妖精國
「ここは妖精の國、嘘をつけなければ生きていけないのよ」と母は繰り返しながら死んでいった。眼に見えないものを見えているフリをしながら、なにも見えていないフリをするように、ここでは醜いものには美しいと言うのだ。
でもそんなのは嫌だ。わたしは母が死ぬ間際に雪に吐いた血の赤色がとても綺麗だと思ったので、そのように生きたいと思った。
ここに居てはいけないのだ。吹雪のなかを黙々と歩いて元の場所から遠ざかっていくと、いつしか迷いの森を彷徨っていた。
それからは変わらぬ日々が続いている。深い深い森の中で七人の木こりに拾われて、彼らの家で犯されながら、代わりにもらえる毒の林檎で飢えをしのぐ毎日です。
妖精國