数撃てど

雪水 雪技

数撃てど

瞑想の草原に

草原から返ってくる声
響く口笛が呼んでいる
昨日見た夢の花々
草木の匂いが
小瓶の中に
世界を創る

純真の目を開ける
心を開く時は
いつも一人

見せない世界が存在する
人の数だけ見えない世界
私は人の顔に映るものを見ない

私だけの草原に寝転んで
静かに、夢想して、息をする

無と有と焦燥

繋がるいつかの日に
うっかりのみこまれ
私は焦っていた

そこはもう存在しない
そのことを思うことは無い

ひっかかるいつかの日に
うっかりつかまって
私はうなされていた

確かに在るのは
自分の為の道
無かった道を
つくった今日

私は充足している

ウィークエンドは煙の中

壊れた月曜
崩れた火曜
メンテナンスの水曜日
騙した木曜
喪失の金曜
予想通りの土曜日
期待外れの日曜日

一週間が並んでいる
きちんとしている
だから気分が悪い

幸せを押し売り
不幸は二束三文

冷たいビールに
僕は騙されるものか

煽る言葉を背中に受けて
ベランダの外は煙草の雲

数撃てど

曇天、空砲の音、虚しく
戦慄、日々の暮らし、
君は黙ったまま
大量生産大量廃棄
流れるだけの言葉
受動的に幸せを語る

灰色、赤褐色、雷鳴
苛烈、進行方向、
無駄な事を言わない
必要なものしか
つくらない流儀
沈黙にも意味がある
能動的に口を閉ざす

無味の感慨

ホットケーキ
パンケーキ
やわらかくて
好かれている

頑なに生きて
分厚いケーキを
今日も泣きながら
口いっぱいに頬張る

誰にも許さない心は
甘いものだけが救う
大人になってみても
子供のままでいても
大体同じことで躓く

私の目の前に
揺れるパンケーキ
焼きたてホットケーキ

初回限定の気持ち

感動、衝撃、きらめき、
おおよそ初回特典
あの日の気持ちで
同じようにきけるのなら
同じようによめるのなら
人は慣れてしまうから
私も他人も残酷だ

つづく感情なんて無い
それを知っているから
本能に抗えないから
しがみついている

いつまでも同じ気持ちという幻想に

ただれてゆく色彩

猫と烏が同時に鳴く
世界中の夕焼けを集めて
この街はよく燃えていた

日が沈む
人々はつまらなそうな顔
アスファルトは濡れている

夕焼けを絶やすな
横断幕に書いて絶叫する人
怒鳴り返す人、無言の人波

今日が終わる
何事もなくとも
何事かあっても
人の顔色が混ざる夜

推奨されるものに流されるな

悲観を嫌うな
悲観に暮れて
そういう日が
人には必要で
痛みを知る為
頼まれずとも
辛い日々の中
何度も泣いた

優しさは結果論
誰かの為に生きる
それが動機だった頃
自己犠牲に酔っていた
好かれる為に擦り減った

同じことはもうしない
同じ動機はもう抱かない

厄祓い

大きな気配
荘厳の中にて
手を合わせて
太鼓の音は響く

あれやこれやが飛んでいき
ひとつひとつの作法に神経注ぎ
邪念は飛び、厄は見事に払われる

鈴の音を鳴らす
強い風が吹いて
意気揚々の帰り道

ああ、すっかり
晴れ晴れとしていた

ああ、すっかり
晴れ晴れとしていた

宇宙大吉

宇宙が大吉を叫んで
皆皆大喝采にて
火を焚いて
踊っている

雨は降る降る
雷鳴も飛んできて
何が何やら大騒ぎ

お神輿担いで
千客万来、猫がなく

白い蛇は脱皮をはじめて
今年一番の錦をかざる

お酒を注げ注げ
歌って笑って
八百万の大喝采
走ったもん勝ち
願いを放て

よみきかせのよる

おしまいの後を見ようと
ページの向こう側へ
あの子は行ってしまった

おしまいと聞いても
おしまいの後を追う

循環することも
同じでないことも
あの子は知っていたから

好奇心だけで生きている
誰もあの子を止められない

後日談を読み聞かせ
それでもあの子は眠らない

沈黙する画廊

誰もいない画廊に名前の無い絵画
聞いたこともない画家の名前が
水色の文字できざまれている

間もなくここは更地にされる
途端に人々は惜しみだして
これまでの不義理など
無かったかのように
無責任に嘆いている

絵画は額縁の外に
何も語ることは無い

寒空に潤った

北風は噛み付いて
喧嘩腰に物を言う
それを宥める豪雪
皆皆くちごもる

冷えた蜜柑
熟した林檎
果物は口を滑らかにする
よくよく喋る
しかし喋り過ぎる

寒天が茶の間で震えている
透明過ぎて近所の様子が見える
除雪車が走る音で寒天は崩れた
それを見て笑いながら食べる真冬に

停止の朝に

体内のブレーカーが落ちて
水槽の金魚たちは避難経路を通り
お堀の方まで泳いで逃げていった

私はひとり取り残されて
青白い天井を見上げている
浸水がはじまって呼吸は止まる

霊魂を切り離して
外へ出かけて行く
生き返る道を絶って
私の今日は浮かんでいた

隔絶の日の出

朝にはすでに
途方に暮れて
私の夕陽が
部屋の中で
燃えている

希望を燃やす為
薪を割っている
朝の空気は
熱意を奪う

あの列に入りたくはなくて
あの頃に戻りたくはなくて

順序よく何かをすることよりも
心のままに日々を燃焼していく

灰色の雲、白い煙
私の希望

正直な気持ち

僕はわからなくなる
分裂も統合も今の地点も
僕はわからなくなる
好きも嫌いもどうでもいいも
僕はわからなくなる
道を行くのか道無き道を行くのか

僕はわからなくなる
さっきまで明白だった事が
すぐに砂のように区別なく
ただ広がってどこまでも細くなって

僕はわからなくなる

幸福とは降伏か

音楽が鳴り止まない
人々は歩みを止めない

疲れ果てた日々の行軍に
倒れてしまおう
白旗を上げて
大手を振って
降参しよう

勝って勝って勝って
その後の苦しみを
吐くほどに味わう

進め進めと誰かが言う
誰の言うことも聞かず
自分の怠惰に従って
私の哀しみを眠らせて

フェイクが受肉する

世界の最果てに佇むブレーメン
みんなわからないまま
まことしやかに語る
語られることで
影は受肉して
人を脅かす

ヒヨドリが鳴いている
蛙は寝言をつぶやいて
冬の畑は賑やかだった

遠くの方から音楽隊が来る頃
皆は家へと帰っていく
誰も姿を見ることなく
ただ物語に躍る

漂流するミルク

夕陽が溶けたミルクティー
喉が焼けてしまうように
ほんの少し自棄になって
飲み干して
泣いている

窓の外から見えるのは
雪に反射する陽射し
店主にカーテンを閉めさせる
暗い店内に時計の音が響く

ティーカップの底から
橙の光が放たれて
僕の影は濃くなる
漂流者の夕暮れに

無知を知らない僕、袋小路

光はどこからでも入り込む
だからいつでも逃げている
みんなが遊んでいる時間に
僕は夕暮れの所為で泣いていた
何かを明かすかのように照らす
みんなはそれを優しさと言った
そう言う奴らは悲しみを知らない
幸せであることは罪ではないけれど
無知だと思って僕は心を再び閉ざす

数撃てど

数撃てど

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-01-13

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. 瞑想の草原に
  2. 無と有と焦燥
  3. ウィークエンドは煙の中
  4. 数撃てど
  5. 無味の感慨
  6. 初回限定の気持ち
  7. ただれてゆく色彩
  8. 推奨されるものに流されるな
  9. 厄祓い
  10. 宇宙大吉
  11. よみきかせのよる
  12. 沈黙する画廊
  13. 寒空に潤った
  14. 停止の朝に
  15. 隔絶の日の出
  16. 正直な気持ち
  17. 幸福とは降伏か
  18. フェイクが受肉する
  19. 漂流するミルク
  20. 無知を知らない僕、袋小路