンを製作した大学生の幸一は予定通り太目のロープを割目にセットしてムラムラしながら前側のロープを引くと、予定通りゴムが伸びて割目をロープが擦れて通過した。

 これは行ける! そう思った幸一がその手を離した瞬間、強力ゴムは縮力でロープを引き寄せた!

 
 アレ!?


 強力ゴムは確かにロープを引き寄せたが、放されたロープは解放されたことで肝心なクリトリスと尿道、小陰唇を擦ることはなく肛門をゆっくりした早さで動いたに過ぎなかった。

 ワクワクしていた幸一は愕然とした。

 その後も幸一は試行錯誤を続けたが中々いい具合にマシーンは威力を発揮できないまま幸一の性欲は疲労で満たされた。

 働きに出ている両親が幸一を心配している最中、幸一は誰かに触れられて見たいと心の中で思うようになっていた。

 
 相手が居ればマシンなんて要らないのに……


 ティシャツを撒くりあげブラジャーを首へずらしショートパンツを脱ぎ捨てた幸一は誰かに触手されている想像をしながら自らの両手を使い指の腹で内モモと脇腹を何度も滑らせた。

 幸一は乳房や陰部以外で自分(おんな)の肌が深い官能をもたらすことを知った。

 
 誰かに肌を舐められてみたい……


 幸一の身体は肌を滑らせる指使いに様々な体位をベッドの上で描いた。

 乳房や陰部から来る激しい快感(しげき)とはまるで違う深くて重たく脳の隅々に浸透するような官能に目覚めていった。

 幸一のパンティーは内側からグッショリと濡れていた。


 その頃、臨床病棟の研究室にいる顎ヒゲのフサフサした古川女医は喜一の愛液に見たこともない新型の細胞を発見していた。

 そしてその細胞はミドリの精液からも検出され二つの細胞が同一種類のものであることを突き止めたが、二つの細胞は同一でありながその働きが異なっていることも突き止めた。
 


 恐らく喜一(かのじょ)のが、相手を女化させる細胞… そしてミドリさんのが相手を男化させる細胞… だから最初に私を抱いたミドリさんの細胞が私の身体を男に変えたことで喜一の細胞を拒絶したのかも知れない… でも待ってよ! だって元々女性だったミドリさんは喜一との性交渉で男に性転換したのよね…… じゃあ! 喜一の細胞は男女問わず相手をした人間のどちらも性転換させてしまうということ? じゃぁ、あの初期の新薬で性転換した四人の女性看護師達が高熱を出して本物(おんな)になったのは、喜一との性交渉があったからということなのね!! でも… あの四人が夫々に別の場所で異性と性交渉を持ったとしたら! 
 


 古川の想像は徐々に真実味を増して医者として学者として恐怖に変わっていった。

 そんな古川が真っ先に感じた恐怖は細胞感染が広がれば世界中の男女が入れ替わってしまうという恐怖だった。

 性交渉を持たない者は感染しないが性交渉をしている者から者へと感染経路は計り知れない。

 そうなればインターネットのようにドンドン世界中にこの細胞は広がる。

 だが頭の隅に置いていた安藤のことを思うと古川は哀れでならなかった。

 膣を持たずペニスも無い安藤は喜一ともミドリとも性交渉できる状態になく故に、安藤は何処かで縫い合せてしまった膣を復元しなければならない。

 昼夜寝ずの研究に没頭する古川の知らないところで知らない人達の性欲は、時間を問わずお盛んだった。

 


【二十六話】



 古川の心配を他所に三人の元看護師たちと性交渉を重ねた男達が媒介し喜一の細胞はドンドン世間に広まりを見せていた。

 研究所に詰める古川が命名した喜一細胞は三人の元看護師を経由し複数の男達、更に男達から女達へと急激に広まりを見せていたが、信じられない身体の変化に誰も口に出す者はおらず喜一細胞は水面下で広まって行った。

 そしてそれは性転換を望む者と望まない者を無差別に巻き込む事態に加速していった。

 水面下で猛威を振るう喜一細胞は社会を根底から揺るがそうとしていた。

 そんな中、喜一細胞の産みの親である下山喜一は肛門に痛手を負いガニ股で、ヨタヨタ歩きで、喜一とのアナルセックスの後に微熱を出して寝込んだミドリの看病に当たっていた。

 アクシデントという言葉が実に良く似合う出来事だった。

 
「どうだ~ 少しは楽になったか?」

 妻、ミドリを案ずる喜一は自分へのミドリの悪行を忘れたように心配しながら額の濡れタオルを交換していた。


「ごめんなさい… 私、どうかしてたのよ! 私、本当は喪服を着てあなたに抱かれるのとても好きだったの…… アナタに辱められるプレイも好きだったのに…… それなのにアナタに嫉妬して…… 私は世界一の馬鹿な女だわ…… お尻まで怪我させて……」

 目を潤ませて涙ぐむミドリはベッドの中で心の底から喜一に詫びていた。

 ミドリは自分の役柄の服と下着を付けた喜一の余りに似合う様を見て嫉妬したと本心を語った。


「ワシの方こそ、新婚とは言えお前に馬鹿なことを押し付けて恥かしいと思っているよ。」

 喜一は額のタオルを交換しながら口ヒゲの生えたミドリの頬を優しく撫でた。

 
「私、もしも今度また女に戻れたら、アナタの言うこと何でも聞いてあげたい…… 緊縛でも蝋燭でも鞭でも私は喜んで受けるわ……」

 ミドリは頬を撫でる喜一の手に頬擦りをすると頬を紅く染めて自分の言葉に恥じらいを見せるとそのまま眠ってしまった。

 喜一は眠ったミドリを気遣い静かに寝室を後に、トイレに行くと肛門に薬を塗ると涙目で出てきてソファーにゆっくりと腰を降ろした。

 
 嫉妬か……


 薄生地の白いミニワンピースを着た喜一は茶箪笥のガラスに映った自分の姿を見て大きな溜息をついた。

 まさか自分の女房に嫉妬されるなどと夢にも思っていなかった喜一にとってミドリの素直な一言は相応のショックだった。

 そんな時、喜一の携帯にメールが着信した。

 
 古川さん……


 古川は喜一に再度の面会を求めて来た。

 ミドリに抱かれて男に性転換したのならその後、喜一と性交渉すればもしかしたら古川が女に戻れるのではないと言う古川の提案だった。

 喜一と性交渉したミドリは男として喜一と性交渉しても変化はないが、別々の人間相手ならどうなのかと言う疑問を解決したいとのことだった。

 そして喜一が最も着目したのは、もしかしたら喜一も元の男に戻れるかも知れないと言う内容だった。

 病院に保管されている喜一の細胞を喜一が変化しかけた時、何らかの形で喜一に戻すことが出来ればと言う古川のメールは喜一に光を当てた。

 だが喜一はその光りに対して、喜びながらもこのまま女として生きて行くのも悪くはないと心の中で葛藤していた。

 喜一は今日と明日は多忙で無理と断ったが、考えさせてくれとも付け加えた。

 

 元に戻れるかも知れない……



 喜一は肛門に気遣いながらテレビの上に飾られた家族の写真の中の自分を見て、大きな溜息を漏らすと手鏡で今の自分と見比べた。

 五十代の男と十七才の美少女は比べるに余りにも種類が違うと一人で苦笑いした喜一は、気分直しに庭へ出てみた。

 そして何気に隣家の二階を見た瞬間、見覚えのない二十代前半の美人女性の姿を見て首を傾げた。



 誰だろう……



 喜一と性交渉して性転換したのはミドリだけと思っている喜一には、あれが幸一だとは夢にも思えなかった。

 あんなキレイな彼女が居るのに無理矢理ワシを犯したと両手に拳を握った。

 幸一の部屋に居る女は喜一を見た瞬間、サッと脅えたようにカーテンの陰に隠れた。

 気分を害したと少し憤慨する喜一は携帯を取りに戻ると幸一に恨みのメールを送りつけた。


「あんなキレイな彼女がいるのに私を犯したなんて! 許せない! 酷い人! 私の処女を返して! 卑怯者!!」

 自分を犯した幸一を許してもいいと思っていた喜一だけにその憎しみは何倍にも増した。

 だが幸一は変わり果てた姿を喜一の前に出せるはずもなくベッドに腰を降ろして俯いて悔しがるしかなかった。

 いま下手に返信すれば喜一は無理にでも家に押し掛けて来ると思った幸一は携帯を握り締めるに留まった。

 
 カタ……


 寝室の方で物音を聞いた喜一はミドリが目を覚ましたのだろうとタオルを替えにタバコを消して移動ししたが、布団を頭からスッポリ被るミドリに、眠っているのだと思った喜一は足音を消して寝室を出ようとした。

 その時、後から突然声をかけられた喜一はドキッとしてミドリを振り返って息を飲んだ。

 
 ミドリ… お、お前……


 布団から顔を出したミドリは男ではなく女の、それも以前のような優しい顔つきのミドリに戻っていた。

 喜一はミドリの顔を見た瞬間、思いだけが先走り前屈みで付いて来ない足を引き摺ってミドリの寝ているベッドの傍に跪いた。

 汗をかいて頭から湯気の出ているミドリを見た瞬間、喜一は震える両手でミドリを覆う布団をはぐった。

 すると、そこには女の身体にき似合わないトランクスを履いた二つの乳房の付いた身体があった。

 
 アナタ…… 私……


 ミドリは唇を噛み締めて両手を伸ばして喜一に抱き付いて声を震わせて笑みを浮かべた。

 そして数分後、シャワーで汗を流したいと言うミドリは、久し振りに豊満な乳房にバランスが取れずヨチヨチ歩きで喜一の肩を借りた。

 
 でも、どうして?


 ミドリの素朴な疑問は喜一の肛門にあったのでないかと、喜一は痛みの引いた肛門に手を当てて思わせぶりな態度をミドリに見せると、ミドリは噴出しそうな顔して笑いかけた。

 喜一はアクシデントとは言え、あの夜に感謝して止まなかったが、ミドリは恥かしそうに整理した箪笥を再び整理しなおしていた。

 



【二十七話】



「暫くは寝起きを別々にしよう。」

 喜一は夜の夫婦生活を恐れ台所に立つミドリに後から声をかけた。

 背中を向けるミドリの白いブラウスの下に透ける黒いスリップを見ながら、喜一は足元に視線を移しミドリの白い足を覆う黒いストッキングにガータ紐を想像した。

 
「そうね…… その方がいいかも知れないわね……」

 喜一を振り向かずに答えるミドリのスカートの裾が小さく揺れるのを見て、喜一は申し訳無さそうな表情を浮かべた。

 夫婦生活など殆どなかった中年期に入り、互いの身体に起きた不思議な出来事の重なりが夫婦生活のことを会話に交えている二人は不思議な気分だった。

 思えばこの二人、互いの性が転換してから頻繁に愛欲を重ねていたように思える。


 夜の十時、後片付けを終えたミドリは居間のソファーに座り足組してテレビをみながらワインを飲んでいた。

 ミドリの黒いストッキングに包まれた足をみながら喜一は思った。


 スカートの中に入って見たい……


 そんな嫌らしい目でみられているとは思わないミドリはスカートを少しズリ上げ楽な姿勢を保った。

 黒いストッキングに包まれたミドリの太ももがチラリと喜一の視線に飛び込んで来ると、喜一はスカートに薄っすらと見えるガーター紐にムラムラし始めた。

 
「アナタ、私、先に休みますね……」

 喜一の視線を太ももに感じたのか、ミドリは喜一に視線を交えることなく立ち上がるとフラついて寝室へと入って行った。

 ミドリを見送った喜一は仕方なく二階の書斎へ上がるとワンピースを脱ぎ捨て、取敢えず床に用意した布団にゴロンと横になった。

 飲みすぎた所為で息苦しさを感じてスリップの肩紐を一旦降ろしブラジャーを外すと再びスリップの肩紐を元に戻した。

 喜一の瞼の裏に焼きついて離れないミドリの黒いストッキングに包まれた太ももに胸の奥をドキドキさせ、灯りの下で仰向けに両足を膝立てして開いた。

 思い余った喜一は我慢出来ずに起き上がると、箪笥に仕舞われた黒いパンティーストッキングを慌てて履いて自分の下半身を凝視した。


 違う…… 熟したミドリとは全然違うじゃないか……


 喜一はガッカリして黒いパンティーストッキングを履いたまま布団の上に斜めうつ伏せで目を閉じた。

 少女の身体と熟女の身体の違いに喜一は悔しがった。

 
 ワシもあんな熟した身体なら……


 斜めうつ伏せになった喜一は右手を伸ばしてパンスト越しにパンティーの上から陰部をなぞった。

 クチュッと陰部から微かな音が聞こえ濡れていることを認識したが喜一はそれ以上の行為には及ばずそのまま眠りについた。

 
 その頃、一階の寝室に居るミドリはワインの酔いも手伝って火照った身体を冷やすべく脱衣した後、下着姿のままベッドに四つん這いになって右手で自分を慰めていた。

 黒いミニスリップを腰まで捲くり上げ、ガーターベルトを着けたまま両足を適度に開きミドリは熱い吐息を喉の奥に溜め込んだ。

 喜一には聞かれたくない女の自慰の鳴き声を喉の奥に響かせ、紐パンティーだけを外した股間に指を忙しく動かした。

 トロリとした愛液が指に伝わりベッドシーツに滴り落ちた。

 普通の夫婦なら愛欲すればいいだけの夜のベッドは寂しい熟女の遣る瀬無い思いのベッドになっていた。

 二階で色気の違いにガクゼンとしてフテ寝する喜一と、喜一に抱かれていた昔の記憶を糧に指を動かすミドリの二人だった。

 
 そして同じ頃、知り合いの医師に無理矢理、膣の縫合を外させた安藤は本来動くことの出来ない身体で臨床病棟の研究室を訪れていた。

 今度こそ男になってやると恐ろしいほどの形相で息も絶え絶えやっと辿り着いた安藤は、自分の割目の穴の中に入れるため、仮眠中の古川の目を盗んでミドリの精液の一部を入手しトイレに隠れて手術したばかりの割目の中に塗りつけた。


 これで、はぁはぁはぁ… これで男になれる… ふふ♪ ふふふふふ♪


 安藤は笑いながらトイレの便座の上で気を失った。

 だが翌日、トイレで目を覚ました安藤は自分の身体に起きた変化に目をキョロキョロさせ凄まじい形相で同様していた。

 安藤が盗み出したのはミドリの精液ではなく、喜一の愛液だったことに安藤はこの時点で知った。

 狂ったように笑う安藤は顔も身体も別人の美女になっていた。

 切除したはずの乳房は再生されプリプリと揺れ、筋肉質だった全身はブルプルとゼリーのように、そして丸みを帯びていた。

 
 くそくそおおおおぉー!! 何てこったあぁ!!


 女から男への完全な性転換を悲願して痛い手術にも耐えてきた安藤の身体は元の女に戻ってしまった。

 しかも男なら誰でもムシャブリつきたくなるほどの極上の熟女にである。

 同じ頃、仮眠で朝まで目が覚めなかった古川が時間に驚いて研究所に来てみると、自分用に試験的に培養で作った試作品が減っていることに気付いて仰天した。

 そしてトイレに居た安藤は突然、大人しくなって俄かに不適な笑みを浮かべた。


 まてよ… 遠回りしたが、これで下山ミドリに抱かれれば俺は! わーっはははは♪


 さっきまで女になったことを嘆き喚いていた安藤は豹変したように歓喜に変わった。

 だが安藤はこの時、既にミドリは男から女になっていることを知らなかったと同時に、自分が盗み出したのは男になった古川が女に戻るための試作品だということも知らなかった。

 安藤はトイレの中で長年の悲願である女から男への完全な性転換を成し遂げられると涙を流して喜んでいた。

 
 そして同じ頃、下山喜一は黒いパンティーストッキングを履いたまま寝ていたことに気付き、一階で寝ていたミドリは擬似ペニスを握ったまま寝ていたことに赤面して目を覚ました。

 



【二十八話】




「親父~! 会いたかったぞおぉ~♪」

 突然帰省した二人の息子達は玄関の中で喜一に抱きつくと交互に何度も何度も抱きついて満面の笑みを浮かべ、喜一は訳もわからず喜んで自分に抱きつく二人の息子達に大喜びで受け止めていた。

 女になる前はこんなことは一度もなかったはずなのにと、ミドリは二人の息子達が喜一の胸に自分達の胸を押し付けて喜んでいるのを見抜いた。


「二人ともいい加減にお父さんから離れなさい! いつまで抱き合っているのお!!」

 怪訝に二人の息子達を叱りつけるミドリは二人の息子達の魂胆をお見通しとばかりに、抱きつく二人の尻を平手打ちして喜一から引き離したが、喜一は全く気付いてはいなかった。

 ノースリーブにマイクロショートパンツを着けた喜一は、嬉しそうに帰省した二人の息子達の後から居間へと移動し、不機嫌になったミドリをニコニコしてあやした。

 そんな二人のオチャメな息子達にはミドリが男になっていたという話しは一切伏せられた。

 話せば喜一とミドリが未だに性交渉をしていると知られてしまうからだった。

 喜一は二人の息子達の突然の訪問に大喜びで話しに夢中になり、ミドリは洗濯場から喜一の下着を片付けたりに追われた。

 実の父親とは言え、何の警戒心も貞操観念もない父親が十七歳の女の子であるという事実もまたそこにあってミドリは複雑な思いながらも行動した。

 
「えっ! 何だってえぇー!」

 長男の信二の言葉に喜一は驚きの声をあげ、駆けつけたミドリに春樹が復唱して伝えると喜一とミドリは青ざめた表情を二人の息子達に見せた。

 〇〇製薬経営破綻の話しは何れ報道されるだろうと付け加えながらも二人の息子は何処からか仕入れた情報を両親に伝えるために帰省したようだった。

 
「親父のことは伏せて置いたほうがいい…」

 二人の息子達は表沙汰になれば喜一にもミドリにも不利益以外の何物でもないと断言した。

 ただ幸いなことに喜一奪回作戦で仲間が内部のパソコンから喜一の情報を消去したといい、何処まで消去出来たかは疑問としながらも当分の間は漏れることは無いだろうと二人を安心させた。

 そして今回の〇〇製薬経営破綻は捜査のメスが入るような事案でないことからまずは安心と二人の息子達は安堵の表情を見せた。

 
 だがそんな息子達の話しに聞き入る対面に座っている父親の喜一は、知らぬ間に椅子の上に体育座りして恥かしいポーズをしていることに気が付いては居なかった。

 喜一と話す信二を他所に弟、春樹の視線がプリプリした柔らかそうに喜一の内モモを凝視していたことを知ったミドリは喜一の前を行ったり来たりして春樹の視線を妨げた。

 そんなミドリの攻防に春樹は見るのをやめ心の内を見透かされたのが恥かしかったのか咳払いをしてタバコに火をつけた。

 
 数日後、そんなこととは知らない古川は研究所の中で不足した分の培養を実行し増えるのを待っていた。

 けして足りない訳ではないが不足の事態に備える意味での培養であった。

 何も知らない研究熱心な古川が根を詰めている時、余裕で暫くぶりの女の身体を手をした安藤は病院内で女の格好をし白衣姿で院内の散歩を楽しんでいた。

 黒いタイトスカートにクリーム色のブラウスを着てライトブラウンのパンティーストッキングを履いた安藤は白衣を着て男姿の身分証を首からブラ下げていた。

 その姿が本来の安藤の姿でもあったが、はち切れそうな胸のボタンは安藤の胸を必死に守って軋んでいた。

 以前は貧弱な身体に貧相な顔つきのゴボウのような女だった安藤とは思えないナイスボディーの安藤を、行き交う男子職員達の視線が釘付けにした。

 その視線が嬉しくて堪らない安藤は腰を振って職員達にサービスして歩き回っていた。

 それもこれも悲願が達成することを前提とした安藤の余裕だったのかも知れない。

 そして研究室に鍵をかけズボンと下着を下ろした割目を持たない古川は、仮眠室で自らのペニスを扱き勃起させると、尿道の中にスポイトで工夫して培養したミドリと喜一の愛液を注入した。

 その古川を凄まじい嘔吐と寒気と高熱が襲い仮眠室のベッドの上に古川は倒れこんでしまった。

 そして病院内で美女に変身した安藤が男性職員たちにチヤホヤされている時、仮眠室のベッドで意識をなくした古川の身体はその場で突然ドンドン小さくなり赤ん坊まで変化して行くと、やがて見えなくなって、今度はドンドン大きくなって顔は娘らしく身体は丸みを帯び以前と同じ顔形の古川を形成した。

 古川は性転換の過程において、そのままの身体を変化させたのではなく、一旦、受精卵まで成育が逆行して再び成熟を成し遂げる形で性転換したようだった。

 後に気を取り戻した古川は事前にセットしておいたビデオを見た時、恐怖の余り全身を震わせ驚愕した。

 男から女に性転換を果たした古川は何を思ったのか貴重なデーターであるビデオを消去し、喜一の分の培養愛液のみを瓶に入れると全ての研究成果をこの世から抹消してしまった。


 これでいい… 人間は神の領域を侵してならない……


 古川は辞職願いを認めると〇〇製薬臨床試験病棟を胃がん退職、この病院から姿を消した。

 翌日、古川が退職したことを知った安藤は、邪魔な存在がいなくなったことで顔つきも明るく爽やかな気分でスカートを履いて院内の勤務に就いた。

 
 その時、廊下でガヤガヤ騒がしい声を耳にした安藤は〇〇製薬の経営破綻を耳にし我を忘れて研究所へと駆けつけたが、喜一の情報も試験データも検査報告も全てがマザーPCからもサーバーからも抹消されていた事実を知った。

 この世から喜一の全ての情報が消滅したことを安藤は知ったが、この時の安藤にとってはどうでもいい事だったようだ。

 それでも出世欲の強い安藤は経営破綻した〇〇製薬の臨床試験病棟から姿を消さず己の出世のためにと、せっせと権力者たちに身体を提供し好きでもない男達に味見され続けた。

 
 コイツらは馬鹿ばかり…… ウフフフフ~♪


 スリップ姿で両足を開き、女の匂いが充満する陰部を味見させる安藤は出世の約束に満足げな笑みを浮かべ心の中で一人語っていた。

 後に安藤と関係した全ての者たちが性転換してしまうことを知らずに。

 そしてもっと恐ろしい事実が安藤を待っていることを知らずに。

 元々、〇〇製薬の性転換への特効薬の研究は安藤が己の性転換を果たしたい一心で会社に呼びかけ実現したものだった。

 男になりたいという一つの悲願達成がこの無謀な企てを大企業を飲み込んだ。



 その頃、辞職した古川は下山喜一の家に遊びに来ていた。

 元に戻れた報告と下山喜一の情報をこの世から抹消した報告。

 そして何より喜一を元のオッサンに戻せるという最も重要な報告を持って。

 その古川が持参し喜一とミドリの目の前に置かれた小さな瓶には、古川の医療に対する情熱が詰まっていた。



【二十九話】



 
「これで喜一さんは元の姿に戻れます! 良かったですね~♪」

 古川は満面の笑みを浮かべて喜一とミドリに前屈みになって報告したが、喜一もミドリも困惑した表情を浮かべ古川に呟くように喜一が声を出した。

 
「先生。 私が生きてこのまま女でいれば、性同一性障害者やハタマタ、場合に依っては死期の迫った老人を若返らせることも出来ると思うのです。 私の身体から採取した愛液(サンプル)と先生の医療への情熱をプラスすれば世界中の困っている人達を救えると思うんです。 それに私も今は女性の身体に慣れてしまって、今更五十代のオッサンに戻れない気がしているのです。先生さえ良ければ私の愛液を培養して世界中の困っている人を救済して欲しいのです……」

 真顔を古川に向ける喜一同様に真剣な面持ちで横に並ぶミドリも頷いて見せたると古川は困惑して二人を見回した。


 古川は二人を見回した後、小さな溜息を漏らすと俯いて両膝に置いた両手を腹の辺りに組んで、暫く黙り込んでいた。

 
「お二人のおっしゃる通りだと思うのですが、私には神の領域に踏み込む勇気はありません。 これを置いて行きます。」

 古川は使い方を簡単に説明すると、立ち上がり二人に一礼すると無言のまま玄関へと移動し、再び玄関で一礼すると古川は厳しい表情で下山家を立ち去った。

 そして古川を見送った喜一とミドリが玄関に背を向け家中に戻ろうとした瞬間、バンッと玄関のドアが外側から強く押され強い音を立てた。

 振り向いて玄関を見る二人。

 ガタガタと音を立てて揺れる玄関ドア。

 不安げな表情ょ見せるミドリが喜一に寄り添う。

 ミドリを庇うようにミドリの前に立ちはだかる喜一。

 耳を澄まして外の様子を覗う喜一。

 
 ガタガタガタガタガタ…… シーーーン……


 喜一は静かになったところで玄関の覗き穴から外を見回すと、誰かが居ると後のミドリに小声を発した。

 その瞬間、勢い良くとも山家の玄関ドアは誰かに引き開けられた。

 そして開いた玄関ドアの横をみると古川を取り囲むように見知らぬ三人の腰の曲がった老婆達が古川に何かを必死に頼み込んでいた。

 その瞬間、三人の老婆達は一斉に喜一を見て動きを止めた。

 
 キーちゃん!


 三人の老婆達は一斉に喜一の名を呼んで大粒の涙をポタポタと落とした。

 貧相な面持ちの老婆たちは喜一の方へ近付いた。

 再び下山家の居間へ戻った古川を真ん中に両側を喜一とミドリが挟んで座り、対面に老婆達が三人並んで座った。

 
 えぇぇー!

 
 三人の老婆たちの素性がわかった喜一とミドリは三人の話しに仰天して驚きの声を上げた。

 目の前に居るのは病院を退職して姿を眩ました四人のうちのアヤ以外の三人だったが、三人の話しを聞かされた喜一たちは顔色を変えた。

 
「私は女性になってから十数人の男性と性交渉を持ちました…… 最初のうちは何でも無かったのですが、日が経つにつれて身体に異変が起こり始めその老化は止まらずにドンドン加速していき、ある朝目覚めると突然この姿になっていました……」

 三人のボサボサ頭の老婆達は涙ながらに口を揃え助けを求めた。

 それに対して古川は残念そうに三人を前に厳しい口調で突き放すように言い放った。


「身も心も女性なら少なからず貞操観念はあるわ! そりゃ、人に依るでしょうけど、女になれたからといって男をとっかえひっかえするなんて最低!! そんな人の面倒なんて見切れないわ! まして女を武器に男にお金を貢がせるなんて!! それはただの売春!! 貴女達は売春するために女性になったの!? 貴女たちは単に女性の身体が欲しかっただけでしょー!! 違うの!? 性同一性障害者でも何でもない、ただの変態じゃないの!! それに! もう彼方達を元に戻す施設も何もないわ! 〇〇製薬は経営破たんしたわ! 研究施設も臨床試験病棟も全てなくなってるし。 それに本物の女性になれたのだから、今の姿でも問題ないはず。 世の中の女性は全てが貴女たちの希望道理の様相をした人ばかりではないわ! 何をフザけたこと言ってるのだって世間の女達に袋叩きにされるわ! 幸い見た目は老化しているようだけど、細胞年齢は彼方たちの年齢に適応している。少し頭を冷やしない! キレイになりたかったら普通に働いて世間の女性のように整形でも何でもして努力してなりなさい! 貴女たちのいい加減さに神様が激怒したんだわ!」

 古川は立ち上がって三人の老婆達に拳を振り上げて怒声を上げたが、喜一もミドリも古川を止めようとはしなかった。

 三十分後、沈黙の中で古川は診察を実施し、見た目だけの老化だと三人を安心させ連絡先を確認して帰宅させた。

 
「身も心も女だといいながら実は下着フェチだったり、同性愛者だったり自分を変態やホモと位置づけられるのが嫌で、自分を世間に美化するために性障害者になりきる人達も少なくないの…… 彼女たちがそうだとは言い切れないけど、完全な女性になれたのなら自分を大切にするくらいの気持ちがなくて、それの何処が女だというの!? 私は医師として今の彼女たちを性同一性障害者とは認めないわ。 アンナ人達が居るから本当に苦しんでいる性障害者たちが苦しい人生を送らなきゃならない世の中になるの。」

 古川の彼女達に対する怒りは治まらず、両脇で俯いている喜一とミドリに声を荒げると、乱心したことを二人に深く謝罪したのち下山家を後にした。


 そして喜一は不安になってもう一人の性転換者であるアヤに連絡を試みていたが、連絡が取れず仕方なくメールをした。

 
 その頃、アヤは女になった大野洋平と腕を組んで姉妹のように楽しげに街中でショッピングを楽しんでいた。

 お揃いのミニスカートとノースリーブ姿で楽しむ二人は既に何度もの女同士の愛欲を経験している仲の良い恋人同士だった。

 女になったことを良しとしてアヤと送る同棲生活の中に、大野洋平という男の生活臭は消え去ったていた。

 老婆のような姿になった三人の女達と違い、大野洋平一筋のアヤは今日も美しいまま洋平に寄り添っていた。

 
 そしてその頃、隣家の柿崎幸一は今日も楽なオナニー方法は無いかと知恵を絞っていたが、どれもこれも大したアイデアもなくモンモンと時間を過ごしていた。

 そんな柿崎幸一の頭から離れない、誰かに全身を舐められたいという願望はオナニーの道具ではなく、一つの作戦を描く作戦に変わっていた。

 幸一の描く作戦は自分の部屋に親しい友人を呼び、遊びに来た友人を女になった幸一本人が出迎え友人に自分を襲わせる作戦だったが、襲われて犯される心配があって中々実行できなかった。

 スリコギ棒で酷い目にあった幸一は何とかレイプをかわしつつ全身を舐められることは出来ないものかと知恵を絞った。

 友人と言えど健康な男子、ベッドに身体を横たえ愛撫されれば当然、男は女への陰部への挿入を目論むのは当り前。

 この挿入をさせずに舐められるだけに止めさせることが幸一の我がままな部分でもあった。

 だが、幸一はこれを実戦した。



「初めまして♪ 私、幸一君の従姉妹なんですが、遊びに来ませんか? ああ、彼は今、外に出ていて……」

 幼馴染を利用しようと考えた幸一はさっそく、携帯から小学校以来の友人の加藤に連絡を取った。

 加藤のことは何から何でも知っていると自負する幸一は従姉妹を装って加藤に身体を舐めさせる作戦を思いついた。

 女を見れば喉を鳴らしてジーっと見詰めフラフラ着いて行っては電柱に頭をブツける加藤は童貞でしかも女にはまるで縁のないヤツだった。

 男としては決して見劣りしないヤツだが根っからのパンストフェチが女達に伝わるのか、女達は加藤が発する異様なオーラーの所為で近寄ろうとはしなかった。

 いつかパンスト足を舐め回してやるが口癖の加藤は幸一からの電話に何の疑いも持たずに歓喜して電話を切った。

 そんな加藤を待つ幸一は、どうせならと、昨日から履いている白いパンティーを取り替えずにその上に黒いパンティーストッキングを履きデニムのショートパンツを履いた。

 身体のラインを見せるためにノースリーブを来て脱がされやすいようにその下には何も身に着けずノーブラにした。

 ソワソワする幸一は加藤が来るまでベッドに腰を降ろすと、両足を軽く開きストッキングの上から右手の中指を滑らせて遊んだ。

 くすぐったいのに触手した太ももから伝わる快感(しげき)にウットリと目を細めた。

 
 気持ちいい……


 ノースリーブの生地の上から触手する乳首は速攻で勃起しコリコリ感を指の腹に伝え胸の奥からキュンキュンと全身の内側に甘美な刺激が走った。

 幸一はストッキングから伝わる刺激と同時に乳首からの刺激にベッドの上に仰向けになり、知らずのうちにショーパンの裾から指を中に入れて滑らせた。

 
 これ以上したら濡れちまう……


 そう思いながらも加藤に愛撫されていると想像しながらショーパンの裾から入れた指と胸の指を忙しく動かす幸一だったが、予想以上に加藤は早くに到着し玄関チャイムを忙しく鳴らした。

 ハッとして両目を開いた幸一は目を潤ませながらゆっくりと起き上がると、指の腹にヌルヌルした液体が付着しているのに気づくと軽く匂いを嗅いで慌ててティシュで拭いて捨てた。

 幸一は女の汁がパンティーストッキングに滲み出ていることを知りつつも、変態加藤を出迎えるために玄関へと向かった。

 そして玄関ドアを開けた瞬間、変態加藤は両目を大きく見開き幸一の余りの美しさに放心し挨拶を忘れてカチコチに身体を硬直させた。


「幸一のお友達の加藤くんだよね♪ 初めまして♪」

 石になってしまった変態加藤を連れて二階に移動する幸一は黒いパンティーストッキングに包まれた裏モモに痛い程の加藤の視線を感じた。

 幸一はわざと変態加藤に見せるようにゆっくりと階段を登った。

 
「幸一くん、お母さんから電話来て用足しに出ちゃっけど一時間くらいで戻るからゆっくりしてって♪ 私の名前はサチよ、宜しくね♪」

 部屋へ入った加藤はカチコチのまま固い表情で喉もカラカラと言わんばかりだった。

 サチは飲み物を取りに一階へ降り再び二階へとコッソリと上がると、加藤は腕組みして部屋の中をウロウロする足音がドアの向こうから聞こえた。

 そして部屋に入ったサチは学習机の前の椅子に座る加藤へ斜め前から飲み物をテーブルに置いてニッコリ笑みを見せると、加藤もまたギコチない笑みを浮かべた。

 
 沈黙する加藤の目の前をワザと歩いて窓辺に後ろ向きに立ったサチは加思った通り再びサチの足に釘付けになって足組みをした。

 そんな加藤にサチは振り向かずに小声をかけた。


「幸一君の話しだと加藤くんてマッサージが得意なんでしょ? 実は、不慣れな街を歩きまわっちゃって足がパンパンなの♪ 初めて会った人にこんなお願いするなんてどうかと思うんだげど、マッサージ駄目かな~♪」

 幼少期からマセていた加藤は女の子の身体に触りたい一心でマッサージには熟練していた。

 サチはスッと加藤の方を振り向いてニッコリと可愛らしく笑みを浮かべると、そのまま加藤の返事を待たずにベッドに仰向けになった。

 その行動に加藤は、えっ!? と、驚いた顔したものの既にベッドに仰向けになっているサチを見て、ゴクリと喉を鳴らしてベッドに近付いた。


「サッちゃん、いいの? 俺なんかがサッちゃんに触れても?」

 加藤はサチをサッちゃんと呼んでベッドの横に立つと、両目を閉じて仰向けのサチを頭から足の爪先までを見流して深呼吸を二度した。

 サチは加藤からの問いに目を閉じたままコクリと頷くと再び沈黙した。

 加藤は思わぬ展開にニヤッと大きく笑みを浮かべるとベッドの上、サチの足元に膝立ちして両手を差し出した。

 大好物の黒いパンティーストッキングに包まれたサチの両足は加藤にとって夢にも出て来ないほどの美脚だった。

 そんな加藤は遠慮深げにサチの両膝に両手を置いた瞬間、仄かに香るサチの甘い香りにウットリして頭を左右にフラつかせた。

 両膝から上へ行くか下へおりるか迷った末に加藤はマッサージの手付きで下へ降りると背中を丸めて顔をグイッと突き出した。

 両足の爪先に当たる加藤の吐息にサチは匂いを嗅がれていることを察知して、内心笑みを浮かべていた。

 パンストフェチで匂いフェチの加藤にとって、女の子の爪先は御馳走の一つだったようだ。

 三分、五分と時間が経過する中で、まだか、まだかと上に来るのを心待ちにするサチはイライラし出して自らの手で、この辺をお願いと囁いた。

 そんなサチの指定した場所は太ももだったことに、加藤は額に汗を浮かべて喉をゴクリと鳴らし、両手を差し伸べた。

 スルスルとストッキングに擦れる指先の感触にウットリしながら揉みほぐすサチのプリプリした太ももに加藤は両目を閉じて黙々とマッサージを繰り返した。

 
「サッちゃん、して欲しいところあったら指示して……」

 加藤は目を開いてサチを見ると、サチは両手でショーパンの裾ぎりぎりを指示してきたことに加藤は目を疑った。

 
 いいのか…… 本当にそんなとこ! 


 加藤は突然の指示に口をポカンと開けて心の中で驚愕していた。

 夢にまでみた女の子の太もも、しかも大好物の黒いパンティーストッキングに包まれた柔らかそうな肉を見た瞬間の加藤の顔は想像以上に抜けていた。

 そして加藤は両手に電気ショックを受けたようにブルブルと振るえた。

 だがムニュッとくるかと思ったがストッキングに包まれた太ももは弾力を伴いプルンと加藤の手を弾いた。

 
 頬擦りしてぇ~


 加藤の素直な気持ちだった。

 そして動揺しながらもサチの太ももをマッサージし慣れた頃、サチは突然目を閉じたままうつ伏せになって、両手で裾ギリギリの裏モモを指示してきた。

 これには流石の変態加藤も度肝を抜いた。

 太ももの中で内モモ同様に柔らかさをキープする裏モモは尻と繋がっている果実の宝庫。

 加藤の手が再び震えた瞬間、サチの両足がパカッと開いた!

 
 マジかあぁ!!

 
 裏モモと内モモが一斉に加藤の視線を釘付けにした。

 すると突然サチは片手でココよと膝の裏辺りを合図してきた。

 その瞬間、加藤は意気消沈したが両手で足を掴んだ瞬間、直ぐに鼻息を荒くした。

 
 ショーパンの中が丸見えだあぁー!!


 サチの尻と陰部を覆う白いパンティーがチラッと見えた瞬間、加藤は思わず首を下げて顔を横にしてショーパンの中を覗いた。

 加藤は蒸れて香りそうな陰部を覆う白いパンティーに目が釘付けになって動けなくなった。


「ねぇ~ 何してるのぉ~ プリリリーン~♪」

 サチは一向に手を動かさない加藤に尻を左右に振って下半身をプリンプリンと振って見せた。

 加藤は顔面歓喜し込み上げる喜びに耐えられずという表情を浮かべた。

 
「ねぇ~ こうして見て~ 血行が促進されるわ~」

 サチは片手を足首へ伸ばし中指の腹でストッキングの上を滑らせ、ショーパンの裾ギリギリまで接近すると、外ももや内モモにフクラハギへと自由に滑らせるところを加藤に見せた。

 加藤はその光景に喉をゴクリと鳴らし振りえる両手の中指を震わせて突き出した。

 すると鵜呑みにした加藤は両手の中指をサチの両足首にフィットさせ、ストッキングを伝染させないように気遣いながらゆっくりと滑らせた。

 

「あん… あひぃ! あああああぅ!」
 

 
 突然のサチの喘ぎ声に震撼し両手を放した加藤は、全身を強張らせ立ち膝のまま固まった。

 そして生まれて初めて生の女の鳴き声を聞いた加藤は額に脂汗を滲ませた。


 静まり返った部屋に響くような加藤の心音。



「早くしてよぉ~ プルルルルーン♪」

 再びサチの堰かす声と尻と太ももが左右に揺れ動いた瞬間、加藤は忘れていた呼吸を取り戻し大きな吐息をして復活した。

 加藤はこんなチャンスは二度とないと再び無言で頷くと両手の中指の腹をサチの両足に滑らせ始めた。

 喘ぐサチは時折、喉の奥に声を溜め苦しそうに両足の爪先を閉じたり開いたりし、加藤は既に理性を失いかけていた。



【三十話】

 

 

 サチは加藤の指と手に我を忘れていた。

 ストッキングに包まれた両足の表面に伝わる加藤の手と指は、サチの肉肌にくすぐったくて気持ちいい鈍くてキレのある快感(しげき)を与え続け、全身をビクンビクンとビク付かせるサチは重たい息遣いと素早い息遣いを繰り返していて、加藤はサチの反応を見ながら、ここは? ここか? と、言う具合にサチの作戦にハマっていった。

 仰向けで開かれていた両足は開く角度を大きくして触手される度に両足の爪先は開閉を繰り返し、筋肉がピンッと張ってはプリンと強張りを元に戻した。

 加藤は仰向けのサチに見えていない自分の姿を低くして、触手しながらサチの肉肌の匂いをストッキングの上から嗅いで歓喜していた。

 サチは解かっていた。

 加藤が自分の肌の匂いを嗅いでいることに。

 そしてそんなサチは心の中で恥かしいと思いながらも、嗅がれながら触手されることに切なく官能していた。

 ムニュムニュとサチの両足の内モモは加藤の手の中に納まっていて時折、加藤の両指は内モモの奥、白いパンティーが包む陰部ギリギリへと滑りながら遊撃していた。

 それでも何も言わずに官能して身悶えを繰り返すサチに加藤は最早、警戒心も違和感も何もなかった。

 恐らく加藤のズボン中はカウパー支線液に塗れていた。

 そんな状況下で加藤は遂にサチの裏モモにストッキング越しに頬擦りを始めた。


 キタ!!


 サチが心の中で叫んだ瞬間、はぁはぁと大きな吐息がサチの裏モモに吹き付けられ、同時に肌の表面を吸い取られる空気に涼しさを感じた。

 加藤はサチのショーパンを捲くり上げると何度もサチの匂いを嗅ぎ両手で所構わず両足を触手しまわした。

 すると加藤は突然、サチの片足を上側に折り曲げた。


 クンクンクン…… すうぅーはあぁー!


 突然、蒸れた爪先に鼻を押し付け匂いを嗅ぐ加藤に、サチはベッドに押し付けた顔を赤面させた。

 加藤の吐く息と吸う息が爪先の小指と薬指の間に激しく感じた瞬間、サチは心の中で恥かしさを込み上げた。

 そしてサチが恥かしがっていた瞬間、サチは爪先に何やら違和感を感じた。

 
 チュッパチュッパレロレロレロ……


 サチのストッキングの上から爪先に吸い付いた加藤は物凄い吸引力でサチの爪先を味わい始めた。

 パンストフェチで足フェチの加藤は最早、理性を失い獣のようにサチを味わい舌を忙しく動かした。

 酸っぱい匂いが漂うサチの足の爪先を口いっぱいに中に入れ舌を滑らせ貪る加藤に、サチはくすぐったさがピークに達し激しい身悶えを無意識にしていた。

 ガッシリと掴まれたサチのフクラハギは逃げることを禁じられ恥かしい匂いと味を味あわれているしかなかった。

 そして散々ムシャブリ尽くした足が加藤の手から離れたと思った瞬間、加藤はもう片方の足を掴むと再び持ち上げて爪先を口の中にいれシャブッた。

 自由になった片足のベトベト感が味見し終えた爪先に残ったが、サチは新たなムシャブリにウットリしていた。

 加藤の唇がサチの足首に心地よい圧力を与えながらストッキングの上を唾液に塗れた舌が滑る。

 舌の当たる肌は生暖かさが押し付けられながら残った唾液をサチの体温が乾かした。

 そして加藤の両手の指が両足の肌をくすぐるように滑り回った。

 サチは求めていたモノをやっと手に入れた。

 だが加藤は執拗にサチの下半身を包むパンティーストッキングに執着し、パンティーストッキングをまるでサチの身体の一部と言わんばかりに舐め吸い味わい続けた。

 そろそろ上に来て欲しいと思うサチの心とは裏腹に加藤はそのペースを上げようとせず、パンティーストッキングに包まれた膝裏に執着していた。

 サチの膝裏は加藤の唾液でベトベトになった。

 
 早くしないと帰ってくる!


 心の中でサチは加藤の余りの執着に苛立ちを覚え始め、自分からクルリと仰向けになって身体を下方向へ移動させると加藤の顔を太ももで挟んで締め上げた。

 弾力あるサチの内モモが自分の顔を挟んだ瞬間、加藤は呆気にとられ地蔵のように固まった。

 だがサチの股間から甘い女の匂いが顔を覆った瞬間、加藤は突然の豪気を出し全身に獣パワーを漲らせた。


 ヌオオオオォォー!!


 両手で外側からサチの太ももを肩で担ぐように抱き込んだ加藤は思いっきりサチの股間の匂いを鼻で吸引し、プルプルと両頬に感じる弾力とストッキングのスリスリ感に目を血走らせた。

 加藤は両頬を挟むサチの両太ももを両手で開くと、カブリ付くようにサチの左内モモにムシャブリ着いた。


 痛! あんっ!


 凄い力でムシャブリつかれたサチはその激し痛みに身を捩って痛みに唸り声を上げたが、直ぐに不思議と痛みが心地よさに変化していった。

 加藤は大きく口を開けると夢中になってパンティーストッキングに滲み込んだサチの太ももの味と匂いを追い求めた。

 サチの右内モモに左頬をスリスリさせながら左内モモにムシャブリつく加藤の口から唾液が滴り落ちていた。

 そして次の瞬間、ムシャブリ付く勢いが余ったのか、加藤はサチの下半身を包む黒いパンティーストッキングに歯を引っ掛けビリビリビリッと伝線させてしまった。

 その異変に加藤は口を大きく開け眉間にシワを寄せ顔を強張らせて仰天し数秒間の時間が流れた。

 
 ビリビリビリイィー! ビリ! ビリ! ビリイィー!


 突然加藤はサチの両足をベッドに下ろすと前屈みになってサチの下半身からパンティーストッキングを両手でビリビリ音を立てて破り始めた。

 それはまるで気に入らない作品が出来てしまったことを後悔して破壊する陶芸作家まような振る舞いだった。


 プリプリと左右に大きく揺れるサチの胸。


 そしてその時のサチはと言えば両手で顔を覆い隠し下半身を包むパンティーストッキングが破られることに酷い恥じらいを感じた。

 ビリビリと大きく引き裂きながらショーパンの内側から引っ張るように引き裂いた加藤はそのパンティーストッキングの残骸を丸めると口の中に放り込んでチュパチュパと悔しさを滲ませた。

 その光景は追い詰められた大学受験生が辞書を引き裂いて食べてしまう光景に似ていた。

 そして加藤は血走った目をサチのショーパンに向けた瞬間、突然ボタンに手を掛けソチからショーパンを脱がしにかかった。

 ところが作戦通りだったはずの加藤の行為にパンティーストッキングを引き裂かれ酷い恥じらいを感じたサチは咄嗟にショーパンを脱がされまいと両手で加藤の手を邪魔した。

 加藤はオーバーヒートしたようにサチの両手を払いのけショーパンのボタンを外し終えると、サチからショーパンを脱がし始めた。



 嫌あぁぁー! やめてえぇー! ヤダアァ! ヤァー!!


 無意識にサチは強張りの声を上げ脱がされまいと必死に両足をバタ付かせ抵抗したが、頭に血の上った加藤は力ずくでサチからショーパンを奪った。

 加藤の目の前に黒いパンティーストッキングの残骸に覆われた白いパンティーが飛び込むと加藤は突然、雄叫びを上げた。


 ウオオオオオォォォー!!!


 サチはその雄叫びに驚いて加藤から逃げようとベッドの上に起き上がろうとしたが、加藤はそれを阻止しサチをベッドに押し付けた。

 両手足をバタつかせて抵抗するサチと、サチの身につけているノースリーブの裾を力任せに首へ撒くりあげる加藤の目に、白いプリンのような乳房が二つ飛び込んだ瞬間、サチのピンク色した乳首の上には加藤の黒い頭が覆い被さっていた。

 乳首が千切れるのでは恐怖を覚えるほどの力で須藤はサチのピンク色した乳首に吸いついた。

 そして余りの痛さにサチは両手で加藤の肩に手をかけ自分から引き離そうとしたが、吸い付く加藤の力は強く加藤を引き離せば乳首に激痛が走り、サチは加藤を引き離すことをやめた。

 そんなサチは込み上げる悲しさと大粒の涙を我慢出来ずに声を震わせ頬に伝えると全身から力を抜いた。

 加藤の両手はサチのことなど考えずに鷲掴みして二つの乳房を揉み回し二つある乳首は交互に無造作に吸い捲くられた。

 
 こんなこと… しなきゃよかった…… ぅぅぅうう……


 サチは己の企てを後悔していた。

 乳首と乳房への痛みと自分からパンティーを剥ぎ取ろうとする加藤の手に恐怖を覚え恥辱される悲しさに涙が止まらなかった。

 唇を震わせるサチはこの時、身も心も女になっていたようだ。

 身体は無造作に触手され舐められ吸われ痛く苦しいだけの獣からの肉欲。

 乱暴に扱われる哀れな自身。

 加藤からのジリジリと焼けるような痛みを伴う脇の下への吸い付きはサチを苦しめ泣かせた。

 そしてサチから無理矢理、剥ぎ取ったパンティーの内側の匂いを嗅ぎ舐める加藤の右手がサチの乳房を鷲掴みする。

 サチをまるでモノ扱いする狂った加藤はサチの痛がる声も耳に届かないほどに強烈な女の匂いと味に咽咳を放ちながら脱がし立てのパンティーを味わい口の中に丸ごと入れてクチャクチャと音を立てた。

 薄気味悪い音がサチを苦しめた。

 恐怖に駆られたサチは逃げることも抵抗することは出来ずに只管に加藤が治まるのを待つしかなかった。

 だが加藤は口の中に入れたサチのパンティーを味わい尽くし、ペッと口からベッドに吐き出した瞬間、サチの両足を持ち上げサチの恥かしい部分を凝視して固まった。

 サチは咽び泣き叫びながら両足に力を入れたが加藤の力は強くサチは逃げることが出来なかった。

 両足を左右に振ってもビクともしない加藤の両腕は筋肉が張り詰めていた。

 そして両太ももを肩で抱くように加藤の顔がサチの陰部に近付いた瞬間、サチは思わず大声を発した。


 嫌ああああぁぁぁぁぁーーーーー!!!!!


 そしてサチの陰部に加藤の顔の温度が俄かに伝わった瞬間、一階の方から突然大きな物音がした。


 ガッチャアアアァァァーーーーン!!!!!


 サチは咄嗟にあることを思い出して大声で叫んだ!

 うろたえオロオロする加藤。


「叔母さーーーーん!! 助けてえええぇぇー!!! 叔母さーーーーーーん!!!」

 加藤はこのサチの声に驚き仰天し、サチの身体から離れるとベッドから降り辺りをキョロキョロ見回すと、一目散にサチの部屋から逃げ出した

 ダダダダダっと逃げる加藤は階段を一気に駆け下りると玄関から外へと逃げ出していった。

 ベッドの上に仰向けで両膝立てるサチは開いた両足の真ん中に窓から入る風を感じた。

 

 四角い氷を積み重ねて時間を調節、氷が溶けて立掛けてあった板が床に置いてある瓶を倒し大きな音を立てる。

 叔母さん達が帰って来たと大声で叫び加藤の性交渉を止める。


 この作戦だけは成功した幸一だったが二度と馬鹿なことはすまい心に誓った。




【三十一話】




 
「助けて欲しい……」

 古川の携帯に掛かってきた電話の主は声もしおれた女声に変わった安藤からのものだった。

「本当に安藤なの!?」

 古川は確認するようにその声に反応した。

 電話で言われた住所は間違いなく安藤医師の自宅、古川女医は顔色を替え安藤宅を訪ね仰天した。

 前回、下山家に突然現れた三人の元看護師達のようにみすぼらしい老婆の様相をした安藤は長い黒髪をボサボサさせヨロヨロと歩いて古川をマンションの居間へと通した。

 
「数人! 数人の男達と寝ただけなのにこんな副作用が出てしまった……」

 安藤は女になったことを利用して実力者たちと性交渉したことを古川に打ち明けた。

 古川のいた〇〇製薬の研究所からサンプルを盗みだし使ったことを暴露した上で、あとは下山ミドリと性交渉するばかりという時、根回しのために医学会の実力者たちに抱かれたのだという。

 そんな安藤は推定八十歳代の様相で椅子に腰掛、喋るのもやっとと言う状況で古川女医に話し聞かせ、その後、下山ミドリは元の女性に戻ったことを知らされた。

 そして三人の元看護師と安藤が同様の状態であることも伝えると、安藤は乾燥しきった顔を古川に向け涙をボロボロと落として助けを求めた。

 どうやら、複数の異性と性行為をすることが切っ掛けで出てくるようだと古川は変わり果てた安藤に口を開いた。

 安藤はシワだられの顔を再び古川女医に向けると震える両手を合わせた。


「頼む… 手も震え体力もなく痴呆症のような表情が出ているんだ… 自分で薬を作れる状態じゃないんだ…… 過去のことは全て謝るから力を貸して欲しい。」

 安藤は震える両手で合掌して古川に救護を頼んだが、古川は眉間にシワを寄せ返事を見送った。


「私はもうあのプロジェクトとは無縁だし〇〇製薬の人間ではないわ… 頼むのであれば携わった私以外の専門の人にした方が近道だと思う。 それにハッキリ言って貴女とはもう関りたくないの…… 研究所のデータもサンプルもこの世にはもう存在しないわ。 今から初めても何十年先になるか解からない。 頼むなら他の医師に頼んで欲しい。」

 古川女医は下山喜一に渡した唯一のサンプルのことを伏せて話すと、そのまま席を立ち上がって古川を見ることなく部屋を立ち去った。

 残された安藤は老婆のこどくな声を出して泣き叫び続けた。

 
 だが、古川は悩んでもいた。

 下山夫妻の言う世の中から病人を減らせるかも知れないと言う言葉に。

 関係ない。

 私にはもう過去の出来事。

 神の領域に入ることは例え医師であっても許されることではないと、古川は必死に自分に言い聞かせていた。

 だが末期の前立腺ガンに掛かった男性を性転換で救え、末期の婦人ガンに掛かった女性を性転換で救えると言う事実が古川女医の前に立ち塞がってもいた。


 あのサンプルを使えば直せない病気は無いのかも知れない……


 そんな考え事をしながら駅のトイレに入った古川は用足しを終えると生理用ナプキンをパンティーに敷いて身支度を整えた。

 そしてベンチに座ってハッカ煙草に火を点け一吸いすると、目の前を通るどう見ても女装した男にしか見えない人が数人で話しているのを見た。

 有り得ないほどに妙にナヨナヨしている歩きカッコウは女性の真似と言わんばかりで、そんな女が何処にいるのだと古川女医を心の中で笑わせた。

 
 ああいう人が心は女性と言いながら自宅では女装してマスターベーションに励むのね…… ふっ♪ 女だって出来ればスカートを履きたくない私のような者や、安藤のような者もいるのに決まってナヨナヨして女を主張する人達は存在する。 ああ言う人達が本当の患者たちを妙な目で見させる要因にもなっているのに本人達は変質者と呼ばれることを嫌って必ず言う、心は女性よって♪ ただの下着フェチ… ただの女装フェチ… ただの変質者…… どう見ても四十代半ばなのにミニスカートにニーソックスなんて…… 怖い人達だわ。


 古川は通り過ぎたオカマたちを目で追いながら心の中で辛口を放ち、腹の奥から剥がれ落ちナプキンに辿り着く血糊に背筋をブルッとさせた。

 そして古川が駅を出た瞬間、少し先の横断歩道で交通事故を目撃した。

 跳ねられたのはどうやらさっきのオカマの内の一人らしいことが倒れた被害者の頭から離れた女物のカツラで解かった。

 付近は騒然として救急車の叫び声が何度も響いたが、跳ねられた者がオカマだからだろうか付近は見物人で溢れゴッタ返していた。

 その被害者に見入る人達の目はオゾマシイ何かを見るような目で好奇に満ちていた。

 そしてハッとして古川が医師として駆けつけようとした瞬間、倒れたいたオカマがスッと立ち上がって怒声を張り上げた。


 おうおうおう!! 見世物じゃねえぞおぉー! ごうらあぁぁ! オカマがそんなに珍しいのかああぁぁ! 


 この言葉に古川は度肝抜かれ駆けつけようとした足をピタリと止めた。

 ミニスカートを邪魔だとばかりに腰まで巻くりあげガニ股で怒声を辺りに響かせるオカマは女どころか怪獣のようにさえ古川には見えていた。


 あんな人達の趣味に使われる薬は作りたくない!


 古川は怒声を上げて見物人たちに八つ当たりするオカマを見て再び新薬から離れる決意をしたようだ。

 その頃、安藤は自宅自室で〇〇製薬臨床試験病棟のパソコンへの侵入を試みていた。

 幸いにして未だ在籍を消去されていない安藤は難なく進入を遂げたが、研究していたデーターは何処をどう探しても見当たらなかった。

 手掛かりが欲しいと探し回っていた時、モニターの患者名簿の箇所を見ていた安藤は下山喜一の存在を思い出した。

 下山ミドリが駄目なら本家がいるじゃないかと込み上げる喜びに不適な笑みを浮かべた。

 そしてその頃、自宅に戻って来た古川は冷蔵庫から出した麦茶を片手に、再びあることを考えていた。


 喜一と性交渉を持った四人の元看護師たちは形だけの性転換ではなく完全な女性に性転換した。 そして喜一と性交渉したミドリは男へ性転換した。 更にミドリと交わった私は男に性転換した。 そしてミドリの体液と間違えて盗んだ喜一のサンプルで安藤は女性に戻った。 だけど複数の異性と性交渉した三人の元看護師と安藤は老婆に変化してしまった。 じゃぁ、ミドリはどうやって元の女性に戻れたんだろう…… 何てこと! 大事なことを聞き漏らしたなんて!! 待って! じゃあ、私が元に戻れたのは一体…? まさか、私が作った解毒剤は実際には効いていない…? じゃあ、私が元に戻れたのは一体!? どういうことなの!? 


 古川はコップを持つ手に力を漲らせ慌てて下山の携帯に電話したが通じなかった。

 その場に崩れた古川は自分が作った薬で元に戻ったのではない事実を知り愕然とした。

 だがその時、既に喜一は自分のサンプルを残すべくミドリの協力を得て愛液を陰部から小瓶に抽出していた。

 絶対に性交渉をしない約束で喜一は女として最後のミドリとの愛欲に喘ぎ声を奏でていた。

 全裸になった喜一の両手は後手に縛られ恥かしい部分をミドリの前に晒しベッドの上に仰向けになっていた。

 ミドリは女になった亭主とする最後の愛欲とばかりに持てる全てのテクニックを使い喜一の身体をトロトロに蕩けさせ、オビタダシイ量の愛液を瓶に納めた。

 そしてミドリは大きく開かせた喜一の両足をロープで固定し縛り上げると閉じられないようにして、黒光りしている擬似ペニスにタップリと古川が持って来たビンのサンプルをつけて挿入した。



 ズブリユウウウゥゥゥーーーー!!! 痛あああぁぁぁーーーいいぃぃぃ!!!

 

 喜一は縛られた両足をバタバタさせ顔を紅くして大声で叫んだが、ミドリは心を鬼にして喜一の穴をペニスで往復させた。

 クッチャクッチャクッチャと異様な音を出し続けた喜一の身体は余りの痛さに右に左にと全身をクネらせ続けた。

 そして数十分後、一仕事終えた安堵感を浮かべるミドリが黒い擬似ペニスを持って寝室から出て風呂場へと向かった。

 寝室からは物音一つせず静まり返ったままだった。

 この日、喜一はミドリの看護の元、高熱にうなされ下がらない熱は深夜にも及んだ。


 そして隣家の柿崎家では母親の田舎での幼馴染の不幸が伝えられ、柿崎幸子は喪服をケースに入れると父、良一と息子(むすめ)の幸一を残しタクシーで一路田舎を目指した。

 柿崎家では母親の居ない二人だけの夕飯を済ませ静まり返った居間にはテレビの音だけが広がりを見せていた。

 父、良一は煙草を吸いながらウイスキーを飲み横目で風呂から出たばかりの幸一を見て、大きな溜息をついていた。

 
 男だったから入れたのに…… くそ!


 父、良一は下着の透ける薄手のワンピースを身に付けた幸一の後姿をチラッと見て独り言を放ってふて腐れた表情を浮かべた。

 そんな父をそのままに冷蔵庫から麦茶のボトルを出した幸一は二階の自室へと移動した。

 学習机の前に座ると決まってインターネットをチェックする幸一の見るモニターは、性に関するサイトがお気に入りにズラリと並んでいた。

 見落としは無いか、まだ見ていないサイトは無いか、窓から入る風に長い黒髪を乾かしながら真剣に見入る。

 
 こんな身体と早くオサラバしたい……


 幸一は隣家に居るキーちゃんを思い浮かべながら、あるはずの無いペニスをパンティーの上に探し大きな溜息をしてスカートの中から手を出すと、白いスリップのレースの裾を指で抓んで視線を向けた。

 その時だった、突然後に人の気配を感じた幸一はサッとスリップの裾から指を離して後を振り向くと、開いたドアの横に父親の良一がウイスキーの入ったグラスを持って立っていた。

 幸一はギョッとした。

 すると父親の良一はウイスキーを一口飲んで振り向いた幸一に小声で呟いた。


「お前、もしかしたら両性かも知れんな… 母さんと尋ねた病院で何処へ行っても医者が口にしてたよ…… 一度何処かの病院で精密検査をした方がいいかも知れん。 父さんも母さんも正直、内密にお前の病気を探るのは困難だ。 お前を世間に晒したくはないがその方が近道かも知れん……」

 父親の良一は寂しげにボソボソと呟いて大きな溜息を放った。


「何言ってんだよ! 僕は! 僕は男だし! これは何かの!!」

 突然立ち上がって父親の良一の前にいきり立って近寄った幸一を父親の良一が下から上へと見回した。


「母さんの若い頃にそっくりだな… 母さんもスタイルは抜群だった… まあ、お前も母さんと同じで美人だがな……」

 父、良一は薄笑みを浮かべて幸一の顔と胸辺りを見てドアの柱に寄りかかった。

 幸一は父親の自分を見る視線が息子ではなく娘を見る目に思えて直ぐに父親から離れて椅子に腰掛けた。


「ちゃんとした病院で検査してもらおう… 両性なら両性でいろんな手続きしなきゃならんし、名前だって変えなきゃならん… 生理があるなら子供も生めるかも知れんし…… 男から突然女になったお前の気持ちの全てを理解できていないのかも知れないが現実は直視しないとな……」

 父、良一は寂しげに呟くとフラ~ッと幸一の視線から外れ一階へと降りて行った。


 幸一は父親の言葉に頭の中が真白になる思いがして学習机の上に塞ぎこんでしまった。

 
 深夜、父親の言った病院での精密検査という一言が幸一を眠れぬ夜へと誘いこんでいたが、時計の針が午前一時をさした辺りで、ようやく幸一も眠りの国へと導かれたようだった。

 閉じられた窓、レースのカーテンから入る月明かりがベッドの上で白いスリップ一枚で眠る幸一を艶かしく見せていた。

 寝返りする幸一の身体が真横になり膝を曲げた左足が大きく前側に倒れると白い太ももが月明かりに反射した。

 若い女の張りのある尻がスリップの生地を押し付けパンティーラインが浮き上がった。

 そしてその様子をゴクリと喉を鳴らして見入る二つの眼球が暗闇の中にあった。

 
 絶対にあってはならない現実が起きてしまった……


 事前に用意されたであろう母、幸子の浴衣の帯がユラユラと月明かりに揺れた。

 

 ぅぐううううー!! ぅぐぐぐうぅー!!



 突然ベッドの上でまどろんでいた幸一を力任せにうつ伏せにし両手を後に縛る何者かが幸一の部屋の中に居た。

 幸一は暴れ叫ぶ間もなく両手を後に縛られ口を粘着テープで塞がれた。

 そして再び仰向けにされた瞬間、幸一の目に入ったのは月明かりに照らされた父親の良一の姿だった。

 
 何で親父が!!


 粘着テープで塞がれた口の中でモゴモゴと幸一は疑問を喉の奥に溜めた。

 そんな幸一の腹の上に馬乗りになった父、良一は投げやりな態度と酔い口調で幸一に話した。


「お前はなあ! 俺の子じゃない! 幸子と俺の部下の間に出来た子なんだ~ 俺はガキの頃に高熱にうなされて以来、子種を消失したんだ… そんな俺が長期の出張で家を留守にしてる間に幸子と部下の中本は男女の関係になっちまった! だがな! 子種の無い俺は、お前が男の子だったから二人を許しお前を俺の子として引き取ったんだ!! だが、お前はもう男じゃない! 女なら引き取ったりしなかったんだ!! 女になったお前の使い道はこれしかないだろ~ ふっ♪」

 突然の父親の驚愕の事実に幸一は全身を震撼させ魂が抜けたように放心状態に陥って全身から力が抜けた。

 ダラリとする幸一の両手足を月明かりで見た父親の良一は幸一の肩からスリップの肩紐を両手で外すと、プリンとした新品の乳房と可愛らしい乳首に喉を鳴らし、幸一はショックの余り首を倒したまま精気を消失していた。

 そして月明かりの入る静かな部屋の中にチュパチュパと乳首を吸う良一の嫌らしい音が漂った。

 父親に乳首を吸われ乳房を揉まれる幸一は人形のように瞬きをせずただジッとしていて、良一の両手が幸一の両太ももを嫌らしい手付きで触手しても幸一は動かなかった。

 開かれた幸一の両足はプルプルと張りのある内モモを揺らし剥ぎ取られたパンティーの下、パックリと割れた女の陰部は慌しく味見する父親、良一の舌が所狭しと内肉に滲み込んだ女の汚れを絡め取っては喉に流し込んだ。

 人形のように何をされてもジッとしていた幸一の目から大粒の涙だけが溢れ落ちていた。

 そして幸一の白い肌の殆どを舐め味わい尽くして良一の硬い肉棒が幸一の中に入った時、幸一は処女喪失の痛みではない心の痛みに声を震わせて泣き続けた。

 だが人で無しの父、良一は正常位で幸一の中に二度の射精を果たした後、縛られたままの幸一をうつ伏せに膝たてさせ後から更に二度の射精を果たした。

 幸一の割目から処女の鮮血が流れ落ち同時に良一の放った白い精液が続いてシーツに滴り落ちた。

 実の父親だと信じて疑わなかった良一に味見され処女を奪われた幸一は、後手に縛られたまま両膝を立て咽び泣く幸一。

 そしてその縛られる女の美しさに足組して煙草を吸い見入る良一は全身を小刻みに震わせ、虫の声で独り言を繰り返していた。


 ザマ見ろ! 中本! お前の娘は俺が味見して女にしてやったぞ! ザマ見ろ! 中本! お前の娘は俺が味見して女にしてやったぞ! ザマ見ろ! 中本! お前の娘は俺が味見して女にしてやったぞ!


 後手に縛られうつ伏せで両膝立てる幸一を真横に見る良一は再び幸一に近付くとペロリと幸一の左尻を舐めると、再びベッドに跪くと硬くなった肉棒を後から幸一の割目の穴に挿入し前後を繰り返した。

 咽び泣く幸一の声は良一の荒い吐息に掻き消された。

 
「このことは幸子には黙っていろ! お前は今日から息子でも娘でもない! 俺の女として生きて行けばいい…… 恨むなら幸子と中本を恨め!」

 良一は五度目の射精を幸一の膣の中に済ませると、幸一の両手を自由にベッドから降りると幸一から剥ぎ取った使用済みのパンティーの内側に舌を滑らせ味わった。

 その良一は幸一の部屋を出て行くと、幸一は突き出していた尻をゴロンとベッドに横に倒れ両手で顔を覆い隠し蹲って声を出して号泣し、一階の寝室に戻った良一はウイスキーをストレートで一口飲むとそのまま寝てしまった。

 そして早朝の五時、幸一は裸のままフラフラと一階へ降りると良一に汚された身体を水シャワーで清めるように洗い流した。

 涙の枯れはてた幸一は意識モウロウとし再び裸のままフラフラと二階の自室へ戻るとそのままベッドに腰掛腹の中のジリジリ感に無言で堪えた。

 身体中に残る良一の味わい吸った形跡を見て枯れたはずの涙をポツリと零した幸一は泣き腫らした顔を拭くことはなかった。

 
 その頃、隣家の下山家ではミドリの歓喜する声が閉じた窓ガラスが割れんばかりの勢いで広がっていた。


「やっぱり私の思った通りだわ~♪」

 寝室のベッドに横たわる懐かしい五十過ぎのオッサンを見たミドリは両手を胸の辺りに満面の笑みで男に戻った喜一の顔を覗き込んでいた。

 そして喜一が目を開くや否や喜一の顔の真ん前に手鏡を差し出すと、喜一は両目を大きく見開いて声を喉に詰まらせた。

 身体には若干の丸みやプリプリ感は残るものの間違いなく喜一は五十過ぎのオッサナに戻っていた。

 そしてバサッと剥いだ布団の下、ミドリの両手が剥がしたトランクスの中には、見覚えのあるモノよりも遙かに大きいピンク色した未使用のペニスがゴロリとぶら下がっていた。

 
「キヤアァー♪ 何てことぉー♪ キャァー♪ 凄い凄おおーい♪」

 喜一の巨大な一物を見たミドリはピョンピョンと飛び跳ねて両手を万歳して大喜びしクルクルと回って、喜一は見開いた両目からボロボロと大粒の涙を流して唇を震わせた。


 こうして前日のミドリの思いつき作戦は見事に功を奏し喜一はオッサンへと返り咲いた。


 だがその時、隣家の二階ではカッターナイフを手首に向ける幸一がそこに居た。
 
 実の父親だと思っていた男に犯され辱めを受けた幸一は思い詰めていたが、父親の良一は何も知らずにベッドの上でイビキをかいて熟睡し何も気付く様子はなかった。

 そんな時、母の幸子から幸一の携帯に電話が入り、幸一は声を震わせ良一に犯されたことを告白し死を匂わせると、母の幸子はその告白に取り乱した。

 
「幸ちゃん! いい! お母さんが帰るまで決して妙な真似しないで!! わかった!!」

 母の幸子は息子幸一に何度も何度も言い聞かせると急ぎ帰路へと向かった。

 幸一はカッターナイフを仕舞うと裸のまま箪笥に近付いて下着をつけ上下を運動着で覆い隠すように着衣した。

 そして母、幸子と会話して二時間が経過したが一階の寝室で寝ているであろう父親の柿崎良一は一向に起きてはこなかった。

 
 まさか親父(アイツ)自殺してるんじゃ……


 幸一は足音を消すように一階へと忍んで寝室のドアを静かに開いてみた。

 するといつもならイビキをしているはずの良一が珍しくイビキをしておらず、幸一は再び足を忍ばせてベッドの方へと近付いた時、幸一は我が目を疑った。

 ベッドの上にだらしなく大の字で寝ていたのは白いステテコを履き腹巻をした、乳房を丸出しにした見知らぬ中年女性だった。

 お世辞にも美人とは言えない小太りのタヌキのような様相した中年女性を見た幸一は、突然女になった自分と目の前に居るタヌキ女を重ねていた。

 
 親父(コイツ)も女になったのか…?


 幸一は額に浮いた汗を片手で拭き取ると、覆い被さるようにベッドの上のタヌキ女を覗き込んだ。

 その瞬間、パッチリと目を覚ました良一は突然ニニヤニヤし両手を伸ばして幸一に視線を重ねた。


「おっ! 抱かれに来たのか~♪ ムフフフフ~♪」

 ニヤニヤして喜ぶ良一に、ニヤリと不適な笑みを浮かべた幸一はそのまま棚から取った手鏡で良一に姿を見せてやった。


「誰だあ? この変なオバチャンは!?」

 幸一から手鏡を奪い取った良一は鏡に映った見知らぬタヌキ顔に眉を動かし瞬きをして不審そうな顔をして見せた。

 そして二分が経過した瞬間、良一は、うわあっ! と、大声をあげてベッドの上に上半身を起こして、辺りをキョロキョロと見回した。

 だが、良一の言う変なオバチャンは何処にもおらず、良一は再びネボケ顔でベッドに仰向けになって手鏡に見入ると慌てて上半身を飛び起こした。


「なっ! 何だこりゃ!! 誰だ一体!! あわわわわわわわわわわ!!」

 手鏡を放り投げ両手で自分の顔を確認する良一は大声を上げて変わり果てた自分の顔に奇声を発して驚愕した。

 そして再び手鏡で自分を凝視した良一は手鏡をベッドに放り投げると、母の使っている等身大の鏡の前にたった。

 そこにはステテコを履いて腹巻をし、乳房をプルプルと揺らせたタヌキ顔の見知らぬ女が顔を引き攣らせて立っていた。

 
「アンタが僕を犯したから神様がアンタに天罰を与えたんだよ!! いい気味だ!! 僕は母さんに昨日のことを全部話したよ! 母さんはアンタと別れるよ、多分……」

 幸一の言葉を聞いた瞬間、良一は全身を立ちながらブルブルと震わせ顔を強張らせて幸一を振り返って怒鳴った。


「お前!! 俺に! 俺の身体に何をしたあぁ!! 何もしないでこんなことになるはずはなああぁーーい!!」

 良一は激しく動揺し激怒して立ち尽くす幸一に掴みかかった。

 その瞬間、幸一は力任せに掴みかかった良一を払い飛ばした。


 うわああああー!! どっすん!!


 
 幸一に払い飛ばされた良一は床に尻餅ついて信じられないとばかりに辺りを再びキョロキョロ見回して震撼した。

 尻餅ついた良一に幸一はニヤニヤして上から見下ろした。


「何もしやしてないよ♪ したのはアンタだろ♪ だからアンタは天罰を受けた♪ そういうことだろ♪ いつまでもステテコなんて履いてないで、ホラ♪ パンツ履けよ! オバサン!!」

 幸一は尻餅ついて呆気に取られている良一に箪笥から出した母、幸子のピック色のパンティーを放り投げると、パンティーはヒラヒラと舞いながら良一の手元に舞い降りた。

 ピンクのパンティーを両手で受け取った良一はそれでも信じられないような顔してキョトンと幸一を見ていた。

 そんな良一を見てニヤリと笑みを浮かべた幸一は黙って寝室を出て二階へと向かった。

 一階の寝室のドアの内側からケタタマシイ中年女性の泣き叫ぶ声が延々と二階まで聞こえていた。

 


【三十二話】

 

 

 
 父親に犯された幸一の心は晴れることはなかったが、タヌキ顔の無様な姿になった良一を思い出す幸一は幾分かスッキリした気分には違いなかった。

 その本人はといえば自分の容姿が別人になったことを納得出来ないまま寝室から一歩も出ようとせず時間だけが過ぎていった。

 そしてそこへ留守にしていた母、幸子が帰宅し荷物を玄関に置くと一目散に二階の幸一を訪ね、涙を流して幸一に何度も詫びる幸子は抱き寄せた幸一を放そうとはしなかった。

 そんな母、幸子に幸一もまた泣いていたが、変わり果てた良一のことを伝えるとその涙は直ぐに引いた。

 
「神様の天罰があたったんだ……」

 幸子に顔を見せる幸一の目が細くなった時、幸子は口元を緩めてニッコリと微笑むと信じられないと幸一の頬を両手てせピッタリと押えた。

 幸一の頬をピタリと両手で押える幸子はショックの余りに幸一の心が乱れているのだと思った。

 そんな幸子の手を引いて降りて来た一階の寝室、ドアを開けて中に入れば布団に身体も頭もスッポリと包んで身体を震わせる良一がいた。

 幸子は布団を被る良一に、幸一の見ている前で離婚を申し出た。

 
「幸一を卑劣な手段で犯した貴方には何も言うべきことはありません… ここは私の両親が建ててくれた家です。 どうぞ直ぐにでも出て行って下さい。 離婚届けは後で送ります。 貴方が幸一に言い聞かせた嘘の話しをしたいのなら弁護士をつけて然るべく場所で話して下さい。」

 幸子は毅然とした態度で布団に隠れる良一に仁王立ちして口を開くと、幸一の手を引いて寝室から出ようとした。

 すると突然、見知らぬ中年女性が布団から現れ幸子に大声を発した。


「待ってくれえ!! 幸子!!」

 布団から顔を出したタヌキ顔の良一を見た瞬間、幸子は言葉を失い振り向きザマに立ち尽くした。

 そして突然、タヌキ顔の中年女性を指差したと思うと大きな口を開けて大笑いした。


 あああーっはははははは♪ あっはははははは♪ きゃっはははははは♪ あっひゃひゃひゃひゃー♪ 


 大きな口を開けて腹を抱えて大笑いする幸子は目を潤ませて見入るタヌキ顔の良一を大笑いし、横に居た幸一までもが指差して大笑いした。

 二人の爆笑は暫く続いてそして一言、幸子は厳しい口調で言いはなった。


「いい気味だわ!! お腹に幸一が居るのに会社での立場を利用して私と中本の仲を引き裂いて私を自分のモノにした貴方には相応しいわ♪ あっはははははは♪」

 鼻先を濃く日焼けさせ両目の周りだけ白くなっているタヌキ顔の良一を二人は指差して爆笑し寝室を出てくと、幸子は二階の幸一の部屋で真実を言い聞かせた。

 
「このまま何も無ければ良一(アイツ)を貴方の父親としていさせるつもりだったけどね…… 人で無しは昔のままだったわ…… 貴方の本当の父親は中本さんよ。 前に何度かここに来てくれてたでしょ。 彼は今も独身のままでいるわ~ ゴメンね幸一…… 辛い思いさせて…… ぅぅぅぅうううう……」

 寂しげな表情を浮かべ咽び泣く幸子を幸一は自分のことのように労わって肩を抱いて何度も頷いた。

 
 この夜、タヌキ顔をした良一は人目を避けるように身の回りの荷物を背中に背負って家から出て行った。

 その後姿はまるでタヌキが荷物を背負っているように情景だった。

 唐草模様の風呂敷の丸みが妙に可笑しかったようだ。

 
 そして夕飯の食卓で、目の前の母、幸子に幸一は俯きながら呟いた。


「僕… このまま女でもいいと思う…… 母さんに可愛い孫を抱かせてあげたい…… 精密検査受けてみようかな。」

 この言葉に母、幸子は感極まって号泣した。

 男から突然、女に変化しただけでも途方も無い苦しみだというのに、実の父親と信じていた男から卑怯な手口で犯された息子の口から出た言葉は幸子を涙で溢れさせた。

 
 翌日、家中から幸一(むすめ)を犯した良一の匂いを消すべく業者を呼んで良一の物を全て彼の実家に運ばせた幸子は、ガラーンとした家中を幸一と二人で掃除した。

 だがタヌキ顔の女になった良一は老いた両親の居る実家で本人だと名乗っても信じてもらえず、実家では良一の愛人ではないかと詮索を受けながらも行く当てのない身を取敢えず実家に置くことにした。

 そんなタヌキ顔の良一を、良一が昔使っていた部屋に通した両親は、女なのに男物のトランクスを履き腹巻をして乳房を晒し部屋にいる良一(おんな)をコッソリと隣室から覗いては顔を強張らせていた。

 仕草も言葉も何もかもが全て男の良一を不審に思った両親は良一の携帯に電話したものの、追い出し同然で家を出た良一は携帯を持って来てはおらず、仕方なく街外れの交番に相談した。

 交番のお巡りさんは早速駆けつけ不審者であるタヌキ顔の良一を事情聴取と言って交番へ連れて行ったが、涙を流して老いた両親に訴える良一は傍から見ても哀れそのものだった。

 そんなタヌキ顔の良一を不敏だと思った両親は女物の服はないかと探した末に、昔、商店街で買った福袋に入っていた総ゴム仕様の大きなプリーツスカートと、パンダの刺繍の入った長袖シャツを見つけお巡りさんに持たせた。

 ゴワゴワ頭のカッパ頭にデップリとした体格の良一には丁度いいサイズの女物だった。

 
 その翌日、下山家の隣家にいる柿崎幸一は一人で何する訳でもなく自室の床に体育座りして両膝を抱いて壁に持たれかかっていた。

 白い半袖にデニムの膝丈スカートを履いた幸一は窓に入る風で揺れるレースのカーテンを見てボーッとしていた。

 隣家の庭から聞こえる下山喜一とミドリの楽しげな声も幸一には雑音でしかなく、フラりと立ち上がった幸一は窓を静かに閉めると再び壁際に座った。

 パートの仕事に出かけた幸子の居ない家は静まり返っていた。

 幸一は疲れきってボーッとしていたが、一階で何かの物音にハッと目を覚ました。

 
 何だろう……


 フラリと立ち上がった幸一が一階へ様子を見に行こうとしてドアに近付いた瞬間、突然ドアが開いて誰かが部屋に押し入ってきた。

 幸一は部屋に入った侵入者を振り返りザマに見て思わず大声を出しそうになった。


「お前! 幸一に頼まれたのか!! 俺をからかえって! 可笑しいと思ったんだ! あんな暑い日に家中で俺の大好物の黒いパンティーストッキングなんか履いてよお! 俺のパンストフェチを知っててからかったんだろ!! おっと! 大声出してもいいぜ! 出して騒ぎになったら俺とお前が此間ここでしたことを全て世間にバラしてやる!! 柿崎のオバサンにも隣りの下山にもなあ! 酷い女だなあ! お前も幸一もよお! だが心配すんな! 俺は暴行魔じゃねえ、普通のマニアだ! お前をレイプしに来たんじゃねえーんだ。 此間の続きがしたくて来ただけ… だから安心さろってのも妙な言い方だが誘ったのはお前の方だ! ちやんとマッサージさせてもらおうか! その前にパンツでも貰おうか♪ あとで帰ってからゆっくり楽しむ土産だあ! さあ、ここで脱いで渡してもらおうか。 ちゃんと密閉出来る袋も持って来たんだ! 用意がいいだろ♪ さあ、どうする! 此間の続きをするか大声で叫んで恥をかくか、どっちでもいいぜ! 俺は!」

 幸一の幼馴染の加藤は部屋の中央で怯える幸一の前で低い声を出して脅した。

 
「本当に… 私を犯したりしない!? 本当に…!?」

 幸一は加藤の目を見て緊張しながら呟いた。


「犯す? 俺が? 幸一から聞いて知ってるだろう♪ 俺はそんな男じゃーない♪ 泣き叫ぶ女なんかで童貞を捨てられると思うか!? 俺は正統派のフェチなんだ、馬鹿にするな!」

 怯え口調で聞き返した幸一の前に居た加藤は笑みを浮かべながら喋ると学習机の前の椅子に腰掛けた。

 
 幸一は加藤の前に少し屈むとデニムのスカートの中に両手をいれ前夜から履いていた水色のパンティーを脱き始めた。

 加藤はそれを見てニヤニヤして密閉出来る袋の口を開けて幸一の目を見据え、受け取ると慌てて袋の中にいれ密閉した。


「さあ、次は上を脱いで貰おうか… 恥かしくないだろ♪ 此間、俺に味見されたんだからな! スカートも脱げ! そしてベッドに仰向けに寝ろ! タップリとお前の身体の匂いと味見をさせてもらうぜ♪ 泣き叫んでも無駄だしな、オバサンも仕事に出てこの家に居るのは俺たちだけだしな♪」

 幸一は込み上げる悔しさを喉の奥に止めて半袖シャツを脱ぐとスカートも脱ぎ捨てた。

 白いミニスリップの裾がフワリと舞うと、加藤はスリップの裾を見てゴクリと喉を鳴らした。

 そして幸一は目を血走らせるか問うの前でスリップを脱いで白い乳房をプリーンと揺らした。

 加藤は獣のような目で幸一の太ももと陰毛、そして乳房を凝視すると見詰められる恥かしさから幸一は右腕で乳房と左手で陰部を隠した。


 ゴクリ! キレイな身体してやがる…… 


 幸一の身体を見入る加藤は顎を動かして幸一をベッドに行かせると幸一をベッドに寝ろと命令した。

 その言葉に後退りするように幸一がベッドに仰向けに横たわると、加藤は再び声を低くして呟いた。


「心配すんな♪ 幼馴染の従姉妹を犯すような外道じゃねえよ♪ 身体の匂いと味見をさせて貰うだけだ♪ あとで洗いながせばいいだろ… レイプよりはマシだろ♪ はぁはぁはぁはぁ……」

 加藤は幸一が胸と陰部を隠しながらベッドに横になると直ぐにベッドに上がって、幸一の膝の辺りを跨いで怯える幸一の目を見て笑った。

 そして幸一が目を閉じた瞬間、突然加藤は幸一の左乳房に吸い付き右乳房を下から回し揉みした。

 幸一の乳房を揉む加藤の手は前回とは違って鷲掴みではなく、優しく優しく大切にするように揉みまわしていた。

 そんな加藤の揉み回す手に、目を閉じた幸一は心地よさを覚え、吸われる乳首から激しい快感(しげき)を覚えた。

 感じている幸一は両足をピタリとくっつけていたが無意識に少しずつ開いていることに気付かなかった。

 そして加藤はと言えば貪るような吸い方ではなく時間に余裕があるためか、愛撫と言ってもいいほど優しく優しく幸一の乳首を吸っていて、それが幸一にとっては逆に物足りなさを思わせたがそれが積み重なって行くと幸一は次第に喉の奥に溜めた喘ぎ声を漏らすようになっていった。

 加藤はそんな幸一(サチ)の官能する様相を見て笑うことなく入念さを俄かに出し続けた。

 ベットのシーツを両手てせ握り締めるサチは狂おしいほどに重々しい吐息を出し、加藤が乳首を舌で回し甘噛みする度に首を仰け反らせ行き場のない切なさに閉じた瞼の奥をヒクヒクと振るわせた。

 その加藤の両手はサチの腰に両手を這わせ滑りながらゆっくりと太ももへと下ると再び腰へと滑りながら戻って来る。

 そして乳首から外れた舌はサチの脇腹辺りを回りながら滑り、時折チュウチュウと音を出してサチの肌を味わい吸った。

 加藤の両手がシーツを掴むサチの両手を頭の方へと移動させ再び腰の辺りへ戻すと、加藤は優しくゆっくりとサチの二の腕を舐めながら脇の下の匂いを鼻で嗅いだ。

 甘酸っぱいサチの脇の下の匂いは鼻から入って加藤の脳裏を充満し、その加藤の舌が二の腕から脇の下に滑り到着すると、サチは耐え切れずに喉の奥に溜めきれない女の鳴き声を加藤に聞かせた。


「うんっ… ぅぅん! ぅあっ! あんっ!」


 加藤はサチの愛らしい声を聞いた瞬間、身体の内側に込み上げる獣のパワーを敢てグッと押し殺しながら、両手でサチの両腕を優しくベッドに押し付け脇の下と二の腕を舐めながら往復を繰り返した。

 するとサチは両腕を頭の上に、息を途切れさせ身体をビク付かせ両足の爪先をギュッと力任せに閉じた。

 鈍くて激しく重圧な官能はサチに力の逃げ場を失わせサチの耳と頬を桜貝色に染めた。

 サチはこの時、舐められる女の喜びを満喫し加藤は甘酸っぱい女の香りを堪能していた。

 そしてトロトロに溶け続けるサチを更に蕩けさせるように加藤のゆっくりした愛撫がサチの首から耳にウナジへと続き、仰向けのサチの身体は上半身を起こされ背中へと達した。

 加藤の舌はサチの背骨に沿うように滑るとサチの背中の筋肉が引き締まったり放たれたりと揺れが腰へと流れた。

 
「はああああぅ…… はああああああぅ……」


 虫の羽音ほどで泣き出しそうな声を奏でるサチはピクピクと加藤の舌に身体を揺らせ、両腕をダラリと下げグッタリと加藤に身を預けた。

 加藤はサチの甘い香りの漂う背中に執着し味わい続け、ズボンの中のトランクスを硬くなった肉棒の先、自らの愛液でグッショリと濡らした。

 そしてベッドの上で斜め座りするサチの両足が僅かに動く度にクチュッと恥かしい音が加藤の耳に伝わると、加藤はサチの前に身体を交わし両腕で抱き締めた後、サチの柔らかい唇に自らの唇を重ね唾液に塗れたザラつく男の舌をサチのネットリした舌に絡みつかせた。

 加藤との口中での唾液の交換はサチにとって無意識の中の出来事だった。

 そしてその加藤の舌がサチの唇から離れると、加藤はサチを仰向けにしサチの両太ももを下から支えるように持ち上げ、サチの恥かしい部分の前に顔を移動させた。

 正面に位置するサチの恥かしい部分を見た加藤の喉がゴクリと鳴ったが、チラリとサチの内モモに視線を移すと、加藤は再び喉をゴクッと鳴らして左内モモに口を大きく開いてムシャブリ付いた。

 柔らかいサチの内モモが加藤の大きく開いた口の中に女の柔らかさを伝えると、加藤は舌を少し強めに押し付け味わいながら舐め回した。

 優しく優しく何処までも優しくサチの肉肌の匂いと味を貪る加藤は目を閉じてサチの内モモに我が身が包まれている錯覚を楽しみ、少しずつ移動する加藤は両手でサチの左足を支えながらその舌を尻側へと移動させた。

 そして身体を仰向けに下半身だけを横にするサチの左尻は加藤の押し付けられた舌に女の匂いと味を削ぎ取られ、左右に広げれた尻の割目にヌメル唾液に塗れた加藤の舌が溝に沿って滑るとサチは滝壺に落ちた動物のように突然全身を揺らして暴れた。


「あひっ! あひっ! あひっ! あひっ! あひっ!」


 トロトロに蕩けグッタリしていたはずのサチは麻痺した両手足をそのままに身体をビクンビクンと大きく激しく跳ねさせた。

 そしてそれをしっかりと受け止める加藤の舌がサチの肛門に達した瞬間、サチは呼吸困難に陥ったように喉をグルグルと鳴らして全身を痙攣させて首を後に限界まで仰け反らせた。

 サチは女になって生まれて始めて男の腕の中でエクスタシーに突入しヌルヌルしたオビタダシイ量の愛液を自らの右内モモに流れさせた。

 それでも加藤のサチに対する味見に終わりはなかった。

 加藤はヒクヒクと全身を痙攣させるサチの身体を静かにベッドに仰向けにさせると、再び両手で支えるようにサチの両太ももを抱いて広げさせると、目の前でキラキラ光る愛液を滲ませるサチの陰部を左右に開き顔を前に突き出し、その匂いを嗅いだ。 

 そしてその舌を割目の内肉へと押し付けるとペロリと下から上へと舐め滑らせた。


「ぅあっ! あひっ!」


 開かれたサチの両足と腹の筋肉が一瞬ピンと張り詰め甲高い声が宙に舞い、咽返るような濃厚な女の塩気が加藤の顔に纏わりつく。

 そして加藤はその声に一瞬驚いて舌の動きを止めたが直ぐに押し付けた舌を上から下へ下から上へと滑らせると、サチの両足の爪先は開いたり閉じたりを繰り返しその度に両足と腹の筋肉がヒクヒクと激しく動いた。

 そんなサチの変化を気にしながらも加藤の舌はサチの割目、小陰唇の柔らかい生肉を舌先で開くと、その中にネチュッという音を立てて押入れた。

 ヌルヌルした無味無臭の愛液が加藤の舌にヌメリながら絡みつくと、加藤は舌を自らの口に仕舞い込みサチの愛液を飲み込み再びチュパチュパと音を立ててサチの愛液を舌で舐めとるように生肉にムシャブリつくと、瞼を閉じたサチの眉が中央に寄りむ微かな声が加藤に聞こえた。


「ぁぁぁあぁ… 来てえぇ… あぅぅぅぅ… お願い… わたしを… お… か… し… てぇ……」


 虫の羽音ほどの小さなサチの声は自分の中の獣を押え続けた加藤の表情を一瞬にして返させ、加藤はサチの声に突然、舌先を小陰唇の間に捩じ込むと激しく舌を動かしながら震える右手でスボンを降ろし精液に塗れたトランクスを降ろして床へ投げ付けた。


「あぅうううう! あぅううう! あぅうううう!」

 加藤から放たれる人間離れした呻き声はまるで数日ぶりに空腹を満たそうとする獣のように哀れなほど周囲の空気を揺さぶっていた。

 そしてサチから一旦離れた加藤は自らの口の周りに付着したサチの恥かしい汁と抜けて貼り付いた陰毛を右手の甲で拭いとると、両膝をサチの前にベッドを沈め精液と愛液に塗れた自らの肉棒を撓らせて見せた。

 
「はやく… はやく… は… や… く…」

 サチは精神異常者のように仰向けのまま腰を上下にガクガクと振り、加藤はそれを深呼吸して両目を見開いて見た瞬間、紫色に変色した亀頭を支える肉棒を腹の筋肉で上下させ揺れ動かすと腰で位置を定めてサチの小陰唇の間に捩じ込んだ。


 ズブリユウゥゥーー!!! ヌプヌプヌプ!


 加藤はサチのヌメル生肉の感触に顔を顰めて、サチの両腰を支えて腰をグイッと深く押し付けると、サチは首を後に限界まで仰け反らせ大きく息を吐き出した。

 太くて硬い肉棒がサチの割目の中にヌプヌプと中の空気を抜きながら入ると、サチの両手は加藤の背中に爪を食い込ませた。

 そして加藤の肉棒が根元まで入った瞬間、サチは首を仰け反らせたままピクリとも動かなくなった。

 静まり返ったベッドの上、加藤は肉棒をサチの奥に達せさせた事実が信じられないような表情を浮かべたまま、サチ同様にピクリとも動かなくなった。

 そして再び加藤の腕の中に居るサチから声が漏れると加藤は、ハッとした顔をして我に帰り突然勢い良くサチの奥まで入れた肉棒を抜き始めた。


「はひっ! はひっ! はひっ! あひーっ! あひーーいぃ!」

 突然勢い良く身体の中に入っていた加藤の硬い肉棒が抜かれた瞬間、サチは口を大きく開き両足をブルブルと大きく痙攣させ首を左右に振り回した。

 加藤が肉棒を引き抜いた瞬間、サチの中の生肉と加藤の肉棒が愛液を隔てて擦れあって信じられないほどの快感(しげき)をサチにもたらしサチは身体を屈ませて快楽に涙を流した。

 そしてそのサチの表情を見た加藤は戦々恐々としながらも再び引き抜いた肉棒をサチの中へ押し込んだ。


 ズブリウウウゥゥゥゥーーーー!!!


 サチは再び自分の中に入って来た肉棒に腰を仰け反らせ、仰け反らせた首は大きくベッドにめり込んだ。

 加藤が肉棒を押入れ引き抜くたびにサチは狂乱したようにヨガリ声を絶叫させ加藤の背中に爪を食い込ませ続けた。

 そしてサチの中に挿入した加藤の肉棒が前後する度にヌッチャクッチャヌッチャクッチャッと生肉の擦れる音がサチと加藤の間から漏れ続け数分後、加藤は雄叫びを上げ我慢出来ないとばかりにサチの中に粘りのある精液を撃ち放った。

 サチの身体の中に精液を放った加藤の背中はサチの食い込んだ爪からの出血と自らの汗で薄紅色にそまっていた。

 その後、加藤は肉棒の復活を待って再びサチの中に入ると射精のたびに漲る力を徐々に衰えさせていった。

 サチは感極まって加藤に自ら抱き付いて頬を胸板に埋め、加藤もまた童貞を受け入れてくれたサチを力強く抱き止めた。




【三十三話】



 
「何故だ! 何故なんだ! 何で複数の異性と性交渉したら急激に身体が老化するんだ!! 解からない!! どうしてもそこが解けない!!」

 自宅自室を研究施設に変えた安藤は机を前に両手で頭を覆って悩んでいた。

 傍には同じ老化現象を辿った元看護師の三人がいて苦しむ安藤を横目に半ば絶望の縁にいた。

 そして三人の元看護師たちは古川女医に言われた言葉を思い出していた。


『本物の女性なら! 誰彼構わずに身体(みさお)を提供なんてしたりはしないわ!! 貴方達は女なんかじゃない! 頭は完全に男だわ!! 貴方達は誰かに抱かれたかっただけでしょう!! なのに心は女だと自分を偽って性転換をした…… だから罰が当たったのよ! 女性を愚弄するにも程があるわ!!』

 三人の元看護師たちの脳裏から今も離れない古川女医の言葉に心を見抜かれた思いがしていた。

 
 古川にサジを投げられた安藤は自分で三人の元看護師たちを探し出し、愛液(サンプル)を提供させようと思ったものの時既に遅かったようだ。

 そして元看護師たちがアヤ経由で下山喜一が元の男に戻れたと聞かされた時、安藤は絶望のどん底に立たされた。

 世の中に最初で最後の奇跡を持つ喜一(おんな)が消滅したことは、サンプルを失った安藤たちに強い追い討ちをかけた。

 そして三人の元看護師や安藤と性交渉を持ち性転換を余技なくされた男達は突きつけられた現実に苦悩する者とそれを受け入れる者に別れ、受け入れた者は女としてインフルエンザのように知らず知らずのうちに世間に蔓延させた。

 突然高熱の末に性転換し現実を受け入れられない者たちは、ひっそりと社会から離脱し病気治療を模索し始めていたが、柿崎幸一同様に何処の医療機関に出向いても鼻で笑われるだけだったようだ。

 こうして新薬開発から世間に蔓延した喜一細胞は推定で日本各地に数千人規模にまで増え続けたが、当の本人は蘇った新しい身体に御満悦で、股間にブラ下がった巨根をミドリとの新鮮な夫婦の営みに使う毎日を過ごしていた。

 
「ヌッポッ! ヌポヌポヌポ…… ムリュムリュムリュ……」

 喜一の太さ八センチ長さ三十センチはあろうとかと言う巨根はミドリの小陰唇を目一杯押し広げヌメル愛液の量を増量させた。

 その巨根が入るとミドリは白目をむいて両手足を一瞬震わせてからピタリと動きを止めた。

 そして喜一はミドリの内肉にミドリの処女の頃の締め付け感をヒシヒシと肉棒の表面で感じた。

 
「はぁはぁはぁはぁ… アタシ… アタシもう! イッちゃう!! もうイキそうよ!」

 呼吸を整えながらも鼻を膨らむませ息も絶え絶えのミドリは数センチ挿っただけの巨根に両手を伸ばして喜一の両手に繋がろうとしたが途中でその手でベッドシーツを鷲掴みした。

 そんなミドリを上から見下ろす喜一は口元を緩め腰を少し押し付ける度にミドリの生肉との一体感に満足の笑みを浮かべガーターストッキングに包まれた両太ももを下から抱きかかえた。

 黒い吊り紐が弛んで持ち上げられた太ももから少しだけ黒いストッキングがズリ落ち、乳房を包むバストニッパーの肩紐が緩みを見せた。

 
「ヌプッ! ヌプッ! ヌプヌプヌプ!」

 喜一の巨根が入る度にミドリの肉穴から空気の抜ける音と肉と肉とが擦れあって泡立ち跳ねる愛液の音が二人の間に弾けた。

 
「あああああ… もう、もう無理… 入らない!」

 巨根が半分入った辺りでミドリは首を左右に振って閉じた瞼を開こうとしながらも開けずに悶えるように小声を発した。

 すると喜一は声を押し殺しミドリの両太ももから手を滑らせ尻へ移動させるとクイッと持ち上げ更に巨根を奥へと挿入した。

 
「あああうっ! もう… もう! 駄目えぇー! お願い! 許してえぇ! そこで堪忍してえぇ!」

 ミドリの哀願するような困惑する顔を見た喜一は上半身を前側にグイッと倒すと、バストニッパーに包まれた乳房の真ん中、コリコリと勃起した乳首に吸いついて数回、乳首を甘噛みした。

 狂おしいほどに表情を変えたミドリは首を急がしく左右に振り喜一の背中に伸ばした両手の爪を食い込ませた。

 
「チュッパチュッパコリコリコリコリ… チュゥチュゥチュウコリコリコリコリ……」

 ミドリに挿れた巨根を微動だにせず乳首を攻める喜一は、いつ腰を動かそうか心待ちにして乳首を攻められるミドリの反応を楽しんでいたが、女から男へ一度性転換を果たしたことのあるミドリの身体からは余分な脂肪も残っていた妊娠線も全て消え去り、理想の熟女に変貌を遂げたことで喜一のミドリに対する愛は一層の深みを増していた。

 
 喜一はミドリとの性交渉を重ねる度に若返る身体に自信をみなぎらせ、まるで熟女を抱く青年のようにミドリから溢れる魅力にのめり込んだ。

 巨根伝いに溢れ出るミドリのヌメル愛液を親指に絡め取ってその指で勃起したミドリのクリトリスを回しながら勃起した乳首を舌と唇で攻め続ければ、腰を動かさずともミドリはエクスタシーに達し可愛らしい熟女の鳴き声を喜一に聞かせる。

 生まれ変わってから一度も腰を振ったことのない喜一にとって毎回のごとく、いつ振ってやろうか、今、振ろうかと言う自らの心を弄ぶ楽しみもまた余裕のある身体であればこその新しい官能だったが、ミドリにしてもそれは同じでいつ腰を前後されるんだろう、今されるのか後でされるのかと言う不安と期待が常に付き纏いそれがミドリを最大限に興奮させた。


 そして今日もまた昼間だというのに下山家の寝室では喜一の腕の中で荒縄緊博されたミドリが不安と期待に熟した身体を官能させていたが、その頃、安藤は〇〇製薬臨床試験病棟の廃棄処理施設から初期の頃の喜一細胞を入手し自宅へと持ち帰っていた。



「これさえあれば俺は男になれる…… コイツらにこれを注入して男に性転換させた後で俺と性交渉すれば今度こそ俺は本物の男の身体を手にいれられる……」

 心の中で俄かに歓喜する安藤は自宅の客間で酒を飲んで熟睡する老婆のように変わり果てた姿の元看護師の三人をドアの隙間からソッと眺めてニヤリと笑った。

 顔中にシミのある自分を手鏡で見詰めた安藤は、おとぎ話の魔法使いの老婆のような顔して口元を両手で覆い肩で笑った。

 三人の元看護師たちは悪意をもって近付く安藤の気配を知る由もなく即効性のある麻酔を一人、また一人と注射された。

 
「シイィーッ! 一人分しかない貴重なサンプルを入手した… お前だけ特別にもとの姿に戻してやろう……」

 元看護師は耳元で呟く安藤を疑うことをせずに、眠い目をこすりながら客間から研究部屋へと移動し、用意された診察台の上にその身を置いた。

 全裸になって老婆のような姿を安藤の前に晒した元看護師は安藤に言われる通り両足を大きく開いて、割目を自らの両手で開いて生肉を安藤に見せると、安藤は震える手でサンプルを指に付けて小陰唇の間に回しながら中指を根元まで入れた。

 
「よしよし… これでいい…… あとは時間を待てばいい…… お前はここで眠るといい……」

 安藤は毛布をかけた元看護師を安心させ眠らせると熟睡したのを確認してから、元看護師の両手をロープで縛り診察台に固定した。


「後はコイツが性転換したらコイツのペニスを俺の中に入れさえすればいい……」

 安藤は何も気付かずに熟睡する元看護師を凝視すると再び笑みを浮かべて診察台の横の椅子に腰掛リクライニングして仮眠に入った。

 そして数時間後、安藤は高熱にうなされる元看護師の様子を椅子から覗って不適に笑みを顔全体に広げると客間で眠っている二人を後手に縛り上げそのまま戻って来た。

 
「性転換が始まったようだな……」

 高熱にうなされる元看護師の顔を見た安藤は毛布をはぐると身体の変化をビデオ撮影しはじめた。

 元々が男で外科的性転換を施し初期の頃の新薬を用いていた元看護師から、女になった喜一とのレズ的な性交渉で完全な女に性転換を果たしたことを聞かされた安藤は、女に性転換した直後の喜一細胞を老化した元看護師に投与すれば何らかのアクションを起こすはずと考えてのことだった。

 元看護師が、元が男なら男に戻っても可笑しくはないと考えた安藤は最早医者ではなく当てずっぽうのギャンブラーになっていて正常な判断はつくはずもなかった。

 そしてビデオを回し続け朝を迎える頃、知らず知らずに眠っていた安藤は診察台の上に緊博した元看護師を見て、大粒の涙をポロホロと床に落として静かに歓喜を果たした。

 診察台の上にいた老婆のような元看護師は安藤の知らない顔した若くて筋肉質な男に性転換を果たしていた。

 これならばと、安藤は診察台の上にのぼるや否や、男の両足を広げさせピンク色したペニスにムシャブリ付いた。

 すると男は眠りながらも安藤の舌使いに敏感にペニスを肉棒化させたところで安藤は自らの年老いた割目に自らの唾液を塗りつけ、何も知らない男の肉棒を穴の中に挿入し身体を上下させた。

 安藤は硬い肉棒と擦れる自分の穴肉に喘ぎ声を込み上げさせながらも必死に歯を食いしばって物静かに男が愛液を出し射精するのを待った。

 年老いた安藤の身体はギクシャクさせながらも一心不乱に身体を上下させ、その様相はまるで若い男からエキスを摂取しようとする恐ろしい化け物のようだった。

 そして診察台の若者が愛液を溢れさせ安藤の中に射精を果たした頃には、安藤は身体中から大汗が噴出し男の肉棒が入ったまま診察台に尻餅を付くようにドスンと座り込んでしまった。

 ハァハァゼィゼィと老婆特有の息苦しい吐息に若者は薄っすらと目を覚まし首を左右に振って辺りを確認し出した瞬間、若者は真横の薬品類の入った薬品庫のガラスに映った自分の姿を見て仰天し絶叫した。

 その大声に仰天して診察台から落ちた安藤は気を失い、女の元看護師は男になっていることに気付いて再び気を失った。

 

「頼む! 精子を! 精液をくれ! この通りだ!!」

 悲願叶って男になれた安藤は年老いた身体を引き摺って下山家を尋ね床に頭をこすり付けて土下座して喜一に頼み込んでいた。

 実年齢と大きな差を生んだ安藤はどう見ても六十代半ばの様相でペニスは刺激を感じるものの勃起することもなく老いた身体だった。

 そんな安藤は男への性転換を果たしたが男性器の下に小陰唇と穴を備えた二なりであった。

 
「アンタの精液で僕はマトモになれるかも知れない! 頼む! 精液をくれ!!」

 知り合いとは言え老いた男にペニスをシャブられることに難色を示す喜一は困惑してミドリを見詰めた。

 すると安藤は喜一とミドリの顔を見回した。

 
「直接じゃなくてもいいんだ! 容器に! 容器に出してくれればそれでいい!!」

 喜一は安藤の言葉にホッと胸を撫で下ろした喜一はミドリを連れて寝室へ移動すると、ベッドに仰向けに寝ると顔の上にミドリを跨がせた。

 黒いガーターストッキンクに包まれたミドリの熟した太ももの間、黒いレースのスキャンティーに顔を埋め勢いよく匂いを嗅ぐ喜一は脱いだ下半身(ペニス)を勃起させ肉棒化させた。

 それをソッとドアを開けて中を覗き見した安藤はその巨根に驚いて息を飲んだ。

 
「凄い! あの奥さんはあんな物を挿れられて平気なのかあ!!」

 痛々しいピンク色の大きな亀頭を支える肉棒の太さを見た安藤はゴクリと喉を鳴らし、自分もあんな逞しい物をと心の中で願った。

 そして見られていることを知らない喜一はスキャンティーをずらしてミドリの生肉を舌先で味見すると更に巨根は一回りググッと大きくなった。

 喜一はビックになった肉棒を完全に握りきれないまま、シュッシユッと上下させ扱き始めた。

 両膝を折って喜一の顔に跨るミドリは四つん這いの体性を維持しながら喜一に恥かしい匂いと味を捧げ続けると、やがて喜一に変化が始まり用意していた洗面器に下半身を向けた喜一はオビタダシイ量の精液を放出した。

 その馬のような量の多さに安藤は目を丸くして腰を抜かして仰天した。

 
 洗面器にタプタプと揺れる白い液体は部屋の中に栗の花のような匂いを充満させ、射精を終えた喜一は洗面器を見て赤面した。

 そしてミドリもまた洗面器の中で揺れる濃厚な白い液体を見てゴクリと喉を鳴らしながら頬を紅色に染めた。

 安藤は全てを見ていたが何食わぬ顔で静かにドアを閉め居間の床に立って二人を待って居た。

 
「あれだけあればサンプルには事欠かない…… もしかしたら元看護師(アイツラ)も救えるかも知れない……」

 喜一は赤面しながらタプタプと揺れる精液の入った洗面器を両手で顔を顰めて安藤のところへ持ってくると、安藤は車へ容器を取りに行って戻って来ると両手に一リットルの牛乳パックが持たれていた。

 そしてミドリは寝室のベッドの上で喜一に舐められグッショリと濡れた割目を拭いて、恥かしそうに後から居間へと出て来た。

 
「安藤さん! これで終りにしてくれ。 もうここへは来ないで欲しい。 こんな恥かしい思いをするのも嫌なんだ。」

 喜一は毅然として安藤を見詰めると安藤は一度大きく頷いてから牛乳容器に精液を入れ替えて下山家を去って行った。

 安藤は帰り道の車の中で元看護師たちも助けてやろうと思っていた。

 



【三十四話】




「なんだああ!! こりゃあああ!!」

 処女だったサチに童貞を捧げた加藤は自宅の二階の自室のベッドの上で目を只ならぬモノに全身をガチガチと、まるで背中に大きな氷でも背負っているかのように震えていた。

 夏風邪でも引いたのかと思った前夜、熱を出し寒さに上下の寝巻きを着て寝た加藤だったが、汗だくで目を覚まし気持ち悪いとばかりに寝巻きの上を脱いだ瞬間、加藤の目に飛び込んで来たのは紛れもない立派な乳房だった。

 ピンク色の未使用の乳首が二つ並び震える加藤に合わせるようにプルプルと揺れその柔らかさを視線に伝えた。

 そして恐る恐る脱いだ汗だくの寝巻きズボンの下、マサカとトランクスを脱いだ加藤の目に本来あるべきモノが無い状態が脳裏を真白にさせた。

 眼科の下から香るサチの陰部にも似た女の匂いが漂い、陰毛の下側に何やら窪みのような筋を見た瞬間、加藤は真っ青になって両足を恐々と開いた。

 
「……………」

 ベッドの上で両足を開いた加藤は抜け落ちているスネ毛に息を飲んで陰毛の中に見える縦筋の行方をした方向へと目で追った。

 そして、震える右手から中指を伸ばすと割目の中心部にソッと押し付け右側へ捲るに開いて見た。


 クチュッ……


 今まで肌に感じたことのない肉音が微かに耳へと聞こえてきた。

 口を半開きにし瞬きをも忘れた加藤は開いた内側のピンク色した生肉を見た瞬間、両手で頭を押えてガチガチと振るえてそのままベッドに後ろ向きに倒れた。

 
「そんな馬鹿な… これは夢だ! 夢に違いない……」

 加藤は押えた頭を更に抱え込むようにしてベッドに仰向けにうずくまると、これは夢だと何度も自分に言い聞かせ怯えた。

 そしてそのまま寝入ってしまった加藤が再び目を覚ますと時間は既に十時を回っていた。


「やべええぇー! サチと約束してたんだ!!」

 サチとの約束を思い出した加藤は慌てて布団から飛び起きると裸のまま床にたった。

 その瞬間!


 プルルルルルルーーン♪ プリプリプリーーン♪


 全身がプリンかゼリーのように震え朝方に見た豊満な乳房が上下左右斜めに大きく揺れ自分の様子を見た瞬間、呆然とした。

 加藤は声も出せない程に放心し呆然と立ち尽くして乳房の揺れが止まるのをジーッと見入っていた。

 
「誰だ… これ…? この声は誰だ?」

 学習机の上に置いてあった鏡に映った美しい裸の女性に加藤はゴクリと息を飲んで石地蔵のように固まった。

 加藤は無言のまま腰を振った。

 すると鏡の中の裸の女性の太ももがプリンと数回揺れ、更に上半身を左右に二度振ると豊満な乳房が複数回無造作に大きく揺れた。

 
「ゴクリッ…」

 そして腰を屈めるように自分の顔を鏡の中に探すと、見たことも無い呆然とする美人女性の顔がソコにあった。

 そして加藤は声の出ていない絶叫をすると頭から布団を被ってベッドの中に逃げ込んだ。

 ガチガチガチと布団の中で震える加藤は再びコレは夢だと自分に言い聞かせ唱え続けた。

 だがサチと会う約束を再び思い出した加藤は布団から頭だけ出すと手を伸ばして携帯電話を布団の中に引き込んだ。

 
「ゴホゴホゴホッ! 悪い、風邪引いたみたいだからゴホゴホゴホッ! 今日は行けないからゴホゴホゴホ!」

 加藤は自分ではない声を気にしながら咳で誤魔化してサチに連絡を取り用件だけ伝えて電話を切った。

 そして再び布団から顔を出した加藤はカレンダーを見て少しだけホッとした。

 それは父親の実家へ墓参りに行っている両親が戻るまで数日間あってその間は一人きりだったからだった。

 
「これは何かの間違いだ! じゃなきゃこんなこと有り得ない! 待てよ… もしかしたらサチ見たいな美人に童貞を捨てられたもんだから、俺の脳がチョイとおかしくなってて、俺にだけ女に見えているんじゃないだろうな……」

 加藤は取敢えず自分だけがおかしくなったのではと自分に言い聞かせると、何度も頷いてベッドから出ると再び鏡の前に立って身体を揺らしてみた。

 それでも見間違いない美人のお姉さんの裸体を見た加藤は、ヨシ! それならばと裸のまま上下のスウェットに身を包み自宅を出ると、街中を少し歩いて親戚が経営するコンビニへと出かけた。

 親戚なら自分が誰なのか見間違うはずもないと考えた加藤は意気揚々と足を進めた。

 ところがコンビニでは……


「いらっしゃいませ~♪」

 加藤はレジで自分に声をかけたバイト中の従姉妹に他人顔され驚いたが、別の客と一緒に入ったからだと自分を落ち着かせた。

 だが加藤が店内をウロウロしているにも関らず相変わらず従姉妹は声すらかけては来なかった。

 そこで加藤はヨシそれならばと、本の陳列棚の横にあるストッキングのコーナーへ行くとチラチラとレジの従姉妹を見ながら、ライトブラウンの二枚組みLLを一つと、白いレースのショーツを手に取りレジへと移動した。


「二点のお買い上げですね♪ ありがとうございます♪ この辺の方ですか?」

 加藤は従姉妹の対応にギョッとして従姉妹の顔をマジマジと見入ってしまったが、従姉妹は他人にたいする接客態度を変えなかった。

 
「コイツ、俺だと気付いてない……」

 加藤は突然顔色を変え清算と同時に店を出た。

 するとソコに何処かへ行って来たような叔父が現れたが、加藤に気付かず軽く会釈して店に入ってしまった。

 加藤はガックリと肩を落として自宅へ戻ると逃げるように二階の自室へと駆け上がった。

 
「なぜだ! 何でみんなは俺だと気付かないんだ! 畜生! こんなんじゃサチにも会えないじゃないか!!」

 慌てて窓にカーテンをかけ一階の台所から持って来たジュースを一気飲みした加藤は学習机の前に座り、自分の顔を見て愕然とした。

 そしてスウェットの上を脱ぐと豊満な乳房をそのままにベッドにドカッと腰を降ろして、乳房を両手で下から支えた。

 質感のあるCカップ程の白い乳房を両手に持った加藤は、唇を噛んだ。


「夢にしろ何にしろサチと出会う前ならイザ知らず、サチと恋仲になった今じゃ、こんなモノ何の役にも立ちゃしねぇ!」

 ユッサユッサと下から支えた乳房を揺すりながら加藤は愚痴るように揉み回した。

 
 あっはあああーーん……


 加藤は無意識に出した自分の声に仰天し顔を引き攣らせ、上半身を後退りさせた。

 今まで経験したことのない心地よさが加藤の上半身にモワ~ンと押し寄せた。

 すると加藤は目をキョロキョロさせ恐々と再び両手で下から支えるように両乳房を持ち上げサチの乳房を揉むように意識すると、揉まれた乳房から次々に重くて鈍い心地よさが上半身から下半身へ向けて広がって行き、加藤は余りのウットリ感にそのままベッドに仰向けに倒れてしまった。

 そしてベッドに仰向けで乳房を揉み回す加藤の指が無意識に乳首に触れた瞬間、加藤は脳天をつんざく激しい快感(でんげき)に震撼した。


 
 ビクウゥーーン!  はひぃ!


 
 加藤はその瞬間、白目を向いて失神しそうになり、恐怖の余り全身をブルブルと震わせ動けなくなってしまい、時計の音だけが加藤の耳に聞こえた。

 

「これが…… これが… 女の快感なのか…? これが女の喜びなのか…? そ・ん・な…… 凄げぇ……」

 ゆっくりとした口調を心の中に、虚ろな目をした加藤は息を押し殺して二つの中指の腹で乳首を左右から恐る恐る撫でると、勝手に身体が身悶えし仰け反るほどの快感(しげき)に驚愕した。

 加藤の乳首を弄る左右の指は少しずつその早さを増していった。

 そしてその中指は乳首ならず肩から脇腹へと滑り不造作に滑り回ると、肌から伝わるくすぐったさに紛れる深い重圧的な官能は加藤に限界まで身を捻らさせた。

 狂おしいほどの触手感と乳房からくるウットリ感、そして乳首から来る激しい快感の三つ巴に加藤は自分が男であることを忘れ夢中になって身悶えと仰け反りを繰り返した。

 そしていつしか加藤はスウェットの下をも無意識に脱ぎ捨て、大きく開いた両足の付け根の割目に右中指の腹を縦に滑らせていた。


 ビクンッ! ビクビクビクウゥンッ! 


 加藤は次から次へと押し寄せて来る未知の激しい快感に喘ぎ声を喉の奥に溜め悶え続けた。

 そして同時に加藤の耳に聞こえて来た半濁音と共に両足の爪先をギュッと力任せに閉じさせた。

 
 クチュッ! クッチュッ!


 中指を押し付けた気持ちいい場所から女の恥かしい音が静まり返った部屋の中に浸透すると加藤は何故か急に恥かしくなって赤面した。

 そしてそのヌルヌルのついた指で割目の上側にチョコンと固くなった豆を探り出すと指の腹を合わせてクリクリと回した。

 加藤は首を仰け反らせて両足の筋肉を硬直させ閉じた瞼をヒクヒクと振るわせた。

 
 クウウゥゥゥーー!


 左手の指で乳首を強弱付けて回しながら勃起した豆をヌルヌルした指で弄る加藤は全身の筋肉を固くして脳天に突き刺さる快感に時間を忘れた。

 乳房はプリンプリンと無造作に揺れ、動く度に尻の肉はゼリーのように柔らかさで弾力し、内モモはヒクヒクとコンニャクのように弾んだ。

 そして加藤は喉に溜めた喘ぎ声を溜めきれずに外に放出すると、首を左右に振って長い黒髪を乱れさせ、何かに追われるように巨大な渦の中に飲み込まれて行った。

 生まれて初めて女性のエクスタシーに入った加藤は割目の小さな穴からオビタダシイ量の小水を放って失神して全てを終えた。

 
 昼の二時過ぎ裸で寝ていた加藤が目を覚ますと辺りをキョロキョロ見回して不安げな表情を浮かべた。

 そしてベッドの上に自らの失禁の形跡を見た加藤は慌てて裸の自分を見回すと、夢中で買物袋から取り出したパンティーを躊躇(ちゅうちょ)せず履いた。

 そんな加藤は動く度にプルプル揺れる乳房を見て再び辺りをキョロキョロすると胸を覆い隠すスウェットの上を探し回った。

 誰も居ない自室で突如湧いて出た女性の羞恥心は加藤に無意識に肌を隠すよう命令し、一階の洗濯場に放り込んだ失禁跡のシーツを横目に加藤はスウェットの下に履いたパンティーラインを手でなぞっていた。

 

 ブラも何とかしなきゃ……

 

 加藤は自室のパソコンでネット検索しヌード寸法の測り方を見て頭に入れると、近所の衣料品店に行き事前に図った寸法のブラジャーを探し回った。

 アンダーとトップで探したブラジャーと替えのパンテイーを数枚買った加藤は、籠を手にスリップをも数枚買い求めた。

 ただこの時の加藤は男の目線ではなく知らず知らずのうちに普通の女のこの目線でモノを見ていたが本人は気付いてはいなかった。

 そして夏に合わせるようにデニムのミニスカートと、数枚のノースリーブにサンダルを買った加藤はストッキングの陳列棚へ向かった。

 加藤は買物をする自分の姿がアチコチに貼り付けられた大きな鏡に映ると何故か違和感無くその姿を受け入れた。

 衣料品店のトイレの中、買ったブラジャーを身に付けた瞬間、何かが加藤の中で弾け飛んだようだった。

 試着室で来たノースリーブと下半身を包んだデニムのミニスカートに何故かホッとした。

 そして足を止めた加藤が見入ったのは試しに化粧をする同年代の女性の姿だった。

 化粧をする女性を見る加藤の目は澄んでいた。

 
「御客さま、御客さまも如何ですか? 無料で実施していますから♪」

 声を掛けた店員を振り向いた加藤は弾き付けられるように化粧台の前に座るとジーッと鏡の前の自分を見詰めた。

 店員の声など加藤には聞こえてはいなかった。

 ただ変わっていく自分を見詰めていた。

 緊張からではない無表情の顔はやがて消え、そこには愛らしく微笑む女がいた。

 加藤はニッコリ微笑むと店員に言われるままに化粧品を買い求めた。

 買物袋には使い方の入ったCDが入れられていた。

 そして衣料品店を出た加藤は長身のモデルを思わせる井出達で擦れ違う男達からの熱い視線を手に入れ、女達からは溜息を奪い取った。

 何かが弾け何かが飛び散った加藤は最早、男ではなかった。

 



【三十五話】




「気持ち… いい……」

 自宅自室に戻った加藤は女になって初めてパンティーストッキングを履き着衣せずに床に立ち尽くした。

 両手を胸の辺りで折り曲げ俯いて目を閉じた加藤は何かに黙祷を捧げるようにただジッとして立ち尽くしていた。

 ブラジャーを着けただけの加藤の下半身をフイットして包んだライトブラウンのパンティーストッキングは窓から入る陽にしっとり感を見せ、それを加藤に伝えた。

 男だったころパンストフェチだったなどとは到底思えないほど女になった加藤は落ち着いていた。

 そして数分間の黙祷後、加藤はベッドに置いてあるデニムのミニスカートで下半身を包むと再びノースリーブを着衣すると、化粧したての自分(かお)を鏡の中に映した。

 
「どうしてだろう… 何故、違和感が無いんだろう……」

 パンストフェチの加藤は自らが履いたパンスト足を見ても不思議と嫌らしい気持ちになってはいなかった。

 以前なら街中を歩くOLを見ただけでパンスト足に頬擦りする自分を想像し、胸の内側をムラムラさせ下半身を硬くしていたはずだったのにと妙な感覚を覚えた。

 立ち上がって室内を歩き回るも違和感なく自然であって、女装子やオカマに見られがちな嫌らしいポーズしてニヤニヤすることも加藤には無かった。

 椅子に座って片足だけを前側に伸ばしてみる。

 長い黒髪を首を振って横へ移動させる。

 爪先をピンッと伸ばしストッキングと肌のフィット感をチェックする。

 左腕を机の上に肘たてし頬杖をつく。

 伸ばした右手の中指をソッと伸ばした右足の膝上に押し当て、スッと力を抜いて手前に滑らせる。

 無表情のまま…

 何も意図せず…

 無言のまま…

 
 瞼を閉じた加藤は重圧な暗闇に包まれ、過去の記憶を消されたような気がした。



 その頃、喜一の精液を持ち帰った安藤は…

 

「申し訳なかった… この通りだ!」

 床に土下座する安藤を前に鋭い視線で睨み付ける三人の元看護師たちは今にも殴りかからんばかりだった。

 ただ突然、男に替えられた女は大きな深呼吸と同時に肩の力を抜いて一歩、後に自ら引き下がった。


「私が間違ってたのかも知れない…… 私は女性に為りたかったのではなく、女性の美しさに憧れていただけかも知れない。 もしかしたらそれは私が男であるからかも知れない…… 男、故に美しい女性に憧れたのかも知れない。 私はこのままでいい。 少なくとも美男になれた。 私はこれでいいわ…… 安藤先生には感謝してる……」

 男に戻った元、女看護師の一人は小声で呟くと口元を固く閉じて無言になって土下座する安藤を抱え起こした。

 すると元看護師の二人は無言で深く俯くと身体から力を抜いて一歩後へ下がった。


「そうね… アコの言う通りだわ。 多分アタシも女なんかじゃない… 男、故に美しい女性(モノ)に憧れただけ…… 前に古川先生に言われたことが心の中から離れない……」

 後へ下がったミオは小声でアコに呟くと、左に居たユウも無言で頷いた。

 安藤は意味も解からぬまま取敢えず纏まった三人を見て一安心と胸を撫で下ろした。

 
「安藤先生にお願いがあります。 私たち二人も男に… 男に戻して頂けませんか。」

 ミオとユウは安藤に縋るように願いでると安藤は黙って頷いた。

 二つの診察台の仰向けになった二人に両足を開かせた安藤はアコに使った最後のサンプルの残りを二人の割目に塗りつけると一つ役目を負えた。


「これでいい。 後は安静にしていれば問題は解決する。」

 安藤はミオとユウを残してアコを連れて研究室を部屋を出ると大きな深呼吸をしてソファーにドッカリと座った。

 そして何かを思うように目を閉じるとそのまま黙り込んでしまった。

 アコはそんな安藤が酷く疲れていると、その場を静かに離れ客室へと立ち去った。



 女の美しさにに憧れただけか…… 僕のはそんなんじゃないんだ…… いくら能力があっても今の医学会は男優先の時代…… 女医は女医でしかないんだよ日本では…… 僕は君達とは違うんだよ……



 安藤は思い詰めた表情を心の奥にグッと沈めるとパッと目を開いて、喜一から提供された精液を書斎に持ち込んで部屋に鍵を掛け自らの二形の穴にスポイトで注入をした。

 すると突然、安藤は高熱を伴い激しい嘔吐を繰り返し椅子の上でモガキ苦しんだ。

 

 マズイ! 血圧が異常低下しちまった! くそ! 何で僕だけこんな…… ぅぐぐぐぐ!! 天罰かあ!! 僕は死ぬのかあ!!


 
 安藤は椅子の上で呼吸困難に陥り暫くすると突然、安藤の腹が大きくなり始めた。

 腹はドンドン大きくなってパンパンに腫れあがり安藤は数種類の危険な病名を思い浮かべたが成す術は無かった。

 そして巨大化した腹の所為で内臓を圧迫された安藤から突然、男性性器が身体の内側に取り込まれるように消滅し、安藤はこの世のモノとは思えないほどの地獄の苦痛を味わった。

 脂汗が額からドロドロとあふれ出し止め処なく流れ落ち椅子の背凭れを脂汗でベトベトに濡らし続けた。

 その激痛は三十分以上にも及んだが安藤は気を失うことなく耐え続け両手に握った爪は手の平に食い込んで流血するほどだった。

 そして更に数分すると今度は安藤から視力と聴力が奪われた。

 安藤は自らの医師としての診断と診察を頭の中で繰り返し続け、自分に起こっている現実を受け入れようと必死になっていた。



 死んで堪るかああ!! 僕は! 僕は! 僕は男として生まれ変わって彼女と! それに! それにいぃー!! 僕の研究成果を世界中を認めさせ! 救わねばならない人達が何万人もいるんだああ!! そのためにも僕は生きてやるぞおお!!



 安藤は誰にも明かすことのなかった心の中の思いを声にならない声で絶叫し続け地獄の苦しみに耐え続けていた。

 そしてその時だった! 突然、書斎のドアが外側から大きな音を立てて破られた。



「こんなことだと思ったわ! 何てことを! 何度無茶すれば気が済むのよおうう!! アナタって人は!!」

 破壊されたドアから入って来たのは紛れもない女医の古川だった。

 古川は安藤の奇怪な姿を見て一瞬取り乱したものの、直ぐに持参した診察道具とありったけの医療用品と薬品を男に戻ったアコに用意させると、奇怪に変貌する安藤の診察を始めた。

 古川は涙を耐え自らの頬を数回平手打ちして医師としての任を今、ここに負った。

 アコは看護師として古川の横に陣取り指示の元で的確に動き回った。

 
「古川(みつこ)! 僕はもう駄目だ! 助からない! 後のことは! あの論文を頼む! あれで世界中の人達を救ってくれ!! とうとうお前ともお別れだ! 許してくれ… 古川(みつこ)……」

 安藤は最後の力を振り絞るように駆けつけた古川を前に息を引き取った。


「駄目ええぇー!! 死ぬなんて私があーーー! 私が許さなーーーい!! 私を残して死ぬなんて絶対に許さなああーーーい!!」

 古川はありとあらゆる蘇生を試み、それは執念にも似た恐ろしいほどの気迫だった。

 アコはそんな古川を見て身体を震撼させた。

 
 数分後、安藤は帰らぬ人となりゼロを示す測定器の音だけが安藤の書斎になり響いていた。

 古川は張り詰めた緊張感のなか時計を見て死亡宣告を呟こうとしたその瞬間、看護師のアコが古川に安藤の腹が動いたと耳打ちした。


「そんな…」

 古川は看護師のアコの言葉を半信半疑で死んだ安藤の腹を触診して絶叫した。


「直ぐに! 直ぐに緊急オペの用意をして! そして記録を取って頂戴!」

 古川に言われたアコは執刀の用意をすると、直ぐに死んで間もない安藤の腹にメスを入れた。

 静まり返った書斎の中、死体とは言え安藤の腹を開く執刀が古川の手で行われた。

 古川の目は充血していて横で見ていた看護師のアコには古川が血の涙を流しているによう見えたと言う。

 そして突然、安藤の腹の中に入れた古川が何かを抱き上げた瞬間、書斎に有り得ない声が響き渡った。

 

 オギヤアァァーー!! オンギャー! オンギャー! ホンギャァァーーー!!



 古川は死んだ安藤の腹に宿った赤ん坊を拾い上げると目を血走らせて処置をし続けた結果、安藤の腹に入っていた赤ん坊は一命を取り止めた。

 僅か数時間先に精子を注入した安藤は、自らの腹に子を身籠りその子の命と引き替えに自分の命を落としてしまった。

 古川は目の前で起きている現実に、とうとう神の領域に足を踏み込んでしまったと全身の毛を逆立たせた。

 看護師のアコもまた目の前の現実に記録を取る手を止めペンを床に落としたことさえ気付かない衝撃を受けた。

 

 そしてそれから二日、古川は大勢の参列者のある安藤の葬式会場に幼子を連れて出席していた。

 その横に男性看護師のアコにミオとユウの三人が続いたが、古川女医が連れていた幼子は五才くらいの男の子だった。

 そして安藤の葬式が終る頃には幼子は小学六年生に擦り替わっていた。

 更に安藤家の墓前、古川女医と手を合わせている高校三年生の男子は、初七日を過ぎる頃には二十六歳ほどの成人男性に急成長を遂げ、四十九日の頃には古川女医より二つほど年上の安藤そのものになっていた。

 

「まさか自分の葬式に立ち会った上に四十九日も済ませるなんてなぁ~ 古川(おまえ)のお陰だよ美津子……」

 墓の前で喪服姿の古川の隣りに起つ安藤は顔も姿もそのままに、晴れやかな笑顔で古川美津子の肩を抱いた。

 
 そう… 安藤は死んではいなかった……


 喜一の精子で受精した安藤は自らの体内で自らを身籠り、臨月を向かえて生涯にピリオドを打ったが、その中に宿った赤子は駆けつけた恋人の古川美津子に帝王切開で救出された。

 そして恋人である古川に育てられた安藤は奇跡的に急成長を成し遂げ、記憶の全てを死んだ安藤から受け継ぎ元の年齢に達した。

 人間が神の領域に足を踏み込んだ時、奇跡は二人の前に命と言う尊さを見せ付けた。 

 その後、日本の医学会に安藤ありと世界に認められた二人のオシドリ医師夫婦は、次々に難病を完治へと導き世界中の人達を救い、世界保健機構(WHO)は誰でもが気軽に性転換出来るこれを、喜一細胞と名づけ協議の結果、これを永遠に封じた。

 更に下山家の隣家の柿崎幸一は性転換の真実を知り、病気として安藤夫婦医師による治療を進められ幸一は男に戻ったが、幸一との性交渉で女になった加藤はその後の調べで染色体異変が発覚し、女性への法的手続きを経て今は女性として国際的なモデルとして活躍している。

 

 そして下山家では自前で作った喜一細胞で今夜もまた………


【完結】

 

 

性転換【ⅩⅠ】

性転換【ⅩⅠ】

  • 小説
  • 長編
  • ミステリー
  • 成人向け
更新日
登録日
2012-12-11

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