わたしたちの星
わたしたちのために、星は、いたみにたえる。かなしみをかくして、いかりをころす。わたしたちは胎児。星は永遠のゆりかご。安らかな眠りを妨げないように、あらゆるマイナス要素を吸収する。吸って、吐き出せないから、じつはすこしずつ腐りはじめている。それを理解しているのは、たぶん、こどもたちで、おとなになってからは、あんまり気にしなくなる。星そのものよりも、星のうえでの生活が、あわただしすぎて。たいせつなことをときどき、わすれてしまう。
ノエルが、朝露を小瓶にあつめていて、おいしいベーグル屋さんの近くにある花屋のおにいさんが、白い花だけの花束を抱えて、よく走っている。パンダの親子がやっているクレープ屋さんに、恋人が週三日で、チョコバナナクレープを買いに行くのを、わたしは、愛しいなぁと思っている。
真珠のイヤリングをもらった。
わたしのおとうとを育ててくれた、アルビノのくまに。
おとうとは、しんじつの愛をもとめて、いまは森で、どうぶつたちと暮らしている。牡鹿のアクロスに好きだといわれて、どうしようと悩みながらも、まんざらでもなさそうな様子が、かわいらしいのだ。
星はまだ、われわれをゆるしてくれている。
だからこちらも、敬意を払って生きよう。
だれよりもおおきな、アルビノのくまの言葉を思い出しながら、わたしは、チョコバナナクレープをしあわせそうにほおばる恋人をながめている。
わたしたちの星