短篇小説~美咲恋の世界5作品一気に

美咲恋

セカンドラブ

「セカンドラブ」  

出逢い

芥川拓哉36歳はパチンコ屋の店員をやっている。仕事帰りに毎日セブンイレブンに立ち寄り雑誌を読みふけるのが時間潰し。目的はもうひとつあった。遅番の時は23時過ぎに立ち寄る。この時にレジをやってる彼女が目的だ。年齢は二十歳位。目がクリッとしてて可愛い感じの彼女。挨拶も元気がいい。熊本市の郊外にある。パチンコ屋から五分の場所にセブンイレブンはある。立ち寄るようになって3ヶ月。もう、感情を抑えるのが限界にきた。レジへ行くと。

芥川「拓哉宜しく」

レジに立ってる彼女はいきなりの言葉にびっくりしたが、顔は知っているし、パチンコ屋の店員だ。

「私。真美。21歳。血液型はB型で天秤座」

芥川「俺、O型の射手座。36歳独身。明日、休みなんだ、映画行かない」

勢いに乗ってしまった真美も。ハイと返事した。

芥川は、少し気分が舞い上がっていた。待ち合わせ場所も時間も教えずに店を出て車に乗った。愛車は、トヨタランドクルーザープラド。新車で買った。しめて300万ちょっと。次の瞬間。大きな音が店内に響き渡った。

コンクリートを転がすような音だ。芥川の乗った車は店の横の柱にぶつかっていた。

真美「大丈夫」

真美はドアを開けると。

真美「ハイ、ハンカチ」

これが。2人の出逢いであった。

令和元年8月。待ち合わせ場所 マクドナルド

真美「松本真美。熊本にある看護福祉大学三年」

拓哉「ゴジラパチンコ店 店員やって3年目。大江に住んでる」

2人は熊本市の新市街アーケードのマクドナルド

拓哉「昼マックでフィレオフィッシュ」

真美「今日は舞い上がってない」

拓哉「太宰府行こうか。ドライブ」

真美「いつも行ってるの」

拓哉「むしゃくしゃした時とか」

真美「なんで。太宰府」

拓哉「なんとなく」

真美「ずっと、パチンコ屋で働くの」

拓哉「大型トラックの運転手やる」

真美の提案で行き先は、長崎の西海橋。真美は、高速よりも国道を選んだのには理由があった。長い時間を過ごせるから。国道3号線を久留米へそして拓哉は助手席に乗ってる真美の手を握った。

拓哉「トラック野郎のラーメン屋があるから、行こう。麺はおかわり自由だし。スイカもある。ラーメン一杯400円」

真美「さすが、トラック野郎」

拓哉「なんで、西海橋」

真美「彼と別れた日に行った所」

拓哉はいけないことを聞いてしまった気がして黙った。

国道34号線を走行してると左手に佐賀競馬場が視界に入った。なんとも妙な気分になる。ハンドルを左に切るのはやめた。

真美「帰りは高速で。あの時と一緒」

拓哉はあの時の言葉に敏感に反応した。その意味を聞いてみた。

真美「彼と宝くじ買いにきたの」

彼という言葉に少しガックリきた。思い切って聞いてみた。

拓哉「なんで別れたの」

真美は黙り込んだ。西海橋に着くと。真美は涙の跡で真っ赤になってる。拓哉は少しやばいかなと思ったが、声をかけた。

拓哉「どうしたの」

真美「西海橋の思い出。橋の上を歩いてたの。もしも、私がシンデレラで靴をなくしたら、見つけに行くと質問したの、そしたら、絶対行くって。だから、私」

拓哉は、真美は何をその彼にしたのか理解に苦しんだ。

真美「片方の靴を海に投げたの」

拓哉はちょっと、この女性は危ない性格かと不安になり、次の言葉を聞いた。

真美「あっと言って、何も、アクション起こさなくて。少しガッカリして、これで終わりと思った」拓哉は、無言で、次の言葉を失った。

8月もやがて終わる。拓哉は気になる事がある。あの性格だ。誕生日に何かねだるかもしれない。拓哉は西海橋へのドライブ以降。彼女への連絡を絶った。熊本市花畑町。毎日会館ビル。5階にある。人材派遣会社の面接に拓哉は来ている。ドアを入るとムッとした熱気だ。いくら8月も終わりと言うのに、エアコンが入ってない。面接を待っている若者の手にはタオル。皆んな汗だくだく。スーツを、着てる奴もいる。拓哉はアルバイトにスーツ。今はこんな時代なのか。面接に来たのは、藤崎宮秋の例大祭の神輿担ぎのアルバイト。1000年以上の歴史を誇る藤崎八旛宮例大祭。神幸行列には70団体程、2万人近くが奉納・奉賛する熊本県で最大級の祭りだ。70余の奉納団体が各々揃いの衣装に身を包み、太鼓やラッパなどと共に「ドーカイ、ドーカイ!」と独特な掛け声をかけて踊りながら飾りを付けた馬を引いて町を練り歩く。去年。友達に誘われて小遣い稼ぎにと神輿を担いで今年もやりたくなった。本音は、この日が彼女の誕生日である。しかし、拓哉は知り合って2週間。使い捨ての彼女としか思ってなかった。が、新車でトヨタランドクルーザーを現金で買い。財布の中が、寂しい。もしかしたら、彼女を逃すのももったいない話だ。まだ、ドライブしただけの関係だ。日給一万二千円に、弁当と飲み放題。割りのいい単発の日払い労働だ。アルバイトの前日。拓哉は真美に電話した。

拓哉「明日は朝の4時から藤崎宮例大祭で神輿を担ぐから、誕生日にこれないけども、翌日に、寿司屋に連れて行くよ」

拓哉はアルバイトで神輿を担ぐとは言わないでいた。

拓哉は下通り街にある。笑う門と言う寿司屋に来ている。待ち合わせの時間になるが真美はやって来ない。拓哉は苛立ちが激しくなる。真美の携帯に電話する。真美の留守電から聞こえてきたメッセージは。

「お寿司、用意してくれたのは有難うございます。拓哉さんとは縁がなかったですね。さようなら」

拓哉は誕生日という、女性にとっては1番だと言う事がわかっていなかった。駐車場に戻ると、愛車プラドのドアに蹴りを入れる。打ち所が悪くて足の爪が割れる位の痛みを感じたのであった。考えてみれば、西海橋での真美の元カレと別れた原因からして、真美の性格を理解してなかった自分に腹が立った。帰りにセブンイレブンに立ち寄るが、店員に聞くと突然辞めたらしい。真美は福岡市に来ている。プロ野球。ソフトバンクホークスの試合だ。真美の頭の中には拓哉の存在はひとかけらも存在しない。通りすがりの男だった。真美は、ドラマの中の主人公に憧れている。

拓哉は親友の克浩とジョイフルで待ち合わせをしている。克浩は彼女を連れてきた。初めて見る顔だ。いきなり、克浩はびっくりする言葉を放つ。

克浩「奥さん。半年前に市役所で籍を入れた」

克浩とは昨日は、カラオケ行ったし、この半年間何度も酒を飲みに付き合ったが。結婚したとは聞いていない。問いただすと、知ってると思ったと。当然。式も挙げていないし、写真を撮っただけらしい。新婚旅行もなし。別に、指輪交換もしていないらしい。そして、またもやびっくりした。大卒だ。克浩は中卒でアルバイトで夜勤をやっている。奥さんもパートらしい。妙なカップルに度肝を抜いた。知り合ったのは、結婚相談所らしい。名前は由美。33歳。二週間が経ち。克浩から電話が鳴る。

克浩「親父が他界した。お通夜に来てくれ」

克浩の妹は3年前に癌で他界していた。その娘の、美香18歳。妹は、18歳で結婚している。拓也は、妹は可愛くて密かに恋心を抱いていたが、呟くことはなかった。その娘は似ていて、名前は、美久。拓哉の身体がビビッときた。

拓哉「おおきゅうなったね。覚えている」

拓也が克浩の家に遊びに行った時はまだ。小さかった。拓哉は親友の妹に何故。交際を申し込まなかったのだろうか。ひとり苦笑いをしたのであった。通夜から始まりお葬式と克浩は身内でもないのに、一週間も付き合わされた。美久は派遣社員で工場に勤めてる。独身だ。しかしまだ18歳だ。

今年も終わろうとしている。中国ではコロナウイルスが、不気味な様子だ。3年になる真美は、大学を中退しようと考えていた。福祉系に進むよりも、まだ、自分の可能性を信じたい。皆んなには内緒でNHKののど自慢に応募した。拓哉は克浩と奥さんとカラオケに来ている。克浩は歌が上手い。若い頃はジャニーズのオーディションを、受けたが、東京での最終オーディションに旅費がなく辞退した。友達の結婚式では必ずワンステージを披露する。奥さんの由美は。Kinkiのファンで。どうやら。克浩のカラオケに惚れたらしい。レパートリーは全てKinkiだ。

2020年を迎えて、克浩のお袋さんが倒れた。克浩は介護で働けなる。しかし、奥さんは、実家にいるらしい。ふたりは結婚して一年。ずっと別居をしている。田舎は虫がいるので来ないそうである。介護は全部克浩に押し付けた。二ヶ月が過ぎる。

克浩は拓哉を呼び出した。相談があるらしい。

克浩「奥さんは働かない。俺も、働けない。それに奥さんの様子が変だ」

拓哉は奥さんの性格などを聞くと。友達もいないらしく、仕事もあまり働いた経験がなさそうだ。拓哉は問い詰めるとびっくりした。克浩は奥さんの事を何も知らないらしい。拓哉は今時の女性かなと納得した。克浩は養子だ。何で。養子かも不思議だ?それに。この、夫婦の生活費は。母親の年金。奥さんも両親の世話になってる。おかしな関係だ。拓哉は。女性は怖いなとつくづく思う。何のために、結婚したのか、結婚という。その社会的な地位が欲しかったのだろう。奥さんは。真美はかなりの歌唱力がある。声の質は、西野カナといきものがたりをミックスした。大原櫻子似の質だ。親戚の叔父さんが、カラオケホールを経営している。カラオケホールとは、カラオケBOXとはちょっと違う。大半は高齢者が利用しているが。昼前にオープンして夕方まで営業している。集まった人達が順番で。お茶を飲みながら歌う。結構、喉には自信がある人が多い。それに。新曲を、披露する人も多い。叔父さんにお願いして。ワンマンステージを30分間、皆んなに披露する。のど自慢の選曲は、トリセツだ。ホールは大半は演歌の世界。拓哉もNHKのど自慢を企んでいる。3度目の予選出場だ。一度目は、3代目のラブソング。甘い。声の質は、今市隆二並みだが演歌も裏声で出せる。なんたって。カラオケでは、ビブラートを混ぜた、声が出る。最近のポップスにはビブラートはあまり影響はないが、演歌には必要なテクニック。二度目ののど自慢は、山内惠介のスポットライトを歌った。3度目は。AKB48の失恋ありがとう。

再会

土曜日。朝7時。のど自慢予選の日。開始は、11時だ。250組が歌う。真美の苗字は荻野。曲目のあいうえお順だから。14時辺りに出番だ。受付に行くと、バッチを記念にもらう。それに。大画面のテレビには。歌ってる姿が映し出される。真美は前列席に座る。のど自慢は観客の時から。予選の選考に入っている。とにかく。司会者は明るく、ポジティプにお願いしますと。くどいくらいに説明する。少し緊張してきた。真美はチャンピオンを狙っている。自信はある。トリセツを、歌うのはあまりいない。全応募数。1000組の中の250組に選ばれた。勝負は生演奏で、1分半。真美は。座席を離れて、ロビーで始まるまで待つ事にする。心臓もドキドキしてきた。周りを見ると、看板とかもって応援する人達。がウロウロしている。

真美「嘘」

合格して、番組当日の日曜日に応援はするものだと思っていた。失敗した。考えもつかなかった。気を取り直して。真美は歌唱力で勝負するのだ。チャンピオンの先には、プロと言う言葉が脳裏に浮かんでくる。最初にステージで歌うのは、曲目があのつく人から。

真美はひとりでやって来た。壇上に10人が登り。とにかく、歌っている人に向けて声援を送る。

芥川「100番芥川拓哉」それは、ゴジラパチンコ屋の店員。スカートを履いて、AKB48失恋ありがとうを歌い出した。意外にもダンスは上手い。拓哉はステージに上がると。お客の顔はハッキリとは見えない。歌い終わると。真美は声をかけた。拓哉は振り向く。そこへひとりの女性が拓哉へ近寄る。

美久「お疲れ」

真美と美久が、かちあった。

拓哉「真美さん。こちら美久さん。美久さんも予選に出場する。美久さんは。亡くなったお母さんのために、美空ひばりの川の流れに。さっき歌った」

3人は一緒に前列席で応援する事にする。

美久は真美に。拓哉との関係を話した。幼なじみだ。応援にやってきたのだ。そして。真美と拓哉に付き合ってるのと質問した。拓哉は。うなづいた。真美は何にも言わなかった。出逢った時から、拓也のペースにハマっている自分に苦笑いをする。

恋は一発逆転

恋は一発逆転

平成25年夏。藤原拓也24歳。北九州市小倉北区に位置する従業員100人程が働く製薬会社北九州支店。拓也は営業課に大学卒業後就職してから2年目になる。美咲早苗29歳。入社7年目の仕事はベテランである。初デートの約束にこぎつけた。拓也は、LINEでは、ズバッと言えたり話せるのに、直接会って話すと、ネタが浮かばないでいる。別れ際に今度は、8月の花火大会に行こうと約束?休憩所で会話して、ちょっと1時間ぐらい散歩して菖蒲を見て写真を撮ったデート。拓也は、LINEで、思い切って早苗に聞いてみた。

「恋人になって下さい」早苗「そんな気ないわよ、友達でしょ私を落としてみせる。おやすみなさい」

新日本三大夜景に選ばれ北九州だけでなく日本を代表する皿倉山。ケーブルカーもあり山頂まで簡単に登れ参道は手をつなぐチャンス。

「あの〜手を繋ぎませんか」

「いいわよ」

拓也は全身の力が抜けた。

「あの〜キスして」いいですかとは言えなかった。

「拓ちゃんどうしたの。汗一杯かいて、はい、ハンカチ」花火も打ち終わり拓也は時計を見ると午後10時を過ぎている。拓也は早苗の住んでる小倉へと車を走らせ足立公園に向かった。小倉の綺麗な夜景が見渡せる場所である。この日の夜は少し肌寒い感じで拓也は展望台で暫く夜の小倉を眺めている。その時、一瞬の隙を突いて拓也は、自分の着ている上着を脱いで、彼女に着せる瞬間、早苗が身体を寄せ合ってきた。瞬間に拓也は早苗の唇を盗んだ。それは、無数の星がいっぱい輝いて見える足立公園での出来事であった。

「本当は、その後に、ホッペをぶたれるかと思ったよ」それから数日が過ぎた。恋愛のマニュアル本を読むと、デート3回目にはやっちゃえとある。待ち合わせ場所は小倉駅だ。早苗はバスで来た。拓也は、ピンク映画を観に行こうかと、いきなり、早苗に問いただした。

「えっ」

早苗は嫌と言った。拓也は困った顔をしたと同時に、拓也はとんでも無い事を早苗さんに口走ってしまった事を一瞬後悔したがすぐさま気を取直した。

「星の王子様と私を観ようか」

「はい」

2人は映画館に入っていった。次の日会社へ出勤すると早苗は拓也に対して、ムスッとしている。拓也は軽々しい発言を悔やみ謝ろうと昼休みにLINEで呟いた。

拓也「失礼な言葉ごめんなさい」早苗「もうLINEしないで下さい」拓也「俺ね、早苗さんが理解出来ない、LINEしないで下さいってそれ近寄らないでという事」早苗「私は藤原さんが理解出来ませんけど」拓也「会社で話せるようになるまで、俺、会社休みます。それにもう辞める」

早苗「私はこの会社辞めませんよ。この会社が好きだから」 拓也「次の文句が打てないや」早苗「これで、お別れです、さようなら」

思い付きで、ポンポンLINEしてた拓也は、取り返しのない事態になってしまった。拓也「これで、きっぱり辞められます」

早苗「お疲れ様でした」暫くしてから拓也はまた打った。

拓也「このリスクは原子爆弾並みです」早苗「さようならしたはずですけど」

拓也「また最初からやり直そうかと」早苗「もう、会う事はないよ」

拓也「そうですか」早苗「私の携帯番号消して下さい」「藤原さんの携帯番号、電話する事ないので解除しました」

拓也「最後に、まだ、会社辞めてませんから、それと悪気はなかったです」

早苗「そうですか」「私との関係は無くなりました」

次の言葉に、拓也は、無意識の内に、綱を辿っていた。

早苗「もう、好き同士じゃなく友達に戻りました」

「お付き合いは、なかった事にして下さい」「早く退職届けを出したらどうですか」

「早苗さんじゃなくて、美咲と呼んで下さい」この言葉を最後に、拓也の携帯のLINEから、早苗が、ブロックしてきた。

早苗は一昨日の拓也との出来事を浮かべながら。ここは小倉ロイヤルホテルのフロアにいる。そこへ母が父と共にやって来た。2人は娘の門出を祝う時の様な満々とした笑みを浮かべている。一方の早苗は何か浮かぬ顔だ。三人は桜の間に案内される。その部屋には身長180センチ程の細身の身体の質素な雰囲気のする真面目な第一印象の男性38歳が座っている。これから2人のお見合いが始まる。縁談の話は二週間前から進められていた。早苗は拓也とのLINEでブロックしたのは、ちょっとした意地悪な気持ちになりやってしまった。本当は拓也とのデートは嬉しかった。昨日は何も連絡はしなかった。

拓也は小倉一のジュエリーショップに来ている。店員に70枚の札束を渡すと。手の中には、ハート型のティファニーのダイアモンドが今や今かと箱の中から出してくれと小さな声が拓也に囁いているようだ。店を出ると拓也の愛車の姿はない。昨日、突然の衝動で愛車を売り払い。お金に変えた。その足で小倉ロイヤルホテルに向かう。早苗がお見合いすると友達から聞いた。ブロックされた翌日。拓也の咄嗟に思いついた行動だ。

お見合いを終えた2人とお互いの両親はロイヤルホテルの待合室でタクシーを待っている。そこへ大きな叫び声が聞こえてきた。拓也だ。その手の中にはしっかりとティファニーのダイアモンドが握り締められている。

あれから3ヶ月が経ち2人はロイヤルホテルで近いの言葉を、そして早苗の左手の薬指に結婚指輪がはめられ2人の唇が重なり合った。

非正規労働者

「女子アナなつみ」

織田俊平。株式会社モンダ自動車工場での派遣契約が終わりその後の更新を打ち切られた。そして、正社員で働く女性にプロポーズしたが断られ北九州の土地を離れて東京へと行く決心をする。松田なつみは福岡県民放局の女性リポーターである。俗に言う女子アナである。彼女は東京へ異動になった。

福岡空港ロビー。出発の時間までなつみは喫茶店で時間を潰すことにする。4人掛けのテーブルにひとり座っている男性に声をかけ席を空けてもらった。なつみはジェイルービンの「村上春樹と私」と言う本を取り出した。彼はアメリカの日本文学翻訳家で村上春樹の翻訳もこなし芥川龍之介や夏目漱石の翻訳でも有名な存在である。目次に目をやりページをめくろうとするが集中出来ない。なつみは目の前の男性が気になるのだ。ちょっとイケメン風で流行の眼鏡らしきものを掛けているがメガネ量販店の大安売りで3千円のフレームかもしれない。髪型はサラッとした感触の雰囲気があり顔立ちはなつみの採点では80点の男だ。服装もそんなに高級ではない。昨日のテレビで身体にまとう服の値段が150万の男性より洒落たイメージである。なんとなく、ロールキャベツ男子。見た目は草食系で中身は肉食系だ。松田なつみはこの日のファッションはリクルートスーツだ。他人のファッションにああだこうだ言う資格はない。男性は窓の外をさっきから眺めている。それにしても、今の男性のイメージは疲れた雰囲気だ。すると男性が声を掛けてきた。「時間潰しですか」なつみは意外にも低音の声に内心ハッとした。男は言葉を続けた。

「どちらまで」

「ハイ、東京まで転勤です」

「キャリアウーマン」

「いえいえ女性キャスターです」

「あっ、福岡県民テレビの」

「知ってるのですか」

先程まで暗い感じの表情から急に活気のある表情に変わった。そして、ドスの効いた低い 声で失恋しちゃってと、気分が真っ逆さまに落ちるようなテンションでなつみは意外な雰囲気の男に興味を抱くのである。

「私は、こないだプローポーズを断ってきました」

2人は同時に大きな笑い声を飛ばした。

あいにく2人は別々の飛行機である。なつみは誘われる事もなく一期一会の出逢いだ。なつみは地方のキャスターではあるが割とファンもいる。それなりの女子アナの位置に存在する。しかしもう27歳。婚期が遅れている。プロポーズされたのは棒プロ野球選手であった。初めての出逢いで食事に誘われた。たしかにプロ野球選手としてはそれなりに活躍してる分類に入るだろう。野球選手じゃなくても社内にはそれなりの地位にいる人物もいる。仕事柄色々な人達に会う。しかし彼らにどうも魅力を感じないのだ。旅立つ前に親友の尼崎幸子33歳独身と居酒屋に行き。その件につきあれやこれやと疑問を先輩にぶつけてみた。

「何というかな、私の周りにいるそれなりに登りつめた人達は例えばプロ野球なら高校や大学、社会人になりドラフトされ高額な契約金をいただくがたしかにこれからが勝負かも知れないがその位置が頂点なのである。これからその頂点をいかに維持するかが仕事である。高学歴の男性が一流企業に入社する。この時が彼の頂点である。本来、女性は登りつめた男性には魅力を感じないのか何かしら炎を感じないのだ。もしかしたら古い時代に生まれた女性の本能に似た感覚であるとはわかってはいるが。そう恋愛ドラマや映画に憧れるのはたしかに登りつめた男性ではないこれからの男性が主人公である。幸子はこう言った。

「だから私達これまで婚期を延ばしたのね」

なつみは先程の男性が脳裏に浮かんだ。彼はどちらのタイプだろうか。カジュアルな服装に身を包んでいたが平日はネクタイしてバリバリのキャリア積んでて仕事している人なのか飛行機は羽田についた。

織田俊平は羽田空港に着く。時計を見るとお昼の13時。その足でモノレールを乗り継ぎ新橋へ山手線に乗り換え渋谷駅に。急にお腹が空いてきたので売店で求人誌を買ってトンカツ屋の店に入る。福岡にいた頃一度は食べてみたい定食屋である。求人誌を片手に渋谷で職探し。田舎者の行動である。俊平は30歳。まだ仕事を探すには適齢期だ。彼は久留米の工業高校を卒業して就職はせず人材派遣会社を転々としてきた。モンダ自動車工場には同級生も多数転がりこんでいる。正社員の同僚の女性に派遣の契約が切れた翌日にプロポーズしたが彼女には風来坊は結婚相手には論外の存在だったのだ。

財布の中には五万円が入っている。銀行の通帳残高には三百万。まずは就職先を決めてから住居を探す事にする。当分の生活費はあるが早く就職しないと貯金も底をついてしまう。とりあえずアルバイトでも探すかと求人誌をめくる。飛び込んできたのはやはり製造業である。しかし工場は東京の中心から離れた郊外にある。俊平は埼玉県の所沢市に向かう。

なつみはフジテレビに向かった。なつみの担当プロデューサー上尾勝45歳。なつみは上尾のスケベそうな顔に内心ハッとした。空港の待ち合わせで出逢った男性とは対照的で高音の声を出し???ちゃんと呼んでくる。 しかし女子アナに強いプロデューサーである。なつみのモットーは運と縁を大事にする事。そして恋愛は気にある相手は好きになってしまう、なつみの脳裏に朝の男性の姿があるが俊平は大学も出てないし派遣の身で現在職を探しているとは夢にも思ってなかったし想像も出来ない。なつみは本社に赴任になった経緯は今ひとつ理解出来ないでいる。もう27歳と言うピチピチの女性ではないのだ。思い当たるのは去年の正月特番での出来事であった。穏やかな印象を受けるなつみの天然ボケか嫌。なつみはぶりっ子である。福岡ではぶりっ子笑顔を連発。特番ではぶりっ子キャラなつみ集として放送された。ローカル出身が東京に出てきたのである。何かプロデューサーの目にとまったのであろう。

なつみは上尾プロデューサーから1週間後に配属先を伝える意向を示されて。なつみを抜擢した経緯について一言添えた。

「君の天然キャラ。ぶりっ子で行く」

なつみはぶりっ子キャラに唖然とした。ローカル局から本社への抜擢でぶりっ子キャラとは内心はニュースキャスターと言う地位が頭の中にチラホラしていただけにちょっとはにかんでみた。夕食はプロデューサーがご馳走するそうだ。なつみのマンションは渋谷に用意されていて、夕食は近場のトンカツ屋に決まった。美味しいトンカツである。食事の前にお手洗いに伺う。ハンドバックの中からハンカチが顔を出した。なつみは何かと思ったが記憶がよみがえった。朝、空港で出逢った男性の物である。テーブルに置いてあったコップの水を床にこぼしてしまい男性はバックから咄嗟にハンカチを出し吹いてあげたのである。なつみは汚れているからとそのハンカチを受け取りビニールに入れてバックにしまい込む。そのハンカチを取り出すと下の方に何か文字が書いてある。

「落し物の主の電話番号 09098???」」

織田俊平は昨日の出来事を思い浮かべていた。まさか、あのハンカチを使うチャンスがやって来るとは、真司からの忠告が当たったのだ。真司はある雑誌の記事にハンカチに落し物の主と携帯の電話番号を糸で書いていつも持っときなとアドバイスしたのだ。ていうか雑誌に書いてある通りに俊平に試したのが本音である。昨晩は渋谷のカプセルホテルに泊まる。埼玉にある工場でアルバイトするのを思い直す。いつまでも非正規労働者やっててもしょうがない2度目のプロポーズも断られるのが想像出来る。俊平は製造業でいくかどうか悩み出した。モンダ自動車工場の上司が製造業は入社してからが勝負だと言っていた。現場上がりは強い自分を作る。時には大卒のエリートを超える事もある。それに出世すれば自分で下請けや協力会社を立ち上げるのも叶う夢だ。

俊平は機械が好きである。工業高校も機械科を卒業。それにまだ30歳である。工場を狙うには適齢期だ。

1週間が経ち。なつみは上尾プロデューサーに呼ばれた。

「ぶりっ子お天気キャスターに決まりだ」

なつみは気象予報士の資格を持っていた。しかし、ぶりっ子が余分である。そういや熊本のテレビ局には筋肉モリモリのアナウンサーがいてムキムキお天気キャスターとして人気を得ているらしい。ぶりっ子の元祖はデビュー当時の松田聖子である。自分で言うのも何だがたしかに自分はぶりっ子だと思っている。又、天然ボケだけにぶりっ子を卒業する事は出来ない。本能である。なつみの個性でもある。

俊平は最近自分が変化している事に気が付き始めた。そうだあの日福岡空港であの女性に出逢ってからだ。しかしあの時天下の女子アナだ。そう簡単に誘いに乗るはずはないし自分は非正規労働者の首切りにあってるどん底の男である。俊平はあらぬ事が頭に浮かぶ。もしもあの女子アナと付き合うならどうするか。女子アナが非正規労働者と結婚したなんて話は聞いた事がない。たしか電通とかの一流企業やらプロ野球選手である。あのハンカチなんか何も期待してはいない。たまたまの偶然である。いつか見た映画。幸せの力。たしか学歴も何もないのにエリートを超えて営業の売り上げをナンバー1にした男の物語である。そこまで頭をよぎるが次の瞬間に現実が待っている。学歴は高卒の人生のシナリオは非正規労働者の解雇問題から暴露された。悲惨な運命を辿った男達のなんと多かった事だろう。俊平は中学時代から周りのみんなを楽しませ笑わせるのが得意で将来は漫才師になると思っていた同級生も多かった。

なつみは上尾プロデューサーの提案に少し疑問をいだいた。バラエティー志望でもあるまいし私はアナウンサーなのだ芸人ではない。ましてや真面目な報道に対してぶりっ子とはよく言ったものである。なつみは翌日上尾プロデューサーの提案を断った。なつみの1週間のスケジュールの手帳は空白である。そんな折なつみの肩を叩いたのは、ディレクターの小牧勉35歳。電車で帰る道が一緒なので一杯飲みに連れて行ってくれた。

「上尾プロデューサーは最近有頂天になってる。本社に手腕を認められてから変わった。自分の思い通りにしようとしている。ぶりっ子の件は我々の間ではまたかとため息を漏らしている。これは内緒だがある女子アナに脱げと強制したりいろいろセクハラ、パワハラめいた行動が目についている」なつみが感じたスケベそうな感覚は的中した。翌日本社へ行くと事務所内がやけに騒がしい。デスクの上には週刊誌ネタが乱雑に置いてあるそのページを覗くと思わず声を上げた。

「名碗プロデューサーセクハラで逮捕」

餌食になったのは同僚の女子アナから始まっていた。数日後彼はテレビ局を解雇になる。

しかしなつみのスケジュールは空白である。

なつみは番組企画部の部長に呼ばれた。

「今回の件は誠にすまなかった」そしてなつみの本社への移動は上尾プロデューサーの意図的策略だった事を告げられる。福岡での仕事の際になつみのキャラに惹かれての行動であり遺憾だったがたまたまお天気キャスターに空白があり咄嗟に思いついた行動だったそうである。

「君のキャラは使えそうだ」

今度恒例のご当地アナによる名物アナウンサーと言う企画の番組に出演してくれないか。本社に移転になったローカル出身のアナとして」

なつみはこの仕事は素直にひとつ返事をした。事務所に帰ると小牧ディレクターが近寄ってきて食事の誘いを受ける。スケジュールも埋まり元気づいた感もあり誘いを受ける事にする。

その日は3人の女子アナも誘われていた。5人でちょっと居酒屋に出向く。飲み会での話題は男女関係に発展した。

「リーン」

俊平の携帯のベルが鳴った画面を覗くと見知らぬ電話番号である。03から始まる固定電話だ。受話器を取るとそれは仕掛けられた罠からだった。なつみは酔った勢いで好奇心が頂点にきていた。電話は同僚の部屋からである。俊平は気軽に「こんばんわ」と挨拶をして言葉を続けた。

「決して悪い男ではありません。ストーカーでもありません。犯罪者でもありません。精神鑑定が必要な人間でもありません」俊平はハンカチの件はついいたずら心で試してみました。すみませんと謝った。なつみはどうやら怪しい男ではなさそうである。なつみはお仕事は何をなさってるか問いかけた。すると「恥ずかしい話ですが、無職です。派遣切りにあったどん底の男です」なつみはこの人はおまけに女性にも振られたらしいからつい同情してしまったのである。今度の休みの日にお昼のランチでも食べに行こうと約束する。

予感

渋谷駅で待ち合わせした。俊平はあの時の服装でやって来た。なつみはクールな感じの白と黒のモノトーンだ。今日はなつみはファッションチェックは必要なさそうだ。俊平がお昼は何処でと尋ねると。

「トンカツ屋」俊平がトンカツ屋を案内すると、こないだなつみがご馳走になった所である。

「仕事、決まった」

「それがなかなか決まらなくて、当面の生活費はある。しかし、早く就職しないといずれ貯金も底をつく」

「なにかやりたい事あるのなさそうね、あったら非正規労働者やってないか」

なつみは俊平に突っ込み始めた。

「なんか特技は、なさそうね」

俊平は苦笑いする。

「なんか好きな事は、なさそうね」

「なんか資格は持ってるの」

すると、俊平が

「あったら非正規労働者やってないか」

なつみはちょっと考え込んで

「部活動やってた、なさそうなの」

すると俊平の表情が生き生きしてきた。

「ボクシングやってた。県大会で優勝した。全国大会に出場するはずが自転車で転倒して骨折した」

なつみは意外な言葉にびっくりした。

「ボクシングは好きなの、当然よね」

「内藤選手みたいな叩かれても叩かれても起き上がるスタイルはいいね」

なつみはおやっとした表情で

「プロボクシングやらないの」

「もう、30です」

「やってよ、応援する」

俊平は忘れていたボクシングに目が覚めたのか、いきあたりばったりの解答なのか、その夜、ビジネスホテルに戻った俊平の頭の中にボクシングと言う格闘技がちらつき始めたのである。俊平はなつみの応援すると言う言葉。てことはなつみさんがリングの試合に見に来てくれる。俊平は福岡県ではバンタム級では敵なしだった。昔のファイティング原田、薬師寺、辰吉がズラリ名を連ねる。しかし、高校時代の話である。辰吉は同級生の女性に告白して振られた事がきっかけでボクシングから身を引いた。現実はボクシングやってチャンピオン目指すのはいいが現実は仕事をしないと生活してマンマを食えない。チャンピオンは無理でも試合になつみさんが来てくれる。

高校の先輩が東京に出て住み込みで新聞配達やってボクシングやってる人が多いと聞いたな。住み込みなら食事の心配や住居の心配はいらないし朝からのトレーニングにもなる。目黒にはジムも多いと本当かどうかは知らないが噂で聞いた事がある。なにより、俊平はなつみさんの応援。これに尽きたのであった。

俊平はなつみと次に会う約束はしなかった。気まぐれだからもしかしたら又電話するかもと言ってくれた。俊平30である。ボクシングやるのはいいが、なつみさんが見にきてくれる。その後は何もないのです。下手すると猛スピードで35になってしまう。そうなったら正社員なんか高卒出だよ。頭が痛くなった俊平である。それはそうとこれまで経済力のなさで散々振られて来たのだ。サラリーマンやってボクシングは無理だな。趣味ならいいがすると突然俊平の頭に閃いたのだ。

「松田なつみさんにいつかその日が来たらプロポーズする。振られてもいい経験だ。後悔はない。男は黙ってひたすら我が道に向かって突き進むだけだ」

なつみはフジテレビの名物アナウンサーでローカル局からやって来た女子アナで出演する事が決まった。なつみの頭には全国区になったらどうしよう。ローカル局が良かったんじゃない、あの時プロポーズを断らなくても良かったのでは後悔の念が襲ってきた。なんたってプロ野球選手である。結婚なんて誰でもよくてその場にいる人を貰っちゃえだったのがなんでこうなったのか。別にお付き合いがあったわけではないのだ。たまに食事に行くだけ、しかし彼は私を狙っていたのだ。デートもしてなくていきなりプロポーズだなんて私事、なつみを舐めてるのか。まるっきりロマンスがない。恋愛の醍醐味がない。多分結婚生活もプロ野球を引退したら価値はなくなる。マスオさん的旦那もいいがまだ27歳である。

なつみと会ってから1週間があっと言う間に過ぎた。俊平はまだビジネスホテルで寝起きをしている。ラジオのスイッチをひねるとアイドルグループ乃木坂46の気がついたら片思いの曲が流れている。テレビのチャンネルをひねるとドキュメンタリー番組だ。マカオにカジノをやりに来た二人組だ。1週間の予定でギャンブルを楽しむらしい。持ってきた資金は汗水働いて稼いだ300万円。俊平は少し減ったが貯金300万を持って上京してきた。そしてビックリしたのがお金を使い切ったら帰るらしい。俺はなんだ300万を使い切ったら次なる道はホームレスへとまっしぐらかもしれない。チャンネルを変えるとニートの若者が市議会議員の選挙にわずかなお金で立候補した。結果は敗北だ。俊平はあと250万円ある。頭の中に浮かんできたのは働いていた工場の派遣社員の知り合いは高卒で愛知県に就職。10年間に200万貯金をしたが。田舎に帰りパチンコで全部使い切ったらしい。彼らに共通しているのは使い切った後に何も残らないが悔やんではいない事だ。もしも、俺がこのお金を使い切ったら鬱病にでもなりかねない自分にハッとした。

俊平が手に持っているリモコンのスイッチを切ろうと触れるととなりの地上放送ボタンに触れた。「名物女子アナ祭り」。そこに登場しているのはなつみである。1週間前に一緒に食事をした彼女だ。彼女は俊平とは違う世界の人間だもう会う事はないだろう。

翌日、ビジネスホテルを出ると足は東京駅に向かった。俊平は大阪に向かった。食い道楽の街だ。とにかく美味しいものを食べようと当てもなく来てしまった。時計を見ると15時だお腹の虫が鳴いてきた。駅前にあるたこ焼き屋に入ると香ばしいソースの匂いに囲まれている。ホカホカの出来立てたこ焼きを頬張った。俊平の口に入ったたこ焼き。今までこんな美味しいたこ焼きにお目にかかったことはない。感動した。そして、俊平の脳裏に「これだ」

得体の知れない感動に包まれた俊平の足は、大阪駅に戻っていた。電車は兵庫県明石駅が終点だ。釣りが趣味の俊平は無償に釣りがしたくなった。明石のタコ釣り。一度は釣ってみたかった。

名物女子アナと題した番組に登場したなつみ。全国のお茶の間に顔を出したが何か虚しさがこみ上げてくる。1日だけのスター。同僚の番組関係者の中では、ローカルからやって来たアナ。逮捕された上尾と何かしら密約があっての起用という噂だ。なつみはその後のスケジュールが埋まってはこない。このままではバラエティーの世界に飲み込まれてやがて芸人の仲間入りか。27歳。もう清純者のアナではとうらない。ドロドロの沼に浸かったキャラ。何を模索しても芸人への階段を上がる道しか見えない。そんな折。NHKの人気アナウンサーが退職するニュースが飛び込んできた。なつみはこのアナ。牧野陽子45歳を尊敬していた。何かしら自分と似てる感じを抱いていた。なつみは暫く休暇をとり実家のある博多に帰省する事に。

この日は土砂降りの雨が降っている。やがて梅雨のシーズンを迎える日本列島である。明石駅に電車は止まった終電である。駅を降りて5分程歩くと卵焼きと書かれた大きな看板があった。卵焼きとは明石焼きの事だ。たこ焼きに似ているが、小麦粉がメインのたこ焼きと違って玉子をふんだんに使ってありモチモチフワフワである。俊平はソースをたっぷりとかけてから口に頬張った。俊平は実家のある熊本県熊本市で人気のあるマヨたこ焼きを思い出した。マヨネーズをベースに柔らかくふわっとした食感である。塩ダレが妙に旨味をそそっている。外を伺うとさっきまで土砂降りだった雨が小降りになった。まだ博多のアパートは家財道具がそのままになっている。東京で住居が見つかったら引っ越すつもりだ。俊平は博多に戻る事にした。友達に電話を入れると博多駅まで迎えに来てくれるとの返事だ。彼の名は岩崎努。高校時代からの親友である。俊平は根が明るい性格からか友達には恵まれている。努と会うのは五年振り、現在何をやってるかは不明だが当時はギター片手にバンドをやっていた。身分はフリーターである。努はGパンにまだ寒いきもするがTシャツ姿でやって来た。手にはエレキを抱えている。

努は博多でフリーター歴約10年。仕事する以外はバンド活動をしている。中洲にあるライブハウスに顔を見せたのは夜の9時を回っていた。既に努の率いる演奏は終了していたがこれから打ち上げ会があると俊平も誘った。宴会のある居酒屋に到着すると店内は貸切である。ドアを開けると二十名はいるようだ。俊平は努の人脈に驚いた。それに努は生き生きとしている。フリーターの身でありながら生き生きしている彼に脱帽だ。努がやって来ると。

「今日は某プロ野球選手の金村光一選手が来ています」努は高校時代に野球部に所属していた。どうやら後輩らしい。金村選手は最近好調を維持している。3週間前から調子が上がっていた。

努の挨拶はまだ続いた。

「もうひとり有名な友人も招待しました」

すると後方の席からひとりの女性が立ち上がった。俊平の目からは二十代の可愛らしい女性だ。

「松田なつみです」皆んながざわめき出した。俊平も驚いた。

再会

金村浩一。ソフトバンクホークスに入団して11年目の30歳である。福岡市にある公立の工業高校を3人は卒業していた。俊平、努からすれば後輩である。平成16年の夏の全国高校野球大会に出場してベスト8まで勝ち進み。投手だった金村はプロ野球にスカウトされ入団した。この高校で3人は出会い高校の寮で3年間同じ釜の飯を食べた。金村浩一は敷かれたレールに乗り夢と言う行き先の列車に乗り終点に辿り着いたが先輩である2人は現在ではフリーターだ。高校を卒業して2人は県外に就職した。そして同じ会社である。愛知県にある自動車工場。野球をやっていた勉は社会人野球。俊平はボクシングからは足を洗った。

松田なつみは北九州にある私立の女子高校を卒業後福岡女子大に進学して、福岡県民放送局に入社して五年目である。なつみはバレー部に所属。セッターで県大会の準決勝まで勝ち進んだ。

桜ヶ丘工業高校に進学した2人に待っていたのは新入生指導と言う伝統の行事であった。上級生が新入生を指導するという立場が逆転した。中学時代は柔道部に所属して初段の俊平はとにかく身体を鍛えるのが好きで腕っ節が強かった。上級生が近づいてきた。俊平の前に立ち。校歌を歌えと命令され素直に受け入れて大声で叫んでいる状態で腹の腹筋に上級生の腕が突き刺さった。次の瞬間俊平の前に倒れた3年生が横たわっていた。この先輩はボクシング部のキャプテン。立ち上がった先輩。村田祐一の口から発せられた言葉は意外だった。

「俺の部。ボクシング部に来い」

なつみは2人にすぐ気が付いた。相席となったなつみと俊平。なつみは心が躍っていた。プロ野球選手じゃない、非正規労働者の俊平だ。相変わらずの様子に落胆どころか、反対に彼に魅力を感じる。元来母性本能が強い。俊平は、ムラムラと感情が湧き上がってくる。その時、ビールの入ったコップをなつみが落とした。すかさず。俊平はハンカチを差し出す。なつみはあの時の行動を思い出した。ふたりは笑った。そして、酔った勢いで、なつみを明日、誘ってみた。周りには誰もいない。なつみは返事をした。なつみの脳裏の奥の底には、俊平とは、運命に似た出逢いを感じている。トイレに行くとなつみはハンカチを見た。すると。「東京ディズニーランドホテルの名前と部屋番号が書いてある」このハンカチは。俊平の友達の提案の隠れミサイル的な発想。この作戦は2度当たった。翌日、なつみは東京ディズニーランドホテルに来ていた。なつみは俊平に運命的な出逢いを感じたのだ。結婚って、上り詰めた同士が結ばれて、子供を作り、子育てして、老後を迎えるだけではない。卵でもいい、ふたりで未来を築くのもら面白い人生だと。三人の女子アナの飲み会で結論していて、上り詰めてはいない、上り詰めようと努力している俊平に惹かれた。

翔子の恋愛事情

「翔子の恋愛事情」

〜あなたの性格変えます

第1話  出逢い

三原翔子37歳。製薬会社勤続15年。彼女に営業課への移動が渡された。長年事務職として毎日、黙々と書類関係の整理をやっていた。彼女は命じられるままに、上司に抵抗する事もなく、ひとつ返事で承諾しなければ、リストラが待っている。彼女は口には出さないが、パワハラだ。いじめだと独り言を呟く。仕事が終わり、山手線に乗り込む。広告に目をやると、飛び込んできたのは。「あなたの性格変えます」翔子は大学を卒業してこの会社に入って来た。あまり目立たない性格で、就職活動もうまくいかず、最後に受けた会社でかろうじて事務職で入社した。部長とも15年間の付き合いである。部長がお茶を持って来いと言われると素直に持って来る。そして、お茶がまずいと言って、飲みもしないくせに、茶碗を投げやる。それを文句も言わずに拾い上げて片付けていた。そんな暗い性格に、同僚の女性達からも遠ざけられていた。暗い性格だ、退職したら、就職できるかわからない。翔子は体調が悪くなり、半年程。療養の為休暇を取った。遅すぎるが、今になって、自分を変えたい心境に襲われる。そして、リストラにあえば、もういい歳だ就職口はパートしかない。アパートに帰り着くと、即アポイントを取った。翔子は今すぐでも性格を変えたい。翌日、会社に伺う。やって来たのは、まだ、二十歳前後の若者である。翔子は不安になる。

相田哲郎25歳。日体大卒業。フジテレビバラエティ番組ディレクターとして3年間勤務。令和対昭和の世代の生活特集と言う番組の取材を担当して。思い付き、大学時代の野郎の友達3人と。慶応大学3年の鎌田涼子。曽根田陽菜。亜矢尻彩の6人で「あなたの性格を変えます」と言う会社を設立した。「いかがでしたか、気に入りました」三原翔子は舞い上がっていて、言葉が出てこない。哲郎は言葉を続けた。「あなたの性格を、変えます。プログラムには、3ヶ月コースと半年コースとあります。半年コースには、延長券は無料で提供します。どちらのコースを選びますか」翔子は3ヶ月コースを選択した。

哲郎「週に3日のコースです」翔子は鳥肌が立った状態で、2日目のコースは何ですかと尋ねた。

哲郎「明日は、あなたの飲んだコーラにそっと唇を近づけます」

翔子「聞いたような言葉ですね」

哲郎「1990年代に流行した河合奈保子のエスカレーションの歌詞です」

翔子「いきなりですか」

哲郎「30分は講義があります」

翔子「明日は講義だけでもいいですか」

哲郎「いいですよ。講師は慶応大学3年の鎌田涼子先生が担当します」

涼子「翔子さんは恋人いますか」

翔子「います」

涼子「身体の関係は」

翔子「まだ付き合って一週間ですから、ありません」

涼子「ご予定は」翔子はそこまで聞くかと少し腹を立てた。

涼子「これは。性格を変えるためのプログラムです。積極的にあなたからアプローチして下さい。ちなみに恋愛歴は」

翔子「ありません」

涼子「どこで出逢いましたか」

翔子「ナンパされました」

涼子「本気で頑張って下さい。少し休憩します」

涼子先生は、美人でスタイルがいい。哲郎は、慶応大学。美人コンテスト、ベスト3を揃えた。そして涼子はトップクラスである。翔子は、スタイルも良くない。涼子は鋭く突っ込んだ。

涼子「女性は、ウエストがキュッと閉まってないと、イケメン男性は来ませんよ」

翔子「もう、37ですよ」

涼子「自信を持ちましょう。13歳。年下のイケメンを狙いましょう」

翔子「今。付き合ってる人がいますから」

涼子「恋は数を、こなすほど女性は磨かれていきます。今の彼氏は捨てましょう」

第2話 始まり

翔子「せっかくナンパされたのにですか」

涼子「何言ってるんですか。そのおとなしく控えめなあなたに対してナンパしてきたんですよ」

翔子「私は性格を変えたい」

涼子「くずくずして。あなたはいくつですか」

翔子「初めてだったものでつい舞い上がってしまいました」

涼子「性格が変われば男を見る目も変わります」

翌日、会社へ出勤して来た翔子はいつもと変わらずにデスクに腰掛けてパソコンを開いた。一件のメッセージが飛び込んできた」

今日「今日。仕事が終わったら居酒屋憩いにいます。裕太」

翔子は自分の耳を疑った。勤続15年。同僚の男性から誘われるのは初めてであった。彼の席に目をやると、彼は手の指を上げて、OKの仕草を返した」

裕太は営業課のやり手で人気者。まだ独身の30歳である。裕太の社内での仕事の評判はいい。同じ会社でも部署が違いあまり喋ったこともない。それに比べて翔子はお昼休みは、毎日ひとりでお弁当をゆっくり食べて新聞を見る。同僚と会話することはなかった。居酒屋憩は地下鉄に乗り3つ目の駅で降りた所にある。翔子は8年前の裕太の歓迎会を思い出した。

翔子が居酒屋に入ると裕太は先に待っていた。翔子はこんばんわと言って。笑みを漏らした。

裕太「今日。誘ったわけわかります」

翔子は、首を横に振り「どうしてと尋ねた」

裕太「来週から翔子さん、営業課にきますよね」

翔子はまた。無言で今度は首を縦に振る。

裕太「昨日、明石香子さんに振られました」

翔子は、なんなんだこいつは、私を軽く見てるのか、振られたので、今晩、抱きたいなんて言うのかしら、とひとり妄想にしたる。

裕太「今。ムッときたでしょ」

翔子「はい」

裕太「そんな気もあるかもしれないけども、今晩は歓迎会です」

翔子「どうしてまた」

裕太「営業課では課長の指示で、移動によりやって来た。三原翔子には皆んな無視しろ。部長から自主退社に追い込むようにと指示されたそうな」

翔子は、おとなしいが。男げがある性格もあり、無性に腹が立ったが。涙が出て止まらなくなった。裕太「それじゃ乾杯しますか」

翔子は一気にビールを飲み干したが、裕太は3分の1程残っている 何を思ったのか、翔子は裕太の飲みかけのビールを奪い、一気に飲み干した。

「あなたの性格を変えます」

その時。相田哲郎の言った言葉が、天から聞こえてきたのであろうか。

哲郎「おおっ、実行しましたか。河合奈保子バージョン」

翔子は顔を赤らめながら返事をした。

哲郎「まだ実技をやってなかったですが、その行動力たたえます。それで、その後どうしましたか。

翔子「2度目のお誘いを受けました。裕太さんは意外な私の行動にびっしりしてました。私もびっくりしました。間接キスをいきなりだなんて」

翔子は、営業課の部長に腹が立った事を哲郎に告げた。

哲郎「臨時プログラムを提案します。営業課へ移動まであと1週間ですね。精神力をまず鍛えましょう」

翔子は、次々に手を打ってくる哲郎に好意を持ったのか、年下の彼に恋心を抱くのであった。

哲郎「これに着替えて下さい。剣道着です。着替えたら、外に出ましょう」

翔子は哲郎の言葉に、逆らう暇もなく段取りを進める。

マンションの一階に降りると公園になっていた。ベンチシートの横に人間の形をした箱が置いてある。

哲郎「竹刀を振りかざして、思いっきり顔を叩いて下さい。その丈夫な箱がめちゃくちゃになるまで、こっぱみじんにやっつけて下さい。部長だと思って」

翔子は30分間。打ち続けた。人間の形をした丈夫な箱の姿はなかった。

「明日は、別のプログラムを用意します。このプログラムは、1時間五千円になりますが、宜しいですか」

アパートへ帰り着くと、翔子はバタンと畳の上に転がり深い眠りに落ちた?

哲郎「本日のプログラムは潜在意識を高めます。会社の部長の写真は持ってきましたか。その写真を拡大コピーしてきますから、十分間。きついでしょうが、こん畜生と思いながら眺めていて下さい」

翔子「一番の曲者は50代の田尻保です。独身です。アルバイトは彼のパワハラ。セクハラで何人も首になったし、すぐバイトは辞めていきます。職安でもブラック企業と思います。あれだけ、評判が悪いが、身体は丈夫で健康です。ヘビースモーカーだから、そろそろ、棺桶が届く頃です」

哲郎「本日の授業の担当は、曽根田陽菜 慶応大学3年生です」

陽菜「私は。催眠術を使って。翔子様の潜在意識を高めます」

陽菜は霊感があるらしく、副業として占い師をやっている。主にタロット占いであった。陽菜「ハイ、目を閉じて」

次の瞬間に翔子は夢の中にいた。まるで、陽菜は夢の中の登場人物を操ってる様な感覚で。翔子の前に、部長の田尻保の血相を変えた顔がアップで迫ってきた。翔子の身体は。だんだんと溶けていき、魂になって空の彼方に飛んでいく。その瞬間、目が覚めた。陽菜「今から。あなたの潜在意識を高めます。ここに、わさびと唐辛子があります。皿の上にあるのを全部食べて下さい」翔子は、身体がかっかっかと燃えてきた。陽菜「ハイ、目をつぶって」翔子の夢の中にまた、部長の田尻保が登場した。翔子は、口の中から。炎を部長の顔をめがけて吐き出す。部長の顔はぐちゃぐちゃになり、爆発した。目が覚めた翔子は何かスカッとした気持ちになった。

哲郎と翔子は居酒屋に来ている。

哲郎「翔子さん。あれは、河合奈保子」

翔子「もう嫌ですよ、やりません。でも、少し性格が変わった気がします。だから、男性との出逢いもあったし、明るくなりました」

哲郎「今日。居酒屋に誘ったのは」

翔子「なんですか、それ、いいですよ」

哲郎は、翔子が、気になり始めていたが、衝動を抑えた。

哲郎「会社が潰れますよ」

翔子は。今夜は哲郎に身を湯だめてもいい気分になっていた。

翔子「今日は。営業課の青木裕太さんが、昼休みに隣の席に来てくれて一緒に食事をしました。

哲郎は。ピンときた。身体がムラムラと熱気を帯びてきた。これ以上はお酒を飲むのをやめた。そこへやって来たのは、亜矢尻彩である。彩は哲郎の肩を叩いた。哲郎の眉間にシワがよるのを感じた彩は、バシッときた。

彩「仕事ですよ。翔子さんはお客様ですよ。商品ですよ」そして。翔子もピンときた。彩と翔子の目の間に、電流が走る。

哲郎「赤マムシ5本」赤マムシは男性の精力剤である。

女性2人は、同時に同じ事を考えた。

哲郎「翔子さんに飲ませます。元気の元は男も女も一緒ですから。明日の為に気合を入れてもらいます」

第3話  再会

田尻保53歳。バツイチ。日体大卒業。製薬会社一筋勤続30年。アメフト部出身。

明石香子「部長。三原翔子。お休みです」

社員の視線が一斉に部長に集中した。

田尻部長「お前ら。文句あるのか」

部長はデスクの上にある熱いお茶を手に持ち一気に飲み干す。

田尻部長「香子。水持ってこい」

田尻は、翔子をお茶汲みで使うつもりでいた。あの性格だから。すぐに萎えるだろう」と言う思惑の成果を確かめるのを待っていたのだ。

明石香子43歳は、部長よりも気が強い。香子は若い青木裕太より部長が好みであった。

裕太「明石さん。この書類見といて」

香子は。昨日、振ってやった裕太が何気ない顔で命令してきたのが少しシャクにさわったが、お気に入りの彼には無言だ。

裕太「部長、これに、サインしといて下さい」

これもまた部長は裕太には頭が上がらない。裕太は慶応大学法学部卒業である。

翔子は、布団の中にいた。昨日の赤マムシ五本飲んだのが原因だ。目が覚めると、性格が変化した実感はなかった。講義を受けていた時には、今までの私じゃないと思っていた。のが嘘のようだ。

お昼になり。相田の教室へ向かう。

翔子「赤水君」

教室の階段の上に立っていたのは。翔子の高校の同級生。赤水浩介37歳であった。

赤水浩介37歳は相田哲郎と向かい合って座っている。相田は赤水浩介に簡単な自己紹介を注文した。

赤水浩介「5年前に会社でのノルマに追われ、気の弱い性格がたたり鬱病を発症しました。現在は障害就労支援センターで就職に向けてのプログラムをこなしてます。しかし、一般就労に行っても、進歩がないと思い。自分の性格を、変えようと思いました。哲郎「その通りです。就労支援とやらが、どんな訓練をするとこか存じませんが。一番大事なのは自分の性格を変える事です」浩介「私もそう思いました」哲郎「三原翔子さんとはお知り合いですか」浩介「高校の同級生です」

哲郎「それじゃ、いきなりですが、プログラムに入ります。お気に召しましたら、入会して下さい」そう言うと、隣の部屋にいる三原翔子を相田は呼んだ。

哲郎「赤水浩介さん。三原翔子さんは独身だし、あなたも独身です。ここで。あなたが好きだと告白して下さい」翔子も浩介も相田の発言に呆気に取られた。浩介は。もじもじ、もじもじ、煮えたぎらない動作が続く。翔子は、相田さんはいきなり、キスをしろとでも言いかねない気がして。びくっとした。哲郎「私が言う事を、重複して下さい。翔子さんの目と口をまっすぐ見てから」浩介は、汗がダクダクと落ちてくる。翔子と一緒で浩介も似た性格である。哲郎「三原翔子さん。私は翔子さんが好きです。結婚して下さい」浩介は重複した。哲郎「翔子さんも。私でいいですかと、感情を込めて、声に出して下さい」浩介は続いて、相田の声に重複した。哲郎「はい、いいです。そして、握手して下さい。今日のプログラムは終了です。明日。入会金を持っておいで下さい、入会を期待しています」

浩介は、高校時代に翔子に恋をしていた。二十年経って口に出して言えた事に、昔の言葉を思い出した。「人生の出逢いにはみんな意味があります」この出逢いは大切にしないとらいけないかなと、思い浮かべて、1人微笑んだ。

哲郎「翔子さん、今日のプログラムは、赤水浩介さんと駅まで一緒に帰って下さい。翔子さん、明日はちゃんと会社に行って下さいよ」

翔子と浩介は、駅までの15分を一緒に歩き始めた。すると浩介は言葉が自然に出てきた。

浩介「びっくりしました」

翔子は、昔は感情を込めて男性と会話した事ないのに今日は自然に笑みが溢れる。

翔子「好きですか」

浩介「高校生時代の翔子さんは知ってるし、好きです」

翔子「入会しますか、私は1ヶ月ほど経ちました。なんか、呆気に取られますが、効果ありですね。これ、私のLINEのIDです。、もしよろしければ」

翔子は積極的な自分が不思議だった。浩介も似たような気持ちだ。何か、魔法にでもかかったようである。浩介は自然に言葉が出てくる。2人は。食事をして帰る事にした。そして、それじゃ明日と、ここで、教室に通う前に待ち合わせをした。

翔子は青木裕太とも食事の約束をしている。本当に魔法かしらと。ひとり笑みをこぼした。そして、相田と交わした会話の数々を思い浮かべながら、布団の中に入った。明日は、移動した営業課への初出勤である。

 最終回  おめでとう

翔子はスカッした気分で。営業課の部署へやって来た。周りのみんなは、陽気な翔子にあっけにとられている。

裕太「翔子さん。今度の週末は暇」

翔子「私は、半年後に結婚します」

営業課のメンバーは、2度目のあっけにとられた。そして、裕太が、万歳をした。

そこへやって来た、部長も万歳をした。5年ぶりの寿退社を受理したのは部長だった。

翔子は、朝早くに電話のベルで目が覚めた。電話の主は赤水浩介である。少し、早く出勤してほしい。話したい事があるから、井の頭公園で待っている。翔子が公園に行くと、既に赤水浩介はやって来ていた。

浩介「結婚してくれる」

翔子はひとつ返事で、承諾した。

まだ、人影は少ない公園でふたりは、初めてのキスを交わした。翔子の頭の中には大学を卒業してからの嫌な記憶が走馬灯の様にスクリーンに流れて行く。キスはこのスクリーンの映像を何もかも消してくれた。

電撃結婚

出逢い

平成30年

織田俊平29歳は。目の前に座っている荻野涼子26歳の顔を見るなり、思わず口を開いた。

織田俊平29歳「AKB48の指原莉乃って感じですね」

荻野涼子26歳「冗談でしょ。その口髭。昔を語っていますね。彼女にふられて髭を生やし始めたとか、そんな雰囲気します」

織田「いやいや。まいったなあ。当たりです、プライベートで図星です」

荻野「私は、テレビでキャスターやってます。宜しく」

織田俊平は、内心、びっくりした。そして荻野の身体をじっくりと見入った。綺麗だし、美人だし、可愛いし、ウエストもキュとしまってる。あまり、おおらかな胸には寂しい感じだ。

涼子は熊本の実家から東京に向う所だ。織田は機械メーカーの営業をやっている。熊本へ出張の帰りだ。東京は目黒区のマンションに一人住まい。涼子は独身で、明日から仕事。月曜日と水曜日に、朝の番組でキャスターしてるそうな。

織田「飛行機はお好きですか。隣の部屋でお食事でも一緒にどうです」

荻野「飛行機にはレストランはないですよ。いつの時代の人ですか」

織田「もうすぐ羽田ですね。宜しければ一緒にお昼。おごります」

荻野「ハイ」

涼子は、ハイと答えた。織田は14時までに会社に戻らないといけないが、こんな女子アナとの出逢いは、一生で一度かもしれないと、仕事は、報告だけだし、ドタキャンに踏み切った。涼子はポニーテールの髪に、首に縞模様のスカーフを巻いている。季節も春で陽気だ。織田は上着を脱いだ。織田はグレーのストレッチ地カーディガンが爽やかな印象を与える。涼子は、春だなあと少し、織田の事が気になった。

飛行機が乱気流に入り、少し揺れている。涼子の手からオレンジジュースが溢れた。織田はポケットからハンカチを差し出した。

織田は一瞬。脳裏に親友が浮かび感謝した。このハンカチにはちょっとした仕掛けがしてあるのだ。

織田「このビニール使ってください。そのハンカチは捨てて結構ですから」

涼子はビニールに入れて、バッグの中に締まった。織田は、つぎの言葉を投げるのをやめる。すかさず別の言葉を用意した。

織田「お昼は何を頂きますか」

ハンカチについて。涼子が言いたそうなのを遮った。このハンカチは彼女の中へ。その後の行方は織田にも予想出来ないが、突然。決行された作戦は見事に成功した。

羽田に着くと、織田は、涼子を浜松町へ案内して歩いて3分の場所にある。中華店へ誘導した。

織田「四川麻婆豆腐」が、自家製の花椒を贅沢に使用した一品で、花椒の芳香とクセになる辛味ですよ」

涼子は、感情豊かに紹介された。「四川麻婆豆腐」を注文する。

織田は一瞬。脳裏に親友が浮かび感謝した。

涼子「食事はいつも外食ですか」

織田は、毎日、外食だとは言わずに、別の言葉を用意した。

織田「たまに外食ですが、自炊してます。彼女はいません。よかったら、彼女になりませんか」

涼子は、織田の突っ込みについていけずついポロリと口

をこぼした。

「えっ。これ、私の電話番号です。宜しかったら」

織田は、涼子と電話番号を交換する。

織田「ここは、私が払います。次はお願いします」

食事が終わり、2人は外に出た。

織田「私はここで別れます」

織田は、涼子の姿が見えなくなった所でタクシーを呼んで、会社のある。目黒まで急いで直行したのである。

織田は30分遅れたが、会社に着き出張を報告した。

その日は、出張と言う事もありマンションに17時には着く。織田は幼なじみ安田晴子29歳に夕飯をご馳走になる。

安田晴子「俊平 私 いい歳じゃん」

織田「その話はご法度、俺、結婚する気ないから」

織田は飯を喰ったら安田の部屋を出て行く。20時からは週に一度の洋裁学校へ。俊平はここで洋裁を習っている。俊平の会社はカラオケ機器のメーカーで、介護施設やらでカラオケ療法を高齢者に指導している。そこで働いていた。副業で洋裁学校を開いてる木田篤子46歳の勧めでやって来ている。この洋裁学校での技能が変な事に役立っていた。

木田篤子「俊平 結婚しないの」

俊平は今日は2度も同じ言葉を投げられた。しかし、篤子には愛想良く対応した。

織田「見合いでもするかな。金はある。実家に帰れば土地もあるし」

篤子」田舎に帰るの」

織田「相手次第だよ。こうだと断言はできないが、色んな戦法は考えてる」

篤子「見合いしない。いい人紹介するわ。ちょっと待って」

織田は見合い相手の写真を見て。ぐっぐっときた。美人だ。しかし、介護をしてると言うのに、待ったがかかった。織田は断った。

的中

荻野涼子は同じキャスターの安達ユキ24歳と居酒屋に来ている。

安達ユキ「ヘェー、ところで、木田達也君とうまく言ってるの」

涼子「あまり会ってない。仕事が忙しいみたいで」

ユキ「電話とかやってないの」

涼子「めんどくさいって」

ユキ「彼は真面目だからね。涼子は彼氏以外と電話番号交換してないの」

涼子はドキッとした。あの彼の手帳に私が登録されてるのをすっかり忘れてた。涼子は、何か。身体がほたってきた。2人は1時間程で別れた。マンションに帰り、浴槽に灯りを灯すと、洗濯籠の中に何か入っている。ビニール袋が目に入った。涼子は思い出した。しかし、彼の名前は誰だっけ。涼子は鏡に向かって。

涼子「彼の名前も知らないのに、電話番号交換した」

しかし、涼子は彼を消そうと言う欲求は生まれなかった。もう時間も遅いと思ったが、何故か洗濯したくなり、洗濯機のスイッチを入れる。居間に戻ると。明日バラエティ番組をやっている。涼子は出演者に何を馬鹿な事やってるのかとけなしたが、我に戻った。私は見ず知らずの男と番号交換した。思い出しても、涼子の性格からして、絶対あり得ない筈だった。

木田達也。民放番組プロデューサーである。涼子には、真面目を強調させている。暫くぶりに涼子と食事の約束をした。予約したのは、渋谷にある溶岩焼肉店。富士山の溶岩プレートによる230度の低温調理で黒毛和牛の旨味は最高である。

涼子は黒無地のTシャツ、デニムのミニマルコーデ。カジュアルな服装でやって来た。焼肉屋と言うのは達也から伺っていた。

涼子は入り口でキョロキョロしている。達也は、また、コンタクトでも落としたのかと、涼子を呼んだ。当たっていた、お手洗いに行き、眼鏡でやってくる。椅子に座ると、達也は手に何か持っている。涼子はピンときた。再びお手洗いに駆け込み、もう一度お化粧直しをして席に戻る。

涼子は達也の顔をじっと見る。達也は少しいつもと違う感じは、ピンときた。涼子の予感は当たった。

達也「一生ボクのそばにいてください」

涼子はひとつ返事でOKを告げる。

達也「来週のバラエティ番組でアイドルグループアフターンの高橋えり18歳と打ち合わせの前に、3人で食事をしようと思うけども。いい」

俊平は、仕事が終わりマンションに戻ると、アフタヌーンの音楽鑑賞が始まる。ファンで萩田帆風のファンだ。何回も何回も再生するのは、アフタヌーンが歌っている。「となりのバナナ」ちょっと大人びた雰囲気の顔が好みである。抜群のスタイルと美貌。アフタヌーンの中ではピカイチだし。セクシーショットがたまらない。

1週間が過ぎ木田達也は涼子と待ち合わせをした。そして、連れてきたのはアフタヌーンの高橋えり。番組のタイトルは「ドジ選手権」素人の出演番組のゲスト。前髪は短くカットした。爽やか系のアイドルと言ったイメージのえりである。えりを2人に自己紹介をした。

えり「東京生まれ B型のさそり座です。最近はお笑い系の番組によく出演してます」

えりは木田達也の顔を見て一言付け加えた。

えり「バラエティ番組の、プロデューサーにしては、少し年配な感じ」

六本木タワービルの一階にある。喫茶店。サロンのように、天井が高く開放感に満ちた店内で、ゆったりとした感じ。達也は15時を過ぎているので、軽いケーキにコーヒーを注文する。店員が、お冷やをえりに出した時に。少し水が溢れた。慌てたのは、涼子であった。涼子は咄嗟にバッグの中からハンカチを取り出して拭いた。

えり「ありがとうございます。このハンカチは、洗って返します」涼子が差し出したのは、福岡空港で出会った彼のハンカチ。もしも、バッタリあったらと、バッグに洗濯して保管していたのだ。えりもビニールにいれてバッグにしまった。三人は夕方になり、えりがラーメンを食べたいと言うので、世界に羽ばたく『楽観』ここにあり。『鰹節』『煮干し』素材にとことんこだわった淡麗スープに仕上げの『高級オリーブオイル』に寄った。えりはマンションに一人暮らしである。部屋に帰ると。バッグを開けた。目に入ったのは、お冷やをこぼした時のビニールに入れたハンカチ。お水だからと、ビニールを開けて取り出すと。淡い水色のハンカチに綺麗に刺繍が、してある。どうも電話番号のようである。えりは、お礼を言おうと、刺繍してある番号に電話をかける。

えり「もしもし」

俊平「誰」

好奇心が大きい。18歳えりは電話を切らなかった。

えり「涼子です」

俊平「誰、涼子って」

えり「キャスターの涼子です」

キャスターと聞いてびっくりした俊平は言葉を続けた。

俊平「ハンカチ」

俊平は編み物の腕を自慢に、ハンカチに自分の電話の番号を刺繍していた。親友から、そのハンカチを持ってたら、天使がくるとはこの事かと疑わなかった。

えりと俊平は1時間近く、お喋りを続けた。俊平は、数ヶ月前に女優と運転手の一般人が結婚したのは、女優がプロポーズした話を覚えていた。

俊平「電話番号交換する」

えり「いいですよ」 俊平は、けして不良な性格ではない。前向きな姿勢が運を引き寄せていた。

予感

マドモア「その婚約はちょっと待った。彼の運勢は今年は天中殺で最悪と出てる。何事も急ぎすぎると悪い予感が的中する」

涼子は。占い師マドモアとは、1年前からの知り合いである。その1年前にマドモアの予言は的中した。当時.涼子はアイドル歌手をしていたが、売れなかった。田舎に帰ろうかと迷った挙句にマドモアと知り合い。進路を伺うと、自分で決めるのはやめて、自然の成り行きに任せなさい。涼子はアイドルを引退した半年後に、功を奏してお天気キャスターの座を射止めたのである。

マドモア「木田の事は何処まで知ってるんだい」

涼子はハッと気づいた。交際してから半年。そんなに。お食事する事もなく、彼はいつも忙しいの連発。あの人の事はあまり知らない自分に気づく。

マドモア「それに。もう32歳だろ。独身と言うのはおかしい。なんか。あるんじゃないのかい」

涼子「何も聞いてないし、聞いた事はない」

涼子は、婚約の返事を少し延ばすことにした。木田は戸惑ったが、優しい言葉で、「いい返事待ってるよ」とだけ言われた。涼子は我にかえる。マドモアに電話をした。

涼子「クールな声に仕草で、いい返事待ってるよと言われた。最初は、ごめんなさいと思ったけども、この人はこの程度にしか私を思っていないのかなって、強引に言ってくれると思ってたわ」

マドモア「キザな野郎は、やめとき。身を滅ぼすよ」

涼子はマドモアに忠告を受けたのである。

アフタヌーンのリハーサルが行なわれている。キャスターの涼子が持ってたハンカチ。噂では、婚約間近らしいが興味しんしんだ。えりは名刺を貰っていたのを思い出す。リハーサルの休憩時間に電話をかけてみるがあいにく留守になっている。

涼子は占いを信じている。木田との婚約は破棄すると決めた。キャスターのアイドル化も進んでいる。涼子もリストラと言う文字がかすめてきた。「ドジ選手権」ある意味イメージチェンジするチャンス。リハーサルの日。木田も来ているが声をかけてはこない。涼子は後ろめたい気持ち。リハーサルも笑顔が出なくてディレクターに注意されるし落ち込んでいる。そこへ高橋えりが近づいてきた。

えり「荻野さん。ハンカチの番号に電話しました。涼子は何のことだか理解できない。その時にえりから事情を説明されて初めて知った。

涼子「えりちゃん、その織田さんと食事に行かない。何かの縁よ」

えりは心良くいい返事をした。

「来週に決めとく」

涼子は織田に淡い期待感を抱いたが織田の目に涼子は存在しなく。織田の心には高橋えりが入り込もうとしている。

俊平、涼子。えりの3人は渋谷にある居酒屋隠れ野にやって来た。涼子の提案でもあり。えりは俊平を涼子の隣に相席のポジションを確保するかと思いきや、俊平とえりが隣同士。他人から見ればカップルについてきた女性ひとりだが、涼子の目にはえりは子供に見えた。

えり「涼子さん。アイドルだったんでしょう」

涼子「アイドルやめたら老けちゃった」

俊平「見ようによっては。40に近づいてる気もする」

涼子はお世辞にも俊平に言われたのはショックだった。まだ30歳前。男の人の目に25はこう見えるのかに唖然。

涼子「織田さん。結婚するなら」

俊平「20まで」

えり「私は」

俊平「もちろんOK。最近のアイドルは普通って感じだし」

涼子「織田さん、電話していいですよ」

えり「えりも」

涼子は今時のアイドルはこれかとびっくりした。

涼子は木田達也に呼ばれた。

木田「4月の朝からの番組のキャスターは新番組と言う構成で荻野は交代だ」

涼子はだいたい察しはついていたが少しショックを受けた。

涼子は安達ユキと居酒屋に来ている。ユキは夕方からのキャスターで移動はない。ユキは涼子から織田の話を聞いた。

ユキ「今、ガタガタきてるだろうけど、早まるんじゃないよ」

織田は電話した。「六本木の居酒屋五郎で待ってる」涼子は会う事にする。

涼子「誘う人、間違えたんじゃない」 

織田「あの時は飲んだ勢い。一般人がアイドルに手を出したら、命を狙われる」

涼子「私も元アイドルよ」

織田は涼子がキャスターを下されたのを知り。びっくりするが、次の言葉を発した。

織田「まだ。26だ。そろそろ観念して結婚でもしなよ」

涼子「織田さんと」

織田「いいよ」

六本木の居酒屋五郎から店を出た瞬間に俊平の頭の中から予期せぬ言葉が突然湧いてきた。

俊平「今度の三連休に新潟行かない。ドラマ明日の君へツアー」

涼子は俊平の突然の言葉にまたしてもついついOKの返事をした。俊平は頭の回転が速いのか涼子の目には天才的なコミュニケーション力だ。

涼子「なんでまた明日の君へ。ハマったの」

俊平はハマった。頭の中には密かに、ドラマの中での主人公のキスシーンに俊平と涼子が重なり合っていた。

涼子は俊平にはキャスターを降ろされた事は内緒にする事にした。

俊平は1泊2日の予定と言った。マンションに戻った涼子は。26歳。俊平の事は何も知らないが、中身が大事とは言え勢いも大事だ。鏡を見ると顔がほころびている。そして、26歳にしては上出来だと言う表情だ。

涼子のコーディネートは、長袖のトップスに薄手のアウター。朝と夜の気温差を考えて、薄いコート。カーディガン。パーカーの下に半そで、マスク・眼鏡・サングラス。

俊平がエスコートした宿泊場所は、一生の思い出にしようと、ドラマのロケ地となったホテル。憧れの名場面のロケが行われたホテル。グランデ。に決める。

東京駅に2人はやって来た。涼子はなんかうかぬ顔だと察した俊平。

俊平「ホテルは別々の部屋を用意したから、朝は6時」
アワビ粥
・焼き魚


朝食を食べ終わると直ぐに、船着場に到着。東京からここまで、5時間。電車の中で涼子はちょっと舞い上がっていた。俊平さんはこの後何を考えてるのか理解できない。着いたらあの並木道。これが冬の日で俊平さんと雪だるま作って。一面が銀世界の中で、涼子が雪をビシャと宙にばらまいて。霜焼けになりそうな手を俊平さんがフーフーして血の気をとるの。そして、あの広場でのキスシーン。広場の左側に“銀杏の並木道”、
真ん中に“松の並木道”、右側にセコイヤの並木道”がずっと続いています。

松の並木道”のそばには朽ちた。大木の上を歩いていて、手を差し出して手をつないで歩くシーンです。大木の中から俊平が出てきた。

俊平は手を差し出した。涼子はその手に捕まって大木の上をフラフラと歩き出した。涼子は、「あっ」映画のようにはいかない、大木に足を取られて転げ落ちる。涼子は俊平と初めて手を繋いだ。感触をひとり空想したのでした。

嫉妬

涼子は俊平の事が頭から離れなくなる。俊平にとって涼子の存在は、人間は単調な毎日の中でたまに刺激のある日をもうけるのが。理想だ。思考の中には、えりが見え隠れする。俊平は、昨日届いた。えりからのLINEのメッセージ。「お話しはこれから、LINEだけにしましょ。私はアイドルだから」テレビのチャンネルをつけると、えりが、出演してる。それも、恋愛のバラエティー番組。えりは最近の恋愛話を語っている。その内容に耳がゾウの様に、大きくなる。「最近。恋してます。それが、少しだけ年配の男性です」同じ時間に涼子も同じ番組を観ている。えりの発言に涼子は身震いがした。

キャスターを降ろされた。それは、婚期を逃したとも言える。俊平に電話するが。あいにく繋がらない。涼子は嫌な想像が湧いてくる。下手に俊平に迫ると、あっさり振られるかもしれない。アイドル時代を思い出す。周りの芸能人のアイドルは、やがて、アイドルを卒業すると言うのに、いつまでたっても、目元が怪しい瞳に変化しない。少女のままだ。涼子の心に火がついてしまった。木田とのお付き合いでは感じなかった。いきなりの木田からのアプローチ。恋に発展するアプローチなんて、この年齢じゃもう手遅れな気がする。えりは、アイドルだけあって、現場の空気を読むことには長けている。その影響か、俊平のLINEを巧みに交わす。その俊平も、4抵。バブルが崩壊、リーマンショックなどを経て、2010年代。4低』男子モテる」説です。「低姿勢」(女性に威張らない)、「低依存」(家事や子育てを女性に任せっきりにしない)、「低燃費」(お金を使わない)、「低リスク」(リストラされない)は、心得ている。

俊平のLINEに返信をしてこない。代わりにやってくるのは、ミッキーマウスのキャラクターだ。えりの顔とミッキーマウスの顔がダブってくる。俊平は、えりに魅力を感じてはいない。何かしら惹かれる。えりも不思議な俊平に興味を持ってしまった。

涼子には、俊平の眼に入っていないのは承知である。やがて1ヶ月が経とうとしている。この3人に変化はなし。だが。俊平のLINEは、既読スルー状態に陥っている。それでも、挨拶代わりに、毎日の出来事を打っている。

涼子は待っても待っても。俊平からは連絡もこない。仕事のスケジュールも空白ばかり続いている。そんな折に元アイドルと言う名目で雑誌の取材がはいる。俊平に電話すると、喜んでくれた。しかし、落ちこぼれ状態にある。涼子は乗り気でない。涼子はマドモアに会うことにする。マドモアは、霊感があるわけではない、知能を駆使した占いである。セオリー通りに、若い。アイドルになびく男はろくでもないと忠告した。その夜。俊平から電話が鳴った。それは、芸能界を引退しないかと。涼子は。一つ返事ではいと言おうかと思ったが、俊平の次の言葉がない。

俊平は。音信不通のえりが気になる。

運命

朝の芸能ニュースを見て驚く。えりがドラマに抜擢されている。共演者、琢磨25歳。イケメンアイドルグループだ。俊平の身体に痺れが走る。えりに対して感情の起伏が激しい。そして音信不通。この恋は本物かもしれない。ドラマの共演から発展するパターンが浮かぶ。

このドラマの共演には。涼子も抜擢される。ストーリーは三角関係。脚本は綾野浩二だ。浩二は、別名。共演者の仕掛け人と言われている。めでたいストーリーに発展する。俊平の脳裏に花嫁姿のえり。その横には琢磨の顔が。

俊平は今日も返信のこないメッセージをえりに打っている。その言葉はもう原稿用紙千ページを超える。一度だけ、えりに長文だと怒られたが。それからの音信不通。

半年が過ぎた。俊平は毎日、えりと涼子のドラマを見ている。なにか、俊平を囲む。現実の世界の様な気もする。3人の分身たちが踊り出してるようだ。俊平は、寝ていても、勝手に3人が異次元でドラマを織りなす。その視聴率も20パーセントを超えている。コマーシャルも絶好調だ。

涼子はドラマ中ではガンに侵される。そして、2人がエンディング。ところが、ドラマの中では奇跡が起こる。涼子のガンが、消えた。まるで。スピリチュアルな展開だ。俊平は半年ぶりに涼子に電話する。涼子は俊平の誘いを断る。涼子は冷めていた。えりは音信不通。ドラマの行方が気になる。

俊平は、初めて、えりに食事に行こうと打った。その夜。LINEに既読がつく。次の日の夜に、えりから返信がきた。

「いつもLINE返さないけども、ちゃんと見てます。食事に行ってもいいけど」

俊平はいきなりLINEに、結婚してくれと、メッセージを打つ」

えりからの返信はミッキーマウスが飛び込んできた。

翌日の芸能ニュースに朗報がトップに。アイドルグループアフタヌーンえりが電撃結婚。お相手は一般人」

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セカンドラブ 恋は一発逆転 非正規労働者 看護実習生との奇妙な関係 電撃結婚

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2022-01-08

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