わたしたちの星

 わたしたちのために、星は、いたみにたえる。かなしみをかくして、いかりをころす。わたしたちは胎児。星は永遠のゆりかご。安らかな眠りを妨げないように、あらゆるマイナス要素を吸収する。吸って、吐き出せないから、じつはすこしずつ腐りはじめている。それを理解しているのは、たぶん、こどもたちで、おとなになってからは、あんまり気にしなくなる。星そのものよりも、星のうえでの生活が、あわただしすぎて。たいせつなことをときどき、わすれてしまう。
 ノエルが、朝露を小瓶にあつめていて、おいしいベーグル屋さんの近くにある花屋のおにいさんが、白い花だけの花束を抱えて、よく走っている。パンダの親子がやっているクレープ屋さんに、恋人が週三日で、チョコバナナクレープを買いに行くのを、わたしは、愛しいなぁと思っている。
 真珠のイヤリングをもらった。
 わたしのおとうとを育ててくれた、アルビノのくまに。
 おとうとは、しんじつの愛をもとめて、いまは森で、どうぶつたちと暮らしている。牡鹿のアクロスに好きだといわれて、どうしようと悩みながらも、まんざらでもなさそうな様子が、かわいらしいのだ。

 星はまだ、われわれをゆるしてくれている。
 だからこちらも、敬意を払って生きよう。

 だれよりもおおきな、アルビノのくまの言葉を思い出しながら、わたしは、チョコバナナクレープをしあわせそうにほおばる恋人をながめている。

わたしたちの星

わたしたちの星

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-01-10

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