いちごの日

 陸地の生きものはかわいい。水中のも。たぶん、生きものというものがみんな、かわいいと思うときの精神は、おだやかではないのだ。コーヒーをのみながら、思う。ブラックコーヒーなんてのめないのに、なんだかきょうは、のめてしまう。そういう日なのだと、みとめる。シュガーポットも、ミルクピッチャーも、いらなかった。月からの新人類が、理性のない獣みたいに、ぼくら地球のにんげんと交わりたがるので、さいきん、さまざまな条例ができて、この街は、すこし生きづらくなった気がしている。年中盛ってるのねと、ばかにするように微笑んだあのひとが、長い爪でときどき、星のやわらかな粘膜を傷つける。そういうことを安易にするから、新人類に、ぼくらはじわじわと侵されいるのだと、あのひとはわかっていないのではなくて、わかっていて、おもしろがっているのだからこまるよなぁと、あまりこまっていない調子で言ったのは、一ヶ月に一度だけ、いっしょにねむる約束をしている、あがたさんだった。
 真夜中のカフェには、あたりまえみたいに、人型ではない生きものがまぎれていて、そもそも、型、というものが存在しないものもいて、正直、意味不明な造形のものもふつうにコーヒーをのんでいるのだけれど、それでも、いま、このときは、ひどくかわいいと思ってしまう。
 そういう日なのだ。

いちごの日

いちごの日

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-01-05

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