非日常9

シュール

ピピニーデン。我がペット。
俺がコンビニのバイトを週4日を3ヶ月して買ったアメショ。
ずっと欲しかった愛猫。それがピピニーデン。

ピピニーデンは穢れをしらない無垢な赤ちゃんの姿で我が家に来た。
その透き通った水晶のような大きなおめめで、初めて見るものをぼんやりとながめては、首をかしげて不思議そうにしていた。そんなピピニーデン。
だんだんと我が家に慣れて、幼さ溢れる好奇心から壁をガリガリしたり、柱をガジガジして父に叱られるピピニーデン。テレビの裏に回り込みコードをガジガジして危うくな場面もあった。

ウチでは恐いモノ知らずのピピニーデン。あ、でも妹のこと怖がっていた。
妹が、ピピニーデンを机の上に乗せていじめる。猫なのに高いところが苦手。
それとか、ピピニーデンがリビングに設置されている猫マットのうえで丸まって寝ていたら、妹が来て足でピピニーデンを触る。いっつもマットの上の安眠を邪魔される。
あと、気道を塞がれるから妹の乱暴なだっこも嫌い。
全体的に妹が嫌いなピピニーデン。

俺とピピニーデンがリビングで戯れていると、ニホンオオカミがふらふらと現れた。
暖をとるためによくウチのデロンギヒーターのまわりに集まってくる野生動物の類いだ。
もちろん妹はそういった無害な動物にも意地悪をする。
ニホンオオカミを目撃した妹は、柔道の授業で習ったとおぼしい三角絞めをおもむろにニホンオオカミにかけはじめた。アムール虎を天に召した必勝パターン。

猟友会の人たちが駆けつけたときには、ニホンオオカミ(絶滅危惧種)は息絶えていた。対照的に妹は無傷。
生きた獲物を撃ち殺すことに飢えていた猟友会の人たちは、衝動をおさえきられずにピピニーデンに照準をあわせて引き金をひいた。10人以上の大人が子猫に弾丸の雨を降らせた。

…雨は冷たいけど濡れていたいの。思いでも涙も流すから。ララサンシャイ。

一命をとりとめたピピニーデンは、右手のサイコガンを携えて復習の旅に出ることにした。
「よう、子猫の時は可愛がってもらったな」
「お、お前は?」
「ピピニーデンさ」
銃声。

おしまい

非日常9

つづく

非日常9

動物モノ

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 冒険
  • SF
  • 青年向け
更新日
登録日
2012-12-11

Copyrighted
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