老いる花

赫 カイリ

~今日で人類妖精友好協定から10年。友好記念公園で記念セレモニーが執り行われました。両種族の首相は今後のより一層の発展と友好関係を宣言しました。また、我々人類は今後の更なる友好の象徴としてモニュメントを贈りました。さて時刻はプチッ
「なあアペル。モニュメントってのはあのピンク色のダサいやつのことか?それともあの灰色の筒のことか?」
「ははっ。皮肉だが、後者だろうな。」
羽を震わせながら若い妖精のアペルとエペルは笑いあう。
「さて時間だ。行くか。」
2人は淡緑の水仙でできた扉を開けた。

部屋は淡緑と桃色で出来ていた。机も植物から出来ている。それにそぐわぬ緊迫した空気。
「お集まりありがとうございます。」
いかにも中年の妖精が話し始めた。
「本日はアペル君とエペル君が出した議題についてです。それでは後は2人、よろしく。」
アペルが立ち上がる。
「本日お集まりいただいたのは私達の森の北西の海岸に建てられた灰色の筒の対処についてです。」
どこからか笑い声が上がった。
「どうせあれも人間の…なんだっけ?ビア?"ビルです"あぁそうそうビルだろ。別にいつものことじゃないか。ねえ」
エペルも立ち上がる。
「いえ、あれはどうもいつもと違います。中からエネルギーが放出されています。いずれ我々にとっての脅威となりかねません。」
長老のシワだらけの口が動いた。
「エペル君。人間とは今日とも会っているんだよ。あれは悪い顔じゃないよ。私の経験がそういっている。ハッハッハッ。それにね、仲良くしようって宣言したばかりなんだよ。あれがなんだかはわからないけど…まぁ大丈夫だろう。そんなことより今日の晩餐会なんだが…」
「何が晩餐会だ!」
アペルは激昂した。
「明らかに今までとは違う!エネルギーが放出されたら我々は危ない!種の存続の危機だ!経験で物言ってる場合じゃないんだ!恥を知れ!」
「アペル。口を慎め。」
中年の妖精が主導権を取り返した。
「まぁ、今日はこんなところで。解散しよう。」
長老は会議を終わらせた。アペルとエペル以外は足早に会議室を去った。

アペルは黙り込んでしまった。
「まあ楽天主義の老いぼれなんてあんなもんだ。」

ある日唐突に地面が音を立て揺れ始めた。
エペルの建物にいた妖精達は羽で飛んでいながらも地が揺れることの恐怖を感じていた。

モニターが警報を鳴らした。
「アペル!時が来た!」
エペルが叫んだ。アペルが急いでモニターの前に立ち、あたかも待ち望んでいたかのように目を輝かせモニターを見た。
「この中は安全だよな。"あぁ"そうかそうか。ふふふふははは。」
「高笑いの模範だな。」
「それゃそうだろ。あの老いぼれどもは間違っていた!俺たちの話を聞かなかったその罪が今罰せられるんだ!」
「随分とねじ曲がったな。アペル。…とはいえ俺も笑いそうだが。」
2人で笑い合っていると、エペルを慕う小さな妖精が2人の元へやって来た。
「ねえねえこれから何が起こるの?」
「そうだね。あの筒からエネルギーが出て…ひどいことになるだろうね。」
「僕達は大丈夫?」
「もちろん。あの会議の日からずっと対策を練っていた。この建物は特にそうだ。ここにいな。ここが一番安全だ。」


ほどなくしてエペルの想像通り空に灰色の花が咲き、熱い産声をあげた。

開花から数年。アペルは建物から顔を出した。
焼け焦げた土地。そして渦巻くどす黒い感情。
「そろそろ出れる頃だろう。」
アペルは久しぶりに大空を羽ばたいた。
「ははは、はははは、はははははははは。ざまぁみろ!あの時俺たちの忠告さえ聞いてれば!」
「変わったね俺たち。」
いつの間にかエペルは並走していた。
「俺たちは自分の手で種の強制進化をしたんだ。自分で自分を救世主として選んだんだ!最高だ!」
「いつしか俺らもあの老いぼれどもと同じになるんだろうか。死んでもお断りだがな!人間はもうしばらくの間は俺らの自治区を邪魔しないだろうな。」


こうして2人は妖精達の英雄となった。
歴史を繰り返す可能性を孕みながらも。

老いる花

老いる花

妖精の森の北西に建てられた灰色の筒。 それは花瓶でもあった。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-01-08

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4