雪の夜
ルルのことを、すこしだけわすれているあいだの恋愛は、なんだか、あまくないバウムクーヘンみたいだった。ただ、人工的に重ねられた年輪を、なんの感慨もなく食す。雪が、どかどかと降って、ずんずんと積もって、きっと、いま、このあたりは宇宙からみたら、真っ白いのかもしれない。斑点。あまりにもさむくて、灯油ストーブのまえで、しろくまとよりそいあっている。ふたりで一枚の毛布をかぶっているのだけれど、しろくまのサイズに対して毛布がちいさいので、ぼくはしろくまに抱えられるようにして、しろくまを座椅子にして、ココアを飲んでいる。さむいのがとくいだと思っていたしろくまも、この街の気候にからだが馴染んでしまって、年々、さむいのがにがてになっているという。めったに降らない雪に、交通機関は全滅し、けれど、気分はちょっと高揚している。しろくまは、こんな量の雪をみたのはひさしぶりで、なんか、殺伐とした気持ちになるなぁと、つぶやいた。たばこを吸いたいけれど、キッチンに立つのも、ベランダに出るのもいやで、さっきからがまんしているのだ。ストーブの熱があたらないところは、泣きたくなるくらいに、つめたかった。
このままずっと、ぬくぬくしてたいねと言うと、しろくまはやさしく笑って、ぼくの髪を撫でる。
ルルの断片を思い出して、甘やかな感覚がよみがえってくる。
トリュフチョコが、からだのなかでとけて、ひろがっているみたいだと想う。
雪の夜