十二番目のおわり

 みんなが眠るころに、めざめて。月をみたくて開けたカーテン、窓のむこう、ベランダにいたきみと、白い蛇。しゅわしゅわと、炭酸水のなかでいっしょにはじけるみたいな心持ちで、ひとりと一匹をながめていた。
 朝になると、はじまる。
 しっている。きみも、蛇も、ぼくも。きっと、となりの部屋のくまも、近所のコンビニで元気にレジ打ちをしているおばあさんも、アルバイトをしているアイスクリームやさんに棲みついている幽霊も、しっているはずだ。夜におわっても、朝にはまたはじまることを。なんでもそう。この星のものにはだいたい、はじまりがあって、おわりがあるのだと、大学のえらいひとみたいに語っていたのは、白い蛇だ。きみの分身である。恋人でもある。きみであり、きみではなく、蛇もまた、蛇でありながら、蛇ではないものなのだが、では、結局はなんなのかと聞かれると、よくわからない。はっきりしていることは、きみは、ぼくらとおなじ二足歩行の哺乳類で、白い蛇は、まぎれもなく蛇であるということ。中身、構成は異なるとしても。
 アイスクリームやさんで、わりと頻繁にシフトがかぶる、ポニーテールの同僚からもらった、チョコレートをたべる。ココアパウダーでコーティングされた、トリュフであるらしい。くちにいれた瞬間、チョコレートはとけた。甘かった。甘すぎるくらいに甘くて、びっくりして、パッケージをみたら、外国のチョコレートだったので、納得した。あったかくて渋いお茶が飲みたいと思った。ベランダにいるふたりにも、いれてあげようか。にんげんも、蛇も、寒さには弱いと思うのだが。ただし成分構成が、この世で基準となる、にんげん・蛇と、同一であるならば。
 なんせ、十二月も終盤である。
 おわりがくるのだ。

十二番目のおわり

十二番目のおわり

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-12-28

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