甘い、あまい

 やわらかな地球で、いて。
 あたらしいとき。
 うまれかわるのだ。ね。
 みんな。

(おめでとう)

 お正月のくうきって、すこしだけ、にんげんをだめにする感じがある。ニアが言う。とりあえず、腹ごなしに散歩に行こうとふたり、家をでる。そういえば昨年は、コンビニまで歩いて、アイスを買った。コンビニのひとに、お正月からおつかれさま、ありがとうの意味もこめて、アイス以外のものも、たくさん買った気がする。今年は、なんだかまわりが、にぎやかしいような、たぶん、家族やお友だちとすごしているひとが、多いのかもしれない。ぼくとニアは、今年もふたりで、ニアは、おかあさんがさいきん、ようやく、展示室にでられたので、近いうちに逢いに行こうと話している。ニアは、むりしてこなくていいというけれど、ほんとうはひとりでおかあさんと対面するのは、こわいのだろうと思う。おかあさんが展示室にかざられることになったと連絡があった夜、ニアは、ぼくをきつく抱きしめながら、眠った。ぬいぐるみがないと眠れない、こどものように。
 歩いていると、ケーキやさんがあいていた。
 ケーキやさんってお正月も、やってるんだ。ぼくがつぶやくと、ニアが感心しているみたいに、うなずく。
 やっぱり、ごちそうのあとのデザートは、ケーキが食べたくなるのかもしれない。ガラス越しに見える、華やかで、おめでたい雰囲気の、ケーキ。可愛らしいトラが、いちごといっしょに鎮座しているものもある。
 寄っていこうかと、ニアが言う。
 そうしようと、ぼくは微笑む。
 あたらしい年になっても、なにかがすこしだけ、うまれかわっても、甘いものは永遠に幸福の象徴のひとつだなぁと思いながら、ぼくらはリンゴンリンゴンと鐘を鳴らしながら、ケーキやさんの扉を開けた。

甘い、あまい

2022年も、好きなものを好きなように書いていきます。

甘い、あまい

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-01-01

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