SS48 霊視
あなたの背後に人の姿が見えます
「確かにあなたの背後には人の姿が見えますな」
「本当ですか?」
思わず振り返って周囲を見渡したが、いるのは忙しなく行き交う人の群れだけだ。
何度か寄った事のある老齢の占い師が霊感も強いというので、話し半分で視て貰った結果だった。
「どうやら割りと若い女性のようです」彼はじっと右肩の辺りを凝視している。
「髪の長い、何というかフワフワした感じの服を身に着けています。悪い者には見えませんが…」
「ご先祖様が守ってくれてるとか?」
「いやいや、そういうんじゃありませんがお心当たりありませんか?」
「いやあ、分からないなあ」と天を仰ぐ。
「でもあなた何か疚しい隠し事をなさってますよね?」
「それって占いですか? それともそいつが何か言ってるんですか? めちゃ怖いんですけど」
「当たりですか。なら、それは今すぐにお止めになった方がいい。本当に恐ろしい事はこれから起こりますから」
「気味が悪いな、もういいです」俺は千円札二枚を叩きつけるように置いて立ち上がった。
「これからどちらへ?」
「あなたには関係ないでしょ」
不機嫌に言い放ってから、こちらへ真っすぐ歩いて来るスーツ姿の女性を捉えて軽く右手を挙げた。
「では最後にひとつだけ。あなたの背後から今、スマホを握り締めたまま、鬼のような形相で近付いて来る者がいます」
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