雪の夜

あおい はる

 ルルのことを、すこしだけわすれているあいだの恋愛は、なんだか、あまくないバウムクーヘンみたいだった。ただ、人工的に重ねられた年輪を、なんの感慨もなく食す。雪が、どかどかと降って、ずんずんと積もって、きっと、いま、このあたりは宇宙からみたら、真っ白いのかもしれない。斑点。あまりにもさむくて、灯油ストーブのまえで、しろくまとよりそいあっている。ふたりで一枚の毛布をかぶっているのだけれど、しろくまのサイズに対して毛布がちいさいので、ぼくはしろくまに抱えられるようにして、しろくまを座椅子にして、ココアを飲んでいる。さむいのがとくいだと思っていたしろくまも、この街の気候にからだが馴染んでしまって、年々、さむいのがにがてになっているという。めったに降らない雪に、交通機関は全滅し、けれど、気分はちょっと高揚している。しろくまは、こんな量の雪をみたのはひさしぶりで、なんか、殺伐とした気持ちになるなぁと、つぶやいた。たばこを吸いたいけれど、キッチンに立つのも、ベランダに出るのもいやで、さっきからがまんしているのだ。ストーブの熱があたらないところは、泣きたくなるくらいに、つめたかった。
 このままずっと、ぬくぬくしてたいねと言うと、しろくまはやさしく笑って、ぼくの髪を撫でる。
 ルルの断片を思い出して、甘やかな感覚がよみがえってくる。
 トリュフチョコが、からだのなかでとけて、ひろがっているみたいだと想う。

雪の夜

雪の夜

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-01-06

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