冬のミメイ
まやかし。すべてが、呼吸とともに、大気にとけて、元素に還る日。おわる。おわっても、だいじょうぶ。うまれるものがあるからと、やさしさを湛えた笑みを浮かべて、ニアが言う。わたしは声がでない。声のだしかたを、わすれてしまったのだ。宇宙の悲鳴がきこえるのは、だいたい、午前三時の、夜のパーツがすこしずつ自然的にはずれて、朝の部品と切り換わりはじめる頃。耳を塞ぐ。悲鳴は、こわい。だれかの泣き声に等しく、わたしにはかんけいないはずなのに、こわい。実験室にとじこめられた、こどもたちがいて、やっぱり、この街は狂っていると思う。こどもたちは、花になるのだから。うつくしい花に。可憐で、儚い存在に。おとなってひどい。
酸素を得られない魚たちが、水槽のなかで、もがき苦しむのは一瞬で。
その一瞬のあいだに、うしなわれるものの尊さを、ひとは時に、軽んじる。
朝のバケモノが目覚め、深い森の土のなかで埋もれて眠っているひとを想うような祈りを歌い出し、ニアが夜空の星をひとつずつ指先で触れて、消してゆく。
冬のミメイ